なで肩の方に多く見られるという「胸郭出口症候群」は結果を出しやすい疾患といえます。
胸郭出口症候群は良く遭遇する疾患で、斜角筋・小胸筋に強い緊張が見られます。
上肢のしびれ・脱力の症状で来院する場合もあります。

胸郭出口症候群の鍼灸治療において注意することとしては斜角筋・小胸筋の深刺を避けることです。
気胸の危険性があります。
遠隔取穴・局所の施灸・浅刺で対応する必要があります。

また、胸郭出口症候群に神経根症が合併している場合もあります。
頚部理学テストを行い、神経根症を除外する必要があります。

最近つくづく思うことは、鍼灸治療で結果を出しやすい疾患・症状と出しにくい疾患・症状があることです。
一般に言われる鍼灸の適応症の中にも結果が出しやすいものもあれば、出しにくいものも含まれています。
結果を出しやすい疾患・症状を得意治療に選ぶことで患者満足度は上がり、鍼灸師の自信にもつながります。
結果が出しやすい症状といえば「寝違え」です。
寝違えはやり方を間違えなければ痛み・可動域制限が劇的に改善します。
しかし、やり方を間違えると増悪する可能性があります。

失敗し易いやり方としては、痛みのある部位に単刺や置鍼・施灸をする方法です。
もっと痛みが強くなったり、可動域制限が増悪する可能性があります。

私のやり方は遠隔取穴で治療を行っています。
ほとんどの方が治療直後に痛み・可動域が改善します。
また、この方法では痛みや可動域制限が増悪することはありません。
この方法をセミナーで指導していますが、受講生の方はほぼ100%近くマスターしていらっしゃいます。

もう1つ寝違えで注意することがあります。
良く何度も寝違えを起こす患者さんがいらっしゃいます。
その場合単なる寝違えなのかどうか検討する必要があると思います。

特に急性期の痛みが緩和しても首の可動域が制限されていたり、上肢に痛みやしびれがある場合は頚椎症や頸椎椎間板ヘルニアの可能性があり、整形外科で検査を受けた方が良いかと思います。

頚椎症や頸椎椎間板ヘルニアでは寝違えと全く別の治療―頸椎のアライメントを調整する治療―を行っております。

 

薬物治療の副作用として胃の不調や肝機能障害は良く遭遇するものです。
更に最近気になる副作用として抗コリン作用のある薬による認知機能低下があります。
抗コリン作用とはアセチルコリンの働きを抑える作用です。
抗コリン作用にある薬の中に、睡眠薬・抗不安薬が含まれています。

2015年1月JAMA Intern Med誌にウェブ掲載されたアメリカの論文を紹介します。
65才以上の認知症のない高齢者3434名を登録し、平均7.3年の経過観察を行ったとのことです。
その間に23.2%(797名)が認知症を発症し、その中で637名はアルツハイマー病(疑いを含む)と判断されました。
抗コリン作用のある薬を3年以上毎日常用量服用していた人は認知症全体の発症リスクが1.54倍、アルツハイマー病の発症リスクが1.63倍有意に増加していたとのことです。

したがって鍼灸により睡眠薬・抗不安薬を中止することが出来るのであれば非常に価値が高いものになります。

今までの私の経験では睡眠薬を使っていない人で、軽い不眠―少々寝つきが悪い、中途覚醒するなどでは改善し易いです。
 

患者さんの鍼灸に通う態度は様々ですが、大きく二つに分けることが出来ます。
積極的に通いたい人と出来るだけ通いたくない人です。
積極的に通いたい人に理由を聞くと、症状が楽になること以外に「治療後ぐっすり眠れるから。」という答えを良く耳にします。 

不眠症で悩んでいる患者さんはかなり多いです。
明らかな不眠症ではなくても、何となく寝つきが悪いとか、中途覚醒する人も結構いらっしゃいます。

睡眠不足で悪化する疾患としてうつ病・神経症性障害・頭痛・耳鳴などが挙げられます。
したがって鍼灸により睡眠が改善することは患者満足度を高め、上記疾患の悪化を防ぐ効果も期待できます。

また、睡眠薬・睡眠導入剤の副作用でふらつきや認知機能の低下を訴えている患者さんも少なくありません。
鍼灸で不眠を改善し、薬を減らすことが出来れば、価値が高いと考えられます。

高齢者の死に関連する疾患として誤嚥性肺炎が挙げられます。
誤嚥性肺炎は食べ物が気道に入る事や睡眠中に唾液が気道に入って起こるとされています。
誤嚥性肺炎になり易い状態として口腔内の細菌の繁殖・口腔機能の低下(舌の筋力低下など)などが挙げられます。
また不良姿勢も関連している場合があります。

口腔機能の低下はオーラルフレイルと呼ばれています。
オーラルフレイルでは嚥下障害のため低栄養になり易く、それがフレイルを更に増悪させるという悪循環になりがちです。
オーラルフレイルに対して、口腔機能と不良姿勢の改善が重要と考えています。

今人生100年時代を迎えようとしています。
しかし、問題点も多く抱えています。
健康寿命を低下させる大きな要因として、寝たきりの原因疾患と認知症があります。
寝たきりの原因疾患は第1位脳卒中、第2位認知症、第3位老衰、第4位骨折・転倒、第5位関節疾患となっています。

最近は要介護の前段階であるフレイルという状態に注目されています。
フレイルの症状として、体重減少・疲労感・筋力低下・歩行速度低下などがあります。
また、フレイルは筋力低下が主体のサルコペニアと密接な関係があります。
更に老化や低栄養との関連も指摘されています。

フレイルの状態は正常と要介護の状態の中間に位置します。
フレイルから要介護・寝たきりになる場合もあれば、正常な状態に戻る場合もあります。
寝たきりの前段階であるフレイルの治療は今後益々重要になって来ると考えられます。

 

症状の多い患者さんをどう対処したら良いでしょうか?
2022年9月17日のメールマガジンで取り上げた時には1つの経穴で多くの効果をもたらすように治療するとお伝えしました。
今回は別の方法をお伝えします。

例えば、めまい・頭痛・気分が落ち込む・手がしびれるといった症状はすべて首のコリを改善することで軽減する可能性があります。
めまいは頚性めまい、頭痛は緊張型、手のしびれは胸郭出口症候群の場合効果が出ると思います。
この様に1つの身体症状が多くの症状の原因となっている状況を見つけることは重要です。
自律神経失調症は症状が多い疾患の一つですが。このような対処法で軽減する場合もあります。
 

こんな患者さんはいらっしゃいませんか?
うつ病というほど行動が抑制されておらず、気分の落ち込みもひどくない。
神経症性障害というほど強い不安や恐怖もない。
そして身体症状が結構多い。
この様な方につく病名は「自律神経失調症」が多いと思います。

「自律神経失調症」では自律神経の状態・体質傾向・精神状態・更年期障害などの問題がミックスされ、明確に1つの問題を指摘できない状態ともいえます。
したがって現代医学的に治療することは困難になっていると考えられます。
この様な状態の自律神経失調症に対して鍼灸は非常に優れたアプローチが出来ると考えています。

しかし、何となく症状に対して治療したり、何となく反応点に施術したりといったものでは対応できません。
まず自律神経の状態を調整します。
次に体質傾向の調整が必要です。
更に精神症状に対するアプローチも行います。
また更年期障害がある場合はその治療も行います。

したがって自律神経失調症の治療は「何となく、反応点に施術」といった行き当たりばったりの治療では良くならない一方、習得すると他院と差別化できるものになります。
 

鍼灸治療をすることにより、痛みが楽になったり、体調が良くなったりすることは患者さんにとってありがたいことだと思います。
更に鍼灸治療により薬を服用しなくても良くなり、副作用に悩まされることがなくなれば、もっと嬉しいのではないでしょうか。

その候補の疾患の1つが「頭痛」です。
慢性の頭痛の患者さんの中は頻繁に鎮痛薬服用している方もいらっしゃいます。
1ヶ月に10日以上(トリプタン系)~15日以上(NSAIDs)薬を服用している場合、薬剤使用過多による頭痛が起こっている可能性もあります。
また、そこまでではないけれども、常に胃の不調がある方も薬による副作用の可能性があります。
したがって鍼灸によって薬の量が減るだけでも喜ばれます。

前回のメルマガで肩こりの方に頭痛の治療を勧めることを提案しました。
更に鎮痛薬を減らせることも提案できると思います。
 

一般的な治療のパターンは患者さんから「○○の症状で治療をお願いします。」と言われて引き受けるというものだと思います。

しかし、それだけでは治療院の経営はうまくいきません。

また患者さん側にとっても、もっと体の状態が良くなる機会を失うことになります。

したがってこちらから「こういう治療も出来ます。」という提案をして行くことが重要だと思っております。

 

例えば首肩こりは非常に多い症状ですが、その中にかなりの割合で頭痛の患者さんが含まれています。

その時肩こりだけの治療をするのは「普通の鍼灸師」です。

ここで頭痛の治療を提案できるのが「差別化できる鍼灸師」です。

「差別化できる鍼灸師」を目指す方、すでに目指している方はこのまま読み進めて下さい。

 

3/19(日)に頭痛の鍼灸治療のセミナーを行います。

緊張型頭痛の局所治療を習得していきます。

直後効果・再現性のある治療ポイントをお伝えします。

 

詳細は以下をご覧下さい。

https://muto-shinkyu.biz/lp/2023oneday03/