急性腰痛の中でもいわゆるギックリ腰と言われる状態は、全く起き上がることも歩くことも出来ないというひどいもの、自発痛があるもの、わずかな動作で痛むものなど様々です。
これらをすべて筋・筋膜性腰痛と診断するのは誤りです。
急性腰痛の中には椎間関節型腰痛・腰椎椎間板ヘルニアが含まれています。
急性腰痛で来院した患者さんは痛みのために理学テストや筋力テストを行えないことが多いです。
その中でどのように病態をとらえるのかがポイントとなります。
疼痛部位・痛み出現の条件・筋緊張・脊柱アライメントなどのチェックにより確認していきます。
病態が異なると、治療法・予後も異なります。
したがって病態をとらえることは重要です。
患者さんにとって「手のしびれ」は非常に怖い症状の様です。
「脳の病気ではないでしょうか?」という質問を良く受けます。
脳の病気によるしびれの特徴を話し、脳よりも整形外科疾患(胸郭出口症候群・手根管症候群など)の方が多いという話をすると安心する方が多いです。
整形外科疾患による手のしびれはエントラップメントによるものが多いと思います。
持続的筋緊張・骨と靭帯で囲まれた部位の間隙が狭くなるなどの理由により神経が圧迫されることが原因です。
鍼灸治療で症状が改善できるかどうかは可逆性か非可逆性かどうかによります。
骨棘や靭帯の肥厚などは改善するのが難しい(非可逆性)ですが、筋緊張や圧迫が起こっている部位での浮腫の改善(可逆性)は可能です。
改善の余地があるところを見つけていくのがポイントとなります。
手のこわばりというと関節リウマチを疑います。
しかしほとんどの例では手指の変形性関節症によるものが多いです。
変形性関節症の場合手指の関節に変形があっても手関節には問題がないのに対し、関節リウマチでは手指だけではなく、手関節の痛み・可動域制限がある事が多いです。
手指の変形性関節症による手のこわばりに対しては手指の関節の血流を改善する治療が有効です。
ヘバーデン結節・ブシャール結節では関節の動きだけではなく、関節の腫れも軽減可能です。
腱鞘炎の治療として良く行われているのが腱上の取穴もしくは腱の延長線にある筋肉へのアプローチかと思います。
この方法で良くなる場合もありますが、さほど効果がない場合もあります。
私が注目していることは腱が通っている関節の動きです。
関節の動きが改善することにより、腱の動きも良くなり、腱鞘炎が改善していきます。
したがってヘバーデン結節・ブシャール結節も同時に改善する場合もあります。
改善というのは関節の動きと関節の腫脹の事です。
また、バネ指は治らないと思っている鍼灸師・患者さんがいらっしゃいますが、動きが良くなり、バネ現象がなくなります。
ただ、1-2回で良くはなりません。
しかし、整形外科で腱鞘を切開するより鍼灸治療をした方が良いと思っています。
超高齢化社会で問題となっている認知症について第2弾の報告です。
今回はアルツハイマー病の新薬レカネマブについてです。
アルツハイマー病では脳にアミロイドβが沈着し、それが神経細胞の破壊を招くと考えられています。
レカネマブはアミロイドβが塊を作る前段階、「プロトフィブリル」という集合体に人工的に作った抗体を結合させて取り除くという画期的なものになっています。
日本で50歳から90歳までの早期のアルツハイマー病1,795人に対して治験が行われ、半数にレカネマブ、残り半数にプラシーボの治療が行われました。
その結果レカネマブはプラシーボに対し27%悪化が抑えられたという事です。
また脳内にたまったアミロイドβの量も大幅に減少したとのことです。
この事により、早期のアルツハイマー病が重症になるのを2-3年遅らせることが出来るという事です。
この内容は2022年11月29日、アメリカの医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表されました。
アミロイドβは症状が出る20年以上も前から脳に蓄積し、神経細胞の死滅は発症の10年以上前から始まっているとのことです。
したがってレカネマブは発症前に投与すべきだということです。
副作用としては、脳の出血・脳内の浮腫・めまい・頭痛などで、17.3%の人で脳の出血が、12.6%の人で脳の浮腫が報告されています。
費用は現在治療が行われているアメリカでは350万円位です。
日本では近日中に実用化される予定で金額は未定ですが、アメリカと同等かもしれません。
超高齢化社会で問題となっている認知症。
認知症の前段階のMCI(軽度認知障害)は、その時に対策をすれば正常に戻り、対策を怠ると認知症になるというグレーゾーンの状態です。
海馬に萎縮が見られたり、体験全体を忘れてしまうのが認知症に対し、海馬の萎縮が見られず、体験の一部を忘れてしまうのがMCIとされています。
MCIと年齢相応の物忘れとの違いを鑑別するのが難しいと思っていたところ、MCIのスクリーニング検査というものがある事が分かりました。
アルツハイマー型認知症では脳にアミロイドβが沈着することが分かっています。
認知症ではアミロイドβの排除や毒性を弱める3つのタンパク質(アポリポタンパク、トランスサイレチン、補体タンパク質)が減少していることも明らかになっています。
したがって3つのタンパク質を調べることで、MCIかどうかがわかるということです。
鍼灸治療でどこまで認知症の改善に貢献できるかは未知数ですが、客観的な検査を行うことで改善度が分かるというのは心強いと思っております。
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*五枢会治療セミナー
再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
興味がある先生・学生の方は下のホームページをご覧になって下さい。
http://5su.muto-shinkyu.com/
今回は我々の健康と密接な関連のある腸内細菌がテーマです。
腸内細菌は約1,000種類あり腸内には100兆個住み着いているとされています。
ある疾患では特定の腸内細菌が多かったり、別の腸内細菌が少なくなっていたりするという事です。
大腸癌と関連している腸内細菌としては京都府立大学教授の内藤裕二先生によるとフソバクテリウムというものだそうです。
認知機能の低下と関連している腸内細菌としては、国立長寿医療研究センターの研究があります。
バクテロイデスという腸内細菌や、腸内細菌がつくる乳酸が少ないほど認知機能が低下している傾向にあるとのことです。
長寿と腸内細菌の関連としては、京都府京丹後市の研究があります。
京丹後市は100歳以上の人の割合が全国平均の3倍以上の地域です。
京丹後市の高齢者の腸内細菌では酪酸菌の割合が高いことが分かっています。
腸内の善玉菌の割合を増やす方法には、大きく分けて二通りあります。
1つめは生きた善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂取する方法です。
ヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆・漬物など、ビフィズス菌や乳酸菌を含むものです。
2つめは、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法です。
食品成分としてはオリゴ糖や食物繊維で、これらの成分は野菜類・果物類・豆類などに多く含まれています。
鍼灸の効果を高めるために、腸内細菌を整えることも治療の一環として考えても良いのではないでしょうか。
五十肩の治療で気をつけることは何でしょうか?
主に3つのポイントをお伝えします。
1つ目は五十肩では相反する症状がある事だと思います。
腱板や上腕二頭筋腱などの炎症―熱と肩の虚血―冷えです。
したがって暖めるだけの治療や冷やすだけの治療では効果が出ないか、出ても十分ではありません。
2つ目は肩を動かすタイミングです。
私は可動域改善に運動鍼を行っておりますが、いつから行うかのタイミングは非常に重要です。
自宅での体操も同様で、早すぎると症状悪化につながります。
3つ目は患者さんへの教育です。
患者さんの中には非常に熱心で、自分で肩を暖めていたり、五十肩の体操をしている場合もあります。
それが治療の妨げとなることもあるので注意をする必要があります。
肥満に対して耳鍼などを用いる方法はかなり定着していると思います。
しかし、耳鍼により満腹感が出現しているのに食べ過ぎてしまったり、食習慣の改善が不十分で十分なダイエット効果が得られないケースも多いようです。
肥満の中でも糖尿病・高血圧・冠動脈疾患・脳梗塞・脂質異常症・脂肪肝・睡眠時無呼吸症候群・関節症(股関節・膝関節)などを伴う場合には「肥満症」と診断され、治療の対象となります。
以前から現代医学では高度肥満(BMI 35以上)に対して胃切除術を行っていますが、最近の方法では腹腔鏡を用いて胃を切除する方法を取っています。
この方法は10%以上の減量が期待できる反面、胃食道逆流症や出血などの副作用が起こる可能性があるとのことです。
糖尿病・高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群の方は健康保険適応になるとのことです。
最近新しい薬が2種類承認されました。
1つはオルリスタットという薬で、脂肪を分解するリパーゼの働きを抑えるため脂質が吸収されないというものです。
副作用は便が脂っぽくなることです。
薬局で購入可能です。
発売は現段階では未定です。
もう1つはセマグルチドという薬ですが、病院で週に1回注射をする必要があります。
脳の食欲中枢に働きかけたり、胃の働きを抑える作用があるということです。
日本で行われた臨床試験で10%以上の減量効果があったと報告されています。
副作用は嘔気、嘔吐、便秘、下痢などです。
この薬は今後発売される見込みとのことです。
関節症(股関節・膝関節)の鍼灸治療は肥満があると治りにくく、更に筋力が弱いタイプではなおさらです。
肥満を積極的に改善して鍼灸治療の効果を高めるという方法論が可能にできるのではないかと期待しています。
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五十肩は結果が出る患者さんと出にくい患者さんに大きく分かれてしまう疾患です。
結果とは痛み・可動域の改善の事です。
結果が出易いか出にくいかの推定に病態把握は重要です。
五十肩とは通称で、腱板炎・上腕二頭筋長頭腱炎などを含む疾患を指します。
したがって腱板炎なのか、上腕二頭筋長頭腱炎なのか、両方合併しているのか、更に周囲の組織まで炎症が波及しているのか鑑別する必要があります。
またフローズンタイプ(固まっている)なのか、フリージングタイプ(可動域制限があるが他動的に動く)なのかの鑑別も必要です。
炎症の程度が少なく、フリージングタイプは結果が出易いといえます。
病態と来院のタイミングにより、同じ鍼灸治療をしても、劇的に効果が出たり、全く効果が出ない「五十肩」はなかな か奥の深い疾患といえます。