超高齢化社会で問題となっている認知症について第2弾の報告です。
今回はアルツハイマー病の新薬レカネマブについてです。
アルツハイマー病では脳にアミロイドβが沈着し、それが神経細胞の破壊を招くと考えられています。
レカネマブはアミロイドβが塊を作る前段階、「プロトフィブリル」という集合体に人工的に作った抗体を結合させて取り除くという画期的なものになっています。
日本で50歳から90歳までの早期のアルツハイマー病1,795人に対して治験が行われ、半数にレカネマブ、残り半数にプラシーボの治療が行われました。
その結果レカネマブはプラシーボに対し27%悪化が抑えられたという事です。
また脳内にたまったアミロイドβの量も大幅に減少したとのことです。
この事により、早期のアルツハイマー病が重症になるのを2-3年遅らせることが出来るという事です。
この内容は2022年11月29日、アメリカの医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表されました。
アミロイドβは症状が出る20年以上も前から脳に蓄積し、神経細胞の死滅は発症の10年以上前から始まっているとのことです。
したがってレカネマブは発症前に投与すべきだということです。
副作用としては、脳の出血・脳内の浮腫・めまい・頭痛などで、17.3%の人で脳の出血が、12.6%の人で脳の浮腫が報告されています。
費用は現在治療が行われているアメリカでは350万円位です。
日本では近日中に実用化される予定で金額は未定ですが、アメリカと同等かもしれません。
超高齢化社会で問題となっている認知症。
認知症の前段階のMCI(軽度認知障害)は、その時に対策をすれば正常に戻り、対策を怠ると認知症になるというグレーゾーンの状態です。
海馬に萎縮が見られたり、体験全体を忘れてしまうのが認知症に対し、海馬の萎縮が見られず、体験の一部を忘れてしまうのがMCIとされています。
MCIと年齢相応の物忘れとの違いを鑑別するのが難しいと思っていたところ、MCIのスクリーニング検査というものがある事が分かりました。
アルツハイマー型認知症では脳にアミロイドβが沈着することが分かっています。
認知症ではアミロイドβの排除や毒性を 弱める3つのタンパク質(アポリポタンパク、トランスサイレチン、補体タンパク質)が減少していることも明らかになっています。
したがって3つのタンパク質を調べることで、MCIかどうかがわかるということです。
鍼灸治療でどこまで認知症の改善に貢献できるかは未知数ですが、客観的な検査を行うことで改善度が分かるというのは心強いと思っております。
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今回は我々の健康と密接な関連のある腸内細菌がテーマです。
腸内細菌は約1,000種類あり腸内には100兆個住み着いているとされています。
ある疾患では特定の腸内細菌が多かったり、別の腸内細菌が少なくなっていたりするという事です。
大腸癌と関連している腸内細菌としては京都府立大学教授の内藤裕二先生によるとフソバクテリウムというものだそうです。
認知機能の低下と関連している腸内細菌としては、国立長寿医療研究センターの研究があります。
バクテロイデスという腸内細菌や、腸内細菌がつくる乳酸が少ないほど認知機能が低下している傾向にあるとのことです。
長寿と腸内細菌の関連としては、京都府京丹後市の研究があります。
京丹後市は100歳以上の人の割合が全国平均の3倍以上の地域です。
京丹後市の高齢者の腸内細菌では酪酸菌の割合が高いことが分かっています。
腸内の善玉菌の割合を増やす方法には、大きく分けて二通りあります。
1つめは生きた善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂取する方法です。
ヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆・漬物など、ビフィズス菌や乳酸菌を含むものです。
2つめは、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法です。
食品成分としてはオリゴ糖や食物繊維で、これらの成分は野菜類・果物類・豆類などに多く含まれています。
鍼灸の効果を高めるために、腸内細菌を整えることも治療の一環として考えても良いのではないでしょうか。
五十肩の治療で気をつけることは何でしょうか?
主に3つのポイントをお伝えします。
1つ目は五十肩では相反する症状がある事だと思います。
腱板や上腕二頭筋腱などの炎症―熱と肩の虚血―冷えです。
したがって暖めるだけの治療や冷やすだけの治療では効果が出ないか、出ても十分ではありません。
2つ目は肩を動かすタイミングです。
私は可動域改善に運動鍼を行っておりますが、いつから行うかのタイミングは非常に重要です。
自宅での体操も同様で、早すぎると症状悪化につながります。
3つ目は患者さんへの教育です。
患者さんの中には非常に熱心で、自分で肩を暖めていたり、五十肩の体操をしている場合もあります。
それが治療の妨げとなることもあるので注意をする必要があります。
肥満に対して耳鍼などを用いる方法はかなり定着していると思います。
しかし、耳鍼により満腹感が出現しているのに食べ過ぎてしまったり、食習慣の改善が不十分で十分なダイエット効果が得られないケースも多いようです。
肥満の中でも糖尿病・高血圧・冠動脈疾患・脳梗塞・脂質異常症・脂肪肝・睡眠時無呼吸症候群・関節症(股関節・膝関節)などを伴う場合には「肥満症」と診断され、治療の対象となります。
以前から現代医学では高度肥満(BMI 35以上)に対して胃切除術を行っていますが、最近の方法では腹腔鏡を用いて胃を切除する方法を取っています。
この方法は10%以上の減量が期待できる反面、胃食道逆流症や出血などの副作用が起こる可能性があるとのことです。
糖尿病・高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群の方は健康保険適応になるとのことです。
最近新しい薬が2種類承認されました。
1つはオルリスタットという薬で、脂肪を分解するリパーゼの働きを抑えるため脂質が吸収されないというものです。
副作用は便が脂っぽくなることです。
薬局で購入可能です。
発売は現段階では未定です。
もう1つはセマグルチドという薬ですが、病院で週に1回注射をする必要があります。
脳の食欲中枢に働きかけたり、胃の働きを抑える作用があるということです。
日本で行われた臨床試験で10%以上の減量効果があったと報告されています。
副作用は嘔気、嘔吐、便秘、下痢などです。
この薬は今後発売される見込みとのことです。
関節症(股関節・膝関節)の鍼灸治療は肥満があると治りにくく、更に筋力が弱いタイプではなおさらです。
肥満を積極的に改善して鍼灸治療の効果を高めるという方法論が可能にできるのではないかと期待しています。
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五十肩は結果が出る患者さんと出にくい患者さんに大きく分かれてしまう疾患です。
結果とは痛み・可動域の改善の事です。
結果が出易いか出にくいかの推定に病態把握は重要です。
五十肩とは通称で、腱板炎・上腕二頭筋長頭腱炎などを含む疾患を指します。
したがって腱板炎なのか、上腕二頭筋長頭腱炎なのか、両方合併しているのか、更に周囲の組織まで炎症が波及しているのか鑑別する必要があります。
またフローズンタイプ(固まっている)なのか、フリージングタイプ(可動域制限があるが他動的に動く)なのかの鑑別も必要です。
炎症の程度が少なく、フリージングタイプは結果が出易いといえます。
病態と来院のタイミングにより、同じ鍼灸治療をしても、劇的に効果が出たり、全く効果が出ない「五十肩」はなかな か奥の深い疾患といえます。
なで肩の方に多く見られるという「胸郭出口症候群」は結果を出しやすい疾患といえます。
胸郭出口症候群は良く遭遇する疾患で、斜角筋・小胸筋に強い緊張が見られます。
上肢のしびれ・脱力の症状で来院する場合もあります。
胸郭出口症候群の鍼灸治療において注意することとしては斜角筋・小胸筋の深刺を避けることです。
気胸の危険性があります。
遠隔取穴・局所の施灸・浅刺で対応する必要があります。
また、胸郭出口症候群に神経根症が合併している場合もあります。
頚部理学テストを行い、神経根症を除外する必要があります。
最近つくづく思うことは、鍼灸治療で結果を出しやすい疾患・症状と出しにくい疾患・症状があることです。
一般に言われる鍼灸の適応症の中にも結果が出しやすいものもあれば、出しにくいものも含まれています。
結果を出しやすい疾患・症状を得意治療に選ぶことで患者満足度は上がり、鍼灸師の自信にもつながります。
結果が出しやすい症状といえば「寝違え」です。
寝違えはやり方を間違えなければ痛み・可動域制限が劇的に改善します。
しかし、やり方を間違えると増悪する可能性があります。
失敗し易いやり方としては、痛みのある部位に単刺や置鍼・施灸をする方法です。
もっと痛みが強くなったり、可動域制限が増悪する可能性があります。
私のやり方は遠隔取穴で治療を行っています。
ほとんどの方が治療直後に痛み・可動域が改善します。
また、この方法では痛みや可動域制限が増悪することはありません。
この方法をセミナーで指導していますが、受講生の方はほぼ100%近くマスターしていらっしゃいます。
もう1つ寝違えで注意することがあります。
良く何度も寝違えを起こす患者さんがいらっしゃいます。
その場合単なる寝違えなのかどうか検討する必要があると思います。
特に急性期の痛みが緩和しても首の可動域が制限されていたり、上肢に痛みやしびれがある場合は頚椎症や頸椎椎間板ヘルニアの可能性があり、整形外科で検査を受けた方が良いかと思います。
頚椎症や頸椎椎間板ヘルニアでは寝違えと全く別の治療―頸椎のアライメントを調整する治療―を行っております。
薬物治療の副作用として胃の不調や肝機能障害は良く遭遇するものです。
更に最近気になる副作用として抗コリン作用のある薬による認知機能低下があります。
抗コリン作用とはアセチルコリンの働きを抑える作用です。
抗コリン作用にある薬の中に、睡眠薬・抗不安薬が含まれています。
2015年1月JAMA Intern Med誌にウェブ掲載されたアメリカの論文を紹介します。
65才以上の認知症のない高齢者3434名を登録し、平均7.3年の経過観察を行ったとのことです。
その間に23.2%(797名)が認知症を発症し、その中で637名はアルツハイマー病(疑いを含む)と判断されました。
抗コリン作用のある薬を3年以上毎日常用量服用していた人は認知症全体の発症リスクが1.54倍、アルツハイマー病の発症リスクが1.63倍有意に増加していたとのことです。
したがって鍼灸により睡眠薬・抗不安薬を中止することが出来るのであれば非常に価値が高いものになります。
今までの私の経験では睡眠薬を使っていない人で、軽い不眠―少々寝つきが悪い、中途覚醒するなどでは改善し易いです。
患者さんの鍼灸に通う態度は様々ですが、大きく二つに分けることが出来ます。
積極的に通いたい人と出来るだけ通いたくない人です。
積極的に通いたい人に理由を聞くと、症状が楽になること以外に「治療後ぐっすり眠れるから。」という答えを良く耳にします。
不眠症で悩んでいる患者さんはかなり多いです。
明らかな不眠症ではなくても、何となく寝つきが悪いとか、中途覚醒する人も結構いらっしゃいます。
睡眠不足で悪化する疾患としてうつ病・神経症性障害・頭痛・耳鳴などが挙げられます 。
したがって鍼灸により睡眠が改善することは患者満足度を高め、上記疾患の悪化を防ぐ効果も期待できます。
また、睡眠薬・睡眠導入剤の副作用でふらつきや認知機能の低下を訴えている患者さんも少なくありません。
鍼灸で不眠を改善し、薬を減らすことが出来れば、価値が高いと考えられます。