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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

日常生活上喀痰吸引器具を必要とする公立学校の生徒ないしその保護者の控訴人らが,被控訴人に対し,同器具を取得し,その器具を使用に供し得る状態で維持,保管及び整備することを請求し,町教委及び学校長の対応に対し,国賠請求し,いずれも棄却した原判決に対する控訴事案。

 

              公立小中学校における喀痰吸引に必要な器具の確保処分義務付け等請求控訴事件

 名古屋高等裁判所判決/令和2年(行コ)第41号

【判決日付】      令和3年9月3日

【判示事項】      日常生活上喀痰吸引器具を必要とする公立学校の生徒ないしその保護者の控訴人らが,被控訴人に対し,同器具を取得し,その器具を使用に供し得る状態で維持,保管及び整備することを請求し,町教委及び学校長の対応に対し,国賠請求し,いずれも棄却した原判決に対する控訴事案。

控訴審は,町教委が控訴人父母に喀痰吸引器具及び連絡票を持参すべきとしたことに,障害者基本法等の違反はなく,国賠法上違法とはいえず,その他,控訴人らの主張はいずれも採用できず,町教委や学校長の対応は著しく合理性を欠くものではなく,不当な差別的取扱いに当たらないなどとして控訴を棄却した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律

(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)

第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

 

障害者基本法

(差別の禁止)

第四条 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。

2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。

3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

 

行政事件訴訟法

(当事者訴訟)

第四条 この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

 

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴をいずれも棄却する。

 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 被控訴人は,電動式吸引器ほか原判決別紙物件目録記載の喀痰吸引に必要な器具を取得し,その器具を使用に供し得る状態で維持,保管及び整備をせよ。

 3 被控訴人は,控訴人ら各自に対し,110万円及びこれに対する平成30年7月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下,略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。)

 1 本件は,控訴人X1(以下「控訴人父」という。)及び控訴人X2(以下「控訴人母」という。)の子である控訴人X3(以下「控訴人子」という。)が,声門下狭窄症にり患し,カニューレ等を挿管しているところ,控訴人らが,(1)控訴人子が中学校において教育を受けるためには喀痰吸引器具が必要であり,被控訴人には,障害者差別解消法7条2項の規定する合理的な配慮として控訴人子のために喀痰吸引器具を取得し,これを維持,保管及び整備する義務があると主張して,行訴法4条後段の当事者訴訟として,障害者差別解消法7条2項に基づき,原判決別紙物件目録記載の喀痰吸引器具を取得し,その器具を使用に供し得る状態で維持,保管及び整備することを請求するとともに,(2)控訴人子がA小学校に在学中,①町教委が控訴人子の登校の条件として,喀痰吸引器具の準備及びその費用を控訴人父母(控訴人父又は控訴人母の一方又は双方をいう。以下同じ。)の負担とするとともに,控訴人父母に控訴人子の登校日に喀痰吸引器具等を持参するよう求めたこと,②A小学校校長らが,(a)控訴人子の校外学習に控訴人父母の付添いを要求したこと,(b)控訴人子が控訴人父母の付添いなく通学団に参加することができるように通学団の保護者に働きかけを行わなかったこと,(c)控訴人子を水泳の授業に参加させず,又は水泳の授業に高学年用プールを使用しなかったことが障害者基本法4条及び障害者差別解消法7条に違反するなどと主張して,被控訴人に対し,国賠法1条1項に基づき,それぞれ,損害賠償金110万円(慰謝料100万円及び弁護士費用10万円の合計額)及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成30年7月29日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

   原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したところ,控訴人らが控訴した。

第4章 改正の経緯

政府によりますと、今回の刑事訴訟法の改正の最大の柱は取調べの録音・録画の導入による取調べの可視化にあると言われております。従来から日本の刑事手続は過酷な取調べによる自白偏重に問題があるとされてきました。それにより多くの冤罪事件が発生したことも事実です。可視化することによって違法な自白の強要行為の有無が一目瞭然になると言われております。適正・公正な刑事手続を確保する一方、これまで立件、立証が難しかった汚職、詐欺、横領や独禁法違反等の企業犯罪の捜査の効率化を図るためにいわゆる司法取引規定が新設され、組織的窃盗、詐欺や児童ポルノ事件の摘発を目的とした通信傍受の拡充がなされました。これにより「世界一安全な日本創造戦略」(閣議決定)における治安基盤の強化が図られます。

 

司法取引制度は、経済犯罪や組織犯罪の撲滅に向けて非常に有効であるとされていますが、同時に虚偽申告による冤罪の蔓延も懸念されています。

 

なぜ日本において、このような司法取引制度を導入することになったのかその背景をみていきましょう。

 

組織犯罪への対応

導入の背景にあるのは、暴力団などの組織犯罪は、犯罪に関わる上層部の指示や、犯行の関与を証明しようとしても、有力な供述が得られないという難しい実態があるからです。

 

クモの巣のように、張り巡らせた犯罪網は、末端にいる容疑者の関与を認定できても、上層部まで引きずり出すには困難を極めます。司法取引制度は、こうした組織犯罪網を壊滅させる狙いがあります。対象となる犯罪は、詐欺や薬物・銃器犯罪などです。

 

企業犯罪への対応

今回の司法取引制度では、組織犯罪のほかに経済犯罪や企業犯罪も対象にしています。贈収賄や横領罪、背任罪をはじめ、脱税に関する事案などその範囲は非常に広いです。

 

「ホワイトカラー犯罪」と呼ばれる、社会的地位の高い者が自らの権力を利用して行う企業犯罪・経済犯罪は、日本の法律では、一部罰金や、両罰規定はあるものの法律上の罪が問われにくいという性質があります。

 

このような背景から、組織ぐるみの企業犯罪、経済犯罪の解明に向けて、司法取引制度が導入されるというわけです。また日本の取調べ制度では、十分な自白が得られないことも司法取引制度の導入に関係しています。

 

見返りなしに公判協力を求めるのが難しい現状の打破

例えば企業犯罪において、実行犯である従業員から企業の役員、あるいは幹部職員の関与が明らかとなる証拠の獲得は大きな意味を持ちますが、何の見返りもなしに共犯者の捜査・公判への協力を求めるのは非常に難しいことです。そこで協力に対する見返りを与えたのが、本制度の大きな特徴と言えるでしょう。

 

刑事処分における検察官の裁量ジレンマもあった

刑事訴訟法では、検察官には起訴不起訴を決定する幅広い裁量権が認められています(起訴便宜主義)。今回の司法取引制度が導入される以前でも、供述の真意を確認した上で、犯罪の種類・性質によっては、自白や反省の意を示せば「起訴猶予処分」などの求刑が行われていました。

 

ただ、利益の対価を約束して供述を得ることは許されていないため、組織的な犯罪の全容解明に役立つ供述が得られる見込みのある被疑者から十分な供述が得られないというジレンマもあったようです。

 

起訴便宜主義とは

犯罪の証拠が存在していても、犯罪の軽重や情状酌量の余地を検討して不起訴処分とする裁量権を検察官に認める制度のこと。

 

犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法第248条)。

 

なぜこれまで司法取引制度は導入されなかったのか?

これまで司法取引が認められていなかった理由として、証拠への信憑性が損なわれるという懸念がありました。

 

捜査機関が被疑者に対して利益を与える約束をし、捜査・公判協力を求めることは、刑事事件における事実認定のための証拠に信憑性が乏しく、捜査官の意に沿う形での虚偽が含まれるなどの可能性が相当数あるとされたのも理由の1つです。

 

裁判においても「被疑者が、起訴不起訴の決定権をもつ検察官の、自白をすれば起訴猶予にする旨のことばを信じ、起訴猶予になることを期待してした自白は、任意性に疑いがあるものとして、証拠能力を欠くものと解するのが相当である」という解釈が定着しています。

裁判所名 最高裁第二小法廷昭和41年 7月 1日判決

事件番号 昭40(あ)1968号?

事件名 収賄被告事件

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集20巻6号537頁

          最高裁判所裁判集刑事160号1頁

          判例タイムズ196号149頁

          判例時報457号63頁

 

つまり、実際の供述内容が信用できるかを判断するまでもなく、約束に基づいているという事実があっただけで証拠として使用することができないと判断されてきたわけです。

 

代理行為の相手方の悪意または過失と民法第109条の責任の有無

 

 

根抵当権設定登記抹消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和39年(オ)第264号

【判決日付】      昭和41年4月22日

【判示事項】      1 代理行為の相手方の悪意または過失と民法第109条の責任の有無

             2 民法第109条の表見代理行為の相手方に過失があるとされた事例

【判決要旨】      1 民法第109条の代理権授与表示者が、代理行為の相手方の悪意または過失を主張・立証した場合には、同条所定の責任を免れることができる。

             2 甲が代理権を乙に授与した旨表示し、乙が、甲の代理人として、丙と甲所有の不動産について根抵当権を設定する旨の契約を締結した場合において、乙が右不動産の権利証、甲の白紙委任状及び印鑑証明書等を所持していたとしても、右契約は乙が代表取締役である丁会社の丙に対する債務を担保する目的で締結されたものであり、丙は右不動産を評価する目的で甲方を訪れたことがあるのに、乙の権限について確かめなかつた等判示のような事情があるときは、丙が乙に右契約締結の代理権があると信じたことには過失があるというべきである。

【参照条文】      民法109

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集20巻4号752頁

 

民法

(代理権授与の表示による表見代理等)

第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

 

 

町とその区域内に産業廃棄物処理施設を設置している産業廃棄物処分業者とが締結した公害防止協定における,上記施設の使用期限の定め及びその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨の定めは,廃棄物処理法の趣旨に反するか

 

 

産業廃棄物最終処分場使用差止請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成19年(受)第1163号

【判決日付】      平成21年7月10日

【判示事項】      町とその区域内に産業廃棄物処理施設を設置している産業廃棄物処分業者とが締結した公害防止協定における,上記施設の使用期限の定め及びその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨の定めは,廃棄物処理法の趣旨に反するか

【判決要旨】      町とその区域内に産業廃棄物処理施設を設置している産業廃棄物処分業者とが締結した公害防止協定における,上記施設の使用期限の定め及びその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨の定めは,これらの定めにより,廃棄物処理法に基づき上記業者が受けた知事の許可が効力を有する期間内にその事業又は施設が廃止されることがあったとしても,同法の趣旨に反しない。

【参照条文】      民法91

             民法3編2章(契約)

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律7の2-3

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律9-3

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律14の2-3

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律15の2の5-3

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事231号273頁

 

1 事案の概要

 (1)本件は,旧A町の地位を合併により承継したX市が,Aの区域内にあった土地(本件土地)に産業廃棄物の最終処分場(本件処分場)を設置している産業廃棄物処分業者(処分業者)Yに対し,A,Y間の公害防止協定で定められた本件処分場の使用期限が経過したと主張して,同協定に基づく義務の履行として,本件土地を本件処分場として使用することの差止めを求める事案である。

 (2)事実関係の概要は,次のとおりである。

 ア Yは,Aとの間で,平成7年7月,本件処分場につき公害防止協定(旧協定)を締結した。旧協定は,前文において施設の規模等やその使用期限を定め,12条において,Yは上記期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨を定めていた(上記使用期限の定めと12条の定めを併せて「旧期限条項」という)。

 イ Yは,知事から,処理施設の変更許可を受けたのに伴い,Aとの間で,平成10年9月,本件処分場につき,改めて公害防止協定(本件協定)を締結した。本件協定は,前文中の施設の規模を,上記変更許可に沿うよう改めたものであり,その内容は,付随的な事項に関する若干の条項が加えられた以外は,旧協定と異なるところはない(本件協定中の旧期限条項と同内容の定めを「本件期限条項」という)。

 ウ Yは,上記使用期限の経過後である現在も,本件土地に設置した本件処分場を使用している。

 (3)原判決は,「廃棄物処理法は,種々の許可権限等を知事にゆだねている。旧期限条項が法的拘束力を有するとすれば,本件処分場に係る知事の許可に期限を付するか,その取消しの時期を予定するに等しいこととなるが,そのような事柄は知事の専権であり,旧期限条項は,同法の趣旨に沿わない。」などと判示した上,旧期限条項及びこれと同旨の定めである本件期限条項に法的拘束力を認めることはできないとし,Xの請求を棄却した。

 (4)これに対し,本判決は,①まず,旧協定締結当時の廃棄物処理法が定める知事の権限等に関する規定の趣旨からすれば,知事の許可は,処分業者に対し,許可が有効な限り事業や処理施設の使用を継続すベき義務を課すものではないこと,処分業者による事業や処理施設の廃止は,知事への届出で足りるとされていることなどからすれば,処分業者が,公害防止協定において,事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは,処分業者の自由な判断で行えることであり,その結果,許可が有効な間に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても,同法に抵触しない旨述べて,旧期限条項は同法の趣旨に反しないとした。②そして,そのような同法の趣旨,内容は,その後の改正でも変更されていないから,本件期限条項が本件協定締結当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできないとした上で,原審の判示するような理由によって本件期限条項の法的拘束力を否定することはできない旨判示して,原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻した。

 

 

 

民法

(任意規定と異なる意思表示)

第九十一条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

 

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

(変更の許可等)

第七条の二 一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者は、その一般廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは、市町村長の許可を受けなければならない。ただし、その変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。

2 前条第五項及び第十一項の規定は、収集又は運搬の事業の範囲の変更に係る前項の許可について、同条第十項及び第十一項の規定は、処分の事業の範囲の変更に係る前項の許可について準用する。

3 一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者は、その一般廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業の全部若しくは一部を廃止したとき、又は住所その他環境省令で定める事項を変更したときは、環境省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。

4 一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者は、前条第五項第四号ロからトまで又はリからルまで(同号リからルまでに掲げる者にあつては、同号イ又はチに係るものを除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、環境省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。

5 一般廃棄物収集運搬業者若しくは一般廃棄物処分業者又はこれらの者の前条第五項第四号リに規定する法定代理人、同号ヌに規定する役員若しくは使用人若しくは同号ルに規定する使用人が、同号イに該当するおそれがあるものとして環境省令で定める者に該当するに至つたときも、前項と同様とする。

 

(変更の許可等)

第九条 第八条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る同条第二項第四号から第七号までに掲げる事項の変更をしようとするときは、環境省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、その変更が環境省令で定める軽微な変更であるときは、この限りでない。

2 第八条第三項から第六項まで及び第八条の二第一項から第四項までの規定は、前項の許可について、同条第五項の規定は、前項の許可を受けた者について、同条第六項の規定は、前項の許可の申請に対し当該都道府県知事が行う処分について、同条第七項の規定は、この項の規定により準用する同条第五項の規定に基づき都道府県知事が行う検査について準用する。

3 第八条第一項の許可を受けた者は、第一項ただし書の環境省令で定める軽微な変更をしたとき、若しくは同条第二項第一号に掲げる事項その他環境省令で定める事項に変更があつたとき、又は当該許可に係る一般廃棄物処理施設(一般廃棄物の最終処分場であるものを除く。)を廃止したとき、若しくは一般廃棄物処理施設を休止し、若しくは休止した当該一般廃棄物処理施設を再開したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

4 第八条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る一般廃棄物処理施設が一般廃棄物の最終処分場である場合において、当該最終処分場に係る埋立処分(地中にある空間を利用する処分の方法を含む。以下同じ。)が終了したときは、その終了した日から三十日以内に、環境省令で定めるところにより、その旨及びその他環境省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。

5 第八条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る一般廃棄物処理施設が一般廃棄物の最終処分場である場合においては、環境省令で定めるところにより、あらかじめ当該最終処分場の状況が環境省令で定める技術上の基準に適合していることについて都道府県知事の確認を受けたときに限り、当該最終処分場を廃止することができる。

6 第八条第一項の許可を受けた者は、第七条第五項第四号ロからトまで又はリからルまで(同号リからルまでに掲げる者にあつては、同号イ又はチに係るものを除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

7 第八条第一項の許可を受けた者又はその者の第七条第五項第四号リに規定する法定代理人、同号ヌに規定する役員若しくは使用人若しくは同号ルに規定する使用人が、同号イに該当するおそれがあるものとして環境省令で定める者に該当するに至つたときも、前項と同様とする。

 

(変更の許可等)

第十四条の二 産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は、その産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、その変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。

2 前条第五項及び第十一項の規定は、収集又は運搬の事業の範囲の変更に係る前項の許可について、同条第十項及び第十一項の規定は、処分の事業の範囲の変更に係る前項の許可について準用する。

3 第七条の二第三項から第五項までの規定は、産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者について準用する。この場合において、同条第三項中「一般廃棄物の」とあるのは「産業廃棄物の」と、「市町村長」とあるのは「都道府県知事」と、同条第四項中「前条第五項第四号ロからトまで又はリからルまで(同号リからルまでに掲げる者にあつては、同号イ又はチ」とあるのは「第十四条第五項第二号イ(前条第五項第四号イ又はチに係るものを除く。)又は第十四条第五項第二号ハからホまで(前条第五項第四号イ若しくはチ又は第十四条第五項第二号ロ」と、「市町村長」とあるのは「都道府県知事」と、同条第五項中「前条第五項第四号リ」とあるのは「第十四条第五項第二号ハ」と、「同号ヌ」とあるのは「同号ニ」と、「同号ル」とあるのは「同号ホ」と、「同号イ」とあるのは「同号イ(前条第五項第四号イに係るものに限る。)」と読み替えるものとする。

4 産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の全部又は一部を廃止した者であつて当該事業に係る産業廃棄物の収集、運搬又は処分を終了していないものは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、事業の全部又は一部を廃止した旨を当該収集、運搬又は処分を終了していない産業廃棄物の収集、運搬又は処分を委託した者に書面により通知しなければならない。

5 前項の規定による通知をした者は、当該通知の写しを当該通知の日から環境省令で定める期間保存しなければならない。

 

(産業廃棄物処理施設の維持管理等)

第十五条の二の三 産業廃棄物処理施設の設置者は、環境省令で定める技術上の基準及び当該産業廃棄物処理施設の許可に係る第十五条第二項の申請書に記載した維持管理に関する計画(当該計画について第十五条の二の六第一項の許可を受けたときは、変更後のもの。次項において同じ。)に従い、当該産業廃棄物処理施設の維持管理をしなければならない。

2 産業廃棄物処理施設の設置者(第十五条第四項に規定する産業廃棄物処理施設について同条第一項の許可を受けた者に限る。)は、当該産業廃棄物処理施設の維持管理に関する計画及び当該産業廃棄物処理施設の維持管理の状況に関する情報であつて環境省令で定める事項について、環境省令で定めるところにより、インターネットの利用その他の適切な方法により公表しなければならない。

 

会社の従業員がその所有自動車を運転し会社の工場現場から自宅に帰る途中で起こした事故につき会社に自動車損害賠償保障法3条による運行供用者責任が認められた事例


    損害賠償請求事件
【事件番号】    最高裁判所第1小法廷/昭和52年(オ)第1075号
【判決日付】    昭和52年12月22日
【判示事項】    会社の従業員がその所有自動車を運転し会社の工場現場から自宅に帰る途中で起こした事故につき会社に自動車損害賠償保障法3条による運行供用者責任が認められた事例
【判決要旨】    会社の従業員が通勤のため利用しているその所有自動車を運転し、会社の工事現場から自宅に帰る途中で事故を起こした場合において、従業員がその所有自動車を会社の承認又は指示のもとに会社又は自宅と工事現場との間の往復等会社業務のためにもしばしば利用し、その利用に対して会社から手当が支給されており、事故当日右従業員が右自動車で工事現場に出かけたのも会社の指示に基づくものであるなど、判示の事情があるときは、会社は、右事故につき、自動車損害賠償保障法三条による運行供用者責任を負う。
【参照条文】    自動車損害賠償保障法3
【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事122号565頁
          判例時報878号60頁


自動車損害賠償保障法
(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

       主   文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人和智昂、同和智龍一、同竹原重夫、同松崎隆の上告理由について
 上告人会社熊本営業所に属する内線工の大半は、単車等の自家用車を有し、これを通勤のため使用するほか、しばしば営業所から、また、上司の指示があるときは自宅から工事現場への往復にも利用し、そのさいには自家用車を持たない同僚を同乗させることも多く、上告人会社は右利用を承認して走行距離に応じたガソリン手当及び損料の趣旨で単車手当を支給し、内線工のひとりである訴外赤星清巳も同様に自己所有の単車を通勤及び業務のため利用していたところ、同訴外人は事故前日及び当日、上司に自宅から直接工事現場へ出勤するよう指示され、指示どおり出勤し業務に従事し、事故当日午後一〇時ごろその日の仕事を終り右単車で帰宅することになったが、そのさい営業所近くの上告人会社の寮に帰る同僚を右単車に同乗させ、営業所で同僚を降ろし、そこから自宅へ帰る途中で本件事故を起こしたものであるなど、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人会社は事故当時における右訴外人の単車の運行について運行支配と運行利益を有し、被上告人に対し自賠法三条に基づく損害賠償責任を負う旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 

出張先の同じ現場で働いていた者の送別会に出席し、飲酒して宿舎に帰った後行方不明にとなり、後日近くの川で溺死しているのが発見された事故につき、本件会合の趣旨および開催の経緯からすれば、本件会合への参加に業務遂行性があるとは認められないとされた例

 

東京地方裁判所判決/平成11年(行ウ)第4号

平成11年8月9日

遺族補償費等不支給処分取消請求事件

【判示事項】    一 出張先の同じ現場で働いていた者の送別会に出席し、飲酒して宿舎に帰った後行方不明にとなり、後日近くの川で溺死しているのが発見された事故につき、本件会合の趣旨および開催の経緯からすれば、本件会合への参加に業務遂行性があるとは認められないとされた例

二 右災害は業務と関連のない、自己の意思に基づく私的行為により、自ら招来した事故によるものであるとして、業務起因性が否定された例

【掲載誌】     労働判例767号22頁

 

労働者災害補償保険法

第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

二 複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。以下同じ。)の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)に関する保険給付(前号に掲げるものを除く。以下同じ。)

三 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

四 二次健康診断等給付

② 前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

一 住居と就業の場所との間の往復

二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

③ 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

 

事案の概要

(1)事業主の命令により、発電所への長期出張中、ボイラー関係試験の試験員(補助)の業務に従事していた原告の息子Aが、同じ現場で働いていた者の送別会に出席して飲酒し、宿舎に帰った後行方不明となり、四日後、近くの川で溺死しているのが発見された。そこで、原告がAの死亡は業務に起因するものであると主張して、労災保険法に基づき被告に対して遺族補償一時金および葬祭料の支給を請求したが、これを支給しない旨の処分を受けたため、その取消しを求めた。

(2)判決は、本件会合が、いっしょに什事をした他社従業員の送別会であり、有志の企画、任意の参加、勤務終了後に会費制、幹事による開会の挨拶や閉会の挨拶なしの流れ解散という趣旨および開催の経緯からすれば、参加に業務遂行性があるとは認められないとした。

 また判決は、原告による、(1)Aは過重な業務により、精神異常を来していたものであり、本件災害と業務との問に相当因果関係が存在する、(2)極度の疲労が蓄槓された状態にあったため、飲酒したことにより病的酩酊となって異常な行動に及び、本件災害に至ったので本件災害の業務起因性が認められる、という主張についても、本件会合での飲酒によって中等度の酩酊状態となっていたものと認められ、その後入浴したことにより酔いが増幅され、自らの意思に基づき全裸のまま外出し、知覚鈍麻の状態で川に滑り落ち、運動失調の状態からそのまま溺死するに至ったものと認められることから、本件災害はAの業務とは関係のない自己の意思に基づく行為により自ら招来した事故によるものであって、業務起因性は否定される等として、原告の請求を棄却した。

 

『現代教育法』 2023/3/22

植野 妙実子 (編集, 著), 宮盛 邦友 (編集, 著)

 

単行本(ソフトカバー)

¥3,300

 

子どもの貧困、学校事故、学問の自由などの今日的課題を手がかりに、教育法学に対して学際的アプローチを試みた意欲的教科書。

 

 

著者について

植野 妙実子 (うえの・まみこ) 中央大学名誉教授

宮盛 邦友 (みやもり・くにとも) 学習院大学准教授

 

登録情報

出版社 ‏ : ‎ 日本評論社 (2023/3/22)

発売日 ‏ : ‎ 2023/3/22

言語 ‏ : ‎ 日本語

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 266ページ

ISBN-10 ‏ : ‎ 4535526702

 

コメント

意外に思ったのは、教育法に関する裁判例が少ないことである。

会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法265条にいう取引

 

 

              約束手形金請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和42年(オ)第1464号

【判決日付】      昭和46年10月13日

【判示事項】      1、会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法265条にいう取引

             2、商法265条に違反して会社が振り出した約束手形を取得した第三者に対する会社の手形責任

【判決要旨】      1、会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法265条にいう取引にあたる。

             2、会社は、商法265条に違反して振り出した約束手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が会社からその取締役にあてて振り出され、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。

             (1、2につき補足意見および意見がある。)

【参照条文】      商法265

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集25巻7号900頁

 

会社法

(競業及び利益相反取引の制限)

第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。

 

(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)

第三百六十五条 取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

2 取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

 

第3章 司法取引制度と刑事免責制度について

 2018年(平成30年)6月1日から、2016年(平成28年)に改正された刑事訴訟法の一部が施行されることとなり、新たに司法取引制度と刑事免責制度が導入されました(その他、国選弁護対象事件の拡大という改正点もありますが、今回は省略します)。

企業犯罪の摘発に主眼を置いているとも思われる日本版「司法取引」の規定が新設されております。今回は改正概要と司法取引規定について見ていきたいと思います。

 

 まず司法取引制度ですが、「司法取引」という単語からは、“(アメリカ流の)自分が罪を犯したことを認める代わりに減刑を求める”といったものを想像しがちですが、今回日本で導入された司法取引制度は、これとは異なります。

具体的には、“被疑者・被告人が、他人の犯罪についての捜査・公判に協力することと引き換えに、弁護人の同意のもと、検察官が協力した被疑者・被告人に恩典を付与することを合意する”という内容です。自分の罪を認めるのではなく、標的者の事件の捜査・公判に協力することと引き換えに恩恵を受けることから、捜査公判協力型司法取引と表現されることがあります。

なお、合意の主体は協力者たる被疑者・被告人と検察官であり、かつ、弁護人の同意が必要とされています。

 この司法取引は、どのような事件でも可能というわけではなく、刑事訴訟法が「特定犯罪」と規定する犯罪に限って認められます(刑事訴訟法350条の2第2項)。該当する犯罪を逐一挙げることはしませんが、生命・身体に対する犯罪では適用されず、組織的犯罪や財政経済犯罪に適用されることが多いというイメージです。

これらの「特定犯罪」に関して、協力者が、①標的者の刑事事件について被疑者・参考人としての取調べで真実の供述をする、②標的者の刑事事件の証人尋問で真実の供述をする、③標的者の刑事事件について証拠提出その他の証拠収集に必要な協力をする、という内容の協力をすることと引き換えに、協力者の刑事事件の検察官が、協力者の事件に関して(ア)不起訴処分や(イ)公訴取消、(ウ)特定の訴因や罰条での起訴とその維持等を行うことを合意するというものです。

このような司法取引制度については、例えば合意権限のない司法警察職員が、協力者に対して司法取引の「提案」を行った場合に、協力者が検察官と合意をしたつもりになって標的者の刑事事件の捜査・公判に協力をするといったことがないように、協力者の弁護人は、制度の正確な情報を教示することが必要となります。また、協力者の協力内容が虚偽であることが判明した場合等には、合意は解消されることになりますが、その真実性の見極めも必要になります。更に、標的者の弁護人の立場としては、司法取引によって標的者に不利な証言が出てくることになりますので、その証拠評価を慎重に行わなければならないでしょう。

もっとも、最終的な判決内容は裁判所が決めるわけですし、検察官が上記の(ア)から(ウ)等の恩典を与えたとしても、裁判所がそれに拘束される訳ではありません。ですから、弁護人に就任している被疑者・被告人に対して司法取引の余地がある場合は、その辺りのデメリットついても説明を行った上で、司法取引に応じるかどうかを相談する必要がありそうです。

 

 次に、刑事免責制度は、証人から刑事訴訟法で認められる証言拒絶権を剥奪して、事実上証言を強制させる(宣誓拒絶罪や証言拒否罪、偽証罪の適用範囲とする)代わりに、そこで得られた証言内容や、その証言を基にして得られた派生証拠については、当該証人の刑事事件において証拠として使用することを禁止するというものです。証言拒絶権とは、「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。」という形で法律に規定があり(法146条)、憲法38条1項の自己負罪拒否特権に由来する重要な権利ですが、これを制限するというものです。

 この刑事免責制度は、検察官が裁判所に対して証人の証言拒絶権を剥奪する条件で尋問を行うことを請求し、裁判所がこれを認める決定を行うという形でなされるものですから、司法取引のように、被疑者・被告人と検察官が合意をするといった形で活用されるものではありません。また、司法取引のように、「特定犯罪」に限り認められるものでもありませんから、今後も検察の側から利用される頻度は高くなると思われます。

 なお、刑事免責制度の適用があったとしても、証言をした人物が必ず無罪となるわけではなく、他の証拠から有罪認定が可能な場合は有罪判決を受けることがあります(実際に、刑事免責が初適用された事件では、証言を行った人物は自身の事件で有罪判決を受けているようです)。また証言内容は自身の刑事事件において有罪の証拠としては使用されませんが、民事事件における利用は制限されないということに注意が必要です。

弁護人としての立場で考えると、例えば自分が担当する事件の被疑者・被告人との間で、弁護方針として黙秘を貫いている場合に、他人の事件の証人として呼ばれ、刑事免責の適用を受けるといった場合には、そこでの証言を強制されることになりますので、対応に工夫が必要になるなという点が気になるところです。

 

 以上のような司法取引制度や刑事免責制度については、法律の条文上も若干複雑な部分がありますので、刑事弁護を業務内容としている弁護士にとっては、日々研鑽を積み重ねていかなければならないところです。

 

今回の改正の目玉とも言うべき合意制度についてもう少し詳しく見ていきます。改正刑事訴訟法350条の2各項によりますと、①特定の犯罪において②「他人の刑事事件」に関し③取調べで供述、公判等で証言、証拠の提出等を行い④それに対して不起訴、公訴取消、特定の訴因・罰条の加減、略式・即決手続に付する等の合意をすることができます。この合意をするに当たっては、それにより得られる情報、証拠の重要性、犯罪への関連性、犯罪の重大性等を考慮して必要性を判断することになります。またこの合意をするためには弁護人の同意も必要となります(350条の3第1項)。そして対象となる特定の犯罪とは、汚職や横領等の刑法犯(350条の2第2項1号)、組織犯罪処罰法違反(同2号)の他に租税法、独禁法、金商法が挙げられております(同3号)。3号の企業犯罪に関しては「その他・・・政令で定めるもの」として今後も随時追加されていくことが予定されております。

 

代物弁済予約形式の債権担保契約における債権者の清算義務と目的物の賃借権社の地位

 

 

              所有権移転登記手続請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和47年(オ)第74号

【判決日付】      昭和47年9月22日

【判示事項】      代物弁済予約形式の債権担保契約における債権者の清算義務と目的物の賃借権社の地位

【判決要旨】      代物弁済予約形式の債権担保契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者が、予約完結権を行使したうえ、担保目的実現の手段として本登記をするため、後順位で目的物につき賃借権の登記をしている賃借権者に対し、その承諾を訴求する場合においては、賃借権者は、右債権者に対し清算金と引換えにのみ、本登記の承諾義務の履行をなすべき旨を主張することはできない。

【参照条文】      民法369

             民法482

             不動産登記法

             不動産登記法105

             不動産登記法146

【掲載誌】        金融法務事情666号27頁

 

 

事案の概要

 本件事案は次のようなものと思われる。XはAに対し貸金債権を有し、これが債権を担保するため、A所有の本件土地建物につき代物弁済の予約がなされた。そして、これが予約に基づき、Xは右土地建物につき所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。その後Aは右土地建物につきYのため賃借権を設定し、賃借権の登記が経由された。AはXに対し右債務の弁済をしないので、Xは、代物弁済の予約完結の意思表示をし、右仮登記に基づく本登記をAに対して請求し、そして、Yが右本登記をするについての登記上の利害関係人であるので、Yに対し右本登記をするについての承諾を求める。これに対し、Yは、自分はAに対し債権を有し、その債権担保のため右の賃借権を設定したのであるから、抵当権者に準じ、Xに対し清算金中自分に支払うべき金銭の支払と引換えにのみ承諾すべき義務があるにすぎないと争つたものである。

 

 

民法

(代物弁済)

第四百八十二条 弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

 

不動産登記法

(仮登記に基づく本登記)

第百九条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。

 

       判 決 理 由

 

上告代理人阿部甚吉、同滝井繁男、同木ノ宮圭造、同阿部泰章、同仲田隆明の上告理由について。

 上告人の第一審判決別紙第一目録記載の土地、建物(本件物件)についての賃借権は、その利用価値の取得を目的とするものである旨の原審の認定判断は、原判決の挙示する証拠関係に照らして首肯するに足り、その過程に所論の違法はなく、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の右賃借権の登記は、被上告人ら先代滝川□の本件物件についての代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記におくれるところ、□は、適法に右予約の完結をしたものであり、そして、被上告人らが右仮登記に基づく所有権移転の本登記手続を経由したのちは、上告人は右賃借権をもつて被上告人らに対抗することができないから、上告人は、被上告人らに対し、被上告人らが右本登記手続をするについて承諾を与え、右本登記手続が経由されることを条件として本件建物を明け渡し、第一審判決別紙第二目録記載の建物を収去してその敷地を明け渡すべき義務があり、上告人は、右義務の履行につき、被上告人らに対して清算金の引換給付を求めえないものというべきであつて、これと同一結論の原判決は正当として是認するに足りる。それゆえ、論旨は採用することができない。(裁判長裁判官 岡原昌男裁判官 色川幸太郎・村上朝一・小川信雄)