代理行為の相手方の悪意または過失と民法第109条の責任の有無
根抵当権設定登記抹消請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和39年(オ)第264号
【判決日付】 昭和41年4月22日
【判示事項】 1 代理行為の相手方の悪意または過失と民法第109条の責任の有無
2 民法第109条の表見代理行為の相手方に過失があるとされた事例
【判決要旨】 1 民法第109条の代理権授与表示者が、代理行為の相手方の悪意または過失を主張・立証した場合には、同条所定の責任を免れることができる。
2 甲が代理権を乙に授与した旨表示し、乙が、甲の代理人として、丙と甲所有の不動産について根抵当権を設定する旨の契約を締結した場合において、乙が右不動産の権利証、甲の白紙委任状及び印鑑証明書等を所持していたとしても、右契約は乙が代表取締役である丁会社の丙に対する債務を担保する目的で締結されたものであり、丙は右不動産を評価する目的で甲方を訪れたことがあるのに、乙の権限について確かめなかつた等判示のような事情があるときは、丙が乙に右契約締結の代理権があると信じたことには過失があるというべきである。
【参照条文】 民法109
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集20巻4号752頁
民法
(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。