町とその区域内に産業廃棄物処理施設を設置している産業廃棄物処分業者とが締結した公害防止協定におけ | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属

町とその区域内に産業廃棄物処理施設を設置している産業廃棄物処分業者とが締結した公害防止協定における,上記施設の使用期限の定め及びその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨の定めは,廃棄物処理法の趣旨に反するか

 

 

産業廃棄物最終処分場使用差止請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成19年(受)第1163号

【判決日付】      平成21年7月10日

【判示事項】      町とその区域内に産業廃棄物処理施設を設置している産業廃棄物処分業者とが締結した公害防止協定における,上記施設の使用期限の定め及びその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨の定めは,廃棄物処理法の趣旨に反するか

【判決要旨】      町とその区域内に産業廃棄物処理施設を設置している産業廃棄物処分業者とが締結した公害防止協定における,上記施設の使用期限の定め及びその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨の定めは,これらの定めにより,廃棄物処理法に基づき上記業者が受けた知事の許可が効力を有する期間内にその事業又は施設が廃止されることがあったとしても,同法の趣旨に反しない。

【参照条文】      民法91

             民法3編2章(契約)

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律7の2-3

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律9-3

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律14の2-3

             廃棄物の処理及び清掃に関する法律15の2の5-3

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事231号273頁

 

1 事案の概要

 (1)本件は,旧A町の地位を合併により承継したX市が,Aの区域内にあった土地(本件土地)に産業廃棄物の最終処分場(本件処分場)を設置している産業廃棄物処分業者(処分業者)Yに対し,A,Y間の公害防止協定で定められた本件処分場の使用期限が経過したと主張して,同協定に基づく義務の履行として,本件土地を本件処分場として使用することの差止めを求める事案である。

 (2)事実関係の概要は,次のとおりである。

 ア Yは,Aとの間で,平成7年7月,本件処分場につき公害防止協定(旧協定)を締結した。旧協定は,前文において施設の規模等やその使用期限を定め,12条において,Yは上記期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨を定めていた(上記使用期限の定めと12条の定めを併せて「旧期限条項」という)。

 イ Yは,知事から,処理施設の変更許可を受けたのに伴い,Aとの間で,平成10年9月,本件処分場につき,改めて公害防止協定(本件協定)を締結した。本件協定は,前文中の施設の規模を,上記変更許可に沿うよう改めたものであり,その内容は,付随的な事項に関する若干の条項が加えられた以外は,旧協定と異なるところはない(本件協定中の旧期限条項と同内容の定めを「本件期限条項」という)。

 ウ Yは,上記使用期限の経過後である現在も,本件土地に設置した本件処分場を使用している。

 (3)原判決は,「廃棄物処理法は,種々の許可権限等を知事にゆだねている。旧期限条項が法的拘束力を有するとすれば,本件処分場に係る知事の許可に期限を付するか,その取消しの時期を予定するに等しいこととなるが,そのような事柄は知事の専権であり,旧期限条項は,同法の趣旨に沿わない。」などと判示した上,旧期限条項及びこれと同旨の定めである本件期限条項に法的拘束力を認めることはできないとし,Xの請求を棄却した。

 (4)これに対し,本判決は,①まず,旧協定締結当時の廃棄物処理法が定める知事の権限等に関する規定の趣旨からすれば,知事の許可は,処分業者に対し,許可が有効な限り事業や処理施設の使用を継続すベき義務を課すものではないこと,処分業者による事業や処理施設の廃止は,知事への届出で足りるとされていることなどからすれば,処分業者が,公害防止協定において,事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは,処分業者の自由な判断で行えることであり,その結果,許可が有効な間に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても,同法に抵触しない旨述べて,旧期限条項は同法の趣旨に反しないとした。②そして,そのような同法の趣旨,内容は,その後の改正でも変更されていないから,本件期限条項が本件協定締結当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできないとした上で,原審の判示するような理由によって本件期限条項の法的拘束力を否定することはできない旨判示して,原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻した。

 

 

 

民法

(任意規定と異なる意思表示)

第九十一条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

 

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

(変更の許可等)

第七条の二 一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者は、その一般廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは、市町村長の許可を受けなければならない。ただし、その変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。

2 前条第五項及び第十一項の規定は、収集又は運搬の事業の範囲の変更に係る前項の許可について、同条第十項及び第十一項の規定は、処分の事業の範囲の変更に係る前項の許可について準用する。

3 一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者は、その一般廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業の全部若しくは一部を廃止したとき、又は住所その他環境省令で定める事項を変更したときは、環境省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。

4 一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者は、前条第五項第四号ロからトまで又はリからルまで(同号リからルまでに掲げる者にあつては、同号イ又はチに係るものを除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、環境省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。

5 一般廃棄物収集運搬業者若しくは一般廃棄物処分業者又はこれらの者の前条第五項第四号リに規定する法定代理人、同号ヌに規定する役員若しくは使用人若しくは同号ルに規定する使用人が、同号イに該当するおそれがあるものとして環境省令で定める者に該当するに至つたときも、前項と同様とする。

 

(変更の許可等)

第九条 第八条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る同条第二項第四号から第七号までに掲げる事項の変更をしようとするときは、環境省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、その変更が環境省令で定める軽微な変更であるときは、この限りでない。

2 第八条第三項から第六項まで及び第八条の二第一項から第四項までの規定は、前項の許可について、同条第五項の規定は、前項の許可を受けた者について、同条第六項の規定は、前項の許可の申請に対し当該都道府県知事が行う処分について、同条第七項の規定は、この項の規定により準用する同条第五項の規定に基づき都道府県知事が行う検査について準用する。

3 第八条第一項の許可を受けた者は、第一項ただし書の環境省令で定める軽微な変更をしたとき、若しくは同条第二項第一号に掲げる事項その他環境省令で定める事項に変更があつたとき、又は当該許可に係る一般廃棄物処理施設(一般廃棄物の最終処分場であるものを除く。)を廃止したとき、若しくは一般廃棄物処理施設を休止し、若しくは休止した当該一般廃棄物処理施設を再開したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

4 第八条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る一般廃棄物処理施設が一般廃棄物の最終処分場である場合において、当該最終処分場に係る埋立処分(地中にある空間を利用する処分の方法を含む。以下同じ。)が終了したときは、その終了した日から三十日以内に、環境省令で定めるところにより、その旨及びその他環境省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。

5 第八条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る一般廃棄物処理施設が一般廃棄物の最終処分場である場合においては、環境省令で定めるところにより、あらかじめ当該最終処分場の状況が環境省令で定める技術上の基準に適合していることについて都道府県知事の確認を受けたときに限り、当該最終処分場を廃止することができる。

6 第八条第一項の許可を受けた者は、第七条第五項第四号ロからトまで又はリからルまで(同号リからルまでに掲げる者にあつては、同号イ又はチに係るものを除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

7 第八条第一項の許可を受けた者又はその者の第七条第五項第四号リに規定する法定代理人、同号ヌに規定する役員若しくは使用人若しくは同号ルに規定する使用人が、同号イに該当するおそれがあるものとして環境省令で定める者に該当するに至つたときも、前項と同様とする。

 

(変更の許可等)

第十四条の二 産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は、その産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、その変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。

2 前条第五項及び第十一項の規定は、収集又は運搬の事業の範囲の変更に係る前項の許可について、同条第十項及び第十一項の規定は、処分の事業の範囲の変更に係る前項の許可について準用する。

3 第七条の二第三項から第五項までの規定は、産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者について準用する。この場合において、同条第三項中「一般廃棄物の」とあるのは「産業廃棄物の」と、「市町村長」とあるのは「都道府県知事」と、同条第四項中「前条第五項第四号ロからトまで又はリからルまで(同号リからルまでに掲げる者にあつては、同号イ又はチ」とあるのは「第十四条第五項第二号イ(前条第五項第四号イ又はチに係るものを除く。)又は第十四条第五項第二号ハからホまで(前条第五項第四号イ若しくはチ又は第十四条第五項第二号ロ」と、「市町村長」とあるのは「都道府県知事」と、同条第五項中「前条第五項第四号リ」とあるのは「第十四条第五項第二号ハ」と、「同号ヌ」とあるのは「同号ニ」と、「同号ル」とあるのは「同号ホ」と、「同号イ」とあるのは「同号イ(前条第五項第四号イに係るものに限る。)」と読み替えるものとする。

4 産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の全部又は一部を廃止した者であつて当該事業に係る産業廃棄物の収集、運搬又は処分を終了していないものは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、事業の全部又は一部を廃止した旨を当該収集、運搬又は処分を終了していない産業廃棄物の収集、運搬又は処分を委託した者に書面により通知しなければならない。

5 前項の規定による通知をした者は、当該通知の写しを当該通知の日から環境省令で定める期間保存しなければならない。

 

(産業廃棄物処理施設の維持管理等)

第十五条の二の三 産業廃棄物処理施設の設置者は、環境省令で定める技術上の基準及び当該産業廃棄物処理施設の許可に係る第十五条第二項の申請書に記載した維持管理に関する計画(当該計画について第十五条の二の六第一項の許可を受けたときは、変更後のもの。次項において同じ。)に従い、当該産業廃棄物処理施設の維持管理をしなければならない。

2 産業廃棄物処理施設の設置者(第十五条第四項に規定する産業廃棄物処理施設について同条第一項の許可を受けた者に限る。)は、当該産業廃棄物処理施設の維持管理に関する計画及び当該産業廃棄物処理施設の維持管理の状況に関する情報であつて環境省令で定める事項について、環境省令で定めるところにより、インターネットの利用その他の適切な方法により公表しなければならない。