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会社の従業員がその所有自動車を運転し会社の工場現場から自宅に帰る途中で起こした事故につき会社に自動車損害賠償保障法3条による運行供用者責任が認められた事例


    損害賠償請求事件
【事件番号】    最高裁判所第1小法廷/昭和52年(オ)第1075号
【判決日付】    昭和52年12月22日
【判示事項】    会社の従業員がその所有自動車を運転し会社の工場現場から自宅に帰る途中で起こした事故につき会社に自動車損害賠償保障法3条による運行供用者責任が認められた事例
【判決要旨】    会社の従業員が通勤のため利用しているその所有自動車を運転し、会社の工事現場から自宅に帰る途中で事故を起こした場合において、従業員がその所有自動車を会社の承認又は指示のもとに会社又は自宅と工事現場との間の往復等会社業務のためにもしばしば利用し、その利用に対して会社から手当が支給されており、事故当日右従業員が右自動車で工事現場に出かけたのも会社の指示に基づくものであるなど、判示の事情があるときは、会社は、右事故につき、自動車損害賠償保障法三条による運行供用者責任を負う。
【参照条文】    自動車損害賠償保障法3
【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事122号565頁
          判例時報878号60頁


自動車損害賠償保障法
(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

       主   文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人和智昂、同和智龍一、同竹原重夫、同松崎隆の上告理由について
 上告人会社熊本営業所に属する内線工の大半は、単車等の自家用車を有し、これを通勤のため使用するほか、しばしば営業所から、また、上司の指示があるときは自宅から工事現場への往復にも利用し、そのさいには自家用車を持たない同僚を同乗させることも多く、上告人会社は右利用を承認して走行距離に応じたガソリン手当及び損料の趣旨で単車手当を支給し、内線工のひとりである訴外赤星清巳も同様に自己所有の単車を通勤及び業務のため利用していたところ、同訴外人は事故前日及び当日、上司に自宅から直接工事現場へ出勤するよう指示され、指示どおり出勤し業務に従事し、事故当日午後一〇時ごろその日の仕事を終り右単車で帰宅することになったが、そのさい営業所近くの上告人会社の寮に帰る同僚を右単車に同乗させ、営業所で同僚を降ろし、そこから自宅へ帰る途中で本件事故を起こしたものであるなど、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人会社は事故当時における右訴外人の単車の運行について運行支配と運行利益を有し、被上告人に対し自賠法三条に基づく損害賠償責任を負う旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。