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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

中国鍼灸治療院事件

 

 

              業務上過失傷害被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成17年(あ)第1627号

【判決日付】      平成17年10月24日

【判示事項】      「中国鍼灸治療院」と称して無資格で鍼の施術を行っていた被告人が,被害者の左右眼球正面部に鍼を刺した過失により,左右角膜に鍼による穿孔を生じさせ,全治不能の傷害を負わせたという過失傷害被告事件。

原審は,被告人を有罪(懲役1年6月,執行猶予3年)に処し,控訴審は,被告人の控訴を棄却したところ,被告人が上告した事案。

上告審は,本件上告趣意は事実誤認の主張であり,刑訴法405条の上告事由に当たらないとして,上告を棄却した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

刑法

(過失傷害)

第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。

2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 

刑事訴訟法

第三章 上告

第四百五条 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。

一 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。

二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

三 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

 

商標登録出願公告における指定商品の一部遺脱と商標登録の効力

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和30年(オ)第535号

昭和36年4月25日

審決取消請求事件

【判示事項】    商標登録出願公告における指定商品の一部遺脱と商標登録の効力

【判決要旨】    商標登録出願公告に際し指定商品中遺脱されたものがあっても、商標登録で指定商品とされている以上、その遺脱された商品について商標登録は無効ではない。

【参照条文】    商標法(大正10年法律第99号)5

          商標法7-1

          商標法7-2

          商標法24

          特許法(大正10年法律第96号)73

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集15巻4号866頁

 

商標法

(出願公開)

第十二条の二 特許庁長官は、商標登録出願があつたときは、出願公開をしなければならない。

2 出願公開は、次に掲げる事項を商標公報に掲載することにより行う。ただし、第三号及び第四号に掲げる事項については、当該事項を商標公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。

一 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

二 商標登録出願の番号及び年月日

三 願書に記載した商標(第五条第三項に規定する場合にあつては標準文字により現したもの。以下同じ。)

四 指定商品又は指定役務

五 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

 

(商標権の設定の登録)

第十八条 商標権は、設定の登録により発生する。

2 第四十条第一項の規定による登録料又は第四十一条の二第一項の規定により商標登録をすべき旨の査定若しくは審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料の納付があつたときは、商標権の設定の登録をする。

3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を商標公報に掲載しなければならない。

一 商標権者の氏名又は名称及び住所又は居所

二 商標登録出願の番号及び年月日

三 願書に記載した商標

四 指定商品又は指定役務

五 登録番号及び設定の登録の年月日

六 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

4 特許庁長官は、前項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した商標公報(以下「商標掲載公報」という。)の発行の日から二月間、特許庁において出願書類及びその附属物件を公衆の縦覧に供しなければならない。ただし、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件及び公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある書類又は物件であつて、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるものについては、この限りでない。

5 特許庁長官は、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件であつて、前項ただし書の規定により特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるもの以外のものを縦覧に供しようとするときは、当該書類又は物件を提出した者に対し、その旨及びその理由を通知しなければならない。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人清瀬1郎、同内山弘の上告理由について。

 商標法(昭和34年4月13日改正前のもの)24条が特許法73条ないし77条を準用し商標登録の出願があつたときは商標公報に出願公告をなすべく、公告があつたときは一般公衆中の何人も登録異議の申立をなしうべきものとしているのは、審査官をして異議についても審査考量の上登録出願について過誤なき査定をなさしめんがためであり、元来審査官は異議の有無に拘わりなく異議の起りうべきあらゆる点についても探知検討して適正な査定をなすべき職務権限を有するのであって、出願公告において出願にかかる指定商品の記載を遺脱した場合でも、遺脱された商品に関しその商標登録査定もしくは商標登録は当然無効のものといえないと解するのを相当とする。

 原判示登録第379945商標につき、その登録出願が本件商標登録出願前になされ昭和24年にその登録がなされた事実その登録出願公告決定および商標原簿にはいずれも右商標の指定商品として第8類鎌、剃刀、鉋、庖丁、剪刀、鋸、小刀、鑿と記載されているのに右出願公告の公報には右指定商品として「第8類小刀、鑿、剪刀、鋸」とのみ記載されている事実はいずれも原審の確定したところである。原判決が、これらの事実に徴し右商標の登録出願は右登録出願公告決定並びに商標原簿に記載された商品を指定商品としてなされ、これに対し登録を許されたものであり、前記公報の右商標の指定商品の表示は誤記であると判示した上、出願公告および異議申立に関する立法の趣旨ならびに異議の効力について説示し判示の理由により上告人本件商標登録出願を排斥した原審決を維持し上告人の本訴請求を棄却すべきものとしたのは前記説示の理由により相当ということができる。論旨は理由がない。

 よって、民訴401条、95条、89条に従い、裁判官全員の1致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第3小法廷

『障害法 第2版』成文堂

 

菊池馨実・中川 純・川島 聡 編著

 

 

発 行   :          2021年12月20日

税込定価              :          2,860円(本体2,600円)

判 型   :          A5判並製

ページ数              :          270頁

ISBN      :          978-4-7923-2777-4

 

コメント

秀逸な基本書。

類書は少ない。

欲を言えば、「障碍者と住まい」の章が欲しい。

 

■内容紹介

《目 次》

 

第2版へのはしがき i

初版のはしがき ii

目次 v

凡例 xv

 

第1章 障害法の基本概念 川島 聡・菊池馨実

1 障害と障害者の概念 2

1-1 障害の概念 4

(1) 障害のモデル(4) 

(2) 障害の概念の多義性(7)

(3) 障害の法的概念 (8)

1-2 障害者の概念 10

(1) 障害者の法的定義(10) 

(2) 生活制限の原因(11)

(3) 障害者像の多次元性(12)

2 障害法の法的位置づけ 16

2-1 障害法の範囲 16

2-2 障害法の体系 17

2-3 障害法の法源 18

(1) 憲法(18) 

(2) 条約(19) 

(3) 法律(19)

(4) 政令・省令・告示(20) 

(5) 条例・規則(21)

(6) 通達・要綱など(21) 

(7) 不文法(22)

3 障害法の理念 22

3-1 条約と法律 22

3-2 憲法 24

4 障害法の方法論 26

4-1 法解釈アプローチ 26

4-2 法政策アプローチ 27

4-3 比較法アプローチ 27

 

第2章 日本の障害法   中川 純・新田秀樹

1 日本の障害法の歴史 32

1-1 排除と隔離の時代(明治期から第2次世界大戦敗戦〈1945年〉直後頃まで) 32

1-2 保護と更生の時代(身体障害者福祉法制定〈1949年〉頃から国際障害者年〈1981年〉頃まで) 33

1-3 自立支援と参加の時代(国際障害者年〈1981年〉頃から障害者自立支援法制定〈2005年〉頃まで) 34

1-4 共生と包摂の時代(障害者自立支援法制定〈2005年〉頃から現在まで) 37

2 日本の障害法の構造と現状 41

2-1 障害者の定義 41

(1) 制度ごとで異なる障害者の定義(41) 

(2) 障害者の主要な定義(41)

(3) 障害者手帳・等級とその汎用(45) 

(4) 障害者の定義の未来像(46)

2-2 障害者差別禁止と合理的配慮 47

2-3 雇用をめぐる障害者施策 47

(1) 障害者に対する2つの就労施策(47) 

(2) 一般就労移行支援(48)

(3) 就労系障害福祉サービス(48)

2-4 障害者の所得保障の現状 48

(1) 自立生活と工賃・賃金の低さ(48)

(2) 障害者に対する所得保障制度:障害年金と生活保護(49)

2-5 障害者福祉サービス支給方式 50

(1) 障害者に対する福祉サービス支給方法の変遷(50)

(2) 障害者のニーズを反映したサービスへ(50)

2-6 障害児の学校選択 51

2-7 障害者と成年後見制度 52

(1) 障害者の民法上の権利能力と成年後見制度(52)

(2) 成年後見制度の問題点(52)

2-8 障害者と刑事司法 53

(1) 障害者と刑事手続(53)

(2) 障害を有する受刑者と施設内処遇、更生保護(53)

 

第3章 国連と障害法   川島 聡

1 国連障害政策の史的展開 56

1-1 萌芽期(1945年~1975年) 56

1-2 進展期(1976年~2000年) 58

1-3 変革期(2001年~2014年) 60

2 障害者権利条約の概要 62

2-1 目的 62

2-2 一般原則 63

2-3 国家の義務 64

2-4 国際的実施 68

2-5 条約と日本 69

 

第4章 障害と憲法   尾形 健

1 憲法と障害者 76

1-1 現代法における人間観と障害者 76

(1) 法思想における人間観の変容(76) 

(2) 現代憲法における障害者(77)

1-2 憲法における障害者 78

2 障害者の権利保障と憲法 80

2-1 憲法上の平等原則と障害者 80

(1) 憲法上の平等原則(80) (1) 障害に基づく区別(80)

(2) 合理的配慮と憲法上の平等原則(81)

(3) 障害者の教育を受ける権利と平等原則(82)

2-2 移動の自由の保障と障害者 83

2-3 障害者の参政権保障 84

2-4 障害者と職業の自由 86

2-5 障害者の生存権保障 87

(1) 憲法25条の具体化措置と立法府の裁量(87)

(2) 障害者の介護サービスと生存権保障(88)

2-6 障害者の権利と刑事手続 89

 

第5章 障害と民法   上山 泰・菅 富美枝

1 法的主体としての障害者 96

2 成年後見制度 97

2-1 知的障害、精神障害の存在と契約責任 ──「意思能力」と「行為能力」── 97

2-2 成年後見制度(1) ──法定後見制度── 98

2-3 成年後見制度(1) ──任意後見制度── 100

2-4 自己決定支援と成年後見制度の再構築 101

3 障害と契約法 102

3-1 契約内容決定の自由と障害 102

3-2 契約締結の自由と障害 104

3-3 消費者(契約)法理と障害 105

4 障害と不法行為法 107

4-1 障害者が加害者として登場する場面 107

(1) 責任能力(107) 

(2) 民法714条の監督義務者責任(109)

4-2 障害者が被害者として登場する場面 110

(1) 過失相殺能力(110) (1) 被害者の素因としての障害(111)

(2) 障害者の逸失利益(112)

5 障害と家族法 114

5-1 家族法上の能力制度 114

5-2 精神病離婚 114

5-3 身体障害者による遺言 116

5-4 家族法による障害者の生存権保障 117

6 おわりに 118

 

第6章 障害と差別禁止法   長谷川 聡・長谷川 珠子

1 障害(者)差別禁止法とは? 123

2 障害差別禁止法の意義と背景 124

2-1 障害差別禁止法の歴史 125

(1) 障害差別禁止法の誕生(125) 

(2) 障害差別禁止法の発展(126)

(3) 障害者権利条約(126)

2-2 日本における障害差別禁止法の展開 127

(1) 障害者差別を禁止する日本の法制度(127)

(2) 権利条約採択「前」(128) 

(3) 権利条約採択「後」(128)

3 日本の障害者差別禁止法の仕組み 129

3-1 障害者差別禁止法を構成する法制度 129

(1) 法制度の相互関係(129) 

(2) 障害者差別禁止法の枠組みと特徴(130)

3-2 障害・障害者の定義 132

3-3 禁止される差別 134

(1) 差別の禁止(134) 

(2) 合理的配慮の提供義務(135)

3-4 差別禁止を実現する制度 137

4 障害差別禁止法の展開 139

4-1 日本の障害者差別禁止法の意義 139

4-2 諸外国の障害差別禁止法の枠組み 139

4-3 日本の障害者差別禁止法の特徴と課題 140

(1) 障害者の範囲の広さ・明確化(140)

(2) 何を理由とする差別を禁止するか(141)

(3) 禁止する差別の明確化と拡大(141)

(4) 法的救済の根拠規定の整備(142)

(5) 差別禁止を実現する専門的機関の設置(143)

4-4 障害(者)差別禁止法の未来 143

 

第7章 障害と労働法   小西啓文・中川 純

1 障害と労働法 147

2 採用に際してのサポートシステム ──障害者雇用促進制度のスキーム── 147

2-1 障害者雇用促進制度の展開 147

2-2 障害者雇用促進制度の目的 148

2-3 雇用率制度の概要と展開 149

2-4 障害者雇用納付金制度の存在 150

2-5 障害者雇用の現状 152

2-6 法改正の効果 152

3 採用後のサポートシステム 154

3-1 使用者の安全配慮義務 154

3-2 配転・職場復帰と賃金差別の問題 156

4 労働関係の終了時のサポートシステム 157

5 「新しい考え方」を見据えて ──ここまでのまとめ── 158

6 障害者雇用施策の概要 159

6-1 障害者と労働・就労 159

6-2 二層構造モデルと三層構造モデル 159

6-3 障害者自立支援法による多層構造モデルへの移行 162

6-4 就労系障害福祉サービス 163

(1) B型事業(163) 

(2) A型事業(163)

(3) 移行支援事業(165)

(4) 定着支援事業(166)

(5) 報酬加算と減算(167)

6-5 三層構造モデルから多層構造・ハイブリッドモデルへ 167

7 一般就労移行支援 168

7-1 職業リハビリテーション 168

7-2 障害者職業センター 169

7-3 障害者就業・生活支援センター 170

7-4 ハローワーク(公共職業安定所) 170

8 障害者雇用の現状 171

9 障害者の労働・就労に対する報酬 172

9-1 賃金と工賃 172

9-2 最低賃金法の減額特例 173

 

第8章 障害と教育法   今川奈緒・織原保尚

1 障害児教育法制の歴史的変遷 176

1-1 明治期から戦前にかけて 176

1-2 特殊教育の義務化─戦後・現行憲法下において─ 178

1-3 特殊教育の進展 180

1-4 特別支援教育の時代 181

2 障害児教育法制における仕組みの問題 ──就学先決定の仕組みについて── 183

2-1 インクルーシブ教育と特別支援教育 183

(1) 特別支援教育(183)

(2) 指導要領改訂(184)

(3) インクルーシブ教育における特別支援学校の位置づけ(184)

2-2 学校・学級選択をめぐる問題 187

(1) 2013年学校教育法施行令改正の趣旨 ──認定特別支援学校就学者制度への移行──(187)

(2) 就学先決定の際の手続制度(190)

2-3 就学先決定の仕組みについての検討 191

3 障害者差別解消法と高等教育 193

 

第9章 障害と社会保障法   福島 豪・永野仁美

1 障害者への福祉サービス 196

1-1 障害者のニーズ 196

1-2 障害者手帳 197

(1) 身体障害者手帳(198) 

(2) 療育手帳と精神障害者保健福祉手帳(199)

1-3 福祉サービス保障の仕組み 200

(1) 自立支援給付(200) 

(2) 利用者負担(202)

(3) 地域生活支援事業と措置(203)

1-4 福祉サービス利用の過程 204

(1) 支給決定(204) 

(2) サービス利用計画の作成とサービスの利用(206)

2 障害者への所得保障 206

2-1 障害年金 207

(1) 障害基礎年金(207) 

(2) 障害厚生年金(208) 

(3) 障害認定基準(209)

(4) 支給額(210) 

(5) 所得制限(212)

2-2 特別障害者手当 212

2-3 生活保護 213

(1) 生活保護の目的・基本原理(213) 

(2) 障害に対する配慮(214)

3 課題 215

3-1 福祉サービスの利用にかかる費用の保障 215

3-2 無年金障害者の存在 216

(1) 学生無年金障害者訴訟(216) 

(2) 特別障害給付金制度の創設(216)

(3) その他の無年金障害者と生活保護(217) 

(4) 就労との関係(217)

3-3 今後の社会保障の在り方 218

 

第10章 障害と刑事司法   池原毅和

1 刑事法制を動かす社会意識 221

2 障害と刑法 222

2-1 刑事責任能力の社会モデル化 222

2-2 虐待、差別からの保護 225

3 障害と刑事訴訟法 227

3-1 障害のある人が被疑者・被告人になる場合 227

(1) 被疑者段階(227) 

(2) 公判段階(229)

3-2 障害のある人が被害者になる場合 230

3-3 障害のある人が証人、傍聴人になる場合 231

3-4 障害のある人が裁判員になる場合 231

4 障害と刑事施設処遇法 232

4-1 刑事施設内での医療 232

4-2 刑事施設のバリアフリー化と出所後の社会定着化 233

5 障害と精神保健福祉 234

5-1 他害行為と措置入院 234

5-2 他害行為と心神喪失者等医療観察法 236

(1) 心神喪失者等医療観察法の概要(236)

(2) 障害者権利条約から見た心神喪失者等医療観察法の問題点(237)

5-3 刑罰と精神医療の間隙(制度間滲潤;Blurring) 239

 

事項索引 242

判例索引 246

 

コラム一覧

1-1 障害法と障害者法 3

1-2 英米の社会モデル 5

2-1 措置から契約へ 35

2-2 「社会モデル」的「障害者」の定義とその実情 42

3-1 条約の正文と公定訳文 72

3-2 新しい言葉と概念 73

4  障害者権利条約の私人間適用 91

5-1 民事訴訟手続における能力 119

5-2 人事訴訟手続と家事事件手続における能力 120

6-1 条例における障害差別禁止法 133

6-2 障害差別をめぐる差別概念 136

7-1 特例子会社制度について 151

7-2 二元的構造モデルへ:中間就労形態の位置づけ 161

7-3 ブラックA型(事業所)ビジネス 164

8-1 インクルーシブ教育と区域外就学 188

8-2 アメリカ合衆国障害者教育法(IDEA)における「関連サービス」について 189

9-1 難病患者への支援 201

9-2 子・配偶者加算の見直し 211

10-1 発達障害者に対する重罰判決 225

10-2 自動車運転死傷行為等処罰法 240

第2章 司法取引とは

 日本版司法取引制度とは、検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者・被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するという制度です(刑事訴訟法350条の2~350条の15)。

 

代物弁済の予約であるのに停止条件付代物弁済契約がなされたごとく記載された仮登記の効力

 

 

建物所有権移転請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和40年(オ)第646号

【判決日付】      昭和41年9月16日

【判示事項】      代物弁済の予約であるのに停止条件付代物弁済契約がなされたごとく記載された仮登記の効力

【判決要旨】      代物弁済の予約であるのに、登記簿上は、仮登記原因として、停止条件付代物弁済契約がなされたごとく記載されていても、このような登記原因についての記載の誤りは、仮登記自体の効力を害するものではない。このような仮登記権利者は更生登記をしないでも仮登記にもとづいて本登記をすることができる。

【参照条文】      不動産登記法

             不動産登記法55

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事84号385頁

             金融法務事情458号7頁

 

 

不動産登記法

(仮登記)

第百五条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。

一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。

二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。

 

(仮登記に基づく本登記の順位)

第百六条 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

 

(仮登記に基づく本登記)

第百九条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。

 

 

 

 

 

       理   由

 

 上告代理人八代俊雄の上告理由について。

 原判決が、本件建物につき訴外宮崎と上告人の問に締結されたのは、代物弁済の予約であるのに、登記簿上は、仮登記の原因として、停止条件付代物弁済契約がなされた如く記載されていることを認定したうえで、かかる登記原因についての記載の誤りは仮登記自体の効力を害するものではなく、現実に締結された代物弁済の予約に基づく仮登記として、後日なされる本合一記の順位を保全する効力を有するものと解するのが相当であるとし、かかる仮合一記権利者は、前記合一記原因につき更正合一記を求めるまでもなく、右仮登記に基づいて仮登記義務者に対し本登記手続を請求できると判断していることは、論旨のいうとおりである。

 しかし、本件の如く所有権移転請求権保全の仮登記にあつても、それは本登記の順位を保全することを目的としてなされるものであつて、仮登記の原因たる権利関係自体の公示にその目的があるのではないから、仮登記された権利関係と実質上の権利関係との間に若干の喰い違いがあつても、当該仮登記が特定の不動産の所有権移転請求権を保全するための仮登記として同一性を害するものと認められない限り直ちにこれを無効とすべきではないと解すべきことは、既に当裁判所の判例(昭和三四年(オ)第一八三号、同三七年七月六日第二小法廷判決、民集一六巻七号一四五二頁参照)であつて、これと同趣旨の原審判断は、すべて是認できる。

 論旨は、右の場合更正登記手続を経由し、実体関係と登記面との不一致が是正されたのち、はじめて右仮登記に基づく本登記手続の請求ができるものであると主張するが、独自の見解にすぎず、採用できない。

    【主文は出典に掲載されておりません。】

 

 

中小企業等協同組合法に基づく組合の設立にあたり創立総会で承認された設立費用のほかに設立のために要した費用がある場合において、設立後の理事会がした右超過費用を組合が支払う旨の決議の効力

 

 

              創立費用立替金請求事件

【事件番号】      旭川地方裁判所判決/昭和36年(ワ)第208号

【判決日付】      昭和37年1月18日

【判示事項】      中小企業等協同組合法に基づく組合の設立にあたり創立総会で承認された設立費用のほかに設立のために要した費用がある場合において、設立後の理事会がした右超過費用を組合が支払う旨の決議の効力

【参照条文】      商法168

             中小企業等協同組合法27

             中小企業等協同組合法27の2

             中小企業等協同組合法36の2

【掲載誌】        下級裁判所民事裁判例集13巻1号33頁

【評釈論文】      ジュリスト313号143頁

 

中小企業等協同組合法

(創立総会)

第二十七条 発起人は、定款を作成し、これを会議の日時及び場所とともに公告して、創立総会を開かなければならない。

2 前項の公告は、会議開催日の少くとも二週間前までにしなければならない。

3 発起人が作成した定款の承認、事業計画の設定その他設立に必要な事項の決定は、創立総会の議決によらなければならない。

4 創立総会においては、前項の定款を修正することができる。ただし、地区及び組合員たる資格に関する規定については、この限りでない。

5 創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者でその会日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して、その議決権の三分の二以上で決する。

6 創立総会においてその延期又は続行の決議があつた場合には、第一項の規定による公告をすることを要しない。

7 創立総会の議事については、主務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

8 創立総会については、第十一条の規定を、創立総会の決議の不存在若しくは無効の確認又は取消しの訴えについては、会社法第八百三十条、第八百三十一条、第八百三十四条(第十六号及び第十七号に係る部分に限る。)、第八百三十五条第一項、第八百三十六条第一項及び第三項、第八百三十七条、第八百三十八条並びに第八百四十六条(株主総会の決議の不存在若しくは無効の確認又は取消しの訴え)の規定(第三十六条の三第四項に規定する組合であつて、その監事の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めた組合(以下「監査権限限定組合」という。)にあつては、監査役に係る部分を除く。)を準用する。

 

(設立の認可)

第二十七条の二 発起人は、創立総会終了後遅滞なく、定款並びに事業計画、役員の氏名及び住所その他必要な事項を記載した書面を、主務省令で定めるところにより、行政庁に提出して、設立の認可を受けなければならない。

2 信用協同組合又は第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会の設立にあつては、発起人は、前項の書類のほか、業務の種類及び方法並びに常務に従事する役員の氏名を記載した書面その他主務省令で定める書面を提出しなければならない。

3 第九条の九第一項第三号の事業を行う協同組合連合会の設立にあつては、発起人は、第一項の書類のほか、火災共済規程、常務に従事する役員の氏名を記載した書面その他主務省令で定める書面を提出しなければならない。

4 行政庁は、前二項に規定する組合以外の組合の設立にあつては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第一項の認可をしなければならない。

一 設立の手続又は定款若しくは事業計画の内容が法令に違反するとき。

二 事業を行うために必要な経営的基礎を欠く等その目的を達成することが著しく困難であると認められるとき。

5 行政庁は、第二項に規定する組合の設立にあつては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第一項の認可をしなければならない。

一 設立の手続又は定款、事業計画の内容若しくは業務の種類若しくは方法が法令に違反するとき。

二 地区内における金融その他の経済の事情が事業を行うのに適切でないと認められるとき。

三 常務に従事する役員が金融業務に関して十分な経験及び識見を有する者でないと認められるとき。

四 業務の種類及び方法並びに事業計画が経営の健全性を確保し、又は預金者その他の債権者の利益を保護するのに適当でないと認められるとき。

6 行政庁は、第九条の九第一項第三号の事業を行う協同組合連合会の設立にあつては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第一項の認可をしなければならない。

一 設立の手続又は定款、火災共済規程若しくは事業計画の内容が法令に違反するとき。

二 共済の目的につき危険の分散が充分に行われないと認められるとき及び共済契約の締結の見込みが少ないと認められるとき。

三 常務に従事する役員が共済事業に関して十分な経験及び識見を有する者でないと認められるとき。

四 火災共済規程及び事業計画の内容が経営の健全性を確保し、又は組合員その他の共済契約者の利益を保護するのに適当でないと認められるとき。

 

(役員の組合に対する損害賠償責任)

第三十八条の二 役員は、その任務を怠つたときは、組合に対し、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う。

2 前項の任務を怠つてされた行為が理事会の決議に基づき行われたときは、その決議に賛成した理事は、その行為をしたものとみなす。

3 前項の決議に参加した理事であつて議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

4 第一項の責任は、総組合員の同意がなければ、免除することができない。

5 前項の規定にかかわらず、第一項の責任は、当該役員が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から当該役員がその在職中に組合から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の一年間当たりの額に相当する額として主務省令で定める方法により算定される額に、次の各号に掲げる役員の区分に応じ、当該各号に定める数を乗じて得た額を控除して得た額を限度として、総会の決議によつて免除することができる。

一 代表理事 六

二 代表理事以外の理事 四

三 監事 二

6 前項の場合には、理事は、同項の総会において次に掲げる事項を開示しなければならない。

一 責任の原因となつた事実及び賠償の責任を負う額

二 前項の規定により免除することができる額の限度及びその算定の根拠

三 責任を免除すべき理由及び免除額

7 監査権限限定組合以外の組合の理事は、第一項の責任の免除(理事の責任の免除に限る。)に関する議案を総会に提出するには、各監事の同意を得なければならない。

8 第五項の決議があつた場合において、組合が当該決議後に同項の役員に対し退職慰労金その他の主務省令で定める財産上の利益を与えるときは、総会の承認を受けなければならない。

9 第四項の規定にかかわらず、第一項の責任については、会社法第四百二十六条(第四項から第六項までを除く。)及び第四百二十七条の規定を準用する。この場合において、同法第四百二十六条第一項中「取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」とあるのは「理事会の決議」と、同条第三項中「責任を免除する旨の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」とあるのは「責任を免除する旨の理事会の決議」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 

 

       主   文

 

 原告の請求を棄却する。

 訴松費用は原告の負担とする。

 

       事   実

 

 原告は、「被告は原告に対し金一二○○、○○○円およびこれに対寸る訴状送達の日の翌日から右完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決および担保を条件とする仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、「(一)被告は昭和二七年四月三日設立登記をした中小企業等協同組合法に基く信用協同組合である。(ニ)原告は昭和二六年八月彼告の設立を企て、じ来その発起人の一人として費用を皮出して右設立に尺力した。しかして右費用として原告の支出したものは、人件費八○、○○○円、旅費八、○○○円、事務用品費二○、○○○円、通信費一○、○○○円、光熱費三○、○○○円、創立総会開催費一○、○○○円、設立準備諸会合費五○、○○○円、役員就任披露宴会費五○、○○○円、交通費一五、○○○円および雑費その他三○、○○○円の合計三○三、○○○円である。(ニ)原告は、昭和二七年二月五日の発起人会において創立総会に提出すべぎ設立費用負担の承認に関する議案が審議された際、自ら支出した曲記費用中金三○○、○○○円の計上を求めたところ、右発起人会は設立費用については北海道知事の行政上の指導方針として金五○、○○○円を限度としそれ以上は認められないことになつているとの理由で、原告が支出した前記費用は組合が成訊し事業を開始した後別途脇議のうえ支払うことを約した。(ニ)被告の創立総会は同年三月一日開かれ設立費用負担の承認に関する議案については金五○、○○○円が計上議決され、右は営業開始に必要な帽簿類、印刷物の購入費および登記費用等の支出に充てられることとなつた。(五)原告は同年七月頃被告組合事務所において理事会が開催された際、前記原告支出の設立費用の支払を詩求したところ、右理事会は原告に対し右設立費用の支払義務あることを認め、被告において組合員の出資金に対し配当ができるようになつたとぎその支払をすることを約した。(六)被告は右出資金に対し昭和三四年度において年六分、昭和三五年度おいて年七分の割合による配当をなすに至つ5た,そこで、原告は被告に対し、原告支出の前記設立費用中金三○○、○○○円およびこれに対ずる本訴状送達の日の翌日から右完済まで民法所定の年五分の割合による遅柾一損害金の支払を求める。」と述べ、被告の抗弁に対し、「原告の被告に対する設立費用の請求は前記のとおり停止条件付債催に基くものであり、右条件は昭和三四年に成就したものであるから未だ消滅時効は完成していない。」と述べた。(託拠省略)

 被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、「原告主張の請求原因事実中、(一)および(六)は認め、その余は否認する。」と述べ、抗弁として、「仮に1被告にいて原告に対しその主臣一の費用の支払義務があるとしても、右は昭和三二年四月三日の経過を以て被告組合成立一の日である昭和二七年四月:百から五年を一比過したこととなり滴滅時効が完成しているものであるから、右時効を援用する。」と述べた。(証拠省略)

 

       理   由

 

 中小企業等協同組合法に基く信用協同組合の設立に要した費用については、同法中に一株式会社におげる商法第一六八条第一項第七号のような規定および同法条を準用する規定はない。しかしそうだからといつて、右中小企業等協同組合法の各法条から考えて右費用について組合の無制限な負担を許しているものとは解し得ず、却つて右費用については右商法の規定を類推適用したうえ中小企業等協同組合法第二七条および同条の二によつて、発起人の過大な見積や濫費不正等によつて組合の財産的基礎が危寅なることを防止するため定款に配載したうえ創立総会における議決を経て行政庁の認可を得たものに ついてだけ組合の負担とし、その余は支出した発起人自らの負担に帰せしめているものと解すべきであるから、たとえ、後日組合理事会札おいて右超加費用につぎこれを支出した発起人に支払うべきことを議決して右発起人にその旨約諾したとしても、これらはいずれも前記定款の記載創立総会の議決および行政庁の認可を潜脱する目姓でなした脱法行為にして無効のものというべく、右発起人は右約定を以て組合に対し右超加費用の請求はなし農ないものといわねばならない。してみると、原告の請求はその主張事実の有無につき判断するまでもなく失当として棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

  (裁判官 高田政彦)

商標登録無効審判抗告審判の審決後の事実を右審決に対する訴訟の裁判で判断の資料とすることの当否

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和33年(オ)第567号

昭和35年12月20日

商標登録無効審判抗告審判審決取消請求事件

【判示事項】    1、商標登録無効審判抗告審判の審決後の事実を右審決に対する訴訟の裁判で判断の資料とすることの当否

2、商標法による審決に対する訴訟で審判に際して主張されなかつた新たな事実の主張の当否

3、商標法(旧)第2条第1項第9号と第11号との関係

【判決要旨】    1、商標無効審判抗告審判の審決後の事実であっても、商標の無効かどうかの判断の資料になり得るものは、審決に対する訴訟の裁判で判断の資料にならないものではない。

2、商標法による審決に対する訴訟で、当事者は、審判における争点について、審判に際し主張しなかつた新たな事実を主張することができる。

3、商標法(昭和34年4月法律第127号による改正前)第2条第1項の第9号と第11号とは排他的に解しなければならないことはない。

【参照条文】    商標法(昭和34年4月法律第127号による改正前のもの)16

          商標法22

          商標法24

          商標法2-1

          特許法(昭和34年4月法律第121号による改正前のもの)128の2

          特許法128の5

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集14巻14号3103頁

 

商標法

(商標登録の要件)

第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

二 その商品又は役務について慣用されている商標

三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標

六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

 

(商標登録を受けることができない商標)

第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

一 国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

二 パリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

三 国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標(次に掲げるものを除く。)

イ 自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

ロ 国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの

四 赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和二十二年法律第百五十九号)第一条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)第百五十八条第一項の特殊標章と同一又は類似の商標

五 日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの

六 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

九 政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)

十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの

十三 削除

十四 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

十六 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

十七 日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

十八 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

3 第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

 

 

 

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人弁護士兼子1、同釘沢1郎の上告理由第1点について。

 論旨は、原判決は行政処分の違法判断基準時に関する当裁判所の先例に違反する旨を主張するのであるが、本件無効審判における争点は、上告人の商標が旧商標法(以下法と略称する)2条に違反して登録されたかどうかであり(法16条1項1号)、抗告審判の審決に対する本訴の争点も実質的には右とかわりはなく、されば原判決も「被告の商標の登録は商標法第2条第1項第9号の規定に違反してなされたもの……」と判示しているのである。所論違法判断の基準時は、本訴においては問題とする余地がなく、原判決の当否とは関係がないものといわなければならない。

 次に論旨は、原判決は審決の後に生じた事実に基いて審決の当否を判断した違法があるというのである。もとより、抗告審判の審決に対する訴では、直接には、審決の当否が争われるのであるが、実質上は、前述のように、商標が法2条に違反して登録されたかどうかが争われるのであって、審決後の事実であっても、右違反の有無判断の資料となり得るものは、これを判断の資料として採用できないものではない。所論甲第19号証、第20号証等が審決後の事実に関するものであることは論旨のとおりであるが、これらの証拠によって審決後において原判示のような混同誤認のおそれがあると認められる以上、特段の事情のない限り、上告人の本件商標出願登録当時においても、上告人出願商標が法2条1項9号に該当していたものと推定すべく、原判決がこれらの証拠に基いて事実を認定し審決を違法としたからといって違法ということはできない。

 論旨はさらに、審決に対する訴訟では、審判の段階で主張されなかつた事実を主張することがゆるされないにかかわらず、原判決は、本訴で当事者が新しく主張した事実に基いて判決をした違法があるというのである。しかし、本件審判における争点は、上告人の商標が法2条1項9号、11号に該当するかどうかであり、右の争点に関する限り、訴訟の段階でも、攻撃、防禦の方法として、新な事実上の主張がゆるされないものではない。原審が事実審であり、「私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律」81条のような規定がない以上、審決に対する訴であるからといって、所論のように解することはできない。所論は立法論としては格別、現行法の解釈としては、結局、独自の見解というよりほかはなく、とることができない。

 同第2点について。

 論旨は、原判決が上告人の商標は取引上商品の混同誤認を生ずるおそれがあるとし、法2条1項9号に該当するとしたのは、右9号の適用を不当に拡大した違法があるというのである。

 法2条1項9号が私益的規定であり同項11号が公益的規定と解すべきことは所論のとおりであるが、両者を所論のように排他的に解しなければならない理由はなく、むしろ、9号に該当する場合には、11号にも該当することが多いものと解して少しも支障はないのである。右9号に該当するか否かは、所論のように、外形のみによって判断すべきではなく、原判決が上告人の商標は被上告人の商標と誤認混同を生ずるおそれがあるとし、法2条1項9号に該当するとしたのは違法ではない(論旨援用の昭和17年10月13日大審院判決は論旨にそう判決ではない)。論旨は理由がない。その他の論旨は、原判決の経験則違背を主張するのであるが、上述の上告人の法律解釈を前提としているのであって採用できない。

 同第3点について。

 論旨は、被上告人商標の指定商品と上告人商標の指定商品とは一部だけ牴触しているに過ぎないのにかかわらず、上告人の商標について何等留保することなく全部無効としたのは違法であるというのである。

 しかし、本件2商標のそれぞれの指定商品について牴触するものがあることについては争いがなく、しかも、本件審判においては、指定商品全部について類似性の有無は争われておらず、原審でもこの点について争われていないのであるから、原判決がこの点について判断を示さなかつたのは当然である。原判決は、本件審決が上告人の商標が法2条1項9号に該当しないとしたのを違法として取り消したに過ぎないのである(従って判決の拘束力は指定商品中類似性のないものがあるかどうかについては及ばないものと解してよいのである)。論旨は理由がない。

 同第4点について。

 論旨は、原判決の認定は経験則に反するというのであるが、原判決が上告人の商標と被上告人の商標とは外形において類似していないが、観念、称呼において類似するとしたのは、その挙示の証拠及びその説明によって首肯できないことはない。論旨は理由がない。

 よって、民訴401条、95条、89条に従い、裁判官全員の1致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第3小法廷

 

 

第1章 刑事訴訟法の平成28年改正の概要

(1)取調べの可視化

裁判員裁判対象事件等一定の重大事件については、警察および検察は逮捕・勾留されている被疑者の取調べを行うときは、その全過程を録音・録画することが義務付けられます。そして公判段階で被告人の供述の任意性が争われた場合には取調べを録音・録画した記録媒体の証拠調べを請求しなくてはなりません。従来任意性が争われた場合には通常、取調べを行った捜査官の証人尋問が行われていましたが、より明確な立証が可能となると考えられます。

 

(2)合意制度(司法取引)の導入

一定の薬物銃器犯罪、経済犯罪を対象として弁護人の同意を条件に検察官が被疑者・被告人と取引をすることが可能となります。被疑者・被告人が他人の犯罪事実を明らかにするために供述や証言等をする代わりに、検察官が不起訴や求刑の軽減等を行う合意を行います。裁判所で自己に不利益な証言をする代わりに裁判所の決定で免責することも可能となります。

 

(3)通信傍受の拡大

これまで薬物・銃器犯罪に限定されていた通信傍受の対象事件に殺人、略取・誘拐、詐欺、窃盗、児童ポルノ事件を追加します。あらかじめ役割の分担に従って行動する人の結合体により行われると疑うに足りる状況を要件として通信の傍受を行うことができます。昨今増加の一途をたどる振り込め詐欺等を念頭に置いていると思われます。また通信傍受の実施の適正確保のため暗号技術等を用いることになります。

 

宅地建物取引業者が顧客に投資目的の土地売買契約を締結させる際の勧誘行為が違法であるとして、右契約締結行為につき、右業者たる会社とその代表取締役に不法行為責任が認められた事例

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/昭和61年(ワ)第5229号

【判決日付】      昭和63年2月24日

【判示事項】      宅地建物取引業者が顧客に投資目的の土地売買契約を締結させる際の勧誘行為が違法であるとして、右契約締結行為につき、右業者たる会社とその代表取締役に不法行為責任が認められた事例

【参照条文】      民法709

             宅地建物取引業法37の2

【掲載誌】        判例タイムズ680号199頁

             判例時報1292号117頁

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

宅地建物取引業法

(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)

第三十七条の二 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。

一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。

二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。

2 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。

3 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。

4 前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

 

 

 一、X(21才の会社員)は、宅地建物取引業者であるY1社の若い女性従業員が電話で申入れて来て応じた、アンケート調査と称する喫茶店での面接で、土地が利殖対象として有利である旨の話をされた後、誘われるまま、Y1社が分譲販売している兵庫県加東郡社町の東条湖ランド付近の山林の中にある崖地(=本件分譲地)に赴いた。

Xは、右土地の現況を見て、当初はそれを購入する意思はなかったところ、案内したY1社の従業員(男性1名、若い女性2名)から、見学の途中のみならず、付近の旅館の1室で昼食を伴にしながら、約1時間にわたり、本件分譲地付近は1坪14、15万円するところをY1社はその半分の価格で販売していること、社町の5か年計画に伴い、工場等が誘致されることによって、本件分譲地の値上りは確実であること、Y1社の方で1年経てば責任をもって転売し、そうすれば、銀行預金よりも安全、確実、有利であること等を繰返し説明されるに及んで、右分譲地を購入すれば、将来転売により銀行金利以上の利益は期待できると考え、その中の一区画(=本件土地)を購入することを決意し、その場で契約書に署名して売買契約を成立させた。

 しかし、Y1社の従業員は、右契約締結の際、宅地建物取引業法37条の2第1項により業者に義務づけられている、クーリングオフ権の存在及びその行使方法につき書面で告知することを行っておらず、また、その後、Y1社の従業員の前記説明が虚偽のものであったことが判明したため、Xは、Y1社及びその代表取締役のY2に対し、勧誘行為の違法等を理由とする共同不法行為による損害賠償請求として、Xが支払った手付金、登記費用、代金支払のための手形決済金(=既払額)と慰藉料、弁護士費用の合計77万5000円の支払、Y社に対しては選択的に、クーリングオフ権による契約解除等に基づく原状回復請求として、右既払額の支払及び未決済手形の引渡を求める本件訴訟を提起した。

 二、本判決は、まず、地目山林で、現況も造成なしでは建物が建たないような本件土地の売買契約について、区画割、道路が存在していたことと、別荘用地として販売されていたことを理由に、宅地建物取引業法37条の2第1項の適用を肯定し、クーリングオフ権による契約解除を認めた。

 次に、判決は、本件売買契約について、本件土地は別荘地に適するとしながらも、実際の利用を目的とせず、土地値上りによる転売利益取得を主たる目的としたものであったと特徴づけたうえで、その転売利益取得の可能性に関し、(1)本件土地の価格は、実際は1坪あたり約723円にすぎないのに、1坪の時価14、15万円である旨説明して、その半額で安価に販売しているように装っていたこと、(2)実際、社町の開発計画が本件土地価格に影響を及ぼすことや、本件土地価格が、(1)のように時価より著しく高額な本件代金額以上に値上りすることの可能性は全くないのに、1、2年後には大幅に値上りする旨断定的に説明したこと、(3)本件土地と代金額以上の価格で転売することは困難であるのに、1年後の転売を確約したことに加え、(4)勧誘行為全般につき、殊更若い独身男性で不動産・投資取引に無知の者を選んだうえ、若い女性社員を使って関心を引き、現地見学をさせ、十分な考慮の余裕を与えずに旅館で同様の説得を繰返したことなどの点において、Xをして虚偽の説明を誤信させるような意図的な方法をとっており、このような勧誘方法は、業者として許容される正常な宣伝、勧誘行為の範囲を著しく逸脱したものであるとして、勧誘行為の違法性を肯定した。

そして、Y1社については、右違法な勧誘を営業方針として組織的に行っていたものとして、また、Y2については、右違法な営業方針を推進して来たものとして、Y1社自体及びY2それぞれに不法行為責任を認めた(なお、Xの被った損害については、前記Y1社に対する既払額と弁護士費用の合計57万7500円を認め、Xの精神的苦痛は、財産上の損害の回復によって償われるとして、慰藉料は認めなかった。)。 

家屋賃借人の内縁の夫が賃借人の死後において家屋に居住できるとされた事例


家屋明渡請求事件
【事件番号】    最高裁判所第2小法廷判決/昭和39年(オ)第1036号
【判決日付】    昭和42年4月28日
【判示事項】    家屋賃借人の内縁の夫が賃借人の死後において家屋に居住できるとされた事例
【参照条文】    民法601
          民法896
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集21巻3号780頁


民法
(賃貸借)
第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

借地借家法
(居住用建物の賃貸借の承継)
第三十六条 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。


       主   文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人橋本清一郎の上告理由について。
 本件家屋の賃借人Aには唯一の相続人として姉B(明治二八年二月二五日生)があり、BはAの死亡当時行先不明で生死も判然としないことが認められるけれども、Bがその頃すでに死亡していたとの確証がない本件では、Aの死亡によりBが遺産相続人として本件家屋の賃借権を相続承継したと認めるほかはない旨の原判決の判断は、その挙示する証拠関係から肯認することができる。
 さらに、Aは昭和一五年八月七日上告人から本件家屋を賃借したものであること、被上告人は、Aの内縁の夫であり、昭和二六年九月から本件家屋に同棲して互に扶け合い、Aが病床につき昭和三七年七月五日死亡するまでの約三年間は同人の面倒をみてきたものであり、A死亡後もひきつづき本件家屋に居住していることは、原判決の適法に確定するところである。
 以上の事実関係のもとにおいては、被上告人はAの家族共同体の一員として、上告人に対し、同人の賃借権を援用し本件家屋に居住する権利を対抗しえたのであり、この法律関係は同人が死亡し、その相続人が本件家屋の賃借権を承継した以後においても特別の事情のないかぎり変りがないというべきであるから(昭和三七年一二月二五日第三小法廷判決、集第一六巻第一二号二四五五頁参照)、 結局これと同趣旨に出た原判決の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷