代物弁済の予約であるのに停止条件付代物弁済契約がなされたごとく記載された仮登記の効力
建物所有権移転請求上告事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和40年(オ)第646号
【判決日付】 昭和41年9月16日
【判示事項】 代物弁済の予約であるのに停止条件付代物弁済契約がなされたごとく記載された仮登記の効力
【判決要旨】 代物弁済の予約であるのに、登記簿上は、仮登記原因として、停止条件付代物弁済契約がなされたごとく記載されていても、このような登記原因についての記載の誤りは、仮登記自体の効力を害するものではない。このような仮登記権利者は更生登記をしないでも仮登記にもとづいて本登記をすることができる。
【参照条文】 不動産登記法2
不動産登記法55
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事84号385頁
金融法務事情458号7頁
不動産登記法
(仮登記)
第百五条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。
二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
(仮登記に基づく本登記の順位)
第百六条 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。
(仮登記に基づく本登記)
第百九条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。
理 由
上告代理人八代俊雄の上告理由について。
原判決が、本件建物につき訴外宮崎と上告人の問に締結されたのは、代物弁済の予約であるのに、登記簿上は、仮登記の原因として、停止条件付代物弁済契約がなされた如く記載されていることを認定したうえで、かかる登記原因についての記載の誤りは仮登記自体の効力を害するものではなく、現実に締結された代物弁済の予約に基づく仮登記として、後日なされる本合一記の順位を保全する効力を有するものと解するのが相当であるとし、かかる仮合一記権利者は、前記合一記原因につき更正合一記を求めるまでもなく、右仮登記に基づいて仮登記義務者に対し本登記手続を請求できると判断していることは、論旨のいうとおりである。
しかし、本件の如く所有権移転請求権保全の仮登記にあつても、それは本登記の順位を保全することを目的としてなされるものであつて、仮登記の原因たる権利関係自体の公示にその目的があるのではないから、仮登記された権利関係と実質上の権利関係との間に若干の喰い違いがあつても、当該仮登記が特定の不動産の所有権移転請求権を保全するための仮登記として同一性を害するものと認められない限り直ちにこれを無効とすべきではないと解すべきことは、既に当裁判所の判例(昭和三四年(オ)第一八三号、同三七年七月六日第二小法廷判決、民集一六巻七号一四五二頁参照)であつて、これと同趣旨の原審判断は、すべて是認できる。
論旨は、右の場合更正登記手続を経由し、実体関係と登記面との不一致が是正されたのち、はじめて右仮登記に基づく本登記手続の請求ができるものであると主張するが、独自の見解にすぎず、採用できない。
【主文は出典に掲載されておりません。】