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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

仏壇を装飾する彫刻が、著作権法の保護の対象となる著作物に当たるとされた事例

 

神戸地方裁判所姫路支部判決/昭和49年(ワ)第291号

昭和54年7月9日

著作権侵害排除等請求事件

仏壇彫刻事件

【判示事項】    1、仏壇を装飾する彫刻が、著作権法の保護の対象となる著作物に当たるとされた事例

2、仏壇を装飾する彫刻の複製行為が、1掲記の彫刻についての著作権を侵害するとされた事例

【掲載誌】     無体財産権関係民事・行政裁判例集11巻2号371頁

【評釈論文】    別冊ジュリスト91号66頁

          別冊ジュリスト128号20頁

 

第23章 責任限定契約の見直し

責任限定契約が締結できる役員の範囲は、従来は社外取締役、会計参与、社外監査役、会計監査人でしたが、社外の要件がなくなり、業務執行取締役以外の取締役、会計参与、監査役、会計監査人となりました(会427条)。

 

 

 

 

第24章 新株予約権無償割当てに関する割当通知

 

 株式会社が株主に対して割り当てた新株予約権の内容及び数等についての当該株主等に対する通知は、効力発生日後遅滞なくしなければならない。当該新株予約権を行使することができる期間の末日が当該通知の日から2週間を経過する日前に到来するときは、当該期間は、当該通知の日から2週間を経過する日まで延長されたものとみなす。(第279条関係)

 

 

 

 

第25章 株主名簿等の閲覧等の請求の拒絶事由

 

 第125条第3項第3号及び第252条第3項第3号を削る。

 

 

 

第26章 発行可能株式総数

 

 ① 公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合及び株式会社が株式の併合をしようとする場合における発行可能株式総数に関する規定を設ける。(第113条第3項、第180条第2項・第3項関係)

 

 ② 新設合併等における設立株式会社の設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。(第814条第1項関係)

 

 

 

第27章 募集株式が譲渡制限株

 

 募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合であって、当該募集株式が譲渡制限株式であるとき等においては、株式会社は、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該契約の承認を受けなければならない。(第205条第2項、第244条第3項関係)

 

 

 

第28章 準備金の計上に関する特則式である場合等の総数引受契約

 

 分割会社が会社分割の効力発生日等に剰余金の配当(配当財産が承継会社等の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場合には、第445条第4項の規定は、適用しない。(第792条、第812条関係)

 

 

 

第29章 監査役の監査の範囲に関する登記

 

 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社について、当該定款の定めがある旨を登記事項に追加する。(第911条第3項第17号関係)

 

 

 

 

他人の権利を目的とする売買と売主の責に帰すべき事由による履行不能の場合の損害賠償

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷/昭和49年(オ)第314号

【判決日付】      昭和50年12月25日

【判示事項】      他人の権利を目的とする売買と売主の責に帰すべき事由による履行不能の場合の損害賠償

【判決要旨】     他人の権利を目的とする売買の売主が、その責に帰すべき事由によつて、右権利を取得してこれを買主に移転することができない場合には、買主は、債務不履行一般の原則に従つて、その履行不能と相当因果関係に立つ全損害の賠償を請求することができる。

【参照条文】      民法561

             民法415

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事116号863頁

             金融法務事情784号34頁

 

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

(他人の権利の売買における売主の義務)

第五百六十一条 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

 

 

 

 

       理   由

 

 上告代理人吉野森三、同鈴木秀男の上告理由第一点について

 原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、井上一富が所論の欺罔行為により侵害した上告人の権利ないし利益は、上告人が本件土地を有効に取得しうると信じて同人に支払つた代金七六万円の出捐に尽きるものであつて、本件土地売買契約が履行された場合に得られたであろう転売利益に対する期待権の侵害にまで及ぶものとはいえない。これと同旨の原審の判断は、正当であり、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができな

 同第二点について

 原審の適法に確定した事実によれば、(一)群馬県吾妻郡嬬恋村大字鎌原字立野一〇四五番地の四八山林一町一反七畝二五歩(以下「本件山林」という。)は、昭和二四年七月二日自作農創設特別措置法四一条に基づき被上告人土屋開門の妹にあたる訴外土屋五に売り渡された土地であるにもかかわらず、当時農地委員をしていた同被上告人が売渡通知書の売渡を受ける者の氏名を勝手に自分の子の土屋了名義に変更し、右売渡を原因とする同人名義の所有権移転登記を経由してしまつたので昭和三七年三、四月ごろ土屋五は土屋了を被告として本件山林につきその所有名義の変更を求める訴訟を提起するとともに、処分禁止の仮処分決定を得てその登記を経由した、(二)右訴訟提起後、被上告人土屋開門は、被上告人井上ミエの夫で、被上告人井上滋子、同井上恵子の父にあたる訴外亡井上一富から本件山林ほか一筆の山林の売却を求められたので、本件山林については土屋五との間で係争中であることを告げたところ、井上一富において、裁判の結果がどうなろうとも自分が一切の責任を負うから売つてほしいというので、同年六月二五日ころ了の代理人として本件山林を井上一富に売却し、登記については同人の指定する者に中間省略の方法で所有権移転登記手続することとし、同年八月中に代金の完済を受けた、国井上一富は、本件山林につき土屋五から訴訟が提起されていることを知りながら、この事実を隠して、同年七月末ころ、本件山林の一部である分筆後の同所一〇四五番の二七三山林四反五畝一一歩(以下「本件土地」という。)を自己所有地として代金七六万円で上告人に売却し、右代金全額の支払を受けたうえ、同年一〇月四日本件土地につき中間省略により土屋了から上告人への所有権移転登記を経由した、(四)ところが、その後土屋五の土屋了に対する前記訴訟は、本件山林につき売渡を受けたのは土屋五であるとして同人の勝訴に確定し、昭和四一年七月二二日土屋了名義の本件山林売渡登記及び仮処分後に経由された上告人名義の本件土地所有権移転登記はいずれも抹消され、改めて土屋五名義に売渡登記が経由された、国井上一富は昭和四四年一二月二一日死亡し、被上告人井上ミエ、同井上滋子、同井上恵子(以下「被上告人井上ら」という。)が同人を共同相続した、というのである。

 およそ、他人の権利を目的とする売買の売主が、その責に帰すべき事由によつて、右権利を取得してこれを買主に移転することができない場合には、買主は、債務不履行一般の原則にしたがつて、その履行不能と相当因果関係に立つ全損害の賠償を請求することができることは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁判所昭和四〇年(オ)第二一〇号同四一年九月八日第一小法廷判決・民集二〇巻七号一三二五頁参照)、右履行不能の意味についてはこれを社会の取引観念にしたがつて判断するのが相当である。この場合、売主が契約に際し他人の権利を取得することを停止条件として売買をしたものでないかぎり、売買の目的たる権利が他人に属することについての買主の知・不知を問題とする余地はなく、したがつてまた、契約に際し、売主が売買の目的たる権利を自己の物であると主張するか他人の物であることを明示するかにかかわらず、他人の権利を目的とする売買として契約は有効に成立し、民法五六〇条の適用があることは、同条と同法五六一条、五六二条を対比することによりおのずから明らかであるといわなければならない。

 これを本件についてみるのに、前記原審の確定した事実によれば、井上一富と上告人との間の本件土地売買契約は、売主たる井上一富において本件土地が同人の所有であると装つてこれを締結したものであると否とにかかわらず、他人の権利を目的とする売買として有効に成立し、井上一富がその責に帰すべき事由によつてその権利を取得してこれを買主たる上告人に移転することができなかつた場合には、上告人は井上一富に対し履行不能に基づく損害賠償を請求することができ、右損害賠償の範囲は、右履行不能の時期その他の事情いかんによつては、上告人の主張する転売利益の喪失による損害にも及ぶ余地があるものといわなければならない。しかるに、原審は、井上一富と上告人との間に本件土地売買契約が締結された当時、本件土地は客観的には土屋五の所有であり土屋了は当初から本件土地所有権を有していなかつたことを理由とするだけで、土屋五が本件土地を他には絶対に売却しない意思を有していたか否か、また、井上一富が土屋五から本件土地を相当価格で買い受ける努力をしたか否か等井上一富が本件土地所有権を土屋五から取得してこれを上告人に移転することができない事由についてなんら判断することなく、単に、本件土地が井上一富の所有であることを前提に締結された本件土地売買契約の内容は締結当初から客観的に不能であり、契約は無効であるとして、上告人の被上告人井上らに対する債務不履行に基づく損害賠償請求を排斥しているのであつて、原判決には、この点において他人の権利を目的とする売買契約及びその履行不能について法令の解釈適用を誤つた違法があるといわなければならず、右違法は上告人の被上告人井上らに対する請求につき原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決中、上告人の被上告人井上らに対汁る請求につき上告人を敗訴せしめた部分は破棄を免れず、更に以上の点について審理を尽くさせるため、右の部分を原審に差し戻すのが相当である。

 同第三点について

 原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の被上告人土屋開門に対する不法行為を理由とする損害賠償請求を排斥した原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 藤林益三・岸 盛一・岸上康夫・団藤重

【主文は出典に掲載されておりません。】

 

 

 

地方公務員としての採用内定の取消しが抗告訴訟の対象となる処分にあたらないとされた事例

 

 

採用内定取消処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和51年(行ツ)第114号

【判決日付】      昭和57年5月27日

【判示事項】      地方公務員としての採用内定の取消しが抗告訴訟の対象となる処分にあたらないとされた事例

【判決要旨】      地方公務員である職員としての採用内定の通知がされた場合において、職員の採用は内規によつて辞令を交付することにより行うこととされ、右採用内定の通知は法令上の根拠に基づくものではないなど、判示の事実関係があるときは、右採用内定の通知は事実上の行為にすぎず、右内定の取消は、抗告訴訟の対象となる処分にあたらない。

【参照条文】      地方公務員法17-1

             行政事件訴訟法3-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集36巻5号777頁

 

地方公務員法

(任命の方法)

第十七条 職員の職に欠員を生じた場合においては、任命権者は、採用、昇任、降任又は転任のいずれかの方法により、職員を任命することができる。

2 人事委員会(競争試験等を行う公平委員会を含む。以下この節において同じ。)を置く地方公共団体においては、人事委員会は、前項の任命の方法のうちのいずれによるべきかについての一般的基準を定めることができる。

 

行政事件訴訟法

(抗告訴訟)

第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。

5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。

6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。

一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。

二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。

 

委任事務終了前における委任者の受任者に対する前払費用についての返還請求権の被転付適格

 

最高裁判所第2小法廷決定/平成17年(許)第33号

平成18年4月14日

転付命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

【判示事項】    委任事務終了前における委任者の受任者に対する前払費用についての返還請求権の被転付適格

【判決要旨】    委任者が委任事務の処理のために受任者に交付した前払費用についての返還請求権は,当該委任事務の終了前においては,転付命令の券面額を有するものとはいえず,被転付適格を有しない。

【参照条文】    民事執行法159

          民法649

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集60巻4号1535頁

 

民法

(受任者による費用の前払請求)

第六百四十九条 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

 

民事執行法

(転付命令)

第百五十九条 執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令(以下「転付命令」という。)を発することができる。

2 転付命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。

3 転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。

4 第一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。

5 転付命令は、確定しなければその効力を生じない。

6 差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「確定しなければ」とあるのは、「確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から四週間を経過するまでは、」とする。

7 転付命令が発せられた後に第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書を提出したことを理由として執行抗告がされたときは、抗告裁判所は、他の理由により転付命令を取り消す場合を除き、執行抗告についての裁判を留保しなければならない。

 

 

       主   文

 

 原決定を破棄し,原々決定中転付命令の部分を取り消す。

 本件転付命令の申立てを却下する。

 前項の申立て及び抗告の総費用は相手方の負担とする。

 

       理   由

 

 抗告代理人安部祐志の抗告理由について

 1 記録によれば,本件の経過は次のとおりである。

 (1)弁護士である抗告人は,A工業有限会社から,債務整理事務の委任を受け,同事務を処理するための費用として,同社が所有していた工場の売却等により得た金員合計1493万4614円の交付を受け,同社の債権者らのうち相手方ほか1社を除く債権者らに対して合計411万8266円を支払い,残額1081万6348円を管理している。

 (2)相手方は,A工業に対して相手方への金員の支払を命ずる旨の確定判決を債務名義として,同社が抗告人に対して有する上記(1)の1081万6348円相当額の返還請求権(以下「本件債権」という。)について差押命令及び転付命令を申し立てた。

 (3)原々審は,上記申立てを全部認容する旨の原々決定をし,原々決定は,抗告人及びA工業にそれぞれ送達された。これに対し,抗告人は,原々決定中転付命令の申立てを認容した部分を不服として執行抗告をした。

 2 原審は,本件債権は,債権として現に存在し,また,弁済に充てられる金額を確定することもできるから,民事執行法159条1項にいう券面額を有するものであると判断して,上記執行抗告を棄却する旨の原決定をした。

 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 前記事実関係によれば,抗告人は,A工業から,債務整理事務の委任を受け,同事務を処理するための費用として1081万6348円を管理しているところ,これは,民法649条の規定する前払費用に当たるものと解される。前払費用は,委任事務の処理のための費用に充てるものとして交付されたものであるから,受任者が委任事務を処理するために費用を支出するたびに当該費用に充当されることが予定されており,受任者は,当該委任事務が終了した時に,前払費用から支出した費用を差し引いた残金相当額を委任者に返還すべきこととなる。したがって,委任者の受任者に対する上記前払費用についての返還請求権は,当該委任事務の終了時に初めてその債権額が確定するものというべきである。そして,同請求権が委任者の債権者によって差し押さえられた場合であっても,受任者は,当該委任事務が終了しない限り,委任事務の遂行を何ら妨げられるものではなく,委任事務の処理のために費用を支出したときは,委任者から交付を受けた前払費用をこれに充当することができるものと解される。

 以上によれば,委任者の受任者に対する前払費用についての返還請求権は,当該委任事務の終了前においては,その債権額を確定することができないのであるから,民事執行法159条1項にいう券面額を有するものとはいえず,転付命令の対象となる適格を有しないものと解すべきである。

 本件債権は,上記前払費用についての返還請求権に当たるものであり,抗告人がA工業から委任を受けた債務整理事務が終了していない以上,転付命令の対象となる適格を有しないというべきである。

 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,上記説示によれば,原々決定中本件転付命令の申立てを認容した部分は不当であるからこれを取り消し,同申立てを却下することとする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

特定秘密保護法とその先にあるもの 憲法秩序と市民社会の危機』 (新・総合特集シリーズ(別冊法学セミナー) 5) ムック – 2014/4/28

村井 敏邦 (編集), 田島 泰彦 (編集)

 

 

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言語 ‏ : ‎ 日本語

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コメント

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第4部 その他

 

第22章 仮装払込みによる募集株式の発行等

 

 (1) 出資の履行を仮装した募集株式の引受人の責任

 

  募集株式の引受人は、出資の履行を仮装した場合には、株式会社に対し、払込みを仮装した払込金額の全額の支払等をする義務を負う。当該義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。(第213条の2関係)

 

 (2) 出資の履行を仮装した場合の取締役等の責任

 

  募集株式の引受人が出資の履行を仮装することに関与した取締役等は、株式会社に対し、払込みを仮装した払込金額の全額の支払等をする義務を負う。ただし、当該取締役等(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。(第213条の3関係)

 

 (3) 出資の履行を仮装した募集株式の引受人による株主の権利の行使

 

  ① 募集株式の引受人は、出資の履行を仮装した場合には、(1)又は(2)の支払等がされた後でなければ、出資の履行を仮装した募集株式について、株主の権利を行使することができない。(第209条第2項関係)

 

  ② ①の募集株式を譲り受けた者は、当該募集株式についての株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。(第209条第3項関係)

 

 (4) 設立時発行株式についての出資の履行等が仮装された場合の規律

 

  発起人が設立時発行株式についての払込み等を仮装した場合、設立時募集株式の引受人が払込みを仮装した場合及び新株予約権について払込み等が仮装された場合についても、(1)から(3)までと同様の規定を設ける。(第52条の2、第55条、第102条第3項・第4項、第102条の2、第103条第2項・第3項、第282条第2項・第3項、第286条の2、第286条の3関係)

 

 

 

第23章 責任限定契約の見直し

責任限定契約が締結できる役員の範囲は、従来は社外取締役、会計参与、社外監査役、会計監査人でしたが、社外の要件がなくなり、業務執行取締役以外の取締役、会計参与、監査役、会計監査人となりました(会427条)。

 

他人の権利を売買の目的とした場合の売主の担保責任と債務不履行による責任

 

 

損害賠償等事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和40年(オ)第210号

【判決日付】      昭和41年9月8日

【判示事項】      他人の権利を売買の目的とした場合の売主の担保責任と債務不履行による責任

【判決要旨】     他人の権利を目的とする売買の売主が、その責に帰すべき事由によつて、該権利を取得してこれを買主に移転することができない場合には、買主は、売主に対し、民法第561条但書の適用上、担保責任としての損害賠償の請求ができないときでも、なお債務不履行一般の規定に従つて、損害賠償の請求をすることができるものと解するのが相当である。

【参照条文】      民法561

             民法415

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集20巻7号1325頁

 

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

(他人の権利の売買における売主の義務)

第五百六十一条 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 本件を東京高等裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 上告代理人白上孝千代の上告理由について。

 原判決の確定したところによると、上告人と被上告人との本件売買契約は、第三者たる訴外D酒造株式会社の所有に属する本件土地を目的とするものであつたところ、原審認定の事情によつて売主たる被上告人が右所有権を取得してこれを買主たる上告人に移転することができなくなつたため履行不能に終つたというのである。

 そして、本件売買契約の当時すでに買主たる上告人が右所有権の売主に属しないことを知つていたから、上告人が民法五六一条に基づいて本件売買契約を解除しても、同条但書の適用上、売主の担保責任としての損害賠償請求を被上告人にすることはできないとした原審の判断は正当である。

 しかし、他人の権利を売買の目的とした場合において、売主がその権利を取得してこれを買主に移転する義務の履行不能を生じたときにあつて、その履行不能が売主の責に帰すべき事由によるものであれば、買主は、売主の担保責任に関する民法五六一条の規定にかかわらず、なお債務不履行一般の規定(民法五四三条、四一五条)に従つて、契約を解除し損害賠償の請求をすることができるものと解するのを相当とするところ、上告人の本訴請求は、前示履行不能が売主たる被上告人の責に帰すべき事由によるものであるとして、同人に対し債務不履行による損害賠償の請求をもしていることがその主張上明らかである。しかして、原審認定判示の事実関係によれば、前示履行不能は被上告人の故意または過失によつて生じたものと認める余地が十分にあつても、未だもつて取引の通念上不可抗力によるものとは解し難いから、右履行不能が被上告人の責に帰すべき事由によるものとはみられないとした原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるといわねばならない。

 従つて、この点を指摘する論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく原判決は破棄を免れず、本件を原審に差し戻すのを相当とする。

 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷

 

 

中国民航機ハイジャック犯人を引き渡すことができる場合に該当すると認められた事例

 

 

              逃亡犯罪人引渡審査請求事件

【事件番号】      東京高等裁判所決定/平成2年(て)第37号

【判決日付】      平成2年4月20日

【判示事項】      一、中国民航機ハイジャック犯人を引き渡すことができる場合に該当すると認められた事例

             二、逃亡犯罪人引渡法二条一号にいう政治犯罪

             三、逃亡犯罪人引渡しと国際人権B規約七条、難民条約三三条の関係

【参照条文】      逃亡犯罪人引渡法

             逃亡犯罪人引渡法4

             逃亡犯罪人引渡法10

             市民的及び政治的権利に関する国際規約

             難民の地位に関する条約33

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集44巻3号321頁

 

 

逃亡犯罪人引渡法

(引渡に関する制限)

第二条 左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。但し、第三号、第四号、第八号又は第九号に該当する場合において、引渡条約に別段の定があるときは、この限りでない。

一 引渡犯罪が政治犯罪であるとき。

二 引渡の請求が、逃亡犯罪人の犯した政治犯罪について審判し、又は刑罰を執行する目的でなされたものと認められるとき。

三 引渡犯罪が請求国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑にあたるものでないとき。

四 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行なわれたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮こに処すべき罪にあたるものでないとき。

五 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われ、又は引渡犯罪に係る裁判が日本国の裁判所において行われたとした場合において、日本国の法令により逃亡犯罪人に刑罰を科し、又はこれを執行することができないと認められるとき。

六 引渡犯罪について請求国の有罪の裁判がある場合を除き、逃亡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行つたことを疑うに足りる相当な理由がないとき。

七 引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。

八 逃亡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について逃亡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終らず、若しくは執行を受けないこととなつていないとき。

九 逃亡犯罪人が日本国民であるとき。

 

(法務大臣の措置)

第四条 法務大臣は、外務大臣から前条の規定による引渡しの請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し関係書類を送付して、逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて東京高等裁判所に審査の請求をなすべき旨を命じなければならない。

一 明らかに逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当すると認めるとき。

二 第二条第八号又は第九号に該当する場合には逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡条約の定めがある場合において、明らかに同条第八号又は第九号に該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。

三 前号に定める場合のほか、逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡条約の定めがある場合において、当該定めに該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。

四 引渡しの請求が引渡条約に基づかないで行われたものである場合において、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。

2 法務大臣は、前項第三号又は第四号の認定をしようとするときは、あらかじめ外務大臣と協議しなければならない。

3 法務大臣は、第一項の規定による命令その他逃亡犯罪人の引渡しに関する措置をとるため必要があると認めるときは、逃亡犯罪人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。

 

(東京高等裁判所の決定)

第十条 東京高等裁判所は、前条第一項の規定による審査の結果に基いて、左の区別に従い、決定をしなければならない。

一 審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定

二 逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当するときは、その旨の決定

三 逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するときは、その旨の決定

2 前項の決定は、その主文を東京高等検察庁の検察官に通知することによつて、その効力を生ずる。

3 東京高等裁判所は、第一項の決定をしたときは、すみやかに、東京高等検察庁の検察官及び逃亡犯罪人に裁判書の謄本を送達し、東京高等検察庁の検察官にその提出した関係書類を返還しなければならない。

 

市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約) 条約本文

何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。

 

難民の地位に関する条約

第33条【追放及び送還の禁止】

1 締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。

2 締約国にいる難民であって、当該締約国の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由がある者または特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し当該締約国の社会にとって危険な存在となった者は、1の規定による利益の享受を要求することができない。

 

 

従業員が会社の実施した忘年会に参加し、同会終了後同会場玄関前付近で事故に遭い負傷したことが、業務上の災害とはいえないとされた事例

 

名古屋高等裁判所金沢支部判決/昭和57年(行コ)第3号

昭和58年9月21日

休業補償給付不支給決定取消請求控訴事件

【判示事項】    従業員が会社の実施した忘年会に参加し、同会終了後同会場玄関前付近で事故に遭い負傷したことが、業務上の災害とはいえないとされた事例

【参照条文】    労働基準法75

          労働基準法76

          労働者災害補償保険法14

【掲載誌】     労働関係民事裁判例集34巻5~6号809頁

          訟務月報30巻3号552頁

【評釈論文】    別冊ジュリスト113号114頁

 

労働基準法

(療養補償)

第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

② 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

 

(休業補償)

第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

② 使用者は、前項の規定により休業補償を行つている労働者と同一の事業場における同種の労働者に対して所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下四半期という。)ごとの一箇月一人当り平均額(常時百人未満の労働者を使用する事業場については、厚生労働省において作成する毎月勤労統計における当該事業場の属する産業に係る毎月きまつて支給する給与の四半期の労働者一人当りの一箇月平均額。以下平均給与額という。)が、当該労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた日の属する四半期における平均給与額の百分の百二十をこえ、又は百分の八十を下るに至つた場合においては、使用者は、その上昇し又は低下した比率に応じて、その上昇し又は低下するに至つた四半期の次の次の四半期において、前項の規定により当該労働者に対して行つている休業補償の額を改訂し、その改訂をした四半期に属する最初の月から改訂された額により休業補償を行わなければならない。改訂後の休業補償の額の改訂についてもこれに準ずる。

③ 前項の規定により難い場合における改訂の方法その他同項の規定による改訂について必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 

労働者災害補償保険法

第十四条 休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。ただし、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働する日若しくは賃金が支払われる休暇(以下この項において「部分算定日」という。)又は複数事業労働者の部分算定日に係る休業補償給付の額は、給付基礎日額(第八条の二第二項第二号に定める額(以下この項において「最高限度額」という。)を給付基礎日額とすることとされている場合にあつては、同号の規定の適用がないものとした場合における給付基礎日額)から部分算定日に対して支払われる賃金の額を控除して得た額(当該控除して得た額が最高限度額を超える場合にあつては、最高限度額に相当する額)の百分の六十に相当する額とする。

 休業補償給付を受ける労働者が同一の事由について厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)の規定による障害厚生年金又は国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)の規定による障害基礎年金を受けることができるときは、当該労働者に支給する休業補償給付の額は、前項の規定にかかわらず、同項の額に別表第一第一号から第三号までに規定する場合に応じ、それぞれ同表第一号から第三号までの政令で定める率のうち傷病補償年金について定める率を乗じて得た額(その額が政令で定める額を下回る場合には、当該政令で定める額)とする。