中国民航機ハイジャック犯人を引き渡すことができる場合に該当すると認められた事例 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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中国民航機ハイジャック犯人を引き渡すことができる場合に該当すると認められた事例

 

 

              逃亡犯罪人引渡審査請求事件

【事件番号】      東京高等裁判所決定/平成2年(て)第37号

【判決日付】      平成2年4月20日

【判示事項】      一、中国民航機ハイジャック犯人を引き渡すことができる場合に該当すると認められた事例

             二、逃亡犯罪人引渡法二条一号にいう政治犯罪

             三、逃亡犯罪人引渡しと国際人権B規約七条、難民条約三三条の関係

【参照条文】      逃亡犯罪人引渡法

             逃亡犯罪人引渡法4

             逃亡犯罪人引渡法10

             市民的及び政治的権利に関する国際規約

             難民の地位に関する条約33

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集44巻3号321頁

 

 

逃亡犯罪人引渡法

(引渡に関する制限)

第二条 左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。但し、第三号、第四号、第八号又は第九号に該当する場合において、引渡条約に別段の定があるときは、この限りでない。

一 引渡犯罪が政治犯罪であるとき。

二 引渡の請求が、逃亡犯罪人の犯した政治犯罪について審判し、又は刑罰を執行する目的でなされたものと認められるとき。

三 引渡犯罪が請求国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑にあたるものでないとき。

四 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行なわれたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮こに処すべき罪にあたるものでないとき。

五 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われ、又は引渡犯罪に係る裁判が日本国の裁判所において行われたとした場合において、日本国の法令により逃亡犯罪人に刑罰を科し、又はこれを執行することができないと認められるとき。

六 引渡犯罪について請求国の有罪の裁判がある場合を除き、逃亡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行つたことを疑うに足りる相当な理由がないとき。

七 引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。

八 逃亡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について逃亡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終らず、若しくは執行を受けないこととなつていないとき。

九 逃亡犯罪人が日本国民であるとき。

 

(法務大臣の措置)

第四条 法務大臣は、外務大臣から前条の規定による引渡しの請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し関係書類を送付して、逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて東京高等裁判所に審査の請求をなすべき旨を命じなければならない。

一 明らかに逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当すると認めるとき。

二 第二条第八号又は第九号に該当する場合には逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡条約の定めがある場合において、明らかに同条第八号又は第九号に該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。

三 前号に定める場合のほか、逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡条約の定めがある場合において、当該定めに該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。

四 引渡しの請求が引渡条約に基づかないで行われたものである場合において、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。

2 法務大臣は、前項第三号又は第四号の認定をしようとするときは、あらかじめ外務大臣と協議しなければならない。

3 法務大臣は、第一項の規定による命令その他逃亡犯罪人の引渡しに関する措置をとるため必要があると認めるときは、逃亡犯罪人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。

 

(東京高等裁判所の決定)

第十条 東京高等裁判所は、前条第一項の規定による審査の結果に基いて、左の区別に従い、決定をしなければならない。

一 審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定

二 逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当するときは、その旨の決定

三 逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するときは、その旨の決定

2 前項の決定は、その主文を東京高等検察庁の検察官に通知することによつて、その効力を生ずる。

3 東京高等裁判所は、第一項の決定をしたときは、すみやかに、東京高等検察庁の検察官及び逃亡犯罪人に裁判書の謄本を送達し、東京高等検察庁の検察官にその提出した関係書類を返還しなければならない。

 

市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約) 条約本文

何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。

 

難民の地位に関する条約

第33条【追放及び送還の禁止】

1 締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。

2 締約国にいる難民であって、当該締約国の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由がある者または特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し当該締約国の社会にとって危険な存在となった者は、1の規定による利益の享受を要求することができない。