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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

所有権留保の自動車月賦販売において、割賦金不払を解除権の発生原因とし、かつ、売主が右解除とともに目的自動車の引揚げを予め買主に約諾させることは、契約の自由として許されるべきであり、公序良俗に反しない。

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和38年(オ)第128号

昭和39年3月31日

損害金請求

【判示事項】    自動車の月賦販売契約において,当事者間の特約により所有権を留保し,割賦代金の不払を契約解除権の発生原因とし,更に解除と共に目的自動車の引揚げを予め買主において約諾することは,契約の自由として許さるべきであり,公序良俗に反するものとは言えないし,特段の事情のない限り,この約諾に基づき目的自動車を引き揚げることを以って直ちに自力救済を容認するものとは解し難いとした事例

【判決要旨】    所有権留保の自動車月賦販売において、割賦金不払を解除権の発生原因とし、かつ、売主が右解除とともに目的自動車の引揚げを予め買主に約諾させることは、契約の自由として許されるべきであり、公序良俗に反しない。

【参照条文】    民法1

          民法90

【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事72号647頁

 

所有権留保

所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)とは、売主が売買代金を担保するため、代金が完済されるまで引渡しの終えた目的物の所有権を留保するもの。売買契約中の特約により行われる。非典型担保の一つである。主な具体例は以下の通り。

 

クレジットカードによる商品購入: カード会員規約の条項に従い、代金完済までカード会社に所有権が留保されるのが通例である。

割賦販売: 売買契約等の条項に従い、代金完済まで売主または信販会社に所有権が留保されるのが通例である。なお、割賦販売における所有権留保は割賦販売法の規定により一定の規制を受けることになる。

所有権留保の法的構成

所有権留保の法的構成には所有権的構成と担保権的構成がある。

 

所有権的構成

目的物の所有権は売主に帰属する。判例は所有権的構成といわれる。

担保権的構成

目的物の所有権は買主に移転し、売主は代金を被担保債権とした担保権(物権)的地位を有する。

 

所有権留保の効力

対内的効力

この節の加筆が望まれています。

対外的効力

所有権留保物が譲渡された場合で考えると以下のようになる。

 

所有権的構成 買主は所有権者ではないから、第三者は目的物を善意取得しうるにとどまる。

担保的構成  買主は所有権を有するから第三者は所有権留保付の所有権を承継取得する。所有権留保について善意無過失であれば所有権留保のつかない所有権を取得する。

 

所有権留保権者の引渡請求は権利濫用法理により制限されることがある。

 

所有権留保の実行

所有権留保の実行方法は売買契約を解除して目的物の返還を請求する方法による。なお、割賦販売における所有権留保の実行においては割賦販売法上の規制を受ける。

 

民法

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人神代宗衛の上告理由一について。

 所論は、原判決が被上告人主張のごとき売買契約解除と本件自動車の引揚げの特約が当事者間になされたことを、適切な証拠に基づかず、証拠の玩味をすることなく不当に認定したと主張するが、証拠の取捨判断、事実の認定は原審の専権に属するものであり、論旨は上告理由として採用できない。

 同二について。

 所論中、原審の事実認定を非難する点は、前示のごとく採用の限りでない。

 原判決が「しかし、最も動的であつて、一たん占有を移転すれば所在の捕捉すら事実上困難になりがちな自動車の月賦販売において、当事者間の特約により所有権を留保し、割賦代金の不払を契約解除権の発生原因とし、更に解除と共に目的自動車の引揚げを予め買主において約諾することは、契約の自由として許さるべきであつて、公序良俗に反するものとは言えないし、特段の事情なき限りこの予めなされた承諾に基き目的自動車を引揚げることを以て、直ちに自力救助を容認するものとは解し難い」とした判断は、首肯できる。この判示をとらえて、原判決が自力救済を認め法秩序を紊る判断をしたとする論旨は、原判示を正解しないことに基づくもので採用できないし、原判決の右判断が契約自由の原則の限界を無視するものであると論難する点は、独自の見解にすぎないものであつて採用し難い。

 また、所論は、本件自動車を被上告人が引き揚げるについて、上告人の留守中その家族である十三才の少年に対し被上告人の使用人がその旨を告げただけであるから、上告人としては空巣をねらわれたも同然であり、このような被上告人の行為は民法一条にいう権利の濫用にあたる旨主張するが、原判決が挙示の証拠関係によつて認定判示するところによれば、上告人は再三の請求にもかかわらず、残代金二〇〇、〇〇〇円の支払をなさず、被上告人においては前記特約に基づき売買契約を解除し本件自動車を引き揚げることとし、右自動車引揚げの数日前に被上告人会社の営業部員たる弁上勉が上告人方を訪れたが、上告人が不在であつたので、家人に右の趣旨を伝え、その頃上告人もこれを知つたこと、被上告人はその後訴外宮田経営の整備工場から本件自動車を引き揚げたが、その際右宮田より上告人に対する自動車修理代金三、九三〇円の支払請求を受けこれを被上告人において立替支払つたこと、被上告人は上告人に対し、その三日後の日付の内容証明郵便を以て、右契約解除の意思表示をなしたうえで自動車を引き揚げたこと及び原判示の期限までに未払代金の支払がない場合本件自動車を処分する旨の通知をしたが、右通知を受けとつた上告人から期限を経過しても回答がなかつたので、はじめてこれを他に売却したというのであるから、上告人が被上告人に空巣をねらわれたも同然であるとして権利濫用をいう所論は、すでに事実関係において前提を異にし、採用の限りでない。

 同三について。

 論旨は、所論代金支払について上告人が被上告人宛の約束手形を振り出し、その支払場所は上告人宅と定められていたのに、被上告人の支払呈示がなされなかつたことを以て、上告人の本件代金支払に不履行の責がなく、従つて被上告人の本件契約解除は無効であると主張し、その証拠として甲二号証の一ないし一〇の約束手形振出の控と原審証人井上勉の証言の存することを指摘して、この点につき何らの判断をなさなかつた原判決の違法をいうが、原判決の判文上は勿論記録を検しても、上告人が原審において右主張をしたことは認められず、右主張のあることを前提とする論旨は採用の限りでない。

 同四について。

 所論は、被上告人が昭和三六年二月四日所論自動車の引揚げをなした後同年二月九日付内容証明郵便による代金支払の催告をしたことを原審が認定判示しているとして、契約解除権行使の前提たるべき代金支払の催告以前に自動車引揚げをなしたことの非について原判決が何らの判断を示さない違法があると主張するが、右契約解除権行使ならびに自動車の引揚げは、原判決認定の前示約定に基づくものであり、所論のごとき代金支払の催告を前提としてなされねばならぬものでなく、所論内容証明郵便によつて未払代金を支払うべき旨上告人に通知したことは、契約解除の前提たる催告の趣旨としてなされたものと判示されてはいないのである。これを要するに、論旨は、原判決の判文を正解しないことに基づくものであり、原判決には、判決に影響すべき判断遺脱は存しないから、所論は採用できない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第三小法廷

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第一法規
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コメント
参考裁判例が必ずしも網羅的ではありません。





目次
第1章 ハラスメントの定義・類型
 第1 セクシュアル・ハラスメント
 第2 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
 第3 パワー・ハラスメント
 第4 SOGIハラスメント
 第5 アカデミック・ハラスメント
 第6 アルコール・ハラスメント,カスタマー・ハラスメント

第2章 ハラスメントの法律相談の対応
 第1 職場におけるハラスメントの具体的相談事例と法的責任
 第2 アカデミック・ハラスメントの具体的相談事例と法的責任

第3章 ハラスメントに対しとり得る手段・措置
 第1 交渉
 第2 法的措置等

第4章 ハラスメントに対して事業主がとるべき具体的対応策
 第1 ハラスメント指針
 第2 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 第3 相談・苦情への対応
 第4 事件が発生した場合の迅速・適切な対応
 第5 マタハラ,育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
 第6 その他併せて講ずべき措置
 第7 事業主が行うことが望ましい取組の内容
 第8 特殊な事情がある場合の対応

第5章 マスコミ対応策と活用法
 第1 被害者側のマスコミ対応
 第2 事業者側のマスコミ対応

文例・裁判例集
 文例
 ・通知書(セクハラ,パワハラ,マタハラ,アカハラ)
 ・訴状(セクハラ,パワハラ)
 ・告訴状(セクハラ)
 ・労働審判手続申立書(パワハラ)
 ・仮処分命令申立書(マタハラ)
 ・請求書(いじめ・嫌がらせ)
 ・譴責処分通知書
 ・懲戒解雇通知書
 ・プレスリリース
 ・合意書
 ・閲覧等制限の申立て
 裁判例集
 ・セクシュアル・ハラスメント
 ・マタニティ・ハラスメント
 ・パワー・ハラスメント
 ・SOGIハラスメント
 ・アカデミック・ハラスメント
 ・アルコール・ハラスメント
 ・カスタマー・ハラスメント
 

税理士法第2条第2号にいう税務書類の「作成」にあたるとされた事例

 

最高裁判所第1小法廷決定/昭和40年(あ)第1134号

税理士法違反被告事件

昭和41年3月31日

【判示事項】    1、税理士法第2条第2号にいう税務書類の「作成」にあたるとされた事例

2、同条にいう「他人の求に応じ」にあたるとされた事例

【判決要旨】    1、某市及びその周辺地域の0細商工業者(会社又は個人)多数が会員となつて組織した本件の如き任意団体(いわゆる権利能力なき社団)の専務局長である被告人が、税理士の資格がなく、かつ税理士法に別段の定めがある場合でないのに、会員の各経理関係の簿冊を一括して会の事務所に備え、各会員から毎月毎に徴した営業に関する収支の伝票等に基づいて、貸借対照表、財産目録を作成し、併せて右書類等に基づいて各会員の事業年度毎の法人税、所得税等の申告書用紙に所要事項を記載した上、申告者各自にその内容を説明し、その諒解の下に申告者の署名押印を得て、これを所轄税務署に提出することを主たる業務としていたという事実関係の下においては、たとえ申告者が、申告書の必要事項の記載完了後これを承認して署名押印したとしても、右申告書は、被告人が税理士法第2条第2号にいう「作成」をしたものというべきである。

2、右のような事実関係の下においては、被告人の各会員のためにする税務書類の作成は、会員との個々的な作成依頼の申込と承諾という関係に基づくものではないとしても、同法第2条にいう「他人の求に応じ」てなされたものというべきである。

【参照条文】    税理士法

          税理士法52

          税理士法59

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集20巻3号146頁

          最高裁判所裁判集刑事158号647頁

          判例タイムズ191号141頁

          判例時報445号47頁

【評釈論文】    法曹時報18巻5号133頁

 

税理士法

(税理士の業務)

第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。

一 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)

二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)

三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号イからヘまでに掲げる事項及び地方税(特別法人事業税を含む。以下同じ。)に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)

2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。

3 前二項の規定は、税理士が他の税理士又は税理士法人(第四十八条の二に規定する税理士法人をいう。次章、第四章及び第五章において同じ。)の補助者として前二項の業務に従事することを妨げない。

 

(税理士業務の制限)

第五十二条 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

(名称の使用制限)

第五十三条 税理士でない者は、税理士若しくは税理士事務所又はこれらに類似する名称を用いてはならない。

2 税理士法人でない者は、税理士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。

3 税理士会及び日本税理士会連合会でない団体は、税理士会若しくは日本税理士会連合会又はこれらに類似する名称を用いてはならない。

4 前三項の規定は、税理士又は税理士法人でない者並びに税理士会及び日本税理士会連合会でない団体が他の法律の規定により認められた名称を用いることを妨げるものと解してはならない。

 

賃貸土地の所有者がその所有権とともにする賃貸人たる地位の譲渡と賃借人の承諾の要否

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和45年(オ)第46号

【判決日付】      昭和46年4月23日

【判示事項】      賃貸土地の所有者がその所有権とともにする賃貸人たる地位の譲渡と賃借人の承諾の要否

【判決要旨】      賃貸借の目的となつている土地の所有者が、その所有権とともに賃貸人たる地位を他に譲渡する場合には、賃貸人の義務の移転を伴うからといつて、特段の事情のないかぎり、賃借人の承諾を必要としない。

【参照条文】      民法466

             民法601

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集25巻3号388頁

             最高裁判所裁判集民事102号563頁

 

平成29年民法改正により、民法605条の2が新設された。

民法605条の2

(不動産の賃貸人たる地位の移転)

第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

4 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

 

海上自衛官である被告人が,上官である教官から依頼を受けて,イージス武器システムに関する防衛秘密が記録保存されたCDを同人に送付して,同秘密を漏えいしたとして、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反の罪に問われた事案


日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反被告事件
【事件番号】    横浜地方裁判所判決/平成19年(わ)第3093号
【判決日付】    平成20年10月28日
【判示事項】    海上自衛官である被告人が,上官である教官から依頼を受けて,イージス武器システムに関する防衛秘密が記録保存されたCDを同人に送付して,同秘密を漏えいしたとして、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反の罪に問われた事案について、CD送付行為は正当な職務行為にあたるなど、弁護人の無罪の主張は採用できないとして、懲役刑につき執行を猶予した事例
【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法
(定義)
第一条 この法律において「日米相互防衛援助協定等」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定及び日本国に対する合衆国艦艇の貸与に関する協定をいう。
2 この法律において「装備品等」とは、船舶、航空機、武器、弾薬その他の装備品及び資材をいう。
3 この法律において「特別防衛秘密」とは、左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画又は物件で、公になつていないものをいう。
一 日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与された装備品等について左に掲げる事項
イ 構造又は性能
ロ 製作、保管又は修理に関する技術
ハ 使用の方法
ニ 品目及び数量
二 日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与された情報で、装備品等に関する前号イからハまでに掲げる事項に関するもの
(特別防衛秘密保護上の措置)
第二条 特別防衛秘密を取り扱う国の行政機関の長は、政令で定めるところにより、特別防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等特別防衛秘密の保護上必要な措置を講ずるものとする。
(罰則)
第三条 左の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。
一 わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で、特別防衛秘密を探知し、又は収集した者
二 わが国の安全を害する目的をもつて、特別防衛秘密を他人に漏らした者
三 特別防衛秘密を取り扱うことを業務とする者で、その業務により知得し、又は領有した特別防衛秘密を他人に漏らしたもの
2 前項第二号又は第三号に該当する者を除き、特別防衛秘密を他人に漏らした者は、五年以下の懲役に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。



       主   文

       被告人を懲役2年6月に処する。
       この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
       訴訟費用は被告人の負担とする。

 

第6章 司法取引制度における2つの種類

司法取引には「自己負罪型」と「捜査公判協力型」の2つの種類があります。

 

自己負罪型と捜査公判協力型

司法取引には、自分の罪を認める見返りに刑罰を軽くする、罪そのものから免れる「自己負罪型」。自分ではなく、他人の捜査や公判に協力する見返りに、刑を軽くする「捜査公判協力型」の2種類があります。

 

今回日本で導入された司法取引は「捜査公判協力型」のみで、司法取引においては、殺人や性犯罪は対象外となります。

 

なぜ捜査公判協力型のみが採用になったのか?

今後どのような判断がされるかはまだ不明ですが、刑事司法のコスト削減を図る意味合いが大きかった「自己負罪型」は、法制審議会における全会一致が得られず、今後の司法取引制度の運用状況を踏まえて検討されるべきとの判断がありました。

 

本来的には、刑事司法のコスト削減を目指したものではなく、組織犯罪に関わる上位者の関与を示す証拠を得ることが目的でしたが、「自己負罪型」の導入で、まず自分の犯罪事実を否認した後に、検察官に持ちかけて不起訴処分等を得ようとする「ごね得」を許す結果となることへの懸念も指摘されていたようです。

 

第5章 制度の趣旨・特徴
 いわゆる日本版司法取引とは、組織的な犯罪(企業の関わる経済犯罪等)の解明を目的として導入された捜査・公判協力型の協議・合意制度のことで、米国における同様の制度を参考に、平成28年の刑事訴訟法改正により新設されたものです。

 すなわち、協議・合意制度とは、被疑者や被告人(以下「被疑者等」)が、組織的な犯罪において中心的な役割を担った第三者(法文では「他人」という表現)の犯罪を明らかにするため、検察官等に対し、真実に合致する供述をしたり証拠を提出するという協力行為の見返りに、自分の起訴を見送ってもらったり(不起訴処分)、起訴された場合でも軽い求刑をしてもらったりできるようにする仕組みのことです。

 いわゆるリニア談合事件(独占禁止法違反:不当な取引制限の罪)(2018年3月23日、東京地検特捜部が、関与したゼネコン4社のうち、捜査に協力的だった2社の担当者2名については、逮捕せず起訴自体も見送りましたが、否認を続けていた他の2社の担当者2名は逮捕・勾留の上、起訴しました)は、協議・合意制度の適用事案ではありませんが、このように、捜査へ協力したかどうかで処分等にはっきり差が付けられたことは、この新たな制度の運用開始を見越したものではないかという見方もできます。

 この制度は、組織的な犯罪等における首謀者の関与状況を含めた事案の全容解明に役立つ証拠を獲得することを目的とするもので、一定の財政経済関係犯罪も対象とされていることから、企業活動にも大いに関わりがあります。たとえば、犯罪の実行犯である部下従業員から、企業の役員あるいは幹部職員等の上位者の関与を明らかにする「有罪証拠」(供述やその裏付け証拠)を効率的に獲得するということが想定されます。

 これまで、日本にはなかった制度です。実際に何の見返りもなしに他の共犯者の捜査・公判への協力を求めるのはとても難しいため、そこで、協力に対するインセンティブを与えたというのがこの制度です。大きな特徴は、あくまで「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するという点です。「自分」の罪を認める代わりに不起訴などを約束してもらうもの(「自己負罪型」)ではありません。アメリカでは両方認められていますが、日本では協力型だけが導入されたので、「日本版司法取引」といわれるわけです。独占禁止法上の課徴金減免制度(リーニエンシー)と似た制度だといえます。

 

宅地の所有者が他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することの可否

 

 

              給排水施設使用許諾請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成13年(受)第1841号

【判決日付】      平成14年10月15日

【判示事項】      宅地の所有者が他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することの可否

【判決要旨】      宅地の所有者は、他の土地を経由しなければ、水道事業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け、その下水を公流、下水道まで排出することができない場合において、他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは、その使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り、当該給排水設備を使用することができる。

【参照条文】      民法220

             民法221

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集56巻8号1791頁

 

令和3年民法改正により、民法212条の2,3が新設された。

民法

(継続的給付を受けるための設備の設置権等)

第二百十三条の二 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。

5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。

6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

 

第二百十三条の三 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。

2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 

 

 

賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人から共有部分の譲渡を受けた場合と民法第612条

 

 

              借地権確認家屋収去土地明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和28年(オ)第761号

【判決日付】      昭和29年10月7日

【判示事項】      賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人から共有部分の譲渡を受けた場合と民法第612条

             戦時罹災土地物件令第3条の適用を受ける土地賃借権と妨害排除請求の許否

【判決要旨】      土地の賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有部分を譲り受けても、賃貸人は、民法第612条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である。

             戦時罹災土地物件令第3条の適用を受ける土地賃借権を有する者は、罹災後当該土地を所有者から賃借しこれに建物を建ててその占有をなす第三者に対し、直接その建物の収去および土地の明渡を請求することができる。

【参照条文】      民法612

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集8巻10号1816頁

             判例タイムズ45号27頁

 

認め

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 論旨第四点は、法令違背の主張であるが、この点に対する原判決の判断は、当裁判所において、正当と考えるから、論旨は、その理由がない。また、論旨第五点については、原判決は、本件借地権が、戦時罹災土地物件令六条により上告人A、同Bに対抗し得る旨説示したもので、罹災都市借地借家臨時処理法一〇条により対抗できるとしたものでないことはその判示に照し明白である。そして、原判決の右物件令六条の解釈は、正当でめると認あられるから、所論は、その前提において採用し難い。次に、論旨第一点乃至第三点は、原判決の事実認定を非難するか、又は、その単なる法令違背を主張するに帰し、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条一項本文に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷

会社の従業員が自家用車を用いて出張中に惹起した交通事故につき会社の使用者責任が否定された事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和51年(オ)第886号

【判決日付】      昭和52年9月22日

【判示事項】      会社の従業員が自家用車を用いて出張中に惹起した交通事故につき会社の使用者責任が否定された事例

【判決要旨】      甲会社の従業員乙が社命により県外の工事現場に出張するについて乙の自家用車を用いて往復し、その帰途、交通事故を惹起した場合において、甲会社では、右事故の7か月前に開催された労働安全衛生委員会の定例大会の席上、従業員に対し、自家用車を利用して通勤し又は工事現場に往復することを原則として禁止し、県外出張の場合にはできる限り汽車かバスを利用し、自動車を利用するときは直属課長の許可を得るよう指示しており、乙は、このことを熟知していて、これまで会社の業務に関して自家用車を使用したことがなく、本件出張についても特急列車を利用すれば午後9時半ころまでには目的地に到達することができ、翌朝出張業務につくのに差支えがないにもかかわらず、自家用車を用いることとし、自家用車の利用等所定の事項につき会社に届出ることもせずに出発した等、原判示の事情のもとにおいては、乙が右出張のための自家用車を運転した行為は、甲会社の業務の執行にあたらない。

【参照条文】      民法715

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集31巻5号767頁

 

 

認め

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。