税理士法第2条第2号にいう税務書類の「作成」にあたるとされた事例
最高裁判所第1小法廷決定/昭和40年(あ)第1134号
税理士法違反被告事件
昭和41年3月31日
【判示事項】 1、税理士法第2条第2号にいう税務書類の「作成」にあたるとされた事例
2、同条にいう「他人の求に応じ」にあたるとされた事例
【判決要旨】 1、某市及びその周辺地域の0細商工業者(会社又は個人)多数が会員となつて組織した本件の如き任意団体(いわゆる権利能力なき社団)の専務局長である被告人が、税理士の資格がなく、かつ税理士法に別段の定めがある場合でないのに、会員の各経理関係の簿冊を一括して会の事務所に備え、各会員から毎月毎に徴した営業に関する収支の伝票等に基づいて、貸借対照表、財産目録を作成し、併せて右書類等に基づいて各会員の事業年度毎の法人税、所得税等の申告書用紙に所要事項を記載した上、申告者各自にその内容を説明し、その諒解の下に申告者の署名押印を得て、これを所轄税務署に提出することを主たる業務としていたという事実関係の下においては、たとえ申告者が、申告書の必要事項の記載完了後これを承認して署名押印したとしても、右申告書は、被告人が税理士法第2条第2号にいう「作成」をしたものというべきである。
2、右のような事実関係の下においては、被告人の各会員のためにする税務書類の作成は、会員との個々的な作成依頼の申込と承諾という関係に基づくものではないとしても、同法第2条にいう「他人の求に応じ」てなされたものというべきである。
【参照条文】 税理士法2
税理士法52
税理士法59
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集20巻3号146頁
最高裁判所裁判集刑事158号647頁
判例タイムズ191号141頁
判例時報445号47頁
【評釈論文】 法曹時報18巻5号133頁
税理士法
(税理士の業務)
第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号イからヘまでに掲げる事項及び地方税(特別法人事業税を含む。以下同じ。)に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。
3 前二項の規定は、税理士が他の税理士又は税理士法人(第四十八条の二に規定する税理士法人をいう。次章、第四章及び第五章において同じ。)の補助者として前二項の業務に従事することを妨げない。
(税理士業務の制限)
第五十二条 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
(名称の使用制限)
第五十三条 税理士でない者は、税理士若しくは税理士事務所又はこれらに類似する名称を用いてはならない。
2 税理士法人でない者は、税理士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。
3 税理士会及び日本税理士会連合会でない団体は、税理士会若しくは日本税理士会連合会又はこれらに類似する名称を用いてはならない。
4 前三項の規定は、税理士又は税理士法人でない者並びに税理士会及び日本税理士会連合会でない団体が他の法律の規定により認められた名称を用いることを妨げるものと解してはならない。