賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人から共有部分の譲渡を受けた場合と民法第6 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人から共有部分の譲渡を受けた場合と民法第612条

 

 

              借地権確認家屋収去土地明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和28年(オ)第761号

【判決日付】      昭和29年10月7日

【判示事項】      賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人から共有部分の譲渡を受けた場合と民法第612条

             戦時罹災土地物件令第3条の適用を受ける土地賃借権と妨害排除請求の許否

【判決要旨】      土地の賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有部分を譲り受けても、賃貸人は、民法第612条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である。

             戦時罹災土地物件令第3条の適用を受ける土地賃借権を有する者は、罹災後当該土地を所有者から賃借しこれに建物を建ててその占有をなす第三者に対し、直接その建物の収去および土地の明渡を請求することができる。

【参照条文】      民法612

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集8巻10号1816頁

             判例タイムズ45号27頁

 

認め

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 論旨第四点は、法令違背の主張であるが、この点に対する原判決の判断は、当裁判所において、正当と考えるから、論旨は、その理由がない。また、論旨第五点については、原判決は、本件借地権が、戦時罹災土地物件令六条により上告人A、同Bに対抗し得る旨説示したもので、罹災都市借地借家臨時処理法一〇条により対抗できるとしたものでないことはその判示に照し明白である。そして、原判決の右物件令六条の解釈は、正当でめると認あられるから、所論は、その前提において採用し難い。次に、論旨第一点乃至第三点は、原判決の事実認定を非難するか、又は、その単なる法令違背を主張するに帰し、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条一項本文に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷