会社の従業員が自家用車を用いて出張中に惹起した交通事故につき会社の使用者責任が否定された事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和51年(オ)第886号
【判決日付】 昭和52年9月22日
【判示事項】 会社の従業員が自家用車を用いて出張中に惹起した交通事故につき会社の使用者責任が否定された事例
【判決要旨】 甲会社の従業員乙が社命により県外の工事現場に出張するについて乙の自家用車を用いて往復し、その帰途、交通事故を惹起した場合において、甲会社では、右事故の7か月前に開催された労働安全衛生委員会の定例大会の席上、従業員に対し、自家用車を利用して通勤し又は工事現場に往復することを原則として禁止し、県外出張の場合にはできる限り汽車かバスを利用し、自動車を利用するときは直属課長の許可を得るよう指示しており、乙は、このことを熟知していて、これまで会社の業務に関して自家用車を使用したことがなく、本件出張についても特急列車を利用すれば午後9時半ころまでには目的地に到達することができ、翌朝出張業務につくのに差支えがないにもかかわらず、自家用車を用いることとし、自家用車の利用等所定の事項につき会社に届出ることもせずに出発した等、原判示の事情のもとにおいては、乙が右出張のための自家用車を運転した行為は、甲会社の業務の執行にあたらない。
【参照条文】 民法715
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集31巻5号767頁
認め
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。