こちらの新刊を読了いたしました。
著者は話題作となった「ケーキの切れない非行少年たち」を書いた児童精神科医の宮口幸治氏です。宮口氏は児童精神科医として、精神科病院や医療少年院などに勤務していました。(現在は立命館大学教授)
宮口氏は認知機能の弱い少年や子供たち(知的障がいや境界知能)と多く関わってきた中で、思春期になってから大きく伸びる子供たちがたくさんいることを目の当たりにしたそうです。
2011年に英国ロンドン大学の研究チームが 12から16歳の思春期世代にIQテストを行ったところ、4年後のテストでは20ポイント上昇した人がいたそうです。( 逆に20ポイント下がった人もいたそうですが)
以下は境界知能を抱える子供には、どのような困難が起こるのかということの一部です。(本書p71引用)↓
「言語理解」が低いと、知識や語彙力が少ないために先生の指示がわからなかったり、人に自分の言いたいことをうまく説明できなかったりする。
「視空間」が低いと、図や表、地図などの読み取りが難しい傾向にある。
「流動性推理」が低い人は、問題の概念を理解したり論理的に考えたりすることが苦手。
「ワーキングメモリー」が低い人は、文章を読んでその内容を覚えておきながら 次の文章を読む事が苦手。
このような困りごとを抱えている子供に対して、どのように具体的な学習支援を考案すれば良いのかという点までは、医療機関も学校も対応しきれていないのが現状です。(保護者の不安を高めるだけで、具体的な改善策がない)
「見たり、聞いたり、覚えたり、想像したり」という学習の土台(認知機能)がしっかりしていないと、学習を積み上げていくことができません。
そのような状況を受けて、宮口氏は「コグトレ」を発案しました。
トレーニングによって認知機能を強化するのは大変な忍耐力がいりますね。💦
ちなみに宮口氏は「非認知能力」についても述べていて、 相手の表情を見て「喜んでいるのか 怒っているのか」を察するには 見る力や想像する力が必要となり、その力の土台には認知機能が必要となるため、認知能力と非認知能力の関係性は深いそうです。
認知機能が弱い子供は、対人関係にもつまずきがちとなります。
「相手の表情や その場の雰囲気が読めない」
「人の気持ちがわからない」
「相手の話を聞き取れない」
「自分が行動を起こした先のことが予想できない」
「 その背景が理解できず 会話についていけない」
これらの困難は発達障がいにも見られるかと思いますが、「認知能力」の困難さは「生きづらさ」につながりやすいと思いました。
宮口氏より
~境界知能の子供達が抱えるしんどさは 必ずしも「頑張ればできる」という問題ではないのです。でも「そのままでいい、頑張らなくていい」というのは、「みんなと同じようになりたい、頑張りたい」という子供の気持ちと相反してしまいます。適切な支援をすれば伸びる可能性のある子どもたちの未来を挑戦すらさせずに潰してしまうことにもなりかねません~
境界知能の子供の能力を伸ばすためには、大人の諦めない寄り添いと「出来るようになることを待つ」寛容さ(忍耐力)が何よりも大事なのだなあと感じました。