こちらの新刊本を読了いたしました。
著者は話題作となった「ケーキの切れない非行少年たち」を書いた児童精神科医の宮口幸治氏です。宮口氏は児童精神科医として、精神科病院や医療少年院などに勤務していました。(現在は立命館大学教授)
「境界知能」とは、知能指数(IQ)でいうと「70以上85未満」であり、知的障害平均値のボーダーに当たります。日本人には7人に1人の割合となり、35人学級であれば5人は「境界知能である」と言えるそうです。(人口の14%)
IQが70以下であれば特別な支援や配慮が行われますが、 境界知能の子供は ギリギリついていけるかどうかのラインにいながら、親や教師からも本人の努力不足と嘆かれてしまいがちです。
ちなみにIQ80とは、10歳の子供の中に8歳の子供が在籍している感覚だそうです。学習面のみならずお友達とのコミュニケーションにおいても、対等な関係になりにくいのです。
知的な障がいは知的機能の発達水準が全体的にゆっくりなため、勉強の遅れ、対人関係の困難、臨機応変な対処が苦手、感情コントロールが苦手、不注意などの困難が伴うそうです。
ちなみに私は「境界知能領域」は誰にでもあると思っています。自分がどのような母集団の中で生活をするのかによって、能力の限界領域は変わっていきますから。
私がもしも自分よりもIQが20以上高いグループの中で生活をするとしたら、彼らからみた私は「境界知能」となります。優秀すぎる人々との会話についていけず、学習能力もおとり、不注意がみられ、感情に支配されすぎる人間とうつることでしょう。彼らが5分で理解できることも、私には2時間かかるかもしれません。私がいくら努力をしたところで到底及ばず、まさに蟻地獄的な状況となるかもしれません。
公立の小学校で上位の成績を取っている生徒でも、難易度の高い私立中学受験では、授業の内容にまるでついていけないことがあると思います。頭の良いはずの自分がなぜ理解ができないのかと 思い悩むことでしょう。
人並み以上のピアノの才能があっても、演奏家として食べていけるほどの才能がある人はほんの一握りで、大抵の方は ピアノを教えたりアルバイトなどをしながら生計をたてていくことになります。
「それが努力で超えることのできる領域なのか、努力ではどうしても超えられない領域にあるのか」という境界領域の苦しさは、誰しもが抱えている 困難であると思います。( 私も毎日娘の勉強を教えながら、その限界領域に思い悩む日々)
境界知能(IQ70~85)を持つ人は、先のことを想像するのが苦手な傾向にあるそうです。何か突発的な事柄が起こった時に後先を考えずに 場当たり的に行動をしてしまい、「身勝手で短絡的」と捉えられてしまうのは、知的障害の特徴の一つと考えられるそうです。境界知能の子供達は見た目ではほとんど区別がつかず、普段の生活の様子も健常児と変わらないそうです。
私はテレフォン人生相談をYouTubeで聞くのが好きなのですが、人間関係のトラブルを起こしがちであったり、 問題の解決策が見えなくなってしまっている相談者の中には、「境界知能である」ことが大きく関係しているケースも多いのではないかと考えています。
つづく