LIXILギャラリーで「タイルが伝える物語-図像の謎解き-」展を観た! | とんとん・にっき

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LIXILギャラリーで「タイルが伝える物語-図像の謎解き-」展を観てきました。


室内外を華やかに飾るタイルは、耐久性があり、量産も可能なため、古くより世界でさまざまな文様が生み出され、かつ身近な建材として発展しました。本展では、タイルの装飾性だけでなく大衆へのメッセージを含んだ「メディア」としての機能に着目し、描かれた文様の意味や物語を読み解きます。



展覧会の構成は、以下の通りです。


1.西洋のタイルから

西洋では、聖書を題材にしたタイルが多く作られました。その中でも「ハガルの追放」を題材にしたものでは、19世紀オランダのマンガン彩組絵タイルとドイツのKPM(王立磁器製作所)ベルリン窯で作られた陶板を同時にご覧いただけます。オランダらしい柔らかな図案と極彩色の高度な技術で制作されたKPMの陶板をご鑑賞いただけます。また同じく聖書からは、「創世記」や「ヨハネによる福音書」などのお馴染みの物語を主題に作られたオランダのデルフトタイルも紹介します。一方、近代イギリスでは、私的な社交場の役割を担った家庭の暖炉まわりにタイルが多く用いられました。「イソップ物語」やシェイクスピアの戯曲といった物語、旅行ブームを反映した観光地の風景など、家庭で行われていた宗教教育や当時の生活文化が垣間見られるタイル31点を展示します。


2.中国のタイルから

古くからやきものが発達していた中国では、独自のタイルが多く残されています。中でも、れんがのことを塼(せん)と呼び、建物の基壇、階段、床面、壁面のほか、墓室にも使用され、孝行の模範となる人物たちの逸話などをレリーフや絵画にして飾られました。今回は、24人の孝行息子の説話集「二十四孝」を刻んだ貴重な画像塼(がぞうせん)が8点登場、宋代の儒教思想を反映した世界観が広がります。そのほか、桃源郷を主題とした染付陶板や、イギリス人陶芸家 バーナード・リーチ(1887-1979)による、漢代の画像石をモチーフにした陶板などを含めた23点を展示します。


3.イスラームのタイルから

イスラーム教の戒律がゆるやかになると、人物を描いたタイルが登場し、宮殿などの私的空間の壁を飾りました。 詩人ニザーミーが詠んだ長編ロマンス叙事詩「ホスローとシーリーン」や、美男の預言者ユースフとエジプト高官の妻ズライハの恋を描いた「ユースフとズライハ」など15点を紹介します。鮮やかな色彩で物語や人物を描いたタイルは見ごたえも十分あり、人物の表情や華やかな衣装、背景の模様などから、イスラームの生活文化を伺うことができます。












*ハガルの追放

旧約聖書「創世記」の第21章9節~14節に書かれた場面である。預言者アブラハムと妻・サラは子供に恵まれなかった。そのためサラは夫・アブラハムにエジプト人の奴隷・ハガルをあてがい、イシュマエルが生まれた。その後、サラもアブラハムとの間に子供を授かり、生まれた子供にイサクと名づけた。子供たちが大きくなった頃、イサクがイシュマエルにいじめっれているのを見て、アブラハムにハガル親子の追放を懇願した。アブラハムは大いに悩んだが、神が二人の子供の子孫繁栄を約束したので、旅立ちの用意をしてハガル親子を荒野に送り出した。

*二十四孝

前漢時代に儒教は国教化されて以来、1912年に孫文らによる辛亥革命で中華民国が設立されるまで、二千年にわたって中国は儒教国家としての歴史を歩んできた。儒教は古来、中国人にとって揺らぐことのない基本思想である。その根幹は目上の者への「忠」、親への「孝」の2つで成り立っている。この儒教思想に基づき、孝行息子たちの話がまとめられたのが「二十四孝」。

*八仙

鉢仙は、男7人、女1人の計8人で構成される幸せの神々のグループ。三星(福星、禄星、寿星)とともに中国の庶民の間で最も人気がある仙人たちである。一人ひとりにめでたいいみがあるわけではなく、8人そろって賑やかに騒ぐ「祝宴盛上げ隊」的な性格を帯びている。崑崙山(こんろんさん)に住む女神・西王母の誕生日を祝いに8人で駆けつけ、酒に酔った勢いで東海に乗り出して竜王や竜女と戦うという「八仙過海」のストーリーは、中国では演劇や小説でよく知られている。慶事には必ずといってよいほどこの図柄の器物が使われる。に火音の七福神はこの影響下に成立した。


タイルが伝える物語-図像の謎解き- 展
土を焼いて作られるタイルは人類の文明とともに発祥し、古来、様々な国と地域で建築を豊かに彩ってきました。古くは古代メソポタミアの神殿の壁を円錐形のやきもので装飾し、エジプトのピラミッドでは、ファラオの魂に捧げる空間の壁一面を、トルコ石の色をした美しいタイルで覆い、飾りました。 時代が進むと、かつて神聖な建築や空間を飾ったタイルは次第に人々の暮らしのなかで使われるようになり、壁や床を装飾するだけでなく、視覚的イメージを共有するためのメディアとしての機能を持ち始めます。いち早くタイルの普及をみた17~18世紀のオランダでは、聖書の一場面を描いたタイルを壁や暖炉に張り、それを子どもに見せながら、家庭で宗教教育を施しました。中国やイスラーム諸国では、教訓や理想を描いたタイルが数多く作られ、19世紀のイギリスでは、豊かな暮らしを謳歌する人々が、当時獲得した新しい文化を思いおもいに発信するためのメディアとなるなど、人々の身近にあるタイルがメッセージや物語を伝える役割を担うようになったのです。 本展では、INAXライブミュージアム「世界のタイル博物館」 に収蔵する、紀元前から近代までの装飾タイルコレクションをひも解き、これまでにない「物語や教訓、信仰、文化を発信するメディア」という観点から選び出したタイル約70点を、描かれた物語やメッセージとともに紹介します。それらのタイルを通じ、国や地域によって異なる様々な生活文化をも読み取ることができます。美しさや装飾性にとどまらない、タイルの奥深い魅力に触れる本展に、どうぞご期待ください。

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