LIXILギャラリーで「鉄川与助の教会建築」展を観た! | とんとん・にっき

LIXILギャラリーで「鉄川与助の教会建築」展を観た!


僕がパソコンをいじり始めた頃ですから、たぶん10年前位でしょうか、ネットで偶然「おじいちゃんの建てた教会」が見つかりました。おじいちゃんの建てた教会が長崎を始め九州各地にある、というものでした。このサイトが好きで何度も見ていました。LIXILギャラリーで「鉄川与助の教会建築」展を観て、「あっ、これだ」と思い至りました。帰ってからネットで検索したら、なんと現在もそのホームページがありました。いや、懐かしい。


実は僕の母親の実家は長崎の北側にある松浦郡(現在の松浦市)、佐賀県伊万里との県境です。僕は長崎市内の教会はもちろん、平戸の教会も訪れたことがあります。僕の結婚式は赤坂の霊南坂教会、辰野金吾の設計によるものです。僕も建築をやっていることもあり、地方に旅行したときに、函館や弘前など、その地の教会を訪れることもよくありました。以下、「鉄川与助の教会建築」より。


全国に1006棟ある教会建築のうち、長崎県には五島列島を中心に133棟(13%)もあるという。鉄川与助は1879(明治12)年、五島列島・中通島に大工棟梁・鉄川与四郎の長男として生まれました。高等小学校卒業後、大工の修行を続けていた与助は、近くの教会堂の建設を手伝ったことをきっかけに、教会建築の虜になっていきます。


27歳で父から家業を継いで鉄川組を設立。その翌年には、棟梁として自ら設計・施工した教会堂を完成させ、次々に新しい試みに挑戦していきます。手抜き工事を嫌い、信者たちの夢を叶えるために堅牢で美しい教会堂をつくり続けた与助。1976(昭和51)年、97歳の長寿をまっとうして生涯を閉じました


鉄川与助が棟梁として設計・施工した教会は、戦前のものだけでもおよそ30棟に及ぶ。その半数が現存し、4棟が国指定の重要文化財です。一人の設計者が4棟もの重要文化財を生み出した。この数字が与助の類い稀な才能を物語っています。木造、煉瓦蔵、石造、鉄筋コンクリート造とあらゆる工法に挑み、与助の教会建築は進化を遂げ続けました。


鉄川与助設計・施工の国指定重要文化財

・青砂ヶ浦天主堂:長崎県新上五島町

・田平天主堂:長崎県平戸市

・江上天主堂:長崎県五島市

・頭ヶ島天主堂:長崎県新上五島町


与助が建築の手ほどきを受け、終生、師と仰いで敬愛したのがマルコ・マリー・ド・ロ神父です。ド・ロ神父は1868(慶応4)年に来日。その後、西彼杵半島の外海地方の主任司祭として出津に赴任しました。山が海に迫り、平地がほとんどない貧しい土地に暮らす人々にために、神父は私財を投じて教会や授産施設を建設したという。


与助がド・ロ神父と出会ったのは、神父が出津から長崎に戻った1911(明治44)年の頃と思われます。与助は32歳、教会建築の棟梁として実績を積み、その名が知られて仕事の依頼も増えつつあった頃です。70歳を過ぎていたド・ロ神父は、向学心に燃える与助を可愛がり、建築に関する書籍や木工用旋盤、鉋を授けて指導したという。土地の材料を使ってより経済的に、そして堅牢さを主眼に置いてつくる。与助がド・ロ神父から受け継いだのは、こうした設計思想だといっていいでしょう。




祈りの地に今ものこる、棟梁が建てた教会
長崎には130余りもの教会があり、その数は全国にある教会数の1割以上を占めます。260年にも及ぶ禁教と迫害の時代を乗り越え、明治から昭和にかけて建造されました。なかでもキリシタンの里と呼ばれる五島列島には、約50の教会が点在し、ひっそりと隠れるような佇まいは今も受難の歴史を静かに物語っています。本展では、五島列島および長崎周辺で教会の建設に生涯をささげた、棟梁・鉄川与助(1879~1976)による教会建築の軌跡を展観します。五島列島の大工の家に生まれた与助は、教会建設の手伝いをきっかけに教会の虜になります。28歳で初めて木造教会を設計・施工し、その後も煉瓦造、石造、鉄筋コンクリート造に挑戦します。内部空間においてもより高い天井をめざしてリブ・ヴォールト天井や折上天井などの工法を極めるなど、一歩一歩技術を高めながら次々と教会建築を完成させました。鉄川与助が棟梁として設計・施工した教会は戦前のものだけでもおよそ30棟に及び、その半数が現存し、4棟が国指定の重要文化財となっています。 会場では、与助の教会建築を厳選しそれらの魅力や特徴を、本企画のために写真家、白石ちえこが撮り下した写真で、解説パネルとともに紹介します。あわせて、日本での教会建設に指導的な役割を果たしたフランス人のペルー神父やド・ロ神父の仕事など、与助に影響をもたらした作品も彼の教会建築の軌跡を辿るなかでご覧いただきます。最後に与助のパーソナルな資料コーナーでは彼の人となりを垣間見ていただきます。山に囲まれた深い入江の浦々に、また急峻な山間僻地の集落に静か立つ教会からは、人々をやさしく包み込む温かさとともに、鉄川与助が燃やした教会建造への情熱が今も感じられます。


「LIXILギャラリー」ホームページ


「おじいちゃんが建てた教会」ホームページ


とんとん・にっき-tetu1 「鉄川与助の教会建築/五島列島を訪ねて」

企画:LIXILギャラリー企画委員会

制作:株式会社LIXIL

編集:住友和子編集室+村松寿満子

撮影:白石ちえこ

発行日:2012年3月20日

発行所:LIXIL出版