「論評:佐高信『佐藤優という思想』」への感想 | 一撃筆殺仕事人:佐高信先生追っかけブログ

「論評:佐高信『佐藤優という思想』」への感想

金光翔氏は「佐藤優現象批判」を雑誌インパクションで上梓された三年前から「世界」「週刊金曜日」などの左派、リベラル派、護憲派とされるようなメディアで佐藤優氏が重用されることを批判しつづけています。
この金さんの論文は活字メディアでほとんど話題に上がることはありませんが、ネット上ではじんわりとその影響力が増しつつあると思います。

しかし「週刊金曜日」はこの金光翔氏を無視しつづけてきました。そして今回の佐高さんの風速計でのいいわけです。これに対して金光翔氏はあきれ果てて佐高さんを批判する論説を発表されました。

それが以前に言及した、

論評:佐高信「佐藤優という思想」 ①――佐藤優を使うことの社会的悪影響という観点の欠落

http://watashinim.exblog.jp/9815169/

論評:佐高信「佐藤優という思想」 ②――本文批判(付記:佐藤優と小林よしのりと「パチンコ問題」)

http://watashinim.exblog.jp/9825607/
です。

今回は金光翔さんによる②の風速計本文批判をおもに見ていき感想を述べていきたいと思います。

まず、以前にElectric Heelさんとともに指摘した佐高さんの佐藤優氏の「国家の罠」への評価の180度転回に次いで、佐藤さんの「死刑廃止論者」たることを評価していることを問題にします。
金さんによれば佐藤優氏の死刑廃止論は単なる方便だから問題ではなく、悪質なのは佐高さんは、佐藤さんがイスラエルが死刑廃止国であるということを多くの自身の寄稿で語っていることを「知らないはずがない」として恣意的に外しているのだと批判します。そして国際法違反をなんとも思わずにパレスチナで虐殺を行なうイスラエルの「死刑廃止」などは一体何の意味があるのかと怒りを込めて指摘します。
まぁ献本と昔の自分の本の読書で忙しい佐高さんはそれほど佐藤さんの本をチェックしているとも思えません。おそらくは佐藤さんが東京拘置所でその動静を耳にした坂口弘さんへの思い入れからかもしれませんね。

おもしろいのはこのブログです。
http://sansaku.at.webry.info/200904/article_6.html

最後に会場からの質問のなかで、「サンプロで田原さんがユダヤと言いましたが」という質問がありましたが、佐高さんが、笑って、「却下!」と。一応、「先ほど却下といいましたが...」と佐高さんが佐藤さんにふって、もちろん佐藤さんは、「イスラエルびいきの私ですので、ご想像の通り...」と。せめて田中真紀子氏のサンプロでのCIA、KGBにおわせぐらいには、話を延ばして、否定でも触れて欲しかったと思いました。(追記あり)

杉原千畝さんのことぐらいでしかパレスチナ、イスラエル問題に言及しない佐高さんですがやっぱりわかっているのかもしれません。

金さんは佐高さんの「風速計」のつづいての記述で佐藤優さんを引用符付きの”危険な思想家”としたことに再び怒りをぶつけています。
イスラエルの蛮行をこうまであからさまに支持している言論人は佐藤優氏ぐらいしかいないのだそうです。
そうですね、私の知っているのは佐藤氏と仲のよい「支那人連呼」で麗澤大学講師を解任された藤井厳喜さんぐらいでしょうか。

http://kakutatakaheri.blog73.fc2.com/blog-entry-1511.html

そしてこう批判します。
「人権派のヤワな部分」という認識と口調に至っては、ヤクザかチンピラのようである。さすがは総会屋雑誌出身の御仁である。


ああ、言われてしまいましたね。佐高さん、人権派は「ヤワ」なのはあたりまえのことではないですか?


「残念ながら、私たち人権派は小林よしのりの暴走を抑止する有効な手を打てていないが、小林がいま一番苛立ち、恐れているのは佐藤であり、佐藤はあの手この手を使って小林を追いつめている。」

つづいて金さんはこの小林よしのり氏と佐藤優氏との関係を描いた佐高氏のこの文章において氏が、佐藤氏の「暴走する小林よしのりを追い詰めている」ことを評価していることを問題にしています。
確かに、現実と同時進行で政治問題を語るという「暴走」を売りにしている小林よしのりさんが「暴走」しているといわれても困ってしまいますね。
金さんは最近の「ぱちんこおぼっちゃまくん」問題に関連しての佐藤さんによる小林さんの批判を佐高さんが指摘しているのではないかと言いますが、ネットも携帯もあまりやらないような佐高さんがそこまで小林さんのことをチェックしているかどうかは分かりません。

そしてこの文章への批判点の二つ目として逆にネット上で追い詰められてるのは佐高さんのほうだとして光栄にもグリフォンさんの見えない道場本舗と並んで当サイトがリンクされています。

>しかも後者は、佐高のファンのサイトである。ファンですら、新しい発言を紹介するたびに、それが過去の発言と矛盾していることを認めざるをえなくなっているのである。

ありがとうございます。しかし「ファンですら」というより「ファンだからこそ」ですね。

>本来ならば、こうした矛盾の指摘に対して、佐高は公的に見解を明らかにすべきであるし、また、周りの人間がそのことを佐高に促すべきである。ところが、佐高(と周囲)は完全に無視を決め込んでいるわけである。だとすれば、佐高が、小林が追い詰められている云々と言うのはおかしいではないか。

佐高さんは㈱金曜日の社長を務めていて、裸の王様になってしまったとしたら残念なことです。お父さんの佐高茜舟(兼太郎)さん、久野収さん、城山三郎さんなどの佐高さんと親しく且つ譴責できるような地位の人が次々と鬼籍に入られて佐高さんに諫言しようとする人はもういないのかもしれません。
斎藤貴男さんなどは以前と現在で人物評価が違っていても「佐高さんだから許される」みたいなことを言う始末です。
だからこそファンがやらなければならないのでしょう。

三つ目に指摘するのが「佐藤優氏の言論封殺行為の容認」です。ま、これはしょうがないですね。佐高さんも清く正しく美しく生きてきたわけではありませんから。批判された呉智英さんや日垣隆さんに編集者を通した「恫喝」を行なったというのを当人らが告発していますし(笑い)。ここのところは魯迅の「フェアプレーは時期尚早」を地で行ってる訳で。


第4の論点のレイシズムについてはどうですかね。佐高さんが「ぱちんこおぼっちゃまくん問題」をチェックしているかどうかが明らかでない以上これは金さんの憶測に基づいた批判ではないでしょうか。
「小林は北朝鮮に魂を売った」と言っているのは佐高さんでも佐藤さんでもなく小林批判派のネット右翼です。
パチンコにキャラクターを売るということが巷間言われるような「朝鮮民主主義人民共和国への資金協力」の問題以外「商業主義」、「警察利権への協力」という批判も考えられる以上断定は出来ません。


第5の批判「小林は悪で佐藤は善」の図式ですが確かに小林氏とバール博士論で対立している中島岳志氏を佐高さんは週刊金曜日編集委員に抜擢して、小林氏批判に使っています。金さんも述べておられる「創」2009年1月号の佐高信さんの小林批判ですが、特に中島氏とのからみでは佐高さんの小林批判はほとんど内容のないものでありました。自身が慶應義塾大学法学部の法哲学専攻峯村光郎ゼミを卒業されておられるのに小林、中島の法哲学上の論争には言及せずに小林氏を単に「ゴーマンな本」を書いたというものです。これにはとても不満でしたね。
面白いことに中島対小林、佐藤優対小林の戦いを金さんの判定では小林氏の圧倒的有利としていることです。
たしかに中島対小林ではネット上の情報から見ると中島氏の「逃げ」の姿勢が劣勢に見られるのですが、佐藤、小林対決では佐藤氏不利とは見えないのです。
「佐藤氏による言論弾圧」の問題はさておいて左派の立場の金さんがまるで「集団自決軍命なかった説」小林氏を応援しているかのごとく見えるのは興味深い。
小林氏は「新ゴー宣」欄外で金さんのブログを紹介しておられるので、その点で金さんは「仁義を切っている」のかもしれません。(余談ですが池田信夫氏も金さんの論文をたいへん評価しています。)
金さんには佐高さんみたいに「敵の敵は味方」のような罠に陥らないように注意をしてほしいですね。


ここからは余談になります。私は思うのですが、この国家主義的なファシズムのようなものに批判的な金さんも実際は「ナショナル」なものからの桎梏からは離れられないのではないかと思っています。
それは朝鮮総連に対する「弾圧」に対してのかなり激しい対応というものに見られます。例をあげれば金賛灯氏の「朝鮮総連」という本に対して

「『すでに在日は朝鮮総連の必要性を認めていないだけでなく、朝鮮民族が日本で生活していく上で有害な組織と認識し始めている』」(金賛汀『朝鮮総連』新潮新書、二〇〇四年五月、二〇〇頁)などという言説が大手を振ってまかり通っている」
http://gskim.blog102.fc2.com/blog-entry-1.html とか

総連に対してはもう1人在日韓国人の激しい批判者がいます。辛淑玉さんです。ろくに本を読まないネット右翼から見れば信じられないことでしょうが、辛さんは民族学校に在学中、日本の学校から転校してきたことで物凄い虐めにあったことを書かれており、また総連が在日企業の経営している遊技場の近くに総連系列の企業の同様な遊技場を進出させて潰してしまう、ということを激しく批判しています。
真の共生社会をめざしている辛淑玉さんらしい記述です。
まことにタイムリーな話ですが、このような辛淑玉さんと元官房長官、自治大臣の野中広務さんが対談本を角川から上梓されました。

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)/辛 淑玉
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金光翔さんから見れば野中さんも小渕内閣で国旗国歌法を制定して日米安保を強化していった国家主義政治家でしょう
金さんはこんな辛淑玉さんの著作に対してはどのように対応されるかは興味のあるところであります。ちなみに辛さんは例の「民衆を率いる自由の女神」が日章旗を持っていた件について週刊金曜日の萱野捻人さんと佐高さんとの鼎談で佐高信さんに問うていましたが、佐高さんはそれには答えず押し黙っていたことが思い出されます。金さんには人権よりも共和国の国権を重んずる姿勢がうっすら見えています。核実験をやった朝鮮民主主義人民共和国もいかんが、そうせしめた日本は反省するべきだといったような。
そこには政治的弾圧や飢餓、格差社会に苦しむ共和国人民に対しての思いは皆無です。
金さんのこのような姿勢は現在、佐藤優氏を重用してしまい、シオニズム左派化しようとしている護憲メディアに通じてしまうところがあるのではないかと危惧しています。


だからといって佐高氏をはじめとする護憲メディアの佐藤優寵愛が正当化されるわけではありませんので念のため。

最後に慨して私の意見を言えば、この金さんの佐高批判はほぼ妥当なものが多くてファンとしてもまいったなぁと脱帽しています。


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