⑪ 葡萄樹の生育~エコ認定と自然派 | ろくでなしチャンのブログ

⑪ 葡萄樹の生育~エコ認定と自然派

         ⑪ 葡萄樹の生育~エコ認定と自然派               

 

 

 フランスでは、有機栽培の認証制度があり、無農薬・有機栽培で造られた認定葡萄や認定ワインがあるようです。

 

チェリーred エコセール(ECOCERT)

 1991年創立されたフランス農務省認証機関であるエコセール(ECOCERT)が、有機栽培食品とバイオデナミー(ビオデナミ)栽培に関して検査・認証を行い始めました。ワイン醸造に関してではなく、ワインの原材料となる葡萄に関して認証しているようです。

 エチケット表示は「VIN ISSUE DE RAISINS DE L'AGRICULUTRE
BIOGIQUE~有機栽培(の葡萄)によって造られたワイン」となるようです。エコセールワインは、自然農法または有機農法により栽培された葡萄で造られたワインとなり、この栽培には厳しい規則が定められており、畑の土壌には、化学除草剤、
化学肥料、殺虫剤は使用出来ず、有機肥料を使い、収穫は全て手摘みで行ない、5年以上有機農法を続けて初めて認められるもので、エコセールマークをエチケットに表示する為には、毎年行われる検査に合格する必要があります。現状チェックには専門家が訪れ、土壌調査・ワインの分析など丸1日かかり、費用は生産者の負担となるようです。

 農業国フランス政府肝いりで創られた認証機関はヨーロッパを中心として世界80カ国に広まり、4万人の有機栽培業者が登録している世界最大の第三者有機栽培認定機関となり、現在は農務省から離れ独立したオーガニック※1.認定団体の世界基準とまで言われています。 

 基準の厳格さもありますが、葡萄栽培に於いては化学肥料・農薬使用畑との距離や近隣環境(工場等)等の制約から認定を受けることが出来ないとの問題もあるようです。

POINT~認定検査機関 ECOCERT により、化学薬品・化学肥料・化学除草剤を一切使用しない有機農法によって栽培された農産品の認定マーク。
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にんじん アグリキュルチュール・ビオロジック(agriculture Biologique)

 通称ABマークは、フランス政府認定機関による有機栽培の認定であり、1985年に創設されています。
 認定基準は、化学肥料や化学薬品の禁止をはじめ、遺伝子組み換え作物により作られた肥料の使用も禁止されています。1年毎に抜き打ち検査も行われます。 ECOCERTによる有機栽培認証を受け、EU圏内で生産または加工された商品に限ります。

POINT~ ECOCERT によって、無農薬有機栽培で育った植物を、栽培から商品加工に至るすべての行程で、添加物などを含まないことを認定した商品。

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ぶどう 前記2者の違いは、無農薬有機栽培により作られた農産物に与えられるのがエコセール。エコセールの認証を受けた農産物を加工・製品化した農産加工物に与えられるのがABマークと思われます。

 厳しい認定であるエコセール、ABマークを取得した・・・と言う表現をよく見かけますが、ABマークを得ているのであればエコセール認定は当然得ている必要があるのでABマークを得ているで十分な筈ですが、宣伝効果を考えると両者併記がインパクトがあるからなのか、知らないことによるものなのかも。

 

 認定機関も各国にあり、様々なマークが氾濫しているようです。気になるのはボルドー液とABマークですが、ボルドー液使用であってもABマークは取得しているようです。SO2(二酸化硫黄)の量についても、赤ワイン1リットル当たり100mg、白ワインで同120mgまでの使用はエコセールでも認められているようです。
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 左はエコセールマークのある、シャトー・ゴンボード・ギヨ。右はABマークのある、シャトー・ラ・クロワ・タイユフェール。

 

ぶどう 無農薬・有機栽培によりワインを造る人々は、自然派と呼ばれている様ですが、より自然に近い形を追求している方々もおられ、既に述べたように有機栽培=安全とも限りませんので、動物の糞尿を加えない自然堆肥のみで栽培を行うようです。

 具体的には、マール、剪定後の枝(※2. 破砕する場合と燃やして灰を撒く場合があり)、摘葉による除去の葉、摘果の葡萄を畑に撒くケースです。

 

 自然堆肥は、土壌に栄養を与える為に使用すると言うよりも、土壌の湿度を保持し、一定の温度を保つことによって、土壌そのものが微生物により活性化すると考える方もおられるようですが、未分解有機物である自然堆肥を鋤き込み、微生物の餌として、土壌中の微生物を増殖させ、分解物が肥料になることは間違いのないところ様ですが、マール、剪定後の枝、摘葉による除去の葉、摘果の葡萄を畑に撒くだけで肥料として十分なのでしょうか。

 

 江戸時代の農業書、開荒須知によれば、「芝草の特効」として、3月から4月頃、山林や道端に繁茂している芝草を、深さ二寸くらいに土ごと剥ぎ取り、積み重ね、草を刈って上を覆っておく。芝草は根までみな腐って土のようになる。草の根に混じっている土は、毎年の雨と太陽によって上等の肥えた土となる。この芝草を施すと、どんな痩せた土地でも肥沃な土質となる。

 江戸時代の農業書、農業全書によれば、「苗肥・泥肥」として、田畑を肥やすのに、苗肥・草肥・灰肥・泥肥の四種がある。苗肥には緑豆がいちばんよく、小豆・ごまがそのつぎである。その年の5~6月に水田に厚く播き、程よく茂ったものを、7月~8月に鋤き返して腐らせる。翌春に穀物を作ると2年分の収穫があり、濃い下肥を施したものよりはるかによろしい。

 泥肥とは、池・川・溝などの底の肥えた泥を上げて、充分によく乾燥させて砕き、肥料小屋にいれて長く貯蔵したものである。灰などと混ぜ合わせ、または新しい腐熟中の肥料と混ぜ合わせて使うと効果が著しい。この肥料をそ菜類やほかの作物に施すと、病気などの障害を受けることとなく丈夫に育つ。

 緑肥(りょくひ)は、栽培した植物を、収穫せずそのまま畑に鋤き込み、つまり、植物と土を一緒にして耕し、後から栽培する作物の肥料にすることのようです。葡萄畑ではカバー・クロップ(土壌被覆~乾燥防止、土砂流失防止、雑草繁茂防止等)としてクローバーが植えられていることも多いようですが、クローバーはマメ科植物なので根瘤バクテリアとの共生により、空中のチッソを採り込んでくれるようです。

 葡萄と麦を混栽していた当時は実以外は畑に還元されていたようですし、雑草も立派な緑肥になるようです。

 緑肥は堆肥とともに土壌生産カを維持増進するための有効適切な手段のようです。


 ポルトガルのドウロ渓谷地区の片岩質の土壌で、ポートワインが造られていますが、特殊な気候も関係しますが、片岩質の土壌で造られます。片岩は基本的に堆積物の岩で、ドウロ地区では、畑に岩が砕けてできた土や、有機質がわずかにあるだけの数センチの深さの表土しかなく、ブドウ樹は、岩の地層のすき間に根を張って育つと言われます。

 葡萄畑を造る時は、数センチの土ができるまで岩を砕くために、昔はつるはしやハンマーで岩を砕いたと言われます。表土に有機物が少ないのですが、カリウムやリンが少なく、マグネシウムが豊富な土壌のようです。

 

 シングルモルト好きには有名な、石灰岩からなるアラン島は、土というものがほとんどなく、岩盤の上に薄く乗っている程度です。おまけに風が強いことから、せっかくの土が吹き飛ばされてしまうといいます。風から土を守るため、島一面は石垣で覆われます(クロと考え方が一部同じ)。土は、ここで砂や海藻と混ぜられ、岩盤の上に薄く広げられ、ポテト栽培は、こうした岩場でおこなわれているようです。

 このように、わずかな肥料であっても、収穫量は別として植物は育つようです。


※1. 有機・無農薬の農産物は、オーガニック(organic)とも呼ばれるようであり、オーガニックは、もともと英語で「有機の」「有機栽培の」という意味であり、世界共通語になりつつあるようです。


※2. 草木灰
 草や木を燃やした灰のことであり、アルカリ性のため、石灰のように土壌のアルカリ化資材として使われることもあります。草木灰には肥料分のカリを多く含んでおり、有機肥料のカリ肥料としても知られていますがその他にカルシウムやマグネシウムやナトリウムなど中量要素や微量栄養素をも含んでいます。

 

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