⑩ 葡萄樹の選定 2 | ろくでなしチャンのブログ

⑩ 葡萄樹の選定 2

            ⑩ 葡萄樹の選定 2

 

1.クローン選抜

 

ぶどう 種で増やすか枝で増やすか

 

 クローンとは、同じ親株から無性生殖(取り木等)によって繁殖された、同一の遺伝子を持つ葡萄樹の個体群のことをいいます。

 無性生殖に依らず、自生、実生と呼ばれる自然受粉により同一の特性を持つ葡萄樹を育てることは、実は大変難しい様です。


 1つには葡萄は変異しやすい性格を有する点。

 2つには近くの別種の花粉を受粉することも多く、隔離した空間を

  造る必要が生じるのです。


 仮に隔離した空間を作り上げ、自生させたとしても、変異の問題(雑種性)が残り、殆どの場合親よりも劣る性質をもった葡萄樹が生じるため、結果的に優れた特性をもつ葡萄は、接木をして増やすことにより、親と同様の遺伝子を持った葡萄となります。

ぶどう それでもクローンは選ばれていく


 クローンは、生産者にとっては、同じ遺伝子を持つ葡萄を大量に収穫したい為、優秀な株(実がたくさんなる、甘い、寒さに強いなど)を育成するため、一定の栽培技術、栽培管理、同一圃場という条件下で優秀性の認められる個体を選抜するのが、クローン選抜と呼ばれます。

 用語として、クローン選抜又は系統選抜との呼称もある様ですが、個性が全く変わってしまった場合の新品種の誕生との比較としての用法のようです。

 葡萄の繁殖法は、接ぎ木、挿し木により行われますが、これらは品種固定をするという面も有しているのです。

 長年この手法により葡萄樹が育成されてきた結果、既に100年単位でクローン選抜されてきた苗しか存在していないと言われています。

 

 現在、カベルネ(20種)、メルロー(13種)が認定クローンとして登録されており、メルローの343、347。カベルネ・ソーヴィニヨンの191、337のように、クローン名は記号や数字で表しているようです。

 

ぶどう クローンの変種と多様化

 

 優秀な個体が表れると、接ぎ木、挿し木によって増殖させ、親と同じ特性を持つクローンを作っていく。とは言っても葡萄樹には変異という特性(芽条変異~枝変わり)があるので、クローンを作ったとしても少しずつ変わり種が出来てくるのでそれらの取捨選択も行われていきます。

 

 クローン選抜された葡萄樹を畑に植えると、生産者の意図した葡萄が実ることにはなるのですが、選ばれるクローンは限定されるためワインの画一化がもたらされると同時に、未知の病気に対する抵抗力の問題が生じます。

 未知の病害に対してクローンが抵抗力を持たない場合、フィロキセラ禍のように全滅する恐れがあるのです。

 そこで、同一クローンだけの栽培ではなく、複数クローンによる栽培が天候などのリスク分散と品質差による多様性に繋げるという手法も採られているようです。

 

2.マッサル選抜(マッサル・セレクション)

ぶどう 歴史に見る増殖法

 

 葡萄樹の植え替えという手法が導入されたのは、フイロセキアによって初めて行われたと言われています。それまではプロヴィナージュ(provignage)と呼ばれる増殖法が行われていたようです。

 葡萄は蔓(つる)性植物ですので、蔓が伸び、地面に触れると節の部分から根が出て来るのです。この葡萄の特性を利用して、伸びた蔓の一部に土を被せてやるとやがて根付き、蔓を切り取って新たな葡萄樹の誕生となります。

 結果的に、新しい葡萄樹は親となった葡萄樹の蔓の伸びた範囲内に生えることとなりますので、現在の垣根仕立てのように整然と一列に並んだものとはならない事となります。

 仕立て方は別として、増殖という観点からみると、やはり変異の問題が生じ多種多様の特性を持った葡萄が育っていたようです。

ぶどう 
マッサル選抜(マッサル・セレクション)がテロワールを生む

 クローン選抜のように選ばれた特定の母株と同じ長所、短所を持つ画一的な葡萄樹を増やしていくのではなく、畑に実際に植えられている葡萄の樹から良い樹を選び、穂木として台木に繋ぐ方法です。

 穂木によって遺伝子が異なるため、畑全ての葡萄樹が同じ長所、短所とはなりませんが、数種類の理想的な葡萄の樹に成長していきます。
 目的とするのは、まったく同じ特性を持つ葡萄樹をたくさん育てようと言う事ではなく、優れた特性を持つ葡萄を幾種類か、自分のシャトーのオリジナルなクローンを育てようとするところにあります。

 

 葡萄品種によってワインの色/香り/味わいの特徴が異なるのと同様、品種の違いほどではないにせよ、葡萄樹の違いは、ワインのスタイルや風味に影響を及ぼすと言われています。自分の畑の土質の違いごとに、すでに植えてある樹齢が高く、高品質の葡萄実を付ける実績のある葡萄樹が穂木の対象となりますので、気の長くなるようなスパンで行われていくもののようです。

 結果的に幾種類かのオリジナルな葡萄樹が出来あがり、ワインの個性が生じる事となります。
 マッサル・セレクションはテロワールの特徴がより強く出ると言われますが、テロワール(主に土質、気候)を体現するために、マッサル・セレクションを行っていると私は思っています。

 これまでテロワールの影響だと信じられていたワインの諸特徴が、実はクローンの影響で生じたものだと主張する方もおられるようです。

 

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