【日本書記から】鞆の浦と神話/其の七 | 鞆の浦二千年の歴史を紐解く“鞆の浦研究室”/Discovery! 鞆の浦

【日本書記から】鞆の浦と神話/其の七

【第四段 大八州生成章 一書】

 一書(あるふみ)に曰(い)はく、伊奘諾尊(いざなきのみこと)・伊奘冉尊(いざなみのみこと)、二(ふたはしら)の神、天霧(あまのさぎり)の中に立たして曰(のたま)はく、「吾(われ)、国を得む」とのたまひて、乃ち天瓊戈(あまのぬほこ)を以(も)て、指し垂(くだ)して探(さぐ)りしかば、馭廬嶋(おのごろしま)を得たまひき。則ち矛を抜(ぬきあ)げて、喜びて曰はく、「善きかな、国の在りけること」とのたまふ。 <第二>
 一書に曰はく、伊奘諾・伊奘冉、二の神、高天原に坐(ま)しまして曰はく、「当(まさ)に国有らむや」とのたまひて、乃ち天瓊戈を以て、馭廬嶋を画(かきさぐ)り成す。 <第三>
 一書に曰はく、伊奘諾・伊奘冉、二の神、相謂(あひかた)りて曰はく、「物有りて浮膏(うかべるあぶら)の若(ごと)し。其の中に蓋し国有らむや」とのたまひて、乃ち天瓊戈を以て、探(かきさぐ)りて一(ひとつ)の嶋を成す。名(なづ)けて馭廬嶋と曰(い)ふ。 <第四>
 一書に曰はく、陰神(めかみ)先(ま)づ唱へて曰はく、「美哉(あなにゑや)、善少男(えおとこ)を」とのたまふ。時に、陰神の言先(ことさきだ)つるを以ての故(ゆゑ)に、不祥(さがな)しとして、更に復(また)改め巡る。則ち陽神(おかみ)先づ唱へて曰はく、「美哉、善少女(えおとめ)を」とのたまふ。遂に合交(みあはせ)せむとす。而(しか)も其の術(みち)を知らず。時に鶺鴒(にはくなぶり)有りて、飛び来たり其の首尾(かしらを)を揺(うごか)す。二の神、見(みそなは)して学(なら)ひて、即ち交(とつぎ)の道を得つ。 <第五>
 一書に曰はく、二の神、合為夫婦(みとのまぐはひ)して、先づ淡路洲(あはぢのしま)・淡洲(あはのしま)を以て胞(え)として、大日本豊秋津洲(おはやまととよあきづしま)を生む。次に伊予洲(いよのしま)。次に筑紫洲(つくしのしま)。次に億岐洲(おきのしま)と佐度洲(さどのしま)とを双(ふたごに)生む。次に越洲(こしのしま)。次に大洲(おほしま)。次に子州(こしま)。 <第六>
 一書に曰はく、先づ淡路州を生む。次に大日本豊秋津洲。次に伊予二名洲(いよのふたなのしま)を生む。次に億岐洲。次に佐度洲。次に筑紫洲。次に壱岐洲(いきのしま)。次に対馬州(つしま)。 <第七>
 一書に曰はく、馭廬嶋を以て胞として、淡路州を生む。次に大日本豊秋津洲。次に伊予二名洲。次に筑紫洲。次に吉備子洲(きびのこしま)。次に億岐洲と佐度洲を双生む。次に越洲。 <第八>
 一書に曰はく、淡路州を以て胞として、大日本豊秋津洲を生む。次に淡洲。次に伊予二名洲。次に億岐三子洲。次に佐度洲。次に筑紫洲。次に吉備子洲。次に大洲。 <第九>
 一書に曰はく、陰神先づ唱へて曰はく、「妍哉(あなにゑや)、可愛少男(えをとこ)を」とのたまふ。便(すなは)ち陽神の手(みて)を握(と)りて、遂(つひ)に為夫婦(みとのまぐはひ)して、淡路洲を生む。次に蛭児(ひるこ)。 <第十>


<訳>
 ある書ではこう伝えられている、伊奘諾尊(いざなきのみこと)と伊奘冉尊(いざなみのみこと)の二柱の神は天霧(あまのさぎり)の中に立って、「我々の国を得ん」と言って、天瓊戈(あまのぬほこ)を指し下ろして探ると、馭廬嶋(おのごろしま)を得ることが出来た。すぐ矛を抜き上げて、喜んで、「善いことだ、国のあるということは」と言った。。 <第二>

 ある書ではこう伝えられている、伊奘諾と伊奘冉の二柱の神は、高天原に鎮座して、「さあ国を得よう」と言って、天瓊戈を使って、海をかき探って馭廬嶋を成した。 <第三>

 ある書ではこう伝えられている、伊奘諾と伊奘冉の二柱の神は共に語らって、「物はあるが、水の上に浮かんでいる油のようだ。しかし思うにその中に国があるのではないだろうか」と言って、天瓊戈をを使って、かき探って一の島を成した。名付けて馭廬嶋と言う。 <第四>

 ある書ではこう伝えられている、陰神(めかみ)が先に唱えて、「ああ、なんとすばらしい男よ」と言った。しかし、陰神が先に言葉を言ったことが原因で良くなかったとして、もう一度改めて巡った。そして陽神(おかみ)が先に唱えて、「ああ、なんとすばらしい女よ」と言った。そして交合しようとした。しかしその方法を知らなかった。その時、鶺鴒が飛んで来て、尾を振った。二柱の神はそれを見て学んで、交合の道を得た。 <第五>

 ある書ではこう伝えられている、二柱の神は交合して、淡路洲(あはぢのしま)・淡洲(あはのしま)を第一子として、大日本豊秋津洲(おはやまととよあきづしま)を生んだ。次に伊予洲(いよのしま)、次に筑紫洲(つくしのしま)、次に億岐洲(おきのしま)と佐度洲(さどのしま)とを双児に生んだ。次に越洲(こしのしま)、次に大洲(おほしま)、次に子州(こしま)を生んだ。 <第六>

 ある書ではこう伝えられている、まず淡路州を生んだ。次に大日本豊秋津洲、次に伊予二名洲(いよのふたなのしま、次に億岐洲、次に佐度洲、次に筑紫洲、次に壱岐洲(いきのしま)、次に対馬州(つしま)を生んだ。 <第七>

 ある書ではこう伝えられている、馭廬嶋を第一子として、淡路州を生んだ。次に大日本豊秋津洲、次に伊予二名洲、次に筑紫洲、次に吉備子洲(きびのこしま)、次に億岐洲と佐度洲を双児で、次に越洲を生んだ。 <第八>

 ある書ではこう伝えられている、淡路州を第一子として、大日本豊秋津洲を生んだ。次に淡洲、次に伊予二名洲、次に億岐三子洲、次に佐度洲、次に筑紫洲、次に吉備子洲、次に大洲を生んだ。 <第九>

 ある書ではこう伝えられている、陰神が先に唱えて、「ああ、なんといい男よ」と言った。そして陽神の手を握って、遂に交合して、淡路洲を生んだ。次に蛭児(ひるこ)を生んだ。 <第十>



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天霧(あまのさぎり)、霧は息吹きによって出来ているとされたため、生命の象徴。その中にいるということは生命を得るということの象徴。
鶺鴒(にはくなぶり)、セキレイのこと。「ニハ」は俄、「クナ」は尻、「ふり」は振ることで、速く尾を動かす鳥の意味。その尻を動かす仕種から、交合、生殖と関連付けられる。
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【日本書記から】鞆の浦と神話シリーズ

鞆の浦と神話/其の一
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鞆の浦と神話/其の二
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鞆の浦と神話/其の三
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鞆の浦と神話/其の四
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鞆の浦と神話/其の五
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鞆の浦と神話/其の六
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鞆の浦と神話/其の七
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鞆の浦と神話/其の八
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鞆の浦と神話/其の九
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鞆の浦と神話/其の十
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鞆の浦と神話/其の十一
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鞆の浦と神話/其の十二
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鞆の浦と神話/其の十三
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鞆の浦と神話/其の十四
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鞆の浦と神話/其の十五
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