代償性発汗 | レイノー病を治す(ETS手術)

代償性発汗

代償性発汗について詳しく書きます。

ETS手術後は、胸椎の交感神経節を切除した事により
遮断されていない部位(背中、腹部、大腿部、膝の裏側など)
の発汗が増加します。
これは代償性発汗(compensatory sweating)といわれます。
気温が25度を超えると胸より下の下半身に発汗が始まります。

エアコンの効いた涼しい部屋にはいると
代償性発汗はおさまります。
温度依存性の発汗です。

下記に左手の代償性発汗の写真を載せます。
右手はETS手術後なので汗は出ません。
$レイノー病を治す(ETS手術)-代償性発汗

皮膚の温熱受容体から求心性に視床下部前部に
信号が入り、遠心性信号が交感神経節の
シナプスを介して汗腺より発汗を誘発し、
シナプス後は視床下部にnegative feedbackとして
働いているが、ETS手術を行うことで
negative feedbackとして働かなくなり、
温熱性発汗の抑制が減少し、大量の発汗を生じる。

この場合の発汗は決して上半身の緊張性発汗を
代償するものではなく、
脊髄損傷後の reflex sweating と類似のため、
代償性発汗の代わりに
反射性発汗(reflex sweating) と呼ばれる。

つまり、汗出せ命令を出した交感神経節後線維からは、
元来視床下部に対して、汗出せ命令を出したという
フィードバックがかかっており、
それで汗の量が適量に保たれています。

しかし、手術によってそのフィードバックが断たれるために
異常に汗が増える(出っ放しになる)模様。
もちろん交感神経節で手術遮断された部位には、
発汗命令は行かないので、
そこの領域の汗が出ることはありませんが
遮断されていない神経への発汗命令は出っ放しになる。
現象を見ると、手のひらの汗が減った分だけ、
他の部位に「代償して」汗が増えると思いがちになりますが、
それは間違いです。
代償した以上の+αの汗が出る可能性があるのですよ。


つまり、レイノー病でETS手術を受ける場合、
多汗症を持ってないからといって
「代償性発汗は出ないから、ETS手術を受けても損はない」
という医者の説明は間違っており根拠に乏しいのです。
レイノー病でも致命的に代償性発汗が出る可能性があります。

しかし,術後明らかに精神緊張性に体幹下部から発汗する、
真の代償性発汗を認める例も存在します。

精神的に緊張した時、
今までは手のひらにかいていた汗が、
背中やお腹,大腿部に大量に汗をかくなんて事も起こり得ます。

なので、多汗症を持ってた場合は
代償性発汗が強烈に出る可能性が
非常に高いというのが正解のようです。

レイノー病のみ単独の病気でETS手術を受ける場合は
代償性発汗が出る確率は多汗症の人よりは低いだけです。

ETS手術後に、他の部位の汗も減る人もいれば、
他の部位では、ほとんど汗の量に変化がない人もいますし
逆に他の部位の汗が増えて代償性発汗に悩む人もいます。

どれが当たるかは誰にもわかりません。
代償性発汗を甘くみないほうがいいです。
致命的に出る可能性がありますからね。

代償性発汗は、ETS手術以外にも
胸部交感神経節ブロックや腰部交感神経節ブロックでも
出る可能性があります。


もうひとつ、代償性発汗のメカニズムに関する説があります。

人間のからだは頭(脳)を第一に守るよう制御されています。
マラソンなど激しい運動したときや夏の暑いときに
まず最初に顔や頭から汗がでるのは、
頭に熱がこもらないようにコントロールされているためです。

高位の交感神経とくに第2交感神経を遮断すると
頭や顔から汗がまったくでなくなりますので、
熱から脳を守るため視床下部からもっと汗を出すように
命令がでます(フィードバック現象)。

ところがいくら命令がでても顔や頭からは汗がでませんので、
少しでも熱を発散するために背中や胸、
ふとももなどから汗がでるようになります。

しかし頭は熱がこもったままですので、もっと汗をだすように
視床下部から命令が出続ける結果、
背中などに過剰な代償性発汗が生じることになります。
以上のように頭から汗を出すことはからだのバランスを保つ上で
極めて重要なことです。

代償性発汗のメカニズムをまとめると、
①ETS手術後に、視床下部に対して、汗出せ命令を出したという
 フィードバックが断たれる為に、汗出せ信号が出続ける。
②ETS手術後に、視床下部に対して、汗出せ信号が出て、
 信号を出したというフィードバックはあるが、
 頭からは汗が出ない為に、他の部位からのみ汗が出る。
 結局、肝心の頭からは汗をかかず、頭の温度が落ちない為、
 いつまでも汗出せ信号が出てしまう。


①の場合は、信号のフィードバックが出来ないのが原因
②の場合は、頭の体温調整が出来ないのが原因

②は熱中症や頭痛を起こす原因になる。

参考
胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(ETS)
神経ブロックとは
多汗症とは
多汗症でETS手術を受けるには
多汗症患者の病気に対する姿勢
多汗症の苦労と努力
ETS手術の真実
インフォームド・コンセント
ETS手術を取り巻く環境
ETS手術の本質を理解する
熱中症とは
代償性発汗
代償性発汗=医療ミスではない
知識・理解・覚悟
本当の努力とは
不幸に甘えすぎ
多汗症は環境に恵まれている
ETS手術を怖がる理由



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