「Nのために」第7話~語られる事件の悲劇・・・歪んだ愛の代償 | 日々のダダ漏れ

日々のダダ漏れ

日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

「Nのために」



 
第7話
語られる事件の悲劇・・・歪んだ愛の代償
 
 
希美) 今は…誰とも結婚したいと思ってない。
安藤) 分かった。会ったらすぐ元に戻れるって
    思ったけど、10年は長いな。取っといて。
希美) もらっても困る。
安藤) 
今は思わなくてもさ、そのうち結婚したいと
    うかもしれないじゃん。
3年先とか。5年先とか。
希美) そんな先のこと分かんない。
安藤) そう。だから分かんないんだって。
    先のことなんて。


**********

高野) 病気のこと、両親に伝えたんか?
希美) いえ。
高野) 誰か、頼れる人はおるん? 
希美) 誰かがそばにおったら、もっと生きたいって
    いう欲が出るかもしれんでしょ。
    一人の方が気が楽なんです。


**********

(回想)
西崎) 逃げよう。
奈央子) 主人はね、本当の気持ちを、私にしか見せ
     ないの。あの人は、私以上に苦しんでる。
西崎) そう思い込んでるだけだ。そう思い込まなきゃ、
    自分が哀れだから。
奈央子) 今は、あの人のそばにいてあげ…

(奈央子を抱き締める西崎)

**********

西崎) 奈央子のことを、教えてほしい。
希美) 今、奈央子って言った。
    奈央子さんの相手って、もしかして西崎さん?
西崎) (頷く)
希美) え~っ…。
西崎) 奈央子は、旦那に暴力ふるわれてる。
希美) ちょっと待って。いきなり言われても…。
    野口さんが…奈央子さんに暴力ふるってる?
西崎) 奈央子は、殴られるたびに俺に電話してくる。
    最近は連絡がなかったから、無事なんだろうと
    思ってた。監禁されてるってどういうことだ?
希美) 外からドアチェーンかけられて、
    家から出られないようにされてる。
西崎) 奈央子に連絡してくれ。
希美) 奈央子さん、携帯解約した。
西崎) じゃあどうやって連絡取ればいいんだよ。
希美) 取らなきゃいいと思う。
    不倫なんかしなきゃいい。
西崎) そういう言い方はされたくない。
希美) 何で人の奥さんなんか好きになるの? 奈央
    子さんが監禁されたのだって西崎さんのせい
    かもしれないんだよ。好きだからって、人の家
    メチャクチャに
していいの?
西崎) 苦しめようとは思ってない。
    助けてやりたいんだよ。
希美) 奈央子さん、流産したんだよ。
    お腹にいたのって西崎さんの子供なの?
西崎) 俺の子じゃない。
希美) でも野口さんは疑ったから奈央子さんに暴力
     ふるったんじゃないの? それで奈央子さん、
     そんなことになったんじゃないの? 
苦しめよ
     うと思ってないって言うけど、
全然そんなふう
     になってないじゃない。
西崎) 俺のせいなのか?
希美) 分からないよ。本当のことは私には。
西崎) 奈央子は弱ってるんだろ?
希美) 見てて可哀想なくらい。
西崎) 助けてやりたいと思わないのか? 今まで世
    話になったんだろ? 優しい人だって言ってた
    じゃねえかよ。
希美) 優しいけど、見境がなくて何だか怖いんだよ。
    人の部屋に断りなくドレッサー送ってくるし。私
    は、ああいう人好きになれない。夫婦のことは
    外から見たって分かんない。幸せそうに見え
    ても実は冷えきってたりとか。その逆で、暴力
    ふるわれてるけど、離れたくないとかあるかも
    しれないじゃん。そういう、意味のないことに関
    わるくらいならもうずっと一人でいい。面倒なこ
    とに関わりたくないの。巻き込まれたくない。

(ガスレンジに火をつける希美。離れる西崎)
希美) ごめん。

**********

野原) 
希美ちゃんもとうとう、ここを出ていくか。
    寂しいな。
希美) そんなこと言わないで。
野原) よく頑張ったね。いい大人になるんだよ。
希美) うん。

**********

慎司) ごめん杉下、ホントごめん。杉下が奨学金譲
    ってくれたけん、俺大学行けたのに。
    急に親父が死んで、何か、どうでもよくなって、
    大学にもバイトにも行かんなった。詐欺みたい
    なことまでやったりもした。どうしたら杉下に胸
    張って会えるか考えたら、やっぱり俺、料理人
    になりたくて。修行できる店探して、今、そこで
    働いとる。杉下にはホントに感謝しとる。杉下
    がおったけん、島を出られた。
これからは、杉
    下が言ってくれたこと…
裏切らんように何とか
    やってく。
希美) 私…成瀬君に何て言った?
慎司) 火事の時、励ましてくれた。言われた時は、
    「俺、そんな大した男やないのに、何で?」っ
    て思ったのに、
後からあの一言に救われた。
    ホントにごめん。
希美) そんなふうに思っとったん? 私、奨学金の事
    なんて、全然気にしてないのに。うちの父親、
    最低な親やけど、大学に行くお金は出してくれ
    るって言いよったんよ。成瀬君なら絶対この奨
    学金受かると思って。でも、何て言って申請書
    渡したらええのか、分からんかったけん。あん
    な形で渡すことになっちゃったんやけど。
慎司) 全然違うふうに思っとった。
希美) 譲ったわけやないよ。やけん、シャーペンで
    5回。よかったねってカチカチやったのに。
慎司) 「よかったね」。
希美) 他に何があるん?
慎司) 「バカヤロウ」かと思った。
希美) アハハハ! 違うよ!
慎司) そっか。「よかったね」やったんや。
希美) お互い島を出られて、よかったね。
慎司) 杉下はどうしとったん? 就職は決まった?
希美) もうやっと決まった。
慎司) 野望は何か叶った? 
希美) えっ?
慎司) 昔、色々、ノートに書いとったやん。
希美) 書いとった。成瀬君、宝くじ当たった?
慎司) 当たった。500円。
希美) ちっちゃい。
慎司) 富豪には出会った?
希美) 油田は賭けてないけど、
    将棋は、役に立ったよ。
慎司) ホントに?
希美) 成瀬君、変わってないね。
    成瀬君のまんまやね。よかった。

**********

希美) あんな人好きになれないなんて言って、ごめ
    んなさい。不倫は好きじゃないけどさ、暴力と
    か監禁はひどいって思う。西崎さんの話聞い
    て、心配になって、今日奈央子さんに会いに
    行ってきた。でも中に入れてもらえなかった。
西崎) 何とかして入れないか?
希美) 無理だよ。
    あのマンション、セキュリティー 厳重だもん。
西崎) それでも俺は奈央子を助けたい。
    俺の母親は、火事で死んだ。助けようと思えば
    助けられた。
俺が殺したようなもんなんだ。
    だから今度は必ず助けたい。

**********

西崎) ところで、成瀬君。
慎司) はい。
西崎) 君は、誰のために生きてる?
慎司) 誰? 自分のためじゃないですか?
西崎) 俺も昔はそうだった。だがな、自分のために
    生きているうちは、所詮、自分を越えることは
    できない。
慎司) 何の話ですか?
西崎) 例えば、今にも崩れそうな、吊り橋の向こうに、
    杉下がいたとしよう。君は危険を冒してもその
    橋を渡るかい?
慎司) 普通ないですよね、そんな状況。
西崎) 橋の向こうから杉下が、
    「助けて」と君を呼んでいたとする。
慎司) 呼ばれれば渡ると思います。
西崎) そうだろ。俺にも、橋の向こうから呼んでくれ
    る女性が現れた。彼女がいれば、俺は、今ま
    でできなかったことができる。
    まさに俺の美の女神、ミューズ!
慎司) 劇団とかやってる人?
希美) ううん、文学やってるの。
西崎) あの塔の上を見てくれ。
    俺の女神は今、ラプンツェルのように…。
慎司) 
ラプンツェル?
希美) マリオでいうと…。
慎司) あっ、ピーチ姫?
西崎) 俺は、あの塔から彼女を救い出したい。そこ
    で、この作戦に、君の協力を仰ごうという訳だ。
慎司) 作戦?
西崎) 奈央子救出作戦。「N作戦Ⅱ」としよう。

**********

やっぱり、島にいる希美と慎司がいい。シャーペン5
回のサインが、「バカヤロウ」ではなく、「よかったね」
だったこともわかったし、お互いに変わっていない所
を再確認できた感じで。帰る場所があるって、いいよ
ね。それはふるさとっていうだけじゃなく、昔の自分を
知っている人がいてくれるだけでも人は昔に帰れる。
希美も慎司も、お互いが本当に大切な人なんだなぁ。

不倫や面倒なことに関わりたくなかったはずの希美。
西崎が奈央子を愛して、奈央子のために生きようと
し始めた西崎に、みんなが巻き込まれたんだなあと。
巻き込まれたのだけれど…西崎もまた、希美や安藤
にとって大切な人だったわけで…。自分のためには
できないことが、他人の、いや、大切な人のためなら
できてしまう人間の不思議。愛は時に狂気に、そして
凶器になる。事件など起こらない、ただの青春ドラマ
だったらいいのに…そう思わずにはいられないほど、
登場人物たち(野口は除くw)が魅力的すぎて困る!

ところで…ラプンツェルをピーチ姫に例えたのは、案
外的を射ているというか…。ピーチ姫って、何ていう
か、トラブルメーカーというか、わざとさらわれてるで
しょ?っていう疑惑が消えないというか…。自ら不幸
を選んでいるような奈央子は、ピーチ姫に見えなくも
ない。西崎には、ラプンツェルに見えるんだろうけど、
端から見ればお騒がせのピーチ姫にしか見えない。
なんて…ついつい、下手くそで、ピーチ姫を救うこと
もできず、何度もゲームオーバーした記憶が蘇って
しまって…余計なことを考えてしまったのでした~w

 
「Nのために」関連ブログ↓
第1話~セレブ夫婦殺人事件・・・15年前に隠された秘密
第2話~放火事件の謎・・・許されない罪の共有
第3話~反撃開始舞台は東京へ!運命の出会い
第4話~被害者Nと出会った日・・・すれ違う2人
第5話~沖縄の夜新たな恋から歯車が狂い出す
第6話~許されぬ愛・・・罪人たちの悲しい告白
第7話~語られる事件の悲劇・・・歪んだ愛の代償
第8話~エリート夫の嘘と罠・・・炎に消えた真実
第9話~最終章~前編~今夜事件の幕が開く!
第10話~明かされる事件の真実・・・N達の未来

●「Nのために」HP


ランキングに参加しています。
ポチっとしていただけると、嬉しいです♪


にほんブログ村


Nのために (双葉文庫)/双葉社
¥680
Amazon.co.jp
Nのために/東京創元社
¥1,512
Amazon.co.jp