第11話（最終回）
恋の結末
結婚は多くの苦痛を持つが、
独身生活は喜びを持たない。
サミュエル・ジョンソン
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玲子） ゆきさん。人は、正直な気持ちを隠して生きてい
くことは出来ないわ。最初に、守さんが私にプロポ
ーズしてくださった時、守さんは、あなたへの想い
を、私に正直に言ったのよ。
ゆき） えっ？
玲子） 守さんは、結婚なんて必要ないと思ってたって。
でもそれが、ゆきさんに会って変わったって。考
えていることが違うから、知りたい。知ってほしい。
違うから面白い。お互いが面白いと思えるものを、
探していく感覚。もっといいものがあるんじゃない
かと考え、頭を悩ませる時間は、この上なく楽し
かったって。私、守さんといてわかったの。
守さんと一緒にいるのは、私には無理だってこと。
私よりも、あなたのほうが守さんを深く知っている
ということ。
ゆき） 私、運命って決まっていると思うんです。
社長との出会いから、今までを振り返ってみても、
出会った瞬間に運命の人だなんて思えるような、
劇的な事は何も起こらなかったんです。きっと私
と社長は、そういう運命じゃなかったんでしょうね。
玲子さんと社長こそ、運命の２人だと思います。
玲子） この世に運命なんてないのよ。
幸せは、あなた自身が掴み取るしかないのよ。
ゆき） いいえ。運命は存在します。たとえば、この魚。
この魚は、干物になる運命なんです。
玲子） いいえ。（魚を掴んで、海に投げ込み…）
男性） あっ。
玲子） 運命なんてないのよ。
あっ！ 申し訳ありません。おいくらですか？
男性） 50円。
玲子） お願い。
執事） はい、玲子様。それではこれ（カード）で。
男性） こんなもの、わしは扱ったことない。
執事） いや…
男性） もう、いいから。向こう行け！
玲子） 私は、さっきから穏やかに話していますが、本
当は、とても腹を立てているんですのよ。私だっ
て守さんが好き。でも、守さんの中にはあなたし
かいないのがわかったから。こうやってあなたと
お話をしているのだけど。本当のことを言えば、
私はあなたの首根っこを掴まえて、海に放り投
げたいくらいでございますのよ！ 帰ります。
男性） いやぁ、凄いお嬢さんだなぁ。いやぁ、凄いな。
ゆき） 素晴らしい方だよ。
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守） ここはしかし、振られた男の吹きだまりだな。弟は、
ただ一人だと思った人に振られ、兄はあんなに献身
的だった人に振られ。俺たち、何やってんだろうな？
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進） いい加減、自分の気持ちに素直になれよ。
俺も玲子さんも身を引いたんだ。
もう足かせは何もないはずだろう？
守） お前何言ってんだ？ お前やってる事は滅茶苦茶
なんだよ。迷惑なんだよ。お前は勘違いしてるかもし
れないけどな、俺は今の生活で十分に幸せなんだ。
進） 幸せ？ 違うだろ！
兄貴はただ怖がってるだけだろ！
守） 怖がってる？ どういうことだよ？
進） 兄貴はただ臆病なだけだよ。傷つくのが怖いだけ
なんだ。独身がいいだの、パーソナルスペースがど
うのって色々理屈をこねてるけど。それってさ、ただ
自分が傷つくのが怖いだけで、自分の周りに壁を作
って、閉じこもってるだけだろ！
兄貴は、人との関わりを怖がってる臆病物だ！
守） 何わけのわからないこと言ってんだ？
俺は子供の頃から一人が好きなんだ！
パートナーなんていらないんだよ。
俺にはな、誰も、誰も必要ないんだ！
進） それが…ゆきちゃんでも？
守） 誰であっても変わらない。
進） 兄貴！ 兄貴が、今後どんなにいい映画を作った
としても、兄貴は最低な人間だよ！
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ゆき） 専務はいつだって優しいんです。
これだって、専務の優しさからやった事だと思い
ます。私、専務の、その優しさに惹かれていまし
た。でも、本当に優しかったのは、社長です。社
長の優しさは、専務の優しさとは違うので、最初、
私は、気がつきませんでした。
初めて社長と会った時、社長は私の脚本を読ん
で、こう言いましたよね？ 構成は滅茶苦茶。スト
ーリーもありきたり。テーマもキャラクターも弱す
ぎる。映画学校の学生が書いたものでも、これよ
りはずっとマシですって。でも、最後に、だが、セ
リフだけはよかったって。社長だけだったんです。
本当に、私を認めてくれたのは。社長だけだった
んです。私を必要としてくれたのは。私、
いろいろと鈍くって、みんなの気持ちにも、私自
身の気持ちにも全然気がつかなくて。気がつい
た時にはもう、社長は玲子さんと結婚する時で。
だけど、今はわかっています。自分の気持ちを。
社長。社長は私にとって、大切な人です。
守） 君といると、いつも僕の心はざわついて、
何も、冷静な判断が出来なくなってしまうんです。
これ以上こんな気持ちにはなりたくありません。
僕は、君の事をすべて忘れて、
一人、静かに生きていきたいんです。
ゆき） これ。
ずっとお返しできなくてすみませんでした。
男性） すみません。照明落としますよ。
ゆき） 今まで本当に、お世話になりました。
ありがとうございました。
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玲子） 守さん。何をお考えなのですか？
どうして素直にならないんですか？
どうしてゆきさんのところへ行かないのですか？
守） 玲子さん。あなたには関係のないことでしょう。
いいえ、大ありです。あなたがゆきさんと結ばれな
いと、私の立場が、ますます惨めなものになるんで
すよ？ 一体私は何のために、あなたとお別れ申し
上げたのでございましょうか。
守） 大きなお世話です。
玲子） （守をビンタして）
いい大人の男が、子供のように意固地になって
ダダをこねて、いったい何事ですか！
しっかりなさい。
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ゆき） どうして？
守） 君にまだ会う前、君がテーブルに置いてった、「８
月のボレロ」を最初に読んだとき、書いた人間がどう
いう人かすぐにわかったよ。髪の毛や服にそんなに
気を使う人じゃなくて、外で遊ぶより本が好きで、本
よりもっと映画が好きで。でも好奇心旺盛で、ダイヤ
のネックレスよりは、野に咲く花の方が好き。いつも
夢見てるけど、物事の本質を見る目があって、意志
が強くて、拘りがあって、頑固ともいうけど、いろん
なとこが似てると思ったんだ。この世にそんな人間、
自分だけだと思ってたのに。やっと見つけたと思った
んだ。春野ゆき。あなたは、僕にとって、とっても。
とっても、大切な人なんだ。
守） これは、
星野家の長男の嫁が代々持ってるものなんだ。
君が持っててほしい。
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デヴィ夫人の、おもてなし、ならぬ、子宝（こ・だ・か・ら）。
これ、女性が言われたら、めっちゃムカツクセクハラ発言
だと思うけど、ドラマのキャラとしてはアリなので…許す。
玲子も進も身を引いたというのに、守のメンドクサイことと
言ったらもう！ ゆきが告白してもなお頑なな態度を貫くと
は、とんだダダっこぶりといいますか、まあ、だからこそ、
そこに玲子さんの後押しが、叱咤が効いてくる訳ですが。
玲子さん、ホントいい女でした。守を愛するがゆえに、守
に幸せになってほしいと願う、心優しき愛にあふれた女性。
「いったい何事ですか！しっかりなさい！」とのセリフにし
びれました。玲子に叱ってもらえた守はホント、幸せもの。
守は玲子さんと結婚しても幸せになれただろうと思うけれ
ど、玲子さんには、彼女を真っ直ぐに愛してくれる人と結
婚して幸せになってほしいから、守とゆきのカップルでい
いかなって…。それほど玲子さんの存在は光ってました。
運命はある。でも、棚からぼたもちのような運命なんてな
い。運命は自ら勝ち取ってこそ、与えられるもの。そんな
運命に気づくところから始まって、運命を自ら引き寄せる。
そこまでして、運命だったと言えるのかもしれないなあと。
そこまで出来ずに逃してしまう運命もあっただろうなって。
結婚は多くの苦痛を持つが、
独身生活は喜びを持たない。
誰かと一緒に生きていくことは、多くの苦痛を持つけれど、
２人でいる事で得られる喜びは、１人では得られない。共
感しあえる相手がいる幸せは、１人では得られないもの。
やっぱ、草なぎ君はいい役者だ～と思えたドラマでした♪
誰かと一緒に生きていくことは、多くの苦痛を持つけれど、
２人でいる事で得られる喜びは、１人では得られない。共
感しあえる相手がいる幸せは、１人では得られないもの。
やっぱ、草なぎ君はいい役者だ～と思えたドラマでした♪
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