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Kierkegaard
『地図』物語を構成する世界地図です。
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Kierkegaard
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「ランナー」

薔薇姫は、竜宮から久遠の許へ行くのだ。

「どうしたら・・へ行けるのかしら?」

キョーコは、竜宮から久遠の許へ行く水路(みち)なぞ知りません、ふらふらと庭を彷徨っていました、そこに竜宮の使いと呼ばれる眷属に出会い、奥庭の清水が湧き出る井戸へ案内してくれました。

「ありがとうございます」

「娘さんあの国は、邪気でいっぱいですよ、わしらのように弱いものは、取り込まれ元の本性に戻ってしまうよ」

「想う方が死病を彷徨っているのです、何か助ける方法を知りませんか?」

「竜王さまの宝珠なら何とかなるかもしれないが・・・」

キョーコは、竜王蓮の寝所に戻ると、枕元の宝珠を大事に懐に仕舞うと、奥庭の水路(みち)を通り、久遠の許へ急ぎます。

水路(みち)は、宮城の寝殿近くにある庭園の井戸と繋がっていました。

キョーコは、あたりを窺い、藩主の寝所へ向かいます。(王宮と似たような造りだからわかるのである)

廊下を歩いていると仕女が通ります、キョーコは柱の物陰に隠れました。

「久遠さまは、今夜が峠だそうよ、お可哀想に、父君である藩主さまも重病だし、どうなっちゃうのかしら」

キョーコは、息をのみ、急ぎ仕女の出てきた部屋へ入ります。

青白い顔をして、息も絶え絶えな久遠を目にして、胸がつぶれそうです、急ぎ久遠の枕元へ駆け寄ります。

「久遠、久遠、しっかりして、助けてあげるから」

「キョーコ、キョーコ、俺はもう死んだの、君に逢えるなんて」

「あなたに逢いに飛んできたの、これを触って、久遠」

キョーコは、懐から宝珠を取り出し、久遠の心の臓に当てます、が、目に見えた効果が現れません。

「どうしよう、どうしたら」

「もういいんだよ、キョーコちゃん、君に最期に逢えただけでも・・・」

「嫌ー、死んじゃ嫌ー、久遠、久遠」

久遠は、褥から上半身で起き上がるとキョーコを胸に抱き寄せ、口づけを落とします。

優しくて甘い口づけですが、キョーコの瞳から涙がこぼれます。

涙が宝珠にかかると内から清浄な光が、寝室を明るくします、その光を浴びた久遠の体に生気が戻ってきます。

宝珠は竜王と天帝しか使えないのです、天帝の御子である半身が竜である、キョーコの涙が触媒となり、効能を発揮したのである、だが、ヒトである身のキョーコは、自身の気も久遠に与えたために、意識を手放すこととなる。

「どうしたのキョーコちゃん」

「久遠が助かって良かった・・・」

「キョーコ、キョーコ」

Kierkegaard

***

竜宮では、キョーコの不在が判明して大騒ぎだった。

「薔薇姫は、久遠の許か、一体だれが水路(みち)を教えたんだか」

「それより、急ぎ連れ帰らないと」

「・・ん」

「どうした蓮」

「宝珠が使われたようだな、まずい、急がないと薔薇姫が消滅する」

「水路(みち)をすぐ通せ、久遠の寝所だ!」

老父が水路(みち)を通そうとしたが、術が跳ねかえり、ままならない。

「老父、どういうことだ」

「結界が強まっております、水路(みち)が跳ね返されました」

「ち、飛ぶぞ!」

四神は、本性に戻りいざ、薔薇姫の許に急いだ。

***

黄国の神仙が住まう仙境の外れの洞窟に、古に滅ぼされた亡国の神獣が住んでおりました。

「薔薇姫が、網にかかったらしい」

「ほう、それは重畳、すぐにこちらへ連れてこれるか?」

「いや、無理だな、こちらへ来る前に消滅しそうだ」

「どういうことだ?」

「気を使いすぎて、保ってられないらしい」

「それは、残念、薔薇姫の本性である麒麟を見たかったのにな」

「計画は、上手くいっているのか?」

「大体なあ、あと少しで大国の地方で戦が起こるはずだ、千年前と同じにな」

「滅びてしまえばいいんだ、この世界なんて」

続く その12へ

Kierkegaard
(ピエタである(うそ)、ペン画の練習中、構図に意味は無いのである)