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Kierkegaard
『地図』物語を構成する世界地図です。
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Kierkegaard
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「果報は寝て待て」

昏い気に当てられキョーコの体から見る見るうちに生という気が失われ、冷たくなっていく。

キョーコは、薔薇が年中咲き誇る後宮の結界の中で、生を長らえていたのだ。

結界を遠く離れ、清冽で美しい精気の中ならまだいいが、昏い気をまともに浴びてしまったキョーコは生という気を失うことは、本性を封じ込められた現状、霧となり、無となってしまう。

「ぬかった、我が守護する大地でこのような邪気があるとは」

蓮は、竜宮への水路(みち)を開いた。

「キョーコ、もうすぐ竜宮だ、君を助けてあげるから」

蓮は、竜宮で神官に宝珠を持ってこさせ、キョーコの額に当てた、宝珠の力で青白かった頬がうっすらと紅色にそまるが、目を覚まさない。

蓮は自身の気を分け与えるため褥に横たえた。

キョーコの衣を剥ぎ取り、自身の懐に抱いた。

額と額を合わせ、手を合わせ、肌を密着させ、宝珠の力と自身の気をキョーコに注ぎ込んだ。

「一番良いのは、俺の精をその身に注ぎ込めればいいのだが、君には他に想うひとがいるから」

蓮はキョーコを抱きしめる腕に力を込めた。

キョーコの冷たかった四肢にぬくもりが戻ってきた、心の臓も波打つ、ぴくりとキョーコの体が跳ね、まつ毛がふるふると揺れ、閉じられた瞳がゆっくりと開いた。


Kierkegaard

(ペン画練習中、下手なのは仕方がないのである)

「う、うーん」

キョーコが目をみひらくと、青竜である蓮のドアップで、自分の肌が密着している事実を認識するのにたっぷりかかった。

「あ、あ、あ」

キョーコは、後宮育ちであるが、下女仲間に仲間外れにされていたので、男女の睦事についての知識はゼロである。

自分は裸で青竜さまも裸で、ということは、キョーコは、別の意味でもう一度意識を手放したのである。

Kierkegaard

「キョーコ?」

蓮はキョーコの頬をぺちぺちと叩くが、キョーコは目を覚まさない。

蓮はキョーコの体を抱きしめると、精気に満ちているのを確認すると、少しだけ眠ることにした。

柔らかで甘い薔薇の香が心地よい、しばしの間だけだ、そう言い聞かせ、蓮は目を閉じた。

精を分け与えるという行為は疲れるのである。

***

後宮では、キョーコと蓮の不在が発覚し、大騒ぎだった。

「公主さま、キョーコがどこにもおりません」(奏江)

「蓮のヤツもいないぞ、どこに行ったんだ」(ショー)

「まさか・・藩へ行ったのでは?」(公主)

「水鏡でその地を覗いてみよう」(レイノ)

「後宮では術は使えないぞ」(光)

「俺は、地と水の両方の力を持つ、亀甲は遁甲に通じるのだ、大丈夫だ」(レイノ)

仕女がかめに澄んだ水をたたえ持ってきた。

レイノは、その水面に・・藩の宮城を映す、そして邪気の存在を知った。

「何だ、この邪気は?」(レイノ)

「俺、見覚えがあるぞ、これは亡国の神獣の気だ」(ショー)

「どうして亡国の神獣が・・・」(光)

「何やら企てているようだが、姫がこの気に当てられたら自身を保てないぞ」(レイノ)

「すぐに竜宮へ水路(みち)開けろ」(ショー)

「公主、清水が永久に湧き出る泉が後宮にあったな、案内してくれるか?」

「わかりました、奏江、すぐに三神様方を泉に案内して頂戴」

「かしこまりました、どうぞこちらです」

竜宮への水路(みち)が開き、三神は竜宮へ向かった。

続く その10  へ