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Kierkegaard
『地図』物語を構成する世界地図です。
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Kierkegaard
その前の話 その1  その2  その3  

「そして彼女は途方に暮れる」

LME国の王宮は、他の大国と比べると派手かもしれない、アカトキ国も豪奢さでは同じくらいだけど、違うのである。

四神は、その派手さに指をこめかみに当てるのだ。

「・・・相変わらずだな、お前のところの王様、なんでヴィーグール国の象に、坊国の坊もいるの、それにあれ、俺んとこのピューマくんじゃないか、・・・鳥の羽を付けた官僚・・・」

蓮は、ふうと大きなため息をつくだけだ。

彼らは王宮をぐるっと囲む城壁に立ち、其々の種族に近い獣を使いに出し、宮廷、内定の様子を探っていた。

蓮の使いの蛇は、「少女の名前はキョーコというそうです」

レイノの使いのヤモリは「後宮の奥に、公主に仕え、公主に可愛がられており、王命で後宮からは一歩も外には出ません」

光の使いのひばりは「今は後宮の奥庭の薔薇園にいて、涙をこぼしています」

ショーの使いのシャムネコは、帰ってこなかった、後宮のロシアンブルーに求愛中だった。

「泣いているのか、どうして」(蓮)

「別れた青年のことを想っているのでは?」(光)

「さっさと後宮まで飛んで行こうぜ」(ショー)

「急ごう、隠影で姿を隠しているとはいえ、ここは城壁の上だ、警邏(けいら)が来るぞ」

四神は空をとびいざ後宮の奥庭へは、たどり着けませんでした。

後宮の周囲は強い結界が張られ、四神の術さえも跳ね返します。

「真君社の結界だな」(蓮)

「彼女にここまで来てもらうように連絡は取れないのか?」(光)

「彼女は、精の気を失っている、われらの言葉は伝わらない」(レイノ)

「どうやってここに入るんだよ、後宮は男子禁制だぞ」(ショー)

「・・・女官に化けて入るしかないな」(レイノ)

「・・・」

奥庭の薔薇の香る庭園で、胸に忍ばせた手紙をそっと取り出し、文字を辿ります。

それは、ひと月前にキョーコの元に届いた久遠からの便りでした。

離れ離れになっても、久遠は月に一度は、手紙とキョーコに似合う髪飾りや玉、お菓子などえお添えて送っていました。

キョーコも女官の奏江に頼んで久遠宛てに手紙を送るのでした。

手紙には、近況とキョーコへの想いに溢れており、キョーコははらはらと涙を落とすのでした。

地面に落ちた涙は、緑が瞬く間に吸い、薔薇はいっそう艶やかに香り、キョーコの周りをキラキラとした気が覆い、彼女を慰めるのでした。

蒼い月に照らされ憂いを帯びた横顔は、可憐で美しい。

「久遠に逢いたい・・・」

カサッ、キョーコの秘密の場所に、一人の女官が現れます。

「キョーコ」

「はい、あなたは?」

「涙、泣いていたのですか」

「申し訳ありません、すぐに公主さまのおそばに参ります」

「まって」

女官は美しい刺繍を施した布を取り出すとキョーコの目にあて涙を拭うのでした。

「ありがとうございます」

キョーコと女官の目が合います、背の高い美しい女官でした。

Kierkegaard
(挿絵と本文は関係ありません)

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