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前のBLOG記事でサイズを大きくしたら線がきれい描けると書いたが、わし、大きな画面に描けないんだった・・・それで小さいサイズに描いていたんだということを思い出した。(バカである)

Kierkegaard
『地図』物語を構成する世界地図です。
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その前の話 その1

「久遠とキョーコ」
Kierkegaard
(挿絵とお話は無関係です、挿絵がないと寂しいのである)

とある王宮の後宮で少年と少女は出会い、ゆっくりと密やかに想いを育んでいました。

公主に使える下女と藩主の長男で都に留学中である彼とは身分の違いがあったのです。

「どうして泣いているの」

「久遠、何でもないの、ほ、ほこりが目に入って」

「そう、目を閉じて」

キョーコが目を閉じると柔らかなものが目に、久遠はそっと彼女の涙を吸い取り、頭を優しく撫でてあげます。

「く、久遠!」

彼はキョーコを抱きしめます、少女の哀しみが軽くなるまで。

キョーコは第三公子が誕生した日に、王宮の門前に捨てられていた赤子で、おめでたい日の捨て子だったので後宮で育てられることになったのです。

真面目で一生懸命で器用で可愛いキョーコは、マリア公主のお気に入りになりますが、嫉妬深い他の宮仕えの女官や下女に影でいじめられるのでした、そんな境遇を知っている久遠は、何も聞かず言わず抱きしめるのです。

藩主の子息である久遠は、留学を終え領地へ戻らなければなりません。

彼は、キョーコを自分の妻として領国へ一緒に連れて帰るつもりだったので、王に願い出ます。

「キョーコを連れて帰りたいのですが」

「マリアのお気に入りだから、だめ」

「彼女は女官でもありませんが、どうしてもだめですか?」

「・・・彼女は、この後宮でしか生きていけないと占に出ているんだ、あきらめろ」

「そんなばかな」

「真君社が、そう占ったんだ、どうしようもない」

久遠くんは、攫っていこうと決心しましたが、後宮の警備が強化され直接会うことも出来ません。

「奏江さん、これをキョーコに」

女官の一人に、キョーコへの手紙を託しました。

久遠が都を去る日、後宮からでたことのない彼女が城壁の回廊で、久遠を見送りました。

「キョーコ、必ず迎えに来るから」

「久遠、待ってる、ずーと待ってるから」

キョーコと久遠が別れてから一年後、城壁に一羽の黒いカラスが止まっています。

「ここに、薔薇姫がいる?」


Kierkegaard

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