月蝕の窓/篠田真由美 | mokkoの現実逃避ブログ

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月蝕の窓 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)/篠田 真由美
¥1,000 Amazon.co.jp

サイズ 659P 15cm

京介の封印された過去をも揺さぶる雪、月、殺人。
怨念の館に女たちの悲しみと嘆きが降り積もる。

「赤いお月様」が何を語る?少女の記憶が蘇った時、
女たちの悲嘆が宿る「月映荘」でまた惨劇が。
隣に住む未亡人に招かれた医師が撲殺、未亡人まで銃で狙われたのだ。
容疑は精神的に不安定なその少女に。
事件の真相は呪われた館の過去、そして京介自身の
封印された記憶にからみつく。
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ものすごいタイミングで読んでしまった。
読んでいる最中に、皆既月食があったのよぉ~
文中で京介が皆既月食のメカニズムを思い起こしてる時
テレビでは同じことが画像付で解説されていてリアルだったぁ

今回の舞台は冬の那須。
明治の政治家:赤城成三の別邸である洋館が
遺族により県に寄贈された。
その解体修復工事現場に旅行中の京介が立ち寄り
建築家の倉持を知り合い意気投合。
東京へ帰る途中に京介は、赤城邸そっくりな荒廃した邸宅を発見。
倉持への礼状と共に邸宅の写真を送ったところ興味を示し
所有者である印南家の兄妹立会いで月映荘を見られることになった。

ところが邸宅の前に立った印南茉莉が錯乱状態になり
この調査は打ち切りとなったのだが、その邸では
過去に強盗殺人事件があり、印南雅長の秘書とお手伝いさんが
殺され、茉莉だけが生き残っていた。

現場での立会いから2年後、印南雅長が転落死したことで
再び調査の話が持ち上がり、京介は倉持の助手として
4月から参加する予定だった。
しかし、敷地内で放火の痕が見つかり、プレハブで
泊り込みで見張りをすることになったのだが、
邸には霊が出るという噂があり、京介に話が回ってきた。

那須に向かう前日、門野の爺さんに無理やり京都に呼び出され
屋敷の前で置き去りにされた京介。
そこで待っていたのは、霊感少女:綾乃だった。
綾乃は月映荘に関われば命の危険があるという。
言ったことのない場所でありながら、枕元に立った女の霊が
語ったという話は京介が事前調査していた内容と大筋合っていた。
さすがに驚きを隠せない京介であったが、霊の存在を
信じていないので、予定通り京都から那須に向かう。

邸宅の裏の屋敷には、元々の持ち主である江草孝英の妻が
現在の所有者の茉莉と、心理療法士の松浦が住んでいた。

京介のいるプレハブに置かれた不可解なメモ。
江草婦人から招待されたディナーの日、一緒に来ていた
印南家主治医が殺された。
過去、印南家に起こった強盗殺人事件の真相とは?
茉莉が窓から見たという赤い月とは?
月映荘に積み重ねられた捻れた思いに京介が挑む!


仮面の島あたりから嫌な予感はあったのよ。
蒼や深春がいるから大丈夫だと思っていたけど
蒼が一人で歩き出したことで箍が外れたか?
今まで蒼目線だったのが、今回はほとんど京介目線なんで
危なっかしいことこの上ない。
もしかしたら蒼よりヤバい過去を持ってるんじゃないかと
思わせる事がポロポロ出てくる。
門野の爺さんは、京介の秘密を知ってるみたいだし・・・

完結編が出たから、とりあえず京介は生きてるみたいだけど
篠田さんは京介殺人を企てたことがあるから
ところどころで京介を“殺す気”が伺える。
京介が危険な目に遭うのはお約束とはいえ
エスカレートしてるように感じるのは気のせいではあるまい!
篠田さんは絶対にドSです!
蒼が番外編の事件で、こちらに来られなくて心底ホッとしたわ。

今回は建築の薀蓄はほとんどなかったけど、昔のお家制度から
生まれた悲劇が下地にあって、そこに精神心理学的なことや
心霊的なものが加わっているので、実に面白かった。
しかし、今回の犯人。今まで読んだミステリの中では
1番嫌いだ!大嫌いだ!死んでしまえ!!

そいつの口から京介と自分は似てる発言が出たときは
暴れそうになったわ。
一緒にするなぁ~!!
京介が認めた事も腹立たしい。

距離を置こうとする京介に、何も出来ないでいた深春の
尻を叩いたのは、やはり蒼だった。
頼むよお二人さん!京介を1人にしないでくれ!

深春が京介のところに来た時のソーセージのやり取りに
萌えました♪
文中で「虚無への供物」が出てきた。
虚無への供物でも、皆既月食の話があるらしい。
今回は妖しく始まって、妖しく終わりました♪

これが2010年の読書の締めくくりになりました♪



建築探偵桜井京介の事件簿
第一部
シリーズ1作 「未明の家」
シリーズ2作 「玄(くろ)い女神」
シリーズ3作 「翡翠の城」
短編集「桜闇」
シリーズ4作 「灰色の砦」
シリーズ5作 「原罪の庭」

第二部
シリーズ6作 「美貌の帳」
シリーズ7作 「仮面の島」
番外編「センティメンタルブルー」