玄(くろ)い女神/篠田真由美 | mokkoの現実逃避ブログ

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玄い女神―建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)/篠田 真由美
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旅先のインドで、橋場亜希人が不可解な「密室」死を遂げた。
10年後、橋場の恋人だった狩野都は群馬山中に
「恒河館」を建て、当時の旅行仲間たち、そして桜井京介を招く。
ミステリアスな「館」で展開される真相解明劇。
そこへ、さらなる悲劇が…。
過去と現在が複雑に絡み合う謎を、京介はどう解き明かすか。

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事の起こりは10年前。京介がまだ高校1年の時。
授業をサボって通っていた店のマスター橋場亜希人と
京介以外の常連客6人がインド旅行にでかけた。


滞在先のヴァラナシの安宿で、橋場亜希人は、
胸全体が陥没した遺体として発見された。
回りに凶器はなく、ドアは完全に閉ざされ密室状態。
遺体は病死として処理され、すぐに火葬された。


それから10年。
かつて橋場の恋人であった狩野都から京介に手紙が届く。
群馬山中にある明治建築の建物を改修したという
彼女が経営するホテル「恒河館(がんがかん)」に来て欲しいと。
当時の旅行仲間をホテルに呼びよせ、京介には探偵として
その中から犯人を探し出すことを依頼する。


10年前、京介も恋したであろう魅惑的だった都は、
美しさの欠片もなく、老婆のようになっていた。
その姿は、当時の仲間達をも愕然とさせた。
しかし自分達が呼ばれた本当の理由を知り激怒する。
そして真相を知りたがっていたはずの都は
呪いの言葉を残して建物の裏の川に身を投げる。


大雨で土砂が崩れ、道は閉ざされ、電話も通じない。
館に閉じ込められた京介達。
そして新たな殺人が起こってしまう。
まるで10年前の事件を再現しているかのように・・・



建築探偵シリーズ2作目にして異色作だそうです。
確かに建物に絡んだ事件というのであれば同じなんだけど
今回の建物は、あくまでも小道具と言ってもいいでしょう。
京介にとっても、探索する価値のないものでした。
しかし、そこに渦巻く人々の思いの何と重厚なこと!


この作品を好きになった理由は、トリックうんぬんより
建物に纏わる人の思いや執着から生まれた捻れを
探偵役を嫌がる京介が、解いてくれるというところ。
今回、建物はあくまでも現場であって、その再現でしかないけど
人の思いの捻れを解くという意味においては同じ。


この作品を読んでいて、この前読んだばかりの薬屋新刊を
連想させるようなシーンがありました。
もちろん、ここに妖怪が登場するわけではない。
でも、宗教が絡みます。しかもインド。ヒンドゥー教。


その神秘的で幻想的な雰囲気がそうだというわけではなく
薬屋の中で言われていた「反論する相手を力尽くで押さえては
暴力をより強大な暴力で捻じ伏せると同義だ」というセリフと
似た様なことを京介が語るのですよ。
ゾクっとしました。


今回も登校拒否高校生の蒼(あお)くん目線で語られています。
1人で出かけようとする京介に無理矢理ついて行きます。
もちろん、今回不参加の深春に言われてなんだけど・・・


そして前作もそうだけど超絶美形の桜井京介は、
あまり表立って出てこない。
いるんだけど、いつもブスっとしてるか
無関心を装って気配を消している?(^◇^;)
表面に出てくるのは最後に推理の披露を淡々と語る時だけ。
途中経過まったく無しなのですよ。


そんなだから途中でミステリマニアのヘッポコ探偵が
名探偵を気取って推理をひけらかすのよ(ー'`ーメ)


そして蒼くんは前作同様、危ない目に遭います。
京介はケガをします。これはお約束なのか?
前回の京介は病院送りになり、今回は流血する・・・


封じられていたパンドラの箱を無理矢理こじ開けた結果
噴出した負の念と、もたらされた更なる悲劇。
京介は最後に残る希望に賭けます。
そして最後のどんでん返し。
話しが進む中で、なんとなく予想出来る事もあるけれど
最後のどんでん返しにはやられました。


凶器に関しては、最後の最後で語られるけど
mokkoは最初の時点でわかりました。
ただ犯人と動機がわからなかった。
読後感は複雑・・・と言ったところでしょうか・・・
前作同様、激しすぎる思いの悲劇というか
報われない思いというのかなぁ~
インド神話を読みたくなる欲求をとりあえずは抑えます。


でも、このシリーズは物凄く好き。
どうしよう・・・
作家アリスシリーズがどうでもよくなってきた・・・
また本棚で熟成させる本が増えるなぁ~(-。-;)


今回はメインキャラの深春は、前作の予定通りに
スペインに向かうので欠席。
しかし、次作から同大学の教授「神代宗」が
メインキャラとして加わるらしい。
在外研究でイタリアに行っているが帰って来るらしい。
京介の指導教授がどんな人物なのか楽しみです。


そしてまたもや出てきた「虚無への供物」
やはり早めに読まなくては・・・
更に、作家アリスシリーズでも出てきた本が
「LOCKED ROOM MURDERS」
本格ミステリ作家ってのは、必ず読んでるのかしら??


最後に京介のセリフを・・・
「密室なんてものはね、蒼、
ミステリ・ファンの夢の中にだけ存在するのさ。
事件の当事者たちは、密室を作ろうなんて
これっぱかしも考えてやしなかったんだからね」


(*~○~*)アァーン 京介さまぁ~(〃▽〃)ポッ♪