夢のような本 | kyupinの日記 気が向けば更新

夢のような本


プラネタリウム(大塚 愛)

まだ子供の頃、近所に高校の先生が住んでおられた。随分と近所だったが、高校の先生と聞いていただけで、何の教科の先生なのかは記憶にない。

ある時、その先生から写真が多く入った百科辞典を貰ったことがある。たぶん6歳頃だったと思う。それは百科辞典にしては薄いものだが、6冊か7冊に分かれており、たくさんの白黒写真が入っていた。カラー写真はまだほとんど入れられてなかったか、あるいはなかったのかもしれない。

その数冊の本のうち、特に「宇宙」と「昆虫」が好きだった。全く、夢のような本だったと思う。

その「宇宙」の本には、太陽などの恒星がいかに地球や火星より巨大かとか、もし宇宙船でケンタウルス・アルファ星まで行った場合、どのような結果になるかが非常に美しい写真やイラストで描かれていた(白黒でも美しい)。

ケンタウルス・アルファ星は太陽系に最も近い恒星であるが、それでも4.3光年の距離にある。極めて明るく0.01等星である。今から考えると、最も近い恒星だったので、そのようなモデルに選ばれたように思う。

実は、驚くことにその太陽も全く及ばないような巨星も存在するのである。そういう恒星を比較するページもあり、本当に夢が膨らむというか、子供の想像力をかきたてるようなものであった。

あるページでは、横綱、柏戸を軽々と中学生が頭上にかかえ挙げている写真もあった。

月面では重力が小さいため、重さが6分の1になり柏戸でさえ持ち上げられるといったところである。この柏戸だが、なぜ大鵬でないのかが少し謎だが、大鵬だともう少し重いため、体重が6分の1でも子供が持ち上げるにはやや難しかったのかもしれない。

あと、謎の宇宙人の絵である。これらは、SF系画家?が描く架空のものであろうが、火星人はともかく、はっきり言って金星人などは怖いような生物であった。

昆虫の本では、この世に「ヘラクレスオオカブトムシ」なる美しいカブトムシが存在することを知った。これは世界最大で最強のカブトムシらしい。

このように書いていくと、どうも百科辞典というより、科学の写真集のようなものだったと思う。この宇宙と昆虫以外の本はほとんど記憶に残っていない。

その高校の先生だが、顎のあたりにはっきりわかる傷があった。なぜなのか母親に聞いたところ、ある日、竜巻で家ごと飛ばされ、竹やぶに落ち、顎に大怪我したという話であった。全く、これもありえないような不思議な話である。

その後、母親からたぶん2回ほど百科事典を買ってもらったが、買うたびに関心が衰え、最後の百科辞典はほとんど読んでいない。

未だかつて、あの先生から貰った本ほど心躍らせて読んだ本はない。

今の子供たちの周囲には、こういう子供の心を強烈に引き付けるようなものや、ある種の希少性が欠けていると思う。

参考
父島
聖書(前半)
強烈な印象の夢(2009年1月31日)
タイム・トラベラー