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業務用の不動産を取得する際には、購入代金以外にも仲介手数料や登記費用、不動産取得税といった様々な費用が発生します。これらの費用について、税務上どのように取り扱うべきかは、費用の種類によって異なります。
土地や建物を購入した際に支払う仲介手数料は、法人も個人も、その不動産の取得価額(個人の場合は取得費)に算入することになります。固定資産の取得に関連して支出した費用は取得価額を構成するとされているためです。土地の場合、取得価額に算入された仲介手数料は、将来その土地を売却する際に譲渡原価や取得費として考慮されます。建物の場合は減価償却資産ですから、仲介手数料は減価償却を通じて毎年の損金や必要経費となります。
登記費用(登録免許税や司法書士報酬)と不動産取得税は、法人も個人も、取得価額に算入することも支払った年の損金や必要経費として処理することもできます。実務上は、その年の所得を圧縮するため、損金や必要経費として処理するのが一般的です。
なお、既に所有している土地を新たに賃貸する際に支払う仲介手数料は、土地の取得費用ではなく賃貸収入を得るための費用ですから、支払時に必要経費として一括処理できます。
まとめると、(1)仲介手数料と(2)登記費用等に区分すると、法人も個人も基本的に同じ取扱い。
仲介手数料は取得価額(取得費)算入、登記費用等は損金(必要経費)処理が可能と整理されます。
【根拠法令等】
■法人税法施行令第54条第1項
⇒第五十四条 減価償却資産の第四十八条から第五十条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額
■法人税基本通達7-3-3の2
⇒7-3-3の2 次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。(昭50年直法2-21「19」により追加、昭55年直法2-8「二十一」、平23年課法2-17「十四」により改正)
(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
(3) 一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額
■所得税基本通達37-5
⇒37-5 業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。(昭51直所3-1、直法6-1、直資3-1、平5課所4-1、平17課個2-23、課資3-5、課法8-6、課審4-113改正)
(注)
1 上記の業務の用に供される資産には、相続、遺贈又は贈与により取得した資産を含むものとする。
2 その資産の取得価額に算入される登録免許税については、49-3参照
給与所得者が20万円以下の雑所得がある場合、ふるさと納税や医療費控除のために確定申告をする際には、意外と見落とされがちな重要なポイントがあります。それは、少額の雑所得であっても申告が必要になるという点です。今回は、実務でよく誤解されている雑所得の取り扱いについて。
例えば、副業収入(原稿料や講演料など)が年間200,000円あり、必要経費が50,000円かかった給与所得者の方が、ふるさと納税の寄附金控除を受けるために確定申告をするケースを考えてみます。この場合の雑所得は150,000円(200,000円-50,000円)となります。この150,000円は20万円以下なので、この雑所得は申告不要として、寄付金控除(ふるさと納税)をもって還付申告しようと考える方がいらっしゃいます。
確かに、給与所得者には「給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下なら確定申告不要」という規定があります。ここでいう「所得」とは、収入金額から必要経費を差し引いた後の金額を指します。この規定だけを見れば、150,000円の雑所得は20万円以下なので申告不要に思えるかもしれません。
しかし、ふるさと納税の寄附金控除を受けるために確定申告書を提出する場合、この20万円ルールは適用されなくなるのです。確定申告書を提出する以上は、金額の大小にかかわらず、全ての所得を正確に申告する義務が生じます。つまり、ふるさと納税の寄附金控除だけを申告して、150,000円の雑所得を申告しないというのは認められません。両方とも正確に申告する必要があります。
この例で、ふるさと納税額が10万円のケースでは、確定申告をすると、ふるさと納税の控除(約98,000円)は受けられますが、同時に雑所得150,000円に対する税金も発生します。所得税率を5%、住民税率を10%とすると、雑所得に対する税負担は約22,500円となります。還付どころか納税が発生してしまいます。
ワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告をせずにふるさと納税の控除を受けることができ、雑所得150,000円は20万円以下なので申告不要となるのですが・・。
一般的には、ワンストップ特例制度の要件を満たしているのであれば、その制度を利用する方が税負担面では有利になるケースが多いといえます。
この雑所得の申告漏れは、実務上非常に多く見られるケースです。特に、ワンストップ特例制度を使わずに確定申告でふるさと納税の控除を受ける方は、他の所得についても申告義務が生じることを忘れないようにしてください。少額だからといって申告しなくてよいわけではありませんので、ご注意いただければと思います。
「前年に損失を出して確定申告をしたのですが、今年は利益が出ています。確定申告をすれば税金が戻ってくると聞きましたが、本当に申告した方が得なのでしょうか・・」
特定口座で源泉徴収されている場合、確定申告をしなくても問題はありませんが、前年の繰越損失があれば確定申告によって還付を受けられる可能性があります。しかし、還付金だけを見て判断するのは危険です。確定申告をすることで配偶者控除が使えなくなったり、思わぬ影響が出たりすることもあるからです。
給与収入1050万円の会社員の方を例に、確定申告をした場合の影響を見ていきたいと思います。
会社勤めで給与収入が1050万円の方を例にとります。令和6年は株式投資で損失が140万円あり、損失を計上して確定申告をされました。令和7年も給与収入は同じく1050万円で、株式投資では330万円の利益が出ているとします。特定口座で源泉徴収されているため、確定申告をしなくても問題はありませんが、前年の繰越損失があるため確定申告をすれば税金が還付されることになります。
税額の計算をしてみます。特定口座で源泉徴収されている場合、利益330万円に対して所得税15.315%と住民税5%が既に差し引かれています。所得税は約50.5万円、住民税は16.5万円です。前年の繰越損失140万円を今年の利益330万円から控除すると、課税対象となるのは190万円となります。この190万円に対する正しい税額は、所得税が約29.1万円、住民税が9.5万円です。したがって確定申告をすれば、所得税で約21.4万円、住民税で7万円、合計で約28.4万円の還付を受けることができます。
このように金額面では明らかに有利なのですが、確定申告をすることで生じる他の影響についても考える必要があります。株式譲渡所得を申告すると、繰越控除後の190万円が合計所得金額に加算されることになります。給与収入1050万円の場合、給与所得控除後の給与所得は855万円となりますので、株式譲渡所得190万円を加えると合計所得金額は1045万円となります。
重要なポイントです。配偶者控除や配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額が1000万円を超えると適用できません。今回のケースでは合計所得金額が1045万円となりますので、残念ながら配偶者控除等は適用できなくなります。これは確定申告をしない場合であれば給与所得855万円のみですから配偶者控除等を受けられることを考えると、大きな影響といえます。配偶者控除が38万円、配偶者特別控除が最大38万円ですので、所得税率によっては7.6万円から14.8万円程度の税額増加となります。住民税も含めると、さらに影響額は大きくなります。
具体的に計算してみます。配偶者控除38万円が使えなくなった場合、所得税率23%の方であれば所得税で約8.7万円、住民税で約3.8万円、合計で約12.5万円の増税となります。還付される28.4万円から配偶者控除が使えなくなることによる増税12.5万円を差し引くと、実質的なメリットは約15.9万円となります。それでも確定申告をした方が有利ではありますが、還付額28.4万円がそのまま手元に残るわけではないという点に注意が必要です。
基礎控除については、令和7年分から制度が大きく変わりました。合計所得金額655万円超2350万円以下の場合は58万円が適用されますので、今回のケースでは基礎控除58万円となります。合計所得金額が2350万円を超えると基礎控除が段階的に減少し、2500万円を超えるとゼロになってしまいますが、今回のケースではその心配はありません。
社会保険料への影響も見ておきましょう。会社勤めで健康保険や厚生年金保険に加入されている場合、保険料は給与額で決定されますので、株式譲渡所得を申告しても保険料には影響しません。これは会社員の大きなメリットです。個人事業主の方が国民健康保険に加入している場合は、合計所得金額の増加により保険料が上昇しますが、会社員の場合はこの心配がありません。
住民税については、令和5年分の確定申告から制度が変わった点に注意が必要です。以前は所得税と住民税で異なる課税方式を選択できましたが、この制度は廃止されました。現在は所得税で株式譲渡所得を申告すれば、自動的に住民税でも申告したことになります。したがって、住民税の合計所得金額も190万円増加し、これが各種の所得制限に影響する可能性があります。
具体的には、保育料の算定や就学援助の所得制限、自治体独自の給付金や補助金制度の所得制限などに住民税の合計所得金額が使われることがあります。お子様がいらっしゃる場合や、何らかの公的支援を受けている場合は、事前に所得制限の基準を確認しておくことをお勧めします。また、高額療養費制度の自己負担限度額も所得区分によって変わりますので、医療費が多い年には影響が出る可能性があります。
今回、給与所得者にスポットを当てて一つの例を挙げました。
特定口座で源泉徴収されているという制度は、このような複雑な判断を不要にするためのものでもあります。確定申告をするかどうかは、単に還付金の有無だけでなく、配偶者控除の適用可否、各種所得制限への影響なども含めて、総合的に考える必要があります。特に給与所得者ではない方の場合は、国民健康保険料の増加額を合計して比較検討する必要があります。場合によっては、確定申告をしない方が結果的に有利になることもあり得ます。ご自身の具体的な状況に応じて、慎重に判断されることをお勧めします。
社内サークル活動を支援するため、会社が補助金を支給する企業が増えています。人手不足が深刻化する中、給与や賞与だけでなく福利厚生の充実度が採用競争力を左右する時代。
求職者が企業を選ぶ際、働きやすさや職場の雰囲気を重視する傾向が強まっており、サークル活動への支援制度は「社員を大切にする会社」というメッセージを伝える有効な手段となっています。既存社員の定着率向上にも効果があり、人材への投資として注目されている。
ただし、サークル活動への補助金を支給する際は、税務上の注意点を押さえておく必要があります。
まず重要なのは「全従業員が利用できる制度であること」。
特定の役員や管理職だけが参加できるサークルへの補助は、福利厚生費として認められません。たとえゴルフサークルのように実際の参加者が限られる活動であっても、制度上は誰でも参加できる状態になっていれば問題ないのでしょうが、入会条件に「経験者のみ」といった実質的な制限を設けてしまうと、特定の人への優遇とみなされるリスクがあります。初心者歓迎の姿勢を明確にし、練習会の開催など参加しやすい環境を整えることが大切です。
次に気をつけたいのが補助金額の妥当性。少し古いデータとなりますが、経団連の「第64回福利厚生費調査結果報告」(2019年度)によると、法定外福利厚生費のうち文化・体育・レクリエーション費用は従業員1人あたり月2,069円、年間で約2万5,000円程度が平均とされています。この水準を大きく超える補助金は、給与として課税される可能性が高まります。目安としては、1人あたり年間2万円から3万円程度に抑えておくのが安全でしょう。福利厚生を手厚くしたいという思いから補助額を高く設定しがちですが、税務リスクとのバランスを考慮する必要があります。
また、補助金の支給方法にも配慮が必要です。現金を直接従業員に渡す形式は、たとえサークル活動費という名目であっても給与課税されるリスクが高くなります。原則として、サークルが支出した費用を会社が直接支払うか、領収書等の証憑に基づいて精算する方式を採用すべきでしょう。「活動費として月1万円を支給」といった定額現金支給は、実質的な給与の上乗せとみなされやすくなります。
さらに、備品や用具の取り扱いにも気をつけたいところです。サークル活動用に購入した備品は会社の資産として管理し、特定の個人に帰属しない状態を維持する必要があります。たとえばゴルフクラブを購入して特定の社員が自宅に持ち帰り私的に使用しているような状況は、現物給与とみなされる可能性があります。備品は会社で保管し、活動時に貸し出す形式が基本となります。
運用面では、社内規程の整備が欠かせません。サークル活動支援規程として、補助金の申請手続き、精算方法、対象となる費用の範囲、活動報告の義務などを明文化しておくことで、税務調査の際にも福利厚生費としての妥当性を説明しやすくなります。年に一度は活動報告書を提出させるなど、形式的にも「会社が管理する福利厚生制度」であることを示せる体制を整えておくことが重要です。
社内サークル活動への補助金は、従業員のエンゲージメント向上や職場コミュニケーションの活性化に効果的な施策であり、採用・定着の両面でメリットをもたらします。しかし、税務上のルールを無視して運用すると、福利厚生費として損金算入できないばかりか、従業員側に予期せぬ課税が発生してしまう事態にもなりかねません。
福利厚生費として適正に処理するため①全従業員が参加可能な制度設計、②社会通念上妥当な金額設定(1人あたり年間2〜3万円程度)、③現金支給ではなく実費精算方式の採用、④備品の会社管理、⑤社内規程の整備と活動記録の保存、という5点は少なくとも補完しておきたいところ。
せっかくの福利厚生制度が税務上の問題を引き起こしては本末転倒です。制度設計の段階から税務面を意識し、従業員にも会社にもメリットのある運用を心がけてください。
相続税の計算において、相続や遺贈により取得した財産は原則として時価で評価することになっています。ただし、実務上は納税者間の公平性や効率的な税務行政の観点から、財産評価基本通達に定められた画一的な評価方法によって評価することとされています。
しかし、評価通達の定める方法によって評価することが著しく不適当と認められる場合には、国税庁長官の指示を受けて別の方法で評価することができます。この取扱いが、財産評価基本通達総則第6項、いわゆる「総則6項」と呼ばれるものです。
令和4年4月19日の最高裁判決は、この総則6項の適用について重要な判断を示しました。課税庁が特定の納税者にのみ総則6項を適用することは、合理的な理由がない限り平等原則に違反するとしながらも、「実質的な租税負担の公平に反するというべき事情」がある場合には、総則6項を適用することは適法であるとしたのです。
この判決の事案では、不動産の購入と借入れがなければ課税価格が6億円を超えていたものが、評価通達による評価では2,826万円となり、基礎控除により相続税がゼロになってしまうケースでした。しかも、被相続人と相続人らは、近い将来の相続において相続税の負担を減じることを知り、期待して、購入と借入れを企画・実行していました。このような状況下では、評価通達による画一的な評価を行うことは他の納税者との間に看過し難い不均衡を生じさせるため、総則6項の適用が認められたのです。
では、実務上どのような場合に総則6項適用のリスクが高まるのでしょうか。判決や裁決例から見ると、多額の借入金による取得、相続開始直前や余命宣告後の取得、被相続人が極めて高齢である場合、関係会社や親族からの取得、具体的な事業計画がない場合、相続開始後すぐの譲渡、そして購入価額と評価額の乖離が極めて大きい場合などが、総合的に判断されるポイントとなります。
例えば、生前に相続税対策としてアパート経営を始める場合はどうでしょう。相続税対策という動機があること自体は直ちに問題となるわけではありません。重要なのは、実質的な事業実態を伴っているかどうかです。
総則6項の適用を避けるためには、まずある程度健康な時期に、将来の収益事業として計画的に始めることが大切です。市場調査や収支計画を立てた上で実行し、全額借入ではなく自己資金とのバランスを考慮した資金調達を行います。そして何より重要なのは、相続開始後も継続して賃貸事業を営むことです。実際に入居者を募集し、適切な管理を行い、収益を上げている実態があれば、それは立派な事業として認められるでしょう。
形式だけのスキームを考えるのではなく、実質的な賃貸事業として誠実に運営することが、結果として総則6項のリスクを最小化することになります。相続税対策は適法な範囲で行うことができますが、専ら租税回避を目的とした極端な対策は、総則6項の適用対象となる可能性があることを理解しておく必要があります。
自宅を売却して新しい家をローンで購入した場合、税制上どちらの特例を使うべきか悩まれる方が多いのではないでしょうか。同じ年に売却と購入が重なったケースについて考えてみます。
居住用財産の3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できません。同じ年に旧居を売却して新居を購入した場合であっても、どちらか一方を選択する必要があります。住宅ローン控除の適用要件として、自宅に実際に住み始めた年とその前年、前々年に居住用3,000万円控除を受けている場合には適用できないと定められています。また、自宅に住み始めた年の翌年以後3年以内に従前の自宅を売却して居住用3,000万円控除を受けた場合にも、住宅ローン控除を適用できないとされています。
この規定は令和2年度税制改正で厳格化されたものです。改正前は居住用財産の譲渡特例が「居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡」に適用できることとされていたため、新規住宅に居住した年から3年目は両制度が併用できる「空白の1年」が存在していました。しかし、会計検査院の指摘を受け、令和2年4月1日以後の従前住宅の譲渡については、新規住宅に居住した年の翌年以後3年以内の譲渡について居住用財産の譲渡特例を受ける場合は、住宅ローン控除の適用を受けられないこととされました。
3,000万円控除を受けた後、いつになれば住宅ローン控除が使えるのでしょうか。一般的には、旧居を売却して3,000万円控除を適用した年から4年後以降に新居を購入して居住を開始すれば、3,000万円控除との関係では問題ないとされています。ただし、住宅ローン控除には他にも多くの要件があり、床面積50㎡以上、所得2,000万円以下、ローン期間10年以上などの条件を全て満たす必要がありますので、個別の状況を確認することが重要です。
自宅を売却して譲渡益が出た場合でも、居住用財産の3,000万円特別控除を「適用しなかった」場合は、住宅ローン控除を適用することができます。つまり、譲渡益が少額の場合、あえて3,000万円控除を使わず譲渡所得税を納税したうえで、住宅ローン控除を選択するという方法も有効です。例えば譲渡益が100万円程度であれば譲渡所得税は約20万円ですが、住宅ローン控除で13年間に200万円以上の控除が受けられるのであれば、後者を選択する方が有利になります。
どちらの特例を選ぶべきかは、譲渡益の額、ローンの借入額、所得の状況などを総合的に判断する必要があります。譲渡益が大きい場合は3,000万円控除の効果が大きくなりますし、ローンの借入額が大きく所得も高い場合は住宅ローン控除の恩恵も大きくなります。実際に計算してシミュレーションすることをお勧めします。
確定申告の際の添付書類についても触れておきます。3,000万円控除を適用する場合、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)の提出が必須です。令和5年分以降はマイナンバーによる登記情報の確認が可能なため、登記事項証明書の添付は原則不要となりましたが、売買契約書の写しや取得費・譲渡費用を証明する領収書なども整理しておきましょう。住宅ローン控除については、初年度の確定申告時に住宅借入金等特別控除額の計算明細書、年末残高等証明書、登記事項証明書、売買契約書などが必要です。住み替えは人生の中でも大きな決断。税制上の特例を最大限活用しながら、スムーズな住み替えを実現していただければと思います。