美徳の承認その44/52
【勇気:Courage】

■勇気とは

勇気とは
必要な困難に
立ち向かう力です。

目的に向かって
その途上に困難があるとき
それを越えなければ
目的にたどり着きません。

そこで逃げることも
先延ばしすることも
目的自体を変えてしまうことも
できる中で、
目的のために困難に
立ち向かうときに使う力が
勇気です。

勇気は
あなたも私も
誰もが生まれながらに
持っている力です。

困難から逃げたり
そんな自分を正当化したり
できない理由を懸命に説明する人は
勇気を持っていないのではなく
使っていないだけです。

勇気はあらゆる人が
いつでも使える力です。


■個人心理学

アルフレッド・アドラーの「個人心理学」、
通称アドラー心理学で
とても重要視されているのが
勇気です。

なぜなら
感じるしあわせを増やすには
勇気を使う必要があるからです。

その勇気をアドラーは
「困難に立ち向かう活力」と
言っています。

つまり
しあわせになる道には
困難があります。

その困難に立ち向かわずに
しあわせを増やす方法は
ない、としています。


■生きるのに役立つ道

人には2つの道があります。

それは
「生きるのに役立つ道」と
「生きるのに役立たない道」です。

「生きるの役立つ道」に進むと
困難を感じます。

勇気を使って
その困難を越えていくと
感じるしあわせを
増やすことができます。

一方で、その困難に出会って
勇気を使わないと
「生きるのに役立たない道」に
進んでしまいます。

例えば
空腹で何か食べたいとき。

隣の人が食べ物を持っていて
それを分けてもらおうとすると
対話する必要があります。

対話したとしても
相手が食べ物を
譲ってくれるかどうかは
わかりません。

その対話が困難と感じると
隣の人が不在のときに
盗んだりする方が
自分にとっては楽です。

この場合は
対話する、は
「生きるのに役立つ道」で
盗む、は
「生きるのに役立たない道」です。

対話が困難なので
食べずに飢えに耐えることも
「生きるのに役立たない道」です。

対話の技術を磨くことは
「生きるのに役立つ道」ですが
盗みの技術を磨くことは
「生きるのに役立たない道」です。

目的を実現させる活動において
対人関係を持ち、
それを良好なものに
していこうとすると自然と
「生きるのに役立つ道」へと
進みます。

逆に対人関係を避けて
目的を実現させる活動をすると
「生きるのに役立たない道」へと
進みます。

そうして
「自分さえ善ければ
他人なんかどうでもいいよ」と
勇気を使わずに
対人関係を避け続けていると
やがて孤立します。

孤立は「社会的な死」です。

孤立に進むと
感じるしあわせは増えません。


■社会的に有用な人

アドラーは
人は4種類に分類できる、
と言っています。

①社会的に有用な人
②支配する人
③奪う人
④世間から逃げる人

この中で唯一しあわせなのが
①社会的に有用な人
としています。

なぜなら対等な対人関係を
持っているのは
①社会的に有用な人
だけだからです。

②と③は
対人関係が対等ではなく
上下関係です。

対等な対人関係を
持とうとすると
困難を感じます。

なぜなら
上下関係であれば
自分が上になれば
相手が決めることを
自分が決めることができます。

②支配する人は
相手を支配して
言う通りにさせることで
安心します。

③奪う人は
自分の欲を満たすことを
目的に他人を利用する人です。

相手が決めることでも
相手を騙してでも
自分の思う通りに
ことが運ぶようにします。

そうして奪った後は
対人関係が切れようが
どうなろうが
自分の欲が満たされるので
問題にならないわけです。

④世間から逃げる人、は
対人関係を持たないように
逃げ続ける人です。

人とかかわらないので
自分一人で生きることが
標準となります。

その標準の中であれば
困難を感じても
すべて自分の課題ですから
自分で決めれば済みます。

ゆえに
②支配する人
③奪う人
④世間から逃げる人
この3種類の人たちは
勇気を使わずに済む代わりに
孤立へと進みます。

先にも書きましたが
孤立は「社会的な死」です。

孤立に進むと
感じるしあわせは増えません。

一方で
①社会的に有用な人、は
対等な対人関係を持とうとします。

それは「貢献」で
他人とつながることです。

「貢献」すなわち
相手の役に立つことをするのですが
自分が相手の
役に立ったかどうかは
自分ではなく相手が決めます。

相手が決めることだけど
自分が「こうすれば役に立てるはず」と
挑戦するわけです。

そこに困難があります。

相手が自分の意志で
「ありがとう、役に立ったよ」と
こちらに言ってくれたら成功です。

「ごめん、それは役に立たない」と
いわれることだってあるわけです。

相手とのやりとりが大切になります。

その困難に立ち向かうときに
使うのが「勇気」です。

でも
役に立たないからといって
対人関係がなくなるわけではなく
相手から見たら
「自分の役に立とうとしてくれる人」は
大切な存在です。

すぐには役に立てなくても
何度かやりとりすることで
相手の役に立つ方法が見えてきます。

それまでは大変ですが
わかると感じるしあわせが増えます。

それはつまり
「共同体感覚が高まる」ということです。


■共同体感覚

共同体感覚とは
自分の居場所がある感覚です。

自分一人では
ここに居てよいかどうかは
よくわかりません。

自分がここに居てOKと
思うことはできますが
他人がどう思っているかは
わかりません。

そこで相手に確認すると
「そこに居てOK」か
「そこに居てはダメ」と
言われるでしょう。

そこでカギとなるのが
「貢献」です。

相手の役に立つことをすると
相手は自分に
「そこに居てOK」と
言ってくれるでしょう。

自分も相手も
自分がここにいることを
OKしていれば
主観的にも客観的にも
自分はここに居てOKと
なるわけです。

つまり
「勇気」を使うと
「共同体感覚が高まる」わけです。

アドラーは
共同体感覚を高めるには
「自立」と
「社会との調和」が大切だと
言っています。

そしてさらに
その「自立」と「社会との調和」
(社会とは対人関係のことです)を
支える心の在り方として
・自分には能力がある感覚
・他人は自分の仲間である感覚
を育てることが有用であると言っています。

自立した自分が
相手に貢献すること。

すると共同体感覚が高まる。

つまり感じるしあわせが増える、わけです。

その貢献には
困難があります。

そこに立ち向かう力が、勇気です。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



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