銀河漂流劇場ビリーとエド 第6話・不時着惑星シリーズ第1弾『クイズ!バトルランナー』・④ | せいぜいひまつぶしの小話

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5年目から創作系ブログとして新装開店しました。
色々と思うところ書いてます。講談社への抗議不買は一生続けます。
2022年12月からは小学館もリストに加わりました。
「人を選ぶ」とはつまり「自分は選ばれた」ということです。

登場人物

 

第6話 ①、  ②、  ③、  ⑤、  ⑥、  ⑦(終)  

 

「最後の間違いは…」

 4人は、いっせいに指差した。




「「「「お前だ!!!!!」」」」


「…どういうつもりだ」
「聞こえなかったか?“お前の存在そのものが間違い”だって言ってんだよ…ワタナベ」
「なにそのちょんまげ、寝起きヤシの木?チャックノリスの偽物みたいな顔してさ、ワタナベ」

 

 

「服装から何から全てが間違ってますね、ワタナベ。ドサ回りの売れない演歌歌手だってもう
少しマシな恰好してますよ、ワタナベ」
「サムライ要素なんかどこにもないじゃん、ワタナベ」

「…ワタベだ」

「解答が間違ってンなら俺たちを真っ二つにでもしてみたらどうだ?その二本差しのどっちが
キクマサだか知らねーけどよォ~…答えが合ってる限りはルール通り手出しできねーってか?
ディストピアに律儀なラストサムライもいたもんだな、ワタナベ。そこだけはほめてやるよ」

「そうですね、ビリーさん…ワタナベ。我々の出した答えはあくまで“お前の存在そのものが
間違い”ですからね、ワタナベというのは我々があくまでワタナベこうやってワタナベ会話の
途中で差し込んでるワタナベだけですのでワタナベ、クイズの解答とは無関係でワタナベある
限りワタナベワタナベ言うのは我々の自由なんですよねぇ~ワタナベ」

「他に間違いがあったら逆に教えてほしいくらいだよね、ワタナベ」

「どうなんだ間違い野郎。尺の都合でイロイロ引き延ばさなきゃなんねーとかそういうのでも
なけりゃあ、そろそろ答え合わせとワタナベいきたいトコロなんだがな。それともさっきから
俺らがワタナベ言い過ぎたせいで話がトんじまったってンなら答えをもう一度言ってやろうか?
…最後の間違いはお前だ」

「いいかげにしろこの野郎!!」

「なんてこと言うんだ!!」

「謝れ!!!」

 一生分…とはいかないまでも、その半分くらいの勢いで「ワタナベ」連呼しながらついでに
相手の存在そのものを否定するテレビ映り最悪の4人に対し、堪忍袋の緒が切れた観客席から
罵声と抗議の声が上がる。番組MCのヒゲ親父も一緒になっての罵倒合戦は一層ヒートアップ
した。彼らはただクイズに答えているだけなのに、理不尽な話である。

「静まれい!!!」

 組んだ腕を震わせながら、指先で袖をギュッと握り締めていたラストサムライの雄叫びが、
観客たちの理不尽な罵声をかき消すように響く。そしてそれまでずっとビリーたち4人の前で
正面切って仁王立ちに構えていた“間違い野郎”が、道を譲るようにスッと身体を横へ向けた。

「…勝ちは勝ちだ。ここを通るがいい」


「……………………………」


 クイズマスターまさかの敗北。まさかまさかの展開に驚愕する客席からはどよめきと、嗚咽
(おえつ)の声が漏れた。

「よく指摘してくれた。礼を言うぞ」

 すれ違いざまのラストサムライの呟きに、4人は思わず足を止めた。

「…念のために聞くんだが、お前が負けたらどうなるんだ?…ワタベ」
「お前たちが心配することでもあるまい。これは漢(おとこ)同士が、命とプライドを賭けて
闘う真剣勝負。…敗者に情けは無用だ」

 互いに背を向けたまま、ワタベは答えた。そのまま振り返りもせずに走り去っていく4人の

耳に、一振り、二振り…風を切るような鋭い音が聞こえてきた。

「…ちゃんと短い方も用意しておくべきでしたね」
 

 

「ワタナベとかワタベとか…そんなものはどっちでもよかったんだ…どっちでも。
 嫌だって 言ったじゃないか プロデューサー
 こんな格好 恥ずかしいから (字余り)                 」


 


 

「………………………………」

 

 ラストサムライ・ワタベの潔(いさぎよ)い最期に、観客は皆、感動の涙を禁じ得なかった。

「…なんということでしょう…ラストサムライが…ワタベが!…まさかの敗北です!私自身も
驚きを隠せません!…あ、ここでいったんCMです。チャンネルはそのままで」

 客席の真ん中で観客と一緒に巨大モニターを呆然と眺め、マイクを構えたまま固まっていた
番組MCのヒゲ親父だったが、ADのカンペに眼をやり、カメラが寄った次の瞬間には視線と
思考が番組進行に切り替わっていた。そしてまるで往年の『オールスター感謝祭』よろしく、
軽快なBGMと観客の手拍子に合わせて舞台袖に消えていくMCの後ろ姿を、カメラが懸命に
追いかけていった。

 

 お茶の間でいえば「この番組は、、ご覧のスポンサーの提供でお送りします」の流れである。
 そして一方の同時刻、バトルフィールドの4人は…。

「開かねえなぁ…打ち切りにでもなったか?」
「放送途中での打ち切りなんて聞いたことないよ」

 巨大な壁の前で立ち往生していた。

〈続く〉

 

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