要領よくやりましょう。 | 徳島市の学習塾 吉澤教室

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徳島より勉強と受験のブログ

徳島文理中高の文化祭、今年は残念ながら中止されるそうです。
文化祭でしか得られない貴重な体験があると思います。仕方がないことですが、そういった体験がなくなるのは生徒にとってこれから大きな損失になるでしょう。必ずどこかで補填してほしいものです。
 
私自身も学校行事の体験が今の生活に生かされていると感じることがよくあります。今日はそんな体験の中で、思考の柔軟性という意味で大きなターニングポイントになった学校祭のエピソードをご紹介します。
 
 

私が通っていた高校には文化祭とは別に演劇祭という年中行事がありました。各学年3チーム合計9チームで競います。リハーサルも含めると丸3日間、市民ホールを借り切って行われる本格的なものでした。脚本演出からキャスティング、メイク、音響照明まですべて生徒の自治によって行われます。

 

演劇祭に参加した生徒は、文化祭や体育祭の準備を免除されるという暗黙のルールがありました。ですから勉強を優先したい生徒が演劇祭を選ぶというケースも多かったと記憶しています。

しかし、演劇というのは全員の協力なしではうまくできません。上位入賞を目指していた私たちのチームはメンバー全員が夏休みほぼすべてを捧げる覚悟で演劇祭に臨みました。

と最初は思っていました。

 

高校3年当時、私は舞台監督を担当していました。舞台監督というのは聞こえはいいですが、要するに何でも屋です。本番の段取りはもちろんのこと、スケジュール管理から弁当の手配までありとあらゆる雑用をしなければなりません。

 

夏休みも後半に入ったある日、前から気になっていた大道具の作製がほとんど進んでいないことに気づきました。早速、大道具担当のK君(仮名)にそのことについて問いただしました。

 

「大道具全然進んでいないけど大丈夫?」

「大丈夫だよ。」

「電信柱、最低でも3メートルはいるよ。どうやって立てるの?」

「リハーサルに間に合えばいいんでしょ。」

「駄目だよ、練習でも使いたいし、それにK君も練習見ないとイメージわかないでしょ。」

「いや、台本読んだからだいたいわかるし、それより俺受験忙しいから」

「忙しいのはみんな同じだろ、少しでもいいから練習見に来てよ」

「無理。」

 

K君の言うことももっともですが、

とうとう、私とK君は口論になり、残りの夏休み、K君とはほとんど会話せずに過ごしました。

しかし、口論の後、K君が練習にも顔を時々出したり、材料を買ったりしている姿を見ました。今思えば、K君なりに積極的になってくれていたのでした。

 

そうこうするうちに新学期が始まり、本番まで2週間を切りました。さすがに大道具も何となく形になってきたように見えました。それを見て私は

 

「試しに一回、(電信柱)立てられる?」

と聞いて見ました。

「まだ完成してないけど、立てるだけならできるよ。」とK君。

 

なんとか数人がかりで、段ボール製の電信柱らしき筒状のものが立ちました。

 

しかし、手を離した次の瞬間、自重に耐えられず途中から柱が折れてしまいました。

 

それを見て、私は、舞台監督の責任感もあって

「(電信柱を指して)ちゃんと調べて、立て方勉強したほうがいいよ、マジで。」

と思わず強い口調で言ってしまいました。

 

それを聴いたK君は、冷静に

「リハーサルの日には立てる。」

と言って、練習場から出ていきまいた。

 

その後、私は代用の簡易電信柱を用意し、最悪、代用品で

本番に望むつもりでした。

 

相変わらずK君は練習にあまり顔を見せずに、大道具の作業だけを進めていました。色塗りなどの作業はみんなで行いましたが、電信柱の構造はほぼ変わっておらず、横たわったその姿はまるで巨大な段ボールでできたちくわのようでした。

 

心配になった私は、K君に

「構造的に弱くない?」

と尋ねると、K君は

「秘策がある。」と言って、ホールの平面図を指さしながら、

こっそりと私に耳打ちをしました。

それを聴いた私は、予想もしていなかったことでしたので、、

「大丈夫?」と首を傾げました。

でも、K君は

「大丈夫、演出からもOK出てる。」

と自信を持ってニッコリと答えたのでした。

 

 簡易電信柱の代用品の準備もぬかりなく、リハーサル当日を迎えました。

 

とうとう懸念の電信柱を立てる瞬間がやってきました。

 

運搬のため、いくつかのパーツに分けられた電信柱を慎重に組み上げていきました。

 

そして、K君の指示通りに、天井から降りてきたバトン(大道具をつるす可動式の梁)に電信柱の先端をピアノ線でつるし、しっかりと固定されたのを確認しました。そのあと、K君の合図でゆっくりとバトンが天井に上がっていきました。

電信柱が舞台の床から離れる寸前でバトンを止め、電信柱が動かないように重石で止めました。

ゆうに3メートルはあります。

 

電信柱が天井から吊るされたのです。

 

K君は、うれしそうに「あとはおまかせー」と言って去っていきました。

 

まさに発想の転換です。こういうのをコロンブスの卵というのでしょう。

電信柱は、その自重を支えるために強固でなくてはならない。この固定観念に縛られていた私の完敗でした。

 

K君は知っていたのです。どうやれば安全に楽に電信柱を立てられるか。そのためにできるだけ軽い段ボールのちくわ構造の電信柱にしたのです。

 

はじめから、K君は最小エネルギーで最大の効果を出すことを考えていたのです。ベストでなくともベターならいい。これがK君がとった演劇祭のスタンスです。

 

その後、K君は見事、東大理Ⅰに合格を果たしました。きっと

勉強でもこのスタンスで要領よく学力をつけていったんでしょう。

 

たった一度のベストにこだわるよりも、ベターな選択を繰り返し続けていく方が成功しやすい。

 

K君から私が学んだ人生訓です。

 

 

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