本を片手に街に出よう -32ページ目

【読み物】蘇るPC-9801伝説



アスキー書籍編集部
蘇るPC-9801伝説 永久保存版―月刊アスキー別冊

 マニアックな本ですみません。
 10年近く前に絶滅した「国民機」PC-9801のファンのためのムックです。
#すごく何がなんだか分からない人もおられるでしょうが、PC-9801をそれなりに使いたおしたぜ!と自負しない方々は、昔話かつ与太話ですので読み飛ばしてください。

 当時の関係者の昔話などで構成されているのですが、プログラミングを少年時代の趣味とし、その後それを職業にした自分としては、PC-9801は自分のルーツの1つとして、感慨深いものがあります。

 当時10代前半の私は、親の使っていた98でBASICにハマり、ゲーセンのゲームみたいなやつ(※)を作ろう!といきまいて、そのままC言語&アセンブラと進んで…というプログラミング野郎の王道を歩んだ、典型的パソコンおたく少年でした。
※…ゲーセンのゲームがインベーダーとかミサイルアタックとか平安京エイリアンとか、そんな時代でした…ああ、しまった文字にして見たら、やりたくなってきました…

 当時のコアな雑誌ASCII(今の週間アスキーよりもだいぶマニアックな雑誌)の編集者や原稿執筆者へのインタビュー、今使ってもきっと使いやすいと思うVzエディタの作者c.mosさんの談話や、一太郎開発・普及の裏側、あげくにはWIZARD98という知る人ぞ知る「バックアップツール」の開発関係者へのインタビューなど、当時リアルタイムだった人達にとっては何とも楽しい読み物が満載です。

 あくまでPC-9801ってものを振り返って懐かしむ!という企画本ですので、割り込みの仕様がどうとか、裏VRAMがどうとか、この機種のシリアルUARTの石はどれだ、とか、そんな話題を期待している人は残念!そういう人は古本屋「PC-9801バイブル」を探してください、といった感じです。

 ちなみに自分的PC-9801伝説は、ノートPCのさきがけである東芝ダイナブックが電撃発売された際に、あわてて追従したNECが1ヶ月くらいで98ノートを設計して物凄い速さで発売までこぎつけたこと。「なんて奴らだ!」と思いましたね。あんまりあわてて作ったためか、故障して修理するたびに、部品交換レベルではなくて基盤がまるっきり再設計したものに交換されてきたのが、えらく印象に残っています(発売してから中身を改良してるし。つまり最初のロットは殆ど手作り試作品に近い?マイクロソフトの手法をハードウェアでやってる)。
#だんだん深い話になってきてしまいました。一応最初に「読み飛ばしてください、と書いたので…逆に私以上のマニアの人、仮にコメント頂く際にはあんまり深いところをつかれても忘れてますので…まあ、このblog読んでる人でそんなオタッキーな人はいないかも知れませんが!

 懐かしい読み物と併せて、この本で嬉しいのは当時一世を風靡したフリーソフトウェアできら星のごとく秀作ゲームを沢山作っていたBio_100%のゲームがおまけでついていること。ご親切に現代のPCで動かせるようエミュレータもついてます。

 Bio_100%と聞いてピンと来たアナタ。買いですよ。
 SuperDepthはもとより、Car II GrandPrixや、ROLLING95も、入ってますよ。

 なお、Bio_100%は現在は活動していないみたいですが、それぞれメンバの皆様はその後もご活躍されている方が多数おられるようで、例えば2chサーバーソフトウェアの改造なんかに関わっている人もいるようです。
 何ともいえないセンスが光るロゴマークを掲げて、ひっそりと存在しているHPでは、SuperDepthをWindows版に移植したWinDepthだけがダウンロード出来ます。

 万が一ご興味を持たれたら、一度遊んでみてはどうでしょうか。今のFFだとかそういったゲームと比較したらチープなのは当然否めませんが、当時のPC-9801で、フリーソフトウェアで、これを作ったというのが如何にスゴかったか、あんまり分からないと思いますが、少しでも当時プログラミングをかじった者からしたら、神様みたいな人達でした。
 しかしほんと、映画とか小説のような今のゲームよりも、ある意味ゲームらしかったのでは?と感じます。途方もない資本を投下している今のゲームと、比べちゃいけない次元なのでしょうね。

 こんどPC-8801伝説というのが出るらしいです。
 また買っちゃいますね、たぶん。

 マニアックな内容であるうえに、書いているうちに思い出してきてだらだらと長く書いてしまった…この記事にどれだけコメントいただけるんだろう…

ふきぬき

ふきぬき 赤坂と言えば、地名の通り坂の街。
 江戸時代に武家屋敷が集結したことから発展したこの街、勝海舟旧宅跡などもあって、歴史上名だたる坂、坂、坂(霊南坂、乃木坂、南部坂、氷川坂、…)。

 現代に限定し、赤坂と言えば、料亭。
 政治の裏舞台として、エスタブリッシュな方々が密談、暗躍する場所というのがMy第一印象です。

 さて、政治家の皆様がお使いになる料亭ほどは奥ゆかしくはないだろうが、「ふきぬき」も街の中心街にある割にはひっそりとした、プチ隠れ家的な佇まいを感じさせる。

 本格的「ひつまぶし」を売りにしているらしいが、自分的には、他にあまりみないメニュー、うなぎととろろのあわせ重「うなとろ重」を注文…したんだが、店員さんが常連客に愛想を振りまきながら聞いてるもんだから、オーダーを間違え、フツーのうな重ランチにされちまった。

 オイオイ、ひどいじゃん。でも愛想いいオバチャン、平謝りで交換すると言ってたが、当方時間がないためそのままうな重を頂くことに。

 ビミョーに硬めで、タレも薄め。ひつまぶし用にチューンされている感じだ。
 オーダーで印象点が下がっているとは言え、月並み感は否めない。

 ひつまぶしにしときゃよかった。


うな重ランチ ¥1,500-


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ギャングスター・ナンバー1



ポニーキャニオン
ギャングスター・ナンバー1

 古きよき60年代英国ギャングの成り上がり物語。
 モッズ・ファッションに身を包んだスタイリッシュなギャング達が、愛憎と謀略、権力と暴力が渦巻くロンドンを闊歩する。
 きらめきながらもくすんだ渋みを漂わせる各シーンに、アストンマーチンやカフス、タイピンに至るまで、小粋な小道具達が映える、映える。

 本作を紹介したのは、何と言っても昨日紹介した時計じかけのオレンジで暴君アレックスを演じたマルコム・マクダウェルが老いたギャングスター役で出演しているから。
 彼を軸に観ると、時計~の続編?と錯覚してしまうくらい、画作り、演出、彼にナレーションを語らせるところなど、オマージュに満ちている。


 まあでも一応、本作の主役はこの2人。


 ポール・べタニー(若きギャングスター)…オズワルド・ボーテングのタイトスーツがこの上なくクールにキマっている。
 細身で長身、長い手足、切れ長の狂気をはらんだ目つき、カフスをとめながら鏡の前で首をかしげるポーズ、いやあ見事なまでの60年代チンピラそのもの。

 この映画のせいで、まだ観ぬ彼の主演作「ウィンブルドン」のDVDジャケ写を見ただけで、「もしやこの映画はテニス&ラブコメと見せかけて、途中でポール・べタニーがトチ狂って対戦相手を肉切り包丁で拷問したりする映画かも?」なんて勘違いをしてしまうほど、印象が焼きついてしまった。


 デヴィッド・シューリス(暗黒街の帝王フレディ)…渋い。インテリやくざって感じが全身からオーラのように出ている。ソファーに足を組むポーズがいちいちかっこいい。
 後半の枯れっぷりも含めて好演ですね。


 ギャングスターは、エキセントリックな権力欲、暴力欲にとりつかれた寂しい男だ。
 途中ギャングスターにヤラレる側の目線で撮っているシーンがあるのだが、そこに写るギャングスターは正に「大きくなったアレックス」状態。

 対するフレディは、きらびやかで、愛に生きる。知略をめぐらし、権力をふるう冷酷な一面も見せるが、どこか甘さと欲の無さが漂う、虚無感たっぷりの男だ。女を引寄せるタイプ。カレン(サフロン・バロウズ)がホレるのも無理はない。
 ギャングスターはフレディを陥れて、彼の持っていた全ての権力を手に入れるが、愛(カレン)だけは手に入らない。


 最後に吼える孤高のギャングスターを演じるのがマルコムってところが、この映画の虚しさを演出する真骨頂である。

時計じかけのオレンジ



ワーナー・ホーム・ビデオ
時計じかけのオレンジ

 ここはどこ?
 これはなに?
 奇才キューブリック監督のカルトムービー。だが映画好きならかなりの人が知っている名作。

 ストーリーは暴力と裏切りと復讐、退廃。
 暴力の開放と連鎖、矯正される自我、はどこか現代社会を予見するような示唆に富んだメッセージでもある。

 でもこの映画を決定的に特徴つけているのは、クラシックでサイケでポップな画と音なのです。
 なんていうか、黒い絵の具に無理やり赤白黄色緑青…を混ぜて明るい色にしたような…

 映像美。出てくる部屋や店の内装、小物に至るまで、いちいちデザインがアーティスティックである。割と静的なアングルのカメラワークと微妙な間を持つ演出もかなりキマっていて、特に何てことないシーンでも魅入ってしまう。
#何となく初期のたけし映画はこれに影響を受けているような気がする。

 そして、音楽。主人公の暴力悪がき(15歳という設定らしい?ちょっとそれは無理があるような)アレックスはクラシック好き。作中でもそれに相応しくベートーヴェンやらエルガーやらロッシーニなどが満載。

 極めつけは超有名な「雨に唄えば」を唄いながら暴力・暴行の限りを尽くすシーンであろう。モダンアートな書斎で、声高らかに「Singin' in the Rain!」とか歌いながら殴る蹴るのアレックス。ちょっとこのサイコぶりに観ててヤラれちゃう人もいるだろうなあ…

 また主人公アレックスのナッドサット・スロボ(ロシア語と英語のスラングの組み合わせだそうです)によるナレーションも特徴的。

 別にハリウッド映画みたいな盛り上がりはなく、悪寒が走るような外道非道満載で、淡々と進んで結構ベタな落ちで終わるんだけど、何年かに一度観てしまう、不思議な魔力を持った映画。

【漫画】忍者武芸帳



白土 三平
忍者武芸帳―影丸伝 (1)

 まだ小学生のころ、貸本屋というのがあって、よく自転車で漫画を借りに行った。
 そこで出会ったのが、白土作品群。ほかにもカムイ伝、サスケなど妙にハマって読みふけったものである。

 一般的にはカムイ伝が代表作だと思うのだが、自分は白土作品の中ではこれが一番読み返したくなる頻度高。

 なんたって魅力的なキャラが満載。
 しかもそれぞれがヒーローじゃないのに、なんていうか、生き様がめちゃくちゃかっこいいのだ。

 結城重太郎は主人公と思いきや腕切られるし、影丸も最後は「またマジック炸裂か?」と思わせぶりながら五体もがれて死んでしまうし、もはや妖怪一族のような「影一族」も蛍火の毒で一網打尽。そしてヒロインの蛍火と明美は壮絶な嫉妬合戦の末、かなりスプラッタな最後を遂げる。

 1959年12月~1962年11月20日発行の漫画にこれだけ流血を持ち込んだのは凄いと思う。まさに劇画の源流と呼ばれるだけある。微妙にエロティックな描写もあるし。それがいやらしくないのがまた凄い。蛍火が最後に禊をするシーンとか。

 この作品は重太郎の成長物語でもあるし、武士や農民、忍者達の群像劇でもあるし、愛憎と復讐の物語でもある。さまざまな因縁と運命の糸が絡み合って徐々に編み上げられ最後にカタストロフィを迎える。白土作品でハッピーエンドはない。かなり無限ループ感全開。それがまた深くていいんだな。
 パルミロ・トリアッティの言葉を引用した影丸の台詞「われらは遠くからきた。そして、遠くまでいくのだ」なんてのもかなり諸行無常感をかもし出し、何ともいえない哲学的な作品なのである。


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