時計じかけのオレンジ | 本を片手に街に出よう

時計じかけのオレンジ



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時計じかけのオレンジ

 ここはどこ?
 これはなに?
 奇才キューブリック監督のカルトムービー。だが映画好きならかなりの人が知っている名作。

 ストーリーは暴力と裏切りと復讐、退廃。
 暴力の開放と連鎖、矯正される自我、はどこか現代社会を予見するような示唆に富んだメッセージでもある。

 でもこの映画を決定的に特徴つけているのは、クラシックでサイケでポップな画と音なのです。
 なんていうか、黒い絵の具に無理やり赤白黄色緑青…を混ぜて明るい色にしたような…

 映像美。出てくる部屋や店の内装、小物に至るまで、いちいちデザインがアーティスティックである。割と静的なアングルのカメラワークと微妙な間を持つ演出もかなりキマっていて、特に何てことないシーンでも魅入ってしまう。
#何となく初期のたけし映画はこれに影響を受けているような気がする。

 そして、音楽。主人公の暴力悪がき(15歳という設定らしい?ちょっとそれは無理があるような)アレックスはクラシック好き。作中でもそれに相応しくベートーヴェンやらエルガーやらロッシーニなどが満載。

 極めつけは超有名な「雨に唄えば」を唄いながら暴力・暴行の限りを尽くすシーンであろう。モダンアートな書斎で、声高らかに「Singin' in the Rain!」とか歌いながら殴る蹴るのアレックス。ちょっとこのサイコぶりに観ててヤラれちゃう人もいるだろうなあ…

 また主人公アレックスのナッドサット・スロボ(ロシア語と英語のスラングの組み合わせだそうです)によるナレーションも特徴的。

 別にハリウッド映画みたいな盛り上がりはなく、悪寒が走るような外道非道満載で、淡々と進んで結構ベタな落ちで終わるんだけど、何年かに一度観てしまう、不思議な魔力を持った映画。