【読み物】ロウアーミドルの衝撃

大前 研一
ロウアーミドルの衝撃
下流、下流と世の中騒がしいなか、御大の登場。
古くは「平成維新(1989)」のころから著者がずっと提唱している持論をリニューアルして、ロウアーミドルとはまた絶妙なネーミングでの2005年版バージョンアップある。
年収600万以下のクラスを「ロウワー」および「ロウワーミドル」と名付け、いかにこの国が役人や一部の利権団体というシロアリに食い荒らされて傾きかけているかを客観明快に論じつつ、公務員リストラに始まり規制改革、税制改革、道州制といった、日本が生活者大国として再び繁栄に舵を切るための改革アイデアを提示。
経営コンサルタントの言葉、流石明快で分かりやすく、問題だけあおって終わったり、評論だけして引きこもったりせず、じゃあどうすればいいの?にちゃんと答えを用意しているところは、読んでいて元気になってくる。
但し!あまりに理路整然としすぎている故か、いざ実行しようとして既得権益の分厚い闇にあたったときは、太刀打ちが難しそうだな、と感じるのも事実。
何せ、一筋縄じゃいかない連中、「四点セット」や「メール事件」を見ていても実に人を食ったごまかし茶番劇、ならびに、アノ手この手で表裏一体の権力行使全開で、既得権益を守るのだけは超一流なところを如何なく発揮している。
実行するにはカーブやシュートも必要なんじゃないかな?と思ったりもする。
しかも、読んだ全ての人々が行動せよ!というエールを送りつつも、ビミョーに「気づかない、あるいは気づいてもぬるま湯から出てこない国民」にプチ失望、世捨て人風な物言いもちらつく。このあたり、一度は政治の世界に踏み込みながら、撤退した過去のことも引っかかっているのかも知れない。
著者は根本的には学者であり経営者であり教育者なのでしょう。実行するためには、実際に動く人が必要である。
思うに、この本を一番読まねばならない人間は、公務員そのものであろう。別に自虐的になれというワケではなくて、著者の主張を率先して取り入れ動くべきは公務員であり、もっと言えば、どうすれば良いか、一番知りたがっているのは彼らなんじゃないの?とも思うから。
多くの著書その他の実績を持ち、ビジネスクールも運営し、国際的にはドラッカーと並び称されるくらいに有名な著者には、是非とも公務員のための意識改革コースや、エリート官僚予備軍達を自分のスクールに入れて経営のイロハを叩き込むなど、してほしいものだ。
そして、狭い日本で利権を吸い上げ水溜りの水を奪い合っている間に、広大な海がどのような事になっているのか、見せるのだ。
残念ながら、この国は古今東西、黒船や敗戦という「外圧」でしか改革は生まれなかった。
前述のように、もう名声もお金も沢山お持ちなのだから、最後は官僚の目を覚まさせる戦略立案と実施に全力を注いでください。
明治維新後や敗戦後の高度成長は、今まさに諸悪の根源のような呼ばれ方をしている、官僚達が作り上げたものなのだ。もともと頭は良いし、日本人ならこの国をちょっとは愛しているはずだ。しかもいっぱいいるんでしょ?更に日本のために働いてもらわないと。
彼らには、どうせなら狭い日本での権益よりも、世界中の権益を日本に持ってくるくらいの器の大きな強欲ぶりを発揮してほしいと思う。
目指せ平成の勝海舟!
自分も坂本龍馬とまでは言わないが、維新の志士を目指します。
一皮剥けた
オトコになるべく、あかすりに行ってきました。
近頃はスーパー銭湯とか、大江戸温泉物語、スパ・ラクーア、庭の湯なんていう、ちょっとオヤジ度低めファミリー度高めの施設が出来たおかげで、あかすりもずいぶんとメジャーな存在になりつつあるようだ。
で、イタクないんだよね?ましてやハングル語じゃなくてもいいんだよね?という無知故の不安感のもと、地元練馬区の庭の湯に潜入。
庭の湯は、としまえん遊園地に併設してある。としまえんと言えば、昔は良く「光化学スモッグが出たので今日の部活は中止になりました!」とかいう時には「やった~!プール行こーぜ!」というある意味、世が世なら戒厳令を無視して出歩いて逮捕されるくらいのなめっぷりを発揮して遊びに行った記憶がある。
#光化学スモッグが出ると空襲警報?みたいなサイレンが鳴るんすよ…ビミョーに目がちかちかしたりしてたのが、今考えると恐ろしい…
フロントで初期費用を払うと、バーコードのついたリストバンドみたいなものを渡され、以降はそれで食堂なども会計が出来る。なんだか「人を番号で管理しやがるのか?」的な無機質感がたまらない。
その割には、風呂場の更衣室にある自販機は100円現金清算。おいおい、全部キャッシュレスにしようよ。折角ビン牛乳という王道っぷりには「わかってるじゃん」と感じたのに、惜しいね。
あかすりは予約制である。オイルトリートメントやその他マッサージ系などとセットなどもあるが、オーソドックスにあかすり主体の一番安くて短いのを予約。
注意事項を渡される。あかすりの20分前には一度お風呂で身体を温めてください、とか、石鹸で洗わないように、とか、若干モノモノしい脅し文句があるので、律儀にその通りにしつつ、時間が来たのであかすりルームへ行ってみる。
何となくあかすり名人っぽいおばちゃん(失礼!おねえさんと言うべきか)がおり、「早速ですがこれにはきかえてください~」とそれ用パンツをもらい、そそくさとはきかえる。
ビニール製の診察ベッドみたいなところにマグロになり、早速開始。
おお、別に痛くもないし、ごしごしキレイにされてる感が、かなり気持ちいいぞ。
顔を起こして、ちらっと自らのあかの出具合を確認すると…のわー!なんじゃこりゃ!モノ消しゴムの一番でかいのを全部一気に使ったかのような、膨大な消しカスが…
「お客様は代謝がいいようです。沢山出てます」なんて社交辞令なのか本音なのか判別不能な台詞を言われ「はあ…」と気恥ずかしさ半分の生返事。
だいたい好きな人は1~2週間に1回、フツーなら1ヶ月に1回くらいはあかすればケッコー効果があるようだ。
最近は冒頭に述べたような施設が沢山出来て、商機も増えたようである。それはそれで内需拡大、良いことですな。
めでたく温泉&あかすりでつるつるすべすべの肌になりました。
だが酒と仕事で深夜活動、すぐにまたぼろぼろになるんだろうな…
近頃はスーパー銭湯とか、大江戸温泉物語、スパ・ラクーア、庭の湯なんていう、ちょっとオヤジ度低めファミリー度高めの施設が出来たおかげで、あかすりもずいぶんとメジャーな存在になりつつあるようだ。
で、イタクないんだよね?ましてやハングル語じゃなくてもいいんだよね?という無知故の不安感のもと、地元練馬区の庭の湯に潜入。
庭の湯は、としまえん遊園地に併設してある。としまえんと言えば、昔は良く「光化学スモッグが出たので今日の部活は中止になりました!」とかいう時には「やった~!プール行こーぜ!」というある意味、世が世なら戒厳令を無視して出歩いて逮捕されるくらいのなめっぷりを発揮して遊びに行った記憶がある。
#光化学スモッグが出ると空襲警報?みたいなサイレンが鳴るんすよ…ビミョーに目がちかちかしたりしてたのが、今考えると恐ろしい…
フロントで初期費用を払うと、バーコードのついたリストバンドみたいなものを渡され、以降はそれで食堂なども会計が出来る。なんだか「人を番号で管理しやがるのか?」的な無機質感がたまらない。
その割には、風呂場の更衣室にある自販機は100円現金清算。おいおい、全部キャッシュレスにしようよ。折角ビン牛乳という王道っぷりには「わかってるじゃん」と感じたのに、惜しいね。
あかすりは予約制である。オイルトリートメントやその他マッサージ系などとセットなどもあるが、オーソドックスにあかすり主体の一番安くて短いのを予約。
注意事項を渡される。あかすりの20分前には一度お風呂で身体を温めてください、とか、石鹸で洗わないように、とか、若干モノモノしい脅し文句があるので、律儀にその通りにしつつ、時間が来たのであかすりルームへ行ってみる。
何となくあかすり名人っぽいおばちゃん(失礼!おねえさんと言うべきか)がおり、「早速ですがこれにはきかえてください~」とそれ用パンツをもらい、そそくさとはきかえる。
ビニール製の診察ベッドみたいなところにマグロになり、早速開始。
おお、別に痛くもないし、ごしごしキレイにされてる感が、かなり気持ちいいぞ。
顔を起こして、ちらっと自らのあかの出具合を確認すると…のわー!なんじゃこりゃ!モノ消しゴムの一番でかいのを全部一気に使ったかのような、膨大な消しカスが…
「お客様は代謝がいいようです。沢山出てます」なんて社交辞令なのか本音なのか判別不能な台詞を言われ「はあ…」と気恥ずかしさ半分の生返事。
だいたい好きな人は1~2週間に1回、フツーなら1ヶ月に1回くらいはあかすればケッコー効果があるようだ。
最近は冒頭に述べたような施設が沢山出来て、商機も増えたようである。それはそれで内需拡大、良いことですな。
めでたく温泉&あかすりでつるつるすべすべの肌になりました。
だが酒と仕事で深夜活動、すぐにまたぼろぼろになるんだろうな…
ミュンヘン
やっと観ました。2月の映画。
ホテル・ルワンダとどっちにしようか迷ったあげく、まずはミュンヘンから。
宇宙戦争が自分的にちょっとビミョーだっただけに、こんどは頼むぞ。スピルバーグってな感じで、映画館に突入。
冒頭、ミュンヘン事件勃発のシーンから。テレビ放送のシーンをうまく使った、緊迫感ある映像展開である。
ミュンヘン事件とは、1972年9月5日早朝、ミュンヘンオリンピック開催中の西ドイツでおきた、パレスチナゲリラ“ブラック・セプテンバー/黒い九月”によるイスラエル人選手団11人全員死亡の最悪の結末となった人質立てこもり事件である。
当然だがイスラエルは怒り心頭、機密情報機関“モサド”に犯人グループへの報復“暗殺”を許可する。
そして、欧州に潜伏する“ブラック・セプテンバー/黒い九月”メンバを暗殺する極秘チームが結成された。メンバはそれぞれ記録を消され"存在しない"人間となって、時間と金がどれだけかかろうが、必ずや任務を遂行するのだ!
という悲壮感漂う極秘作戦の割には、集められたメンバは…
暗殺チームのリーダー:アヴナー(エリック・バナ)
トロイのヘクトル王子役といい、矛盾に悩む優等生役が多いね。今回も暗殺チームのリーダーという大役の割には、モサドでのキャリアは(首相の?)警護のみ。手ぬるさを指摘されて逆上し無理な銃撃暗殺計画を実行するなど、ちょっとアブなっかしいぞ。
でも祖国のためという大義と人殺しという外道のはざ間で悩み苦しむ姿、電話で子供の声を聞いて泣き崩れる姿、逆に狙われる立場になってしまい恐怖にさいなまれる姿、はなかなかどうして応援したくなる。
殺しを重ねるたびに、凛々しい好青年からどこかくたびれた陰鬱な男に変化していくところも良い演技だと思う。
車輌のスペシャリスト:スティーヴ(ダニエル・クレイグ)
ニューボンド。どうもこの人は…この映画での役柄、ちょっと横柄な、好戦的なエゴイストが似合うような気がするので、ウェットでクールなボンドを演じるのはどうなんでしょ?
途中メンバを追って情報屋が確保した隠れ家に到着するも、よりによってパレスチナゲリラグループとダブルブッキングしてしまい、あやうく銃撃戦になりかけるが互いに何とか自重し停戦、仕方なく一緒に一夜を共にするのだが、そのときのラジオチャンネルの取り合いが、ビミョーにチンピラ風のやりとりで笑える。
後処理のスペシャリスト:カール(キアラン・ハインズ)
洒落た紳士。後処理の場面は前半一回だけ、しかも現場は描かず示唆しただけか?もうちょっとスペシャリストぶりを観たかったのだが…
暗殺チームのなかでは慎重派で、人間味あふれる言動と立ち振る舞いが印象的。こういう人が早死するんだよね。往々にして。
爆弾のスペシャリスト:ロバート(マチュー・カソヴィッツ)
あなた監督・脚本家で結構成功してきたでしょ?何でまた役者で出てるの?あ、そうかギャラを自分の映画につっこむためか!
役柄は味があります。暗殺チームは「銃よりも爆弾で殺す」というテロリスト的信条を掲げているため、毎回仕掛け作りで活躍。ショボーイ爆弾と仕掛けなんだな、これが。でもそれがサスペンスドラマを生み出すのだが。おいおい、暗殺チーム大丈夫か?実は爆弾作りではなくて解体のプロというオチでした。
文書のスペシャリスト:ハンス(ハンス・ジシュラー)
欧州各国を縦横無尽に闊歩する暗殺チーム、おそらく縁の下でカナリ活躍しているのはこのおっさんでしょう。パスポートをはじめ各種書類の偽装など、この手の活動には必須ですもんね。
結構肉体派なところもあって、しけた爆弾が作動しないところに業を煮やして手榴弾片手にターゲットが潜伏する部屋に突入、手榴弾爆破を敢行するランボーな一面も。
というワケで、役柄はちょっとスペシャリストとは程遠い寄せ集めではあるものの、役者は揃って癖のある面々ですな。
そのほかにも、モサドの執行官:エフライム(ジェフリー・ラッシュ)はいかにも諜報機関の中間管理職、って感じだし、情報提供者:ルイ(マシュー・アマルリック)、パパ:(ミシェル・ロンズデイル)も胡散臭さと闇っぷりがそれっぽい。
役者のみならず、さりげなくセットが凄いです。70年代欧州の街並みと車、道行く人々のファッションなど完璧。このあたりが世界一金持ちで力もあるオタク、スピルバーグの面目躍如といったところだ。
かつてプライベート・ライアンで「本物より本物らしいノルマンディー上陸作戦」と上陸作戦に参加した老兵に言わしめたように、細部のディティール、リアリティにこだわり始めたらこの人の右に出るものはいないだろう。
さて、テロもので、かつイスラエルVs.パレスチナという最もきわどい対立を描いたこの作品、問題にならないわけがないのだが、正直、島国でこの数十年、国対国、民族対民族、宗教対宗教の流血の抗争なんてないこの日本に住んでいる身では、知識としては知っておくべきですが語るにはおこがましいテーマだ。
祖国がないことなんて、なかったし、存在を世界から非難されたことだって、ないし。彼らの気持ちは自分には永遠に分からないだろう。
実際、スピルバーグの提示しようとしたテーマも、どっちかというと組織の論理と個人の想い、そのはざ間で葛藤する人間である。
自分たちが憎む相手が、かつて自分たちがやってきたことと同じ「何年かかっても祖国を手に入れる」と熱く語ったその時、愛する妻に向かって「帰るべき祖国は君だ」と語ったその時、「祖国のために」暴力、殺人の連鎖を続け死人を見るその時、彼の中で「祖国とは何か?自分の祖国はどこか?」という迷いがぐるぐるとまわる…
ラスト、ニューヨークで妻や子供と暮らすアヴナーに、エフライムが任務復帰の要請に来る。アヴナーは静かに首を振って「今夜うちで夕食を食べないか。遠来の客はもてなす義務がある」と言った。もう自分の祖国はイスラエルではない。妻と子供の待つ家、そこが彼の祖国なのだ。
テロと報復というアクション・サスペンスと、祖国をテーマにした社会派ドラマ、このバランスどりはスピルバーグならでは。
自分的にはもう少し葛藤のエピソードを増やしてほしかったけれども、2時間45分ずっと悩みっぱなしじゃ、流石に観ているほうもおかしくなっちゃうよね。
でもイスラエル選手団の殺戮シーンは何度もリフレインしなくても良かったと思うぞ。ちょっと不自然。何か言いたかったのかな?これで。
ホテル・ルワンダとどっちにしようか迷ったあげく、まずはミュンヘンから。
宇宙戦争が自分的にちょっとビミョーだっただけに、こんどは頼むぞ。スピルバーグってな感じで、映画館に突入。
冒頭、ミュンヘン事件勃発のシーンから。テレビ放送のシーンをうまく使った、緊迫感ある映像展開である。
ミュンヘン事件とは、1972年9月5日早朝、ミュンヘンオリンピック開催中の西ドイツでおきた、パレスチナゲリラ“ブラック・セプテンバー/黒い九月”によるイスラエル人選手団11人全員死亡の最悪の結末となった人質立てこもり事件である。
当然だがイスラエルは怒り心頭、機密情報機関“モサド”に犯人グループへの報復“暗殺”を許可する。
そして、欧州に潜伏する“ブラック・セプテンバー/黒い九月”メンバを暗殺する極秘チームが結成された。メンバはそれぞれ記録を消され"存在しない"人間となって、時間と金がどれだけかかろうが、必ずや任務を遂行するのだ!
という悲壮感漂う極秘作戦の割には、集められたメンバは…
暗殺チームのリーダー:アヴナー(エリック・バナ)
トロイのヘクトル王子役といい、矛盾に悩む優等生役が多いね。今回も暗殺チームのリーダーという大役の割には、モサドでのキャリアは(首相の?)警護のみ。手ぬるさを指摘されて逆上し無理な銃撃暗殺計画を実行するなど、ちょっとアブなっかしいぞ。
でも祖国のためという大義と人殺しという外道のはざ間で悩み苦しむ姿、電話で子供の声を聞いて泣き崩れる姿、逆に狙われる立場になってしまい恐怖にさいなまれる姿、はなかなかどうして応援したくなる。
殺しを重ねるたびに、凛々しい好青年からどこかくたびれた陰鬱な男に変化していくところも良い演技だと思う。
車輌のスペシャリスト:スティーヴ(ダニエル・クレイグ)
ニューボンド。どうもこの人は…この映画での役柄、ちょっと横柄な、好戦的なエゴイストが似合うような気がするので、ウェットでクールなボンドを演じるのはどうなんでしょ?
途中メンバを追って情報屋が確保した隠れ家に到着するも、よりによってパレスチナゲリラグループとダブルブッキングしてしまい、あやうく銃撃戦になりかけるが互いに何とか自重し停戦、仕方なく一緒に一夜を共にするのだが、そのときのラジオチャンネルの取り合いが、ビミョーにチンピラ風のやりとりで笑える。
後処理のスペシャリスト:カール(キアラン・ハインズ)
洒落た紳士。後処理の場面は前半一回だけ、しかも現場は描かず示唆しただけか?もうちょっとスペシャリストぶりを観たかったのだが…
暗殺チームのなかでは慎重派で、人間味あふれる言動と立ち振る舞いが印象的。こういう人が早死するんだよね。往々にして。
爆弾のスペシャリスト:ロバート(マチュー・カソヴィッツ)
あなた監督・脚本家で結構成功してきたでしょ?何でまた役者で出てるの?あ、そうかギャラを自分の映画につっこむためか!
役柄は味があります。暗殺チームは「銃よりも爆弾で殺す」というテロリスト的信条を掲げているため、毎回仕掛け作りで活躍。ショボーイ爆弾と仕掛けなんだな、これが。でもそれがサスペンスドラマを生み出すのだが。おいおい、暗殺チーム大丈夫か?実は爆弾作りではなくて解体のプロというオチでした。
文書のスペシャリスト:ハンス(ハンス・ジシュラー)
欧州各国を縦横無尽に闊歩する暗殺チーム、おそらく縁の下でカナリ活躍しているのはこのおっさんでしょう。パスポートをはじめ各種書類の偽装など、この手の活動には必須ですもんね。
結構肉体派なところもあって、しけた爆弾が作動しないところに業を煮やして手榴弾片手にターゲットが潜伏する部屋に突入、手榴弾爆破を敢行するランボーな一面も。
というワケで、役柄はちょっとスペシャリストとは程遠い寄せ集めではあるものの、役者は揃って癖のある面々ですな。
そのほかにも、モサドの執行官:エフライム(ジェフリー・ラッシュ)はいかにも諜報機関の中間管理職、って感じだし、情報提供者:ルイ(マシュー・アマルリック)、パパ:(ミシェル・ロンズデイル)も胡散臭さと闇っぷりがそれっぽい。
役者のみならず、さりげなくセットが凄いです。70年代欧州の街並みと車、道行く人々のファッションなど完璧。このあたりが世界一金持ちで力もあるオタク、スピルバーグの面目躍如といったところだ。
かつてプライベート・ライアンで「本物より本物らしいノルマンディー上陸作戦」と上陸作戦に参加した老兵に言わしめたように、細部のディティール、リアリティにこだわり始めたらこの人の右に出るものはいないだろう。
さて、テロもので、かつイスラエルVs.パレスチナという最もきわどい対立を描いたこの作品、問題にならないわけがないのだが、正直、島国でこの数十年、国対国、民族対民族、宗教対宗教の流血の抗争なんてないこの日本に住んでいる身では、知識としては知っておくべきですが語るにはおこがましいテーマだ。
祖国がないことなんて、なかったし、存在を世界から非難されたことだって、ないし。彼らの気持ちは自分には永遠に分からないだろう。
実際、スピルバーグの提示しようとしたテーマも、どっちかというと組織の論理と個人の想い、そのはざ間で葛藤する人間である。
自分たちが憎む相手が、かつて自分たちがやってきたことと同じ「何年かかっても祖国を手に入れる」と熱く語ったその時、愛する妻に向かって「帰るべき祖国は君だ」と語ったその時、「祖国のために」暴力、殺人の連鎖を続け死人を見るその時、彼の中で「祖国とは何か?自分の祖国はどこか?」という迷いがぐるぐるとまわる…
ラスト、ニューヨークで妻や子供と暮らすアヴナーに、エフライムが任務復帰の要請に来る。アヴナーは静かに首を振って「今夜うちで夕食を食べないか。遠来の客はもてなす義務がある」と言った。もう自分の祖国はイスラエルではない。妻と子供の待つ家、そこが彼の祖国なのだ。
テロと報復というアクション・サスペンスと、祖国をテーマにした社会派ドラマ、このバランスどりはスピルバーグならでは。
自分的にはもう少し葛藤のエピソードを増やしてほしかったけれども、2時間45分ずっと悩みっぱなしじゃ、流石に観ているほうもおかしくなっちゃうよね。
でもイスラエル選手団の殺戮シーンは何度もリフレインしなくても良かったと思うぞ。ちょっと不自然。何か言いたかったのかな?これで。
【小説】青の時代

三島 由紀夫
青の時代
ライブドア事件との酷似が取り沙汰されている光クラブ事件を題材に、とある青年のバブリーな人生を描く小説。
#本屋さんの平積みで購入。こういうことはAmazonには出来ない芸当ですね。
三島 由紀夫って言えば、陸上自衛隊駐屯地で演説ぶった挙句に割腹自殺、ってのが「やっぱり天才ってどっか常軌を逸しているの?」という感じだが、実際、この小説の主人公のような、冷ややかな合理主義者かつ倒錯した秀才、といった面が見え隠れしているような、していないような。
前半では「光クラブ」の山崎晃嗣を模した主人公川崎誠の幼少→青年時代を描いているが、そこにいる少年は、厳格な父親の下で圧迫され、感情に欠ける秀才であった。分単位で日記をつけ、何をするにも自分が事前に計画した青写真に沿って行動する。そして計画通りに行かなかったところをしきりに後悔するも、その"後悔癖"そのものを嫌悪し、またぞろ自己限定された合理性の虚しい無限ループを繰り返すのだ。
水商売の女にアプローチを計画するくだりで、計画の第一段階「名前を聞く」というのを幾度と無く繰り返す主人公が、何とも滑稽で、知能は著しくも、精神的に稚拙な秀才を描くエピソードとして微笑ましくも虚しい。
とにもかくにも、前半部分はそのような主人公の内面を描くエピソードが多々描かれ、まさに「青の時代」というべきもの。
後半、主人公が「太陽カンパニイ」という、まさに光クラブそのものを設立してからは、当時の社会情勢をエッセンス的に描写しつつ、乾いた欲望が次第に主人公を離れて勝手に増殖し始める様を淡々と描いており、前半の調子との落差が感じられる。
前後半の間には戦争があるのだがそこは描かれていない。
いわゆる、アプレゲールなるものを理解せねばこの作品を理解するに不十分なのかも知れない。それだけ、戦争というものは既成の何もかもを変え、人の心を歪めてしまうものであったのだろう。
ちりばめられた言葉のレトリックは小難しくもあるが、巻末の解説にあるようなアフォリズムとかシニシズムというよりは、虚無主義的で、屈折した英雄主義を感じざるを得ない。このあたりは、著者自身の投影が幾分か成されているような気がしなくもない。
目的無く、行為そのものを目的としているかのようなその生態は、確かにライブドアと似ている面もあるにはあるだろうが、物語の題材としては若干退屈でもある。
最後に幼少の思い出を想うシーンを入れたことによって、小説としての主題はかろうじて保たれている。
BGM->東京事変"大人(アダルト)"2006
むさしや(ニュー新橋ビル)

近頃はシオドメなんていうスポットが線路向こうに出来たこともあって、ますます人の流れが加速し、なかなかの賑わいを見せている。
そんななか、ニュー新橋ビル。通称「おやじビル」に潜入。新橋のシンボルSL広場の隣りに建ち、地下2階から地上11階。地下は居酒屋、スナック、1階から4階までが飲食店やら金券ショップやらパチンコ屋、ゲーセンに至るまで、確かにさらりまん御用達のショップが満載である。
ビルの1Fに、まるで戦後まもなくみたいな雰囲気で「むさしや」がある。
一応、ラーメンやきそばという看板を掲げておりラーメン屋?と思わせぶりな佇まいではあるが、どっこい、カレー、ドライカレー、スパゲティ(当然ナポリタンで!)、定食に至るまで多種多様なメニューを取り揃えている。
ドライカレー\650-を注文。ビミョーにHOT1!風味も漂うものの、王道のナポリタン風スパゲティと駄目押しのカレーコロッケなどを満載した大皿で登場。
席はこれまた王道の位置高めのカウンター&丸椅子。座ると後ろがのれんだけなので、行き交うサラリーマン達の話し声などを聞きつつドライカレーとナポリタンの混合物をイキオイにまかせてかっこむ。
いいね。なんとなく、戦後の闇市で食べているかのような、チープ感がたまらない。
ラーメンと焼きそばはいろいろなトッピングがあるようだ。しかも、香港風焼きそば?とか、そそるネーミング。
暫く通っちゃいます。