フロンティア「ヒトはなぜ歌うのか」NHKBS 5/2放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

FRONTIERS その先に見える世界
「ヒトはなぜ歌うのか」NHKBS 5/2放送

感想
「ウーン、「歌」かぁ・・・」とあまり乗り気ではなかったが、これが意外に面白かった。
認知症になっても歌のことは覚えているという。
ヒトに刻まれたビートの感覚は、他の動物とは一線を画す。
新生児にビート聞かせる実験にはびっくり!
カラオケで久しぶりに「時の過ぎ行くままに」でも歌うか・・
オマケ

そういえばアニメの「マクロス」で、歌が戦争を止めるとかなんとか言ってたな。あながち外れてない・・・

 

NHK取材班レビュー

 



内容
ダーウィンは言った「音楽は直接生きる役には立たない・・」
それなのに人は何故歌うのか。
音楽と脳の関係を研究する学者 ヘンキャン・ホーニング。


トミーの場合
認知症のトーマス・ダンヌ。元電車運転士。妻と共感出来ない。
短期記憶テスト→数字や言葉の記憶が苦手。

アルツハイマー型認知症による記憶障害。常に孤独を味わう。
ポールと会ったのは認知症の患者会。音楽絡みで共感し合える。

ポールの場合
趣味でバンドをやっていた。作曲も行っている。
思いついたらメモ(すぐ忘れるから)
ポール・ヒッチモウ(71歳)元ビジネスマン。8年前に発症。
きっかけはショッピングセンター。ATMの暗証番号を忘れた。
それだけでなく自分の名前も→若年性アルツハイマー病。

ポールとトミーの間で不思議な事が起きている。
ビートルズの歌は何年経っても覚えている。聴くとカーテンが開くようだ。頭の中で何かが起こる。音楽には特別な力がある

認知症で家族の顔も分からない人が歌い出した。
サイキ・ルイ:音楽脳科学 准教授


音楽記憶ネットワーク
→音を聞く聴覚野と、快感物質を出す報酬系が記憶領域を繋ぐ

音楽は時間を軸に展開する。

その時間軸に存在するのが「リズム(ビート)」
音の間隔の違いで様々なビートになる。ビートが繰り返されると脳の「予測機能」が働き出す。予測する事で脳が快感を得る。
メロディー展開も含め、音楽には予測アイテムが豊富。
それら全てが報酬系を刺激する→時に予測が裏切られる。

例えばアデルの「Someone Like You」の例。
脳は予測の複雑さを喜び、より大きな報酬を感じる。

プレスリーの曲を覚えているトミー。
認知症でも音楽記憶が残る理由→「記憶のこぶ」
思春期に聴いた音楽が、特別な曲として記憶に焼き付く。
トミーにとっては「スウィート・キャロライン」妻と歌う。

音楽は、妻と出会った頃に引き戻してくれる・・

 

ヒトの脳が音楽と親密な理由を探る。そのための2つの方法。
調査①種間比較 他の動物の音楽能力との比較
ヒト以外でビート予測出来る動物(2009年に見つかった)
「スノーボール」という名のオウム→ヒトだけではない


チンパンジーでの実験。反応は鈍い。

27人の新生児を対象にしたビート予測の実験。頭にヘッドホンと脳波計を装着。ビートの一部を変えた時の反応を見る。


ビートの中抜きをすると、脳の活動に変化を生じた。
ヒトはビート予測の能力を持って生まれて来る。なぜか?

調査②文化間比較 欧米人とそれ以外の音楽的能力比較
シムハ・アロム:フランス在住の民族音楽学者
1970年代、アフリカ中部での現地人の音楽調査を行った。


特に注目したのがバカ族(狩猟採集民)
バカの由来:バは「人」カは「葉っぱ」→「森の民」

10~20万年前の人類に近いDNAを持つ。一日中歌っているという。音楽が言葉より重要→その場所に謎を解くカギがある?
 

カメルーン共和国 国境付近
矢野原佑史:京都大学 音楽人類学 特任研究員

15歳でオーストラリアに渡り、スケボーと出会いヒップホップを知る。ビートのループの気持ちよさを知った。
ここに来るのは2018年以来。バカの集落に出向いた。
久しぶりの再会に、皆矢野原とハグをした。

集落の名は「ンビンベ」集落は50人程度。食料を求め森を移動。
歌が始まる。一番ヒップホップを感じたのがバカの音楽。


このグルーブ感。短いループが続き、音の抜き差しで遊ぶ。
歌は突然終わる(最高潮の少し手前)歌の事を「ベ」という。
コミュニティの音楽を皆で作る。歌で仲間になろうとする。
森での生き方を歌で教わる。(老人が教える)
男は狩りに出掛け、女は川で洗濯。
ウォータードラム(水面を叩き低音を出す)子供の遊び。

一人では歌わない。なぜみんなで歌うのか。


マルチトラック録音に挑戦。たくさんのマイクに
「これは黒魔術ではない・・・」
各自のパートはバラバラ(どう組み合わさっている?)
あとで楽譜にした。7人が大きく分けて3つのメロディーを構成。
A:レとド、B:ラソラソ、C:ソとファ。


同時に歌うと美しい響き。完全4度(快感)ポリリズム。


異なるリズムが重なって「ノリ」を作る。グルーブ感。


予測が複雑になると脳が喜ぶ。体を動かす喜び(即興)


共に歌うのは助け合えるサイン。ヒトの生活に不可欠。
進化上の適応。霊長類のグルーミングの代わりに生まれた。

その先のフロンティアへ
ヒトはなぜ歌うのか→集団の絆
だが証明は難しい(一人でも楽しめる)誰かと繋がっていたいというシグナル。ヒトが最近手にしたものではない。
高齢者に8週間音楽を聞かせてMRIを撮ったら脳機能が向上。


特に「内側前頭前野」の働きが活性化。ここはヒトの脳で特に発達した重要な場所。社会生活で必須の、他者の事を考える領域。
年齢と共に衰えやすい場所でもある(特に認知症で損傷)
治療法の開発に役立つはず。音楽はすごい力を持っている

リバプール(イギリス)
認知症患者の集りでビートルズナンバーを歌うトミーとポール。
生気のない顔が、歌を聴くことでみるみる変化し、自分も歌い始める。