火の鳥 復活編  単行本 ⑦ ⑧  作:手塚治虫 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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復活編  初出:「COM」 1970年10月号 ~ 1971年9月号

感想
「火の鳥」の中でも随所に出て来て印象の深いロボット「ロビタ」の誕生秘話が語られる。
レオナの、人工脳に替わったため、人間が異物に見えるというロジックが何とも微妙だが、まあマンガで見せられると不思議にナットクしてしまう。
同様に、チヒロだって数あるロボットの中の一体に過ぎない。

なぜヒチロがまともに見える事だけが語られているのか(チヒロ以外のロボットは???)。ただ、そんなヤボな事は言うまい。

 

私たちが子供の頃から、アシモフの提唱する「ロボット三原則(人間に対する安全性、命令への服従、自己防衛」は有名だったが、これを打ち破るのが「人間らしさ」だという考え方で手塚氏が取り組んだのだろうか。

無数のロビタが「ドボ、ドボ」と溶鉱炉に落ちて行くシーンを最初に読んだのは、書店で「COM」を立ち読みした時だったろうか(中学生?)。旧い記憶と強烈に結び付いている「手塚マンガ」。

 

 

あらすじ

前編

2482年のある日、少年が事故死。少年の名はレオナ・宮津。
レオナは再生手術により生き返った。主治医のニールセン博士。

だがレオナが人間を見る時は、土くれの様にしか見えない。無機物はそのままに見える。

 

 

手術のやり直しが試されたが、結果は悪く、博士の姿は更にギザギザに見えた。
原因を、大部分取り替えた人工頭脳にあると考える博士。

 

自宅に戻ったレオナ。母親、家族の姿も声もまともには感じられない。
草木もまともには見えない。だが写真は普通に見える。ハンド・ビデオで撮った映像は普通に見えた。

ぼんやりと外を見ている時、土くれの人々の中に、まともに見える女性が居た。

 

 

慌ててその人を追いかけるレオナ。ようやく追いつき、誰だと聞くと「チヒロ61298号です」。ロボットの筈だが外見、肌ざわりとも人間としか思えない。
また会いたいというレオナに、仕事以外の対応は出来ない、と冷たいチヒロ。

 

チヒロと出会ってから一年。レオナはチヒロを使っている建設会社へ乗り込み、社長に売って欲しいと申し出るが、機密情報も持っているため不可能、と断られる。
会社の人間はチヒロ型の写真を見せると、そこには機械らしいロボットの姿。これじゃない!と写真を投げ捨てるレオナ。
社長がチヒロを呼び出していた。レオナには女性にしか見えない。

社長は写真と同じだと言い捨てた。

怒りに任せてつかみかかろうとするレオナは外につまみ出された。

ニールセン博士に苦情の電話を入れる建設会社の社長。

博士は、手術のいきさつを話し、彼が人間でありながらロボットの心を持ってしまったと伝える。
その事を聞いたチヒロ。新しい感情が芽生えて来て、作業の能率が落ちるようになっていた。この事を大問題と感じる管理者。

 

あるアパートを訪れるレオナ。自分が事故を起こした場所の真向かいの部屋。一瞬体がしびれ、エアカーから放り出された。

麻痺銃で撃たれたとの推理。
部屋を借りていたのはトワダという米国人の男。

事故の日に部屋を解約していた。
家に戻ったレオナは一堂に集まった親族を紹介される。

こんなに集まったのは相続問題から。弁護士の説明では、事故によりレオナは死亡として、戸籍上抹消された。
憤慨するレオナは、トワダを捕まえて真相を暴く、と言って家を出た。
チヒロを呼び出したレオナ。抱き合って愛を確かめる二人。

 

3030年
作業ロボットのロビタが、突然高熱炉に投身自殺するという事件が突然起こった。その数3万6千余体。
月面でロビタを労働ロボットとして使っている男(月潟宇宙運輸株式会社)。ロビタの集団自殺騒ぎを聞いて、自殺なんかさせてやらない、とうそぶく。
女性ロボットのファーニィと戯れる月潟に、自分は人間だと言うロビタ。怒った月潟は、ロビタを電線で縛り上げ、高電圧をかけて「痛さを感じるか」と挑発。
ファーニィの要求でエネルギーの充填をするロビタ。ファーニィは月潟と外出するという。出先でファーニィと抱き合っている時、ファーニィのエネルギーが切れ、月潟は挟まれて身動きが取れなくなる。

地球の管理者に連絡を入れるロビタ。ボスを殺したと聞いて、信じられない管理者。人間だという事を確かめたかった。

地球での兄弟の集団自殺で、自分の意識の中に人間だという信念が生まれた。

 

2484年
トワダを捜しに来たレオナ。トワダはシャイアンのインディアンだという。家まで来た時、突然銃撃され左腕を飛ばされるレオナ。トワダだった。乗って来たエアカーの遠隔操作でトワダを押し潰す。
トワダの部屋に入り、痛みで気を失うレオナ。次に目覚めた時、部屋にあった光る鳥の羽根を傷口に近づけると、痛みが消えた。
更に部屋を捜すと、レオナが訪れる警告の電報と日記。レオナが事故に会う一ケ月前に書かれたもの。フェニックスを捜し続け、とうとう見つけてその血を2cc採取。フェニックスはその後再生して去った。
ばかばかしいと思ったが、あの羽根が証拠。
レオナは突然、ここに住んでいた事を思い出す。

レオナは、日記の主がやろうとしていたフェニックスの捕獲を自分もやるつもりで、羽根を使って仕掛けを作った。現れるフェニックス。
レーザー・ガンでそれを撃つと「あなたは何度私を襲えば気が済むのか」と脳に直接話しかける。覚えのないレオナ。レオナは、もう血はいらないから、自分が殺されたわけを教えてくれと頼む。
トワダはレオナの相棒だった。日記を書いたのも自分。血を抜き取り、羽根と一緒に持ち帰った時、トワダは怖気づいた。そして血を飲んだらレオナを憎むと迫った。
レオナが血を手に入れた事は、世界中のニュースになった。
フェニックスは言う。トワダはレオナの一族の誰かに、レオナを殺せと指示された。レオナが死んだので、血がまだ飲まれていない事が判り、それを手に入れるため親族が寄って来た。愕然とするレオナ。
こんな命ならいらない、というレオナに、あなたは何度死んでも科学の力で生き返らされる、と言って去って行くフェニックス。

 

目覚めたレオナ。近づくエアカーに気付く。乗っていたのはレオナの親族たち。全てを理解したレオナは、日記を盗み出して、そこに書いてある血のありかを掘り出させ、出て来た箱の中の、血の付いた布を燃やした。驚く親族。
永遠の命はもう、簡単に手に入る。問題は、なぜ生きるのかということ。

片腕はすぐに付けてあげると言うニールセン博士。だが死にたいと言うレオナ。
「僕はロボットになりたい」と言うレオナ。チヒロを愛している。機械と愛し合ってどうなる?という博士に「僕なりに方法があります」と返すレオナ。

単行本 第7巻 第一刷 1983年

 


後編

3009年
一日520人ものロビタが誕生。タイプとしては旧式だが、人間のように疲労を訴え、休養が必要なロビタは子守り役などには好適で、一定の需要があった。

 

 

一人っ子の行夫。忙しい母親と、時間外は働かない秘書。ロビタだけが話し相手。
チャンバラごっこを教えるロビタ。斬られたら死んだフリ。そこに駆け付ける父親は、ロビタが暴力をふるったと勘違いして怒鳴りまくる。

 

アイソトープ農園行きとなったロビタを捜す行夫。ここは放射能で危ないからと、帰るように言うロビタだが言うことを聞かない。そこへやって来た母親を模したロボットが、連れ帰る途中で故障し、行夫はそのまま放置される。

治療室に運び込まれた行夫。放射能で血液や組織が破壊され、ロボット化しか手がない。結局ロビタは亡くなり、父親は雇っていたロビタを捕まえろと言って、農場のロビタを全て連行。だが全員が犯行を否定。
行夫の過失死の可能性もある中、裁判は繰り返され、10年以上が経過。

 

そして3030年。農場のロビタ全員を有罪として溶解処分とする判決だ出された。被告として発言を求められたロビタは、一人でも死刑になれば、ロビタは一人残らず死ぬでしょうと言った。それは人々からの反感を買った。

処刑が行われた後、働いていたロビタが一斉に職場を放棄して一ヶ所に終結。何万台ものロビタが溶鉱炉の中に消えて行った。

 

2484年
チヒロに会いに工場へ行くレオナ。チヒロは長い間閉じ込められていた。会っているところを社長室に居た男に見つかる。勢いで相手を殴ってしまい、チヒロを乗せてエアカーで逃げるレオナ。
雪山に突っ込んで遭難してしまう二人。寒さに震えるレオナ。

体のエンジンをオーバーヒートさせてレオナを温めるチヒロ。
怪しい連中に氷の中から救い出されるレオナ。女ボスが連れ帰るよう指示。
目覚めたレオナ。手当てした医師は失っていた左腕の代わりを取り付けていた。
女ボスに尋問されるレオナだが、チヒロを置き去りにされて抗議する。この者たちは、移民星相手に人体や人体パーツを密輸する事で食っている。宇宙では消耗がひどいため、いい商売になる。
いずれパーツにして送ると言われ、また閉じ込められるレオナ。

 

老医のドク・ウィークエンドが、レオナに興味を持ち、今までのいきさつを聞きに来る。
話し始めると、ドクはニールセン博士の事も知っていた。元はちゃんとした研究者。レオナを元に戻してやると言うが、余計なお世話だと言うレオナ。
女ボスに呼ばれるレオナ。殺されないのは彼女が止めているから。

ドクからレオナの身の上を聞いて興味を持っていた。

そして、チヒロを回収してくれるという、だが治すとまでは言わない。
商売のためのプレアデス星行きをやめ、部下に任せる女ボス。
動かないチヒロを前にするレオナ。ドクにチヒロの修理を頼むが、ドクはそれとは別に、ボスが地上に残った事を話す。

ボスの体はもう宇宙の旅には耐えられなかった。ボスはお前が気に入ったのだと話すドク。
チヒロを連れて逃げ出そうとするレオナの前にボスが。行くなら一緒だと言うボスを撃ち、逃げようとするが、機体がバランスを崩して墜落する。

 

建物の研究室で目を覚ますレオナ。隣にはボスが眠っている。ドクが、これは最初から仕組んであったと言う。ボスの体は元々もう長くない。レオナと一緒の体にして、離れないようにしてくれとドクに頼んでいた。

 

 

観念したレオナは、体は要らないから、記憶を電子頭脳に移し、更にチヒロに移して欲しいと頼み、息絶える。
ドクの一生の願いをかけた手術が行われる。次いでレオナの脳から電子頭脳への記憶の移植。そしてチヒロへの移植。
電子頭脳の中で混じり合う二つの意識。

 

 

レオナとチヒロの意識を持ったロボットとして目覚めた者。

不格好な体に不満を言うが、レオナの意識を組み込んだ電子頭脳の規模に見合う体が必要だった。体が不安定のため、足を使わず尻のローラーで動く様にドクがアドバイス。
隣の部屋に案内され、自分の体を見て驚くロボット。結局ボスの体はほとんどだめで、脳だけが彼女のもの。嘆くロボット。

部下たちがロケットで帰って来て、ボスが若造の体になっている事に驚く。だが部下たちはどうも気に入らない。手術の副作用に苦しむボス。苦し紛れにロボットを銃で撃ち、その騒ぎが部下たちにも広がって銃撃戦になる。
制御装置が破壊され、建物が大爆発して、みんな死んだ。

その後、ロボットだけが起き上がる。

 

2917年
レオナとチヒロだったロボットは、その後ある家に拾われ、召使いとして仕えていた。
どこか人間くさい動作で、ロビタと呼ばれ、家族のように扱われた。
ロビタの回路に寿命が来た時、あるロボット業者がそれを引き取り、全く同じ仕様で複製を作った(記憶中枢も含め)。

ロビタは次第に数を増やし、ロビタは子供たちの友達として馴染んで行った。

 

3444年
惑星に降り立つ猿田博士。転がっていたロボットを再起動させる。

ロボットはロビタと名乗り、今から300年前に人を殺し

たという。自分が人間である事を確かめたかった。

そして自分の意思で動力を切ったという。
猿田は宇宙をさまよって生命の秘密を探している。

意気投合する二人。