セッション  2014年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

 

監督・脚本 デミアン・チャゼル

 

キャスト
アンドリュー・ニーマン     マイルズ・テラー
テレンス・フレッチャー     J・K・シモンズ
ジム・ニーマン              ポール・ライザー
ニコル                       メリッサ・ブノワ
ライアン・コノリー         オースティン・ストウェル
カール・タナー              ネイト・ラング
フランクおじさん           クリス・マルケイ
Mr.クラマー                 デイモン・ガプトン
エマおばさん                スアンヌ・スポーク

 

 予告編

 

 

感想
「セッション」は元々観たかったが、地元の映画館ではかからなかったので、つい行きそびれていた。
音楽院に通う若きドラマーと教官との掛け合い。
アンドリューは、才能ある者が持つ特有の不遜さが良く出ていて好演。フレッチャーも理不尽な鬼教官として君臨する姿が良かった。

 

監督のデミアン・チャゼルが自ら脚本を書いたという。本人自身が高校時代にジャズバンドに所属した経験も盛り込まれているらしい。

若者が精進してポジションを勝ち取って行く姿と、それに立ちはだかる壁としての教官。観ていて気持ちよかったが、やはり突っ込みたくなるのは性分か・・・・

 

そもそもフレッチャーが心酔するチャーリー・パーカーは「ビバップ」で鳴らした人。その基本は「アドリブ」。
このクラスのビッグバンドを云々するのならグレン・ミラーとかトミー・ドーシーとかに目が向いていないと。

それから、アンドリューの証言のせいでクビになったからと言って、自分が任されているバンドのジャズフェスをご破算にしてまで復讐するなんて、フレッチャーはちょっと器が小さすぎる。

 

ただ最終の、あの嬉しそうなフレッチャーを観ていて、あれは全てフレッチャーの演出だったのかも知れない、とも思える。

アンドリューは最初手のひらにびっしょり汗をかき、客席を見てビビっていた。
だがフレッチャーの言葉を聞き、全く知らない曲だと判ってからは、緊張どころの騒ぎではなくなった。
そしてあの舞台は、まさにアンドリューを輝かせるための最高の場所になってしまった。

その辺りはフレッチャーにあえて語らせず、微笑みだけで余韻を残した。

 

 ラスト9分23秒

Don Ellis Whiplash

Dave Holland Big Band - Upswing

Charly Antolini: CARAVAN

Caravan-Buddy Rich Drums

 

 

 

 

あらすじ

アメリカで最高と言われる、シェイファー音楽院で学ぶ19歳のアンドリュー・ニーマン。幼い頃からバディ・リッチのようなドラマーになるのが夢。

 

一人ドラムの練習をしているところへ、同学でも最高の指揮者と言われるテレンス・フレッチャーが、アンドリューに声を掛ける。かすかな希望を持つが、その場では特に感触なし。
父親のジムと一緒に映画を観に行くアンドリュー。

 

ある日、アンドリューが通う初等教室を訪れたフレッチャー。各パートに演奏させるが、みな僅かなフレーズでダメ出しを食らう。そして同様にアンドリューにもその機会が来た。

結局ダメ出しは受けるが、帰る時に自分の率いるバンドに顔を出すよう指示される。
有頂天になったアンドリューは、映画館の受付をしていたニコルにデートを申し込む。

 

スタジオ・バンドの練習初日。フレッチャーの指示された時刻に遅刻したアンドリュー。そこにはもうフレッチャーは居ない。
練習開始時刻になり、何事もなかったように現れるフレッチャーは、有望な新人だとアンドリューを紹介。

だが練習風景の異様さに驚くアンドリュー。僅かなミスも徹底的に直させる。あるパートで楽器の音程が狂っているのを指摘し、各個人を追い詰める中で、一人が目をつけられる。そこで自分が音程を外したと白状すると、即刻退室を命じられた。
実は音程を外していたのは別の者だったが、結局自分に自信がない者は居ても仕方がないということ。
優しくされていたアンドリューも洗礼を受ける。「Whiplash」のドラムパートで、何度やってもテンポが合っていないと責められる。限りなく浴びせられる罵倒。

しまいには椅子も飛んで来た。

 

フレッチャーを見返そうと必死で練習を行うアンドリューだが、コア・ドラマーのタナーの楽譜めくりしかやらせてもらえない。ある日タナーに頼まれて楽譜を預かったアンドリューだが、ドリンクを飲んでいる隙に無くしてしまった。楽譜を無くしたらクビだとフレッチャーから常々言われていた。
その日はコンテストの当日であり、穴をあけるわけには行かない。タナーは楽譜がないと演奏出来なかった。曲は「Whiplash」。楽譜は暗譜しているので自分にやらせて欲しいと願い出るアンドリュー。フレッチャーはその申し出を受け入れた。その結果コンテストでは優勝。
それを受けてアンドリューはコア・ドラマーに昇格。

 

親戚での食事会に参加しているアンドリュー。従兄弟たちがスポーツの事で皆から褒められているのを聞いて、面白くない。

 

バンドに新たなドラマーとして入ったライアン。明らかに腕は劣るが、フレッチャーは露骨にライアンを褒める。フレッチャーに食ってかかるが相手にされない。ストイックに練習にのめり込むアンドリューは、練習の妨げになる、とニコルとの交際も止めると彼女に申し出る。


重要なコンテストに向けて練習を行う前に、フレッチャーはかつての教え子ショーン・ケイシーが交通事故で亡くなった事を話し、涙を流す。
だがそれも束の間、フレッチャーはタナー、ライアン、アンドリューの三人に極端なテンポでの演奏を要求。納得出来るまで続けると団員に宣言。三人は交替で演奏するが、全く及ばない。
演奏は数時間に及んだが、アンドリューだけが最後まで演奏をやり通した。

 

時間に余裕を持って集合せよと指示したフレッチャーだったが、コンテスト当日、アンドリューの乗ったバスがパンクで動けなくなった。レンタカーを借りて何とか到着したが、遅刻を認めないフレッチャーはタナーにやらせると言う。自分にしか出来ないと言い張るアンドリューだが、レンタカー会社にスティックを忘れて来た事を思い出す。あと11分で取って来て、全てを完璧に演奏出来なかったら退学だ、と言い放つフレッチャーを尻目に車を走らせる。
スティックを取り戻し、猛スピードで走るアンドリューの左方から巨大なトラック。横転した車の下から這い出し、会場に走るアンドリュー。
血だらけの体でドラムの前に座るアンドリュー。やむなく演奏を開始するフレッチャーだが、左手を痛めた状態ではまともな演奏は出来ず、結果は惨憺たるものだった。
フレッチャーが冷たく「お前は終わりだ」と言ってから、会場に対して謝罪を始めた時、彼に殴りかかるアンドリュー。

 

アンドリューは音楽院を退学になった。父親のジムが、亡くなったというフレッチャーの教え子ショーン・ケイシーの代理人の弁護士と接触。実はショーン・ケイシーは交通事故ではなく、自殺だったという。フレッチャーの指導を受けるようになってから鬱になった。
フレッチャーを辞めさせるため、体罰に関する証言を求められるアンドリュー。最初は断るものの、結局匿名での証言を行った。フレッチャーは音楽院を辞めさせられた。

 

数ケ月後の夏、アンドリューは偶然入ったジャズクラブでフレッチャーがピアノ奏者として出演しているのを見つける。

アンドリューに気付いたフレッチャーは、彼を誘って酒を飲む。フレッチャーなりのジャズに対する思い。チャーリー・パーカーにシンバルを投げ付けたジョー・ジョーンズの逸話。
そして、今は民間ジャスバンドの指揮をやっており、今度行われるJVCジャズ・フェスティバルに参加する事、そのバンドでのドラマーが十分でない事を話す。曲はシェイファー時代のスタンダードだと言う。
フレッチャーの素直さに感銘を受けたアンドリューは、その話を受ける。

 

そしてフェスティバル当日、フレッチャーは団員たちに、この演奏はチャンスであると共に、もし失敗すればスカウトマンたちの記憶に永遠に残るため、二度とやれなくなる、と警告。
ドラムの前に座って、緊張のあまり汗をかいた手を見るアンドリュー。そこへフレッチャーが来て「お前の証言だったと知っている」。一瞬で気持ちが切り替わるアンドリュー。
演奏が始まったが、アンドリューから渡された譜面「Whiplash」とは違う曲の「 Upswingin'」。回りの雰囲気に合わせて叩くも、まともには行かない。他のメンバーからの罵声に加え、フレッチャーからも。
結局演奏は途中で中止となり、アンドリューはトボトボと舞台ソデに下がる。そこには父親のジムが。息子がドラマーとして日の目を見る事が出来ると期待していた。

 

だが、父親とハグした後、アンドリューは再び舞台に戻り、ドラムの前に座った。それを無視して「次は静かな曲を・・・」とフレッチャーが言いかけた時、ドラムの強烈なビートが響き渡る。
戸惑う団員たちに「キャラバン!」と叫ぶ。ベースから始まり、次いでピアノ。その頃からフレッチャーの指も動き出し、管楽器も鳴り始めた。見事なハーモニーのビッグバンド。

途中のドラムソロのパートで、フレッチャーが指示を出そうとするのを遮り「俺が出す」。そして続くドラムソロ。
ただ、その途中からアンドリューとフレッチャーの視線が交差。シンバルの消え入りそうな打音から次第に盛り上げて行く。そしてメインテーマの演奏へと続く。