火の鳥 少女クラブ版 初出:少女クラブ 1956年5月~1957年12月 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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エジプト編 初出:『少女クラブ』(1956/5 - 10月号)
ギリシャ編 初出:『少女クラブ』(1956/11 - 1957/7月号)
ローマ編  初出:『少女クラブ』(1957/8 - 12月号)


感想
本人あとがきで、漫画少年の「火の鳥」と違ってやたらと甘く、やたらと恋や愛が出て来る、と言っており、いかにも少女読者を意識したものと言える。
エジプト編冒頭で生き物の輪廻を、天国の描写を使って説明。
物語としてはエジプト、ギリシャ、ローマ各時代を描き、火の鳥の血を舐めて不死となったクラブとダイアという男女が、数百年を経て再生しつつ物語を進めて行く。

 

ここでの火の鳥の描かれ方はさほど神聖ではなく、もともと天国がイヤで、誕生する者たちに紛れて地上に来たという設定のため、中途半端にドジなところが微笑ましい。
不死の概念は、死なないというより一旦死んで別の形で蘇える、という形も含め混在しており、後に大きな構想として描かれる「火の鳥」体系の初期段階として、様々なパターンにチャレンジしている様にも見える。

 

 

<エジプト編>
天国の世界。死ぬと、動植物がみな同じ姿で天国に行き、受付で生前何だったかを申告。改めて命を与えられ、下界へ行くが、その時全ての記憶が消される。

天国で飼われていた火の鳥。ここがイヤで、生まれ変わる少女に頼んで下界に降りて来る。

 

エジプトのファラオ王が、火の鳥捜しを王子に頼んで送り出す。

一方継母の后が王の殺害を計画。
それを知った奴隷のダイアは、訴えるが捕まる。

王は倒れ、ダイアは動物に助けられて逃げる。
王子は偶然ダイアを助ける。歌がうまいというダイアを使って、火の鳥をおびき寄せようとする王子だが失敗。
ダイアは騙された事に怒るが、真摯に謝る王子を許す。
洪水の最中、ダイアが火の鳥の卵を助ける。

感謝した火の鳥は母国に戻って王に血を分けることに。

国に戻った王子。だがその時に王は絶命。

死んだ者には血を与えても生き返らない、と火の鳥。
火の鳥は国の不穏な様子を察知し、王子とダイアに自らの血を舐めさせた。王子は即位してファラオ三世となり、ダイアと結婚すると宣言。祝いの宴が開かれる。
火の鳥は、ナイル下流の浮島に居ると言って去って行った。
 

后の命を受けて、殺し屋が変装して王子とダイアを襲う。

刺されてナイル川に落ちる王子。
捕まったダイアは脅迫されて火の鳥の居場所へ案内させられる。

火の鳥が住む浮島まで案内させられたが、会わせられない、とダイアは反抗。后が王を殺した事を知っていると暴露。生かしてはおけないと襲う后だが、ワニに襲われて底なし沼に沈む。
そこに現れる火の鳥。案内されて倒れている王子を見つける。

見た目は死んでいるが、何百年後かには目覚めるという。

何百年も待てないと、ダイアは自分の胸に剣を突き立てた。
火の鳥の卵からヒナが生まれた。


<ギリシャ編>
ヒナはチロルと名付けられ、回りの動物たちの助けですくすくと育つ。主な仲間→ノロ(ウサギ)、ヨタ(狐)、ポポ(カメ)
ある時洪水が起こり、隠してあった王子とダイアの体が流されてしまう。それを何とかしようと水の中に入る火の鳥だが、二人は離れ離れに。
死期を悟った火の鳥は、三匹にチロルの身を託すと彼らに自らの血を飲ませた。火の鳥の寿命は三千年。その時が近づいていた。

親が死ぬ事でしか長寿が受け継がれない。
火の鳥は自らを燃やして消滅した。チロルを守ると誓う三匹。

 

海を漂うダイアを助けた船。船はトロヤ国の軍船、王子ヘクターが助けた。記憶をなくしているダイア。
自分の国へ来るよう勧めるヘクター。

船はスパルタの国へ向かう。
一方、スパルタの海岸に流れ着いた若者。兵隊が見つけ、目覚めた若者と小競り合いになるが、若者が圧倒。
上官と思われる者はユリシーズと名乗り、同行するよう促す。

若者は自分の名前も忘れていた。

海岸で、使節として到着したトロヤの軍船を見つけるユリシーズは、若者を連れて神殿に戻る。

神殿でばったりと出会う王子とダイア。

お互い惹かれるが思い出せない。
ユリシーズに言われ、スパルタ国の兵士として働く事を誓う王子。庭で再び出会う二人。記憶はないながらも男はクラブと自分を名付け、女はダイアと言った。
どんどん親しくなる二人は、前世で兄と妹だったかもしれないとまで思ったが、今は敵国同士。

そんな時、急にさらわれるダイア。

 

スパルタ王との会食で挑発に乗り、争いそうになるヘクター。
ダイアをさらったのはスパルタ王の后。自分の娘ヘレナよりダイアが美しければ、殺さなくてはならないと言う。
ヘレナと立ち合わせ、ダイアを殺しておしまい、と指示する后を止めるヘレナ。その命乞いに、命だけは助けるから、神殿の地下牢に一生閉じ込めると宣言する后。
スパルタ王とヘクターの争いが始まり、クラブもそこへ引っ張り出される。王のやり方を卑怯だとたしなめたクラブが、結局ヘクターと戦うことになってしまった。
戦いはクラブが勝ち、ヘクターは潔く負けを認めた。

 

国に戻ろうとダイアを探すヘクターだが見つからない。

スパルタ王がさらったと知り怒るヘクター。
一方ダイアを助けようとするヘレナだったが、ヘクターの指示を受けたトロヤの兵にさらわれてしまい。ダイアは取り残される。
娘の誘拐を知った后は地下牢へ向かい、ダイアを殺そうとするが、辛くもクラブが助ける。
クラブは小舟で荒波の中へ、ダイアを返すために漕ぎ出す。

渡り鳥のバレエ団への入団を勧められるチロル。三匹(ヨタ、ノロ、ボボ)に相談すると、付き添いとして同行させるならokとの返事。

 

三匹を網に乗せて運ぶ渡り鳥たちはトロヤの国に向かうが、途中嵐に巻き込まれる。
海に落ちた三匹はチロルたちと別れてしまう。

偶然三匹を拾い上げるクラブとダイヤ。

食料にしようとするクラブを止めるダイヤ。
言葉を喋る動物たち。三百年も生きていれば覚えると言う。

二人を、昔ナイル川の洲で死んだ王子と王女そっくりだと話す。

 

トロヤ国に戻ったヘクター。同時に連れて来たヘレナを国王始め皆で蔑む。だがヘクターの弟パリスだけはヘレナの味方になった。

スパルタ国との戦争になるという話に、死が怖いと悲しむパリス。
鳥の大群がトロヤ国に舞い降り、その中の一羽の金色の鳥が不死鳥だと予言者が言ったため、両親と兄にその血を飲ませようと、パリスが捕まえに出発する。手伝うヘレナ。

一方スパルタ国の船団がトロヤ国に到着しようとしていた。
兵士に捕まったクラブ。スパルタ国の者だと言っても脱走兵と疑われた。それを助けたユリシーズ。ダイアを弟だと偽った。

男なら明日は出陣させろ、とユリシーズ。
不死鳥を探すパリスとヘレナ。兄たちの前に見つけたい。偶然チロルを見つけ、射止めるが、相手は不死鳥、矢を抜いて逃げて行った。

 

トロヤ国とスパルタ国との戦争が始まる。ヘクターを見つけるダイア。驚くヘクター。城へ戻ろうと言うヘクターに、ダイアは妹だと言って阻止するクラブ。二人と戦いが始まる。
互角の戦いだったが、割り込んだスパルタの兵士アキレスに刺されて倒れるヘクター。ダイアの事をクラブに託した。だが兵士が女だと気付いたアキレスは、ダイアを連れて行ってしまう。捕まったクラブ。

亡骸となって城に戻ったヘクター。

相手がアキレスと知らされる。彼の急所はかかと。
ダイアを連れて走るアキレス。妻になれば法の裁きにはかけないと脅迫。そこへパリスの放った矢がアキレスのかかとへ。馬車は倒れ、アキレスは死ぬ。

そこを逃れて戦場でクラブを探すダイア。

瀕死の兵士から、グラブが城内に連れて行かれた事を知る。

 

城の塀まで来た時、身を隠していたヨタ、ノロ、ボボに出会うダイア。何とか城壁を登って城内に入る。
食料が少ない事に不満を漏らすチロルは、仲間の言うことを聞かずに食料を捜しに行って捕まってしまう。

国王にチロルを見せるパリス。
スパルタ国は皆退却し、残された大きな木馬が城内に運ばれた。

酒宴で盛り上がる兵士たち。
奴隷の中にクラブを見つけたダイアは、係の兵士を酔わせて助け出すが、木馬から出て来たユリシーズと戦いになる。トロヤの娘のために翻弄されるクラブを責めるが、二人でそこを脱出するクラブ。

 

ユリシーズとスパルタ国王が火を放ち、トロヤ国王の居所まで攻め入る。国王同士の戦い。そこへ止めに入ったヘレナは誤って出した父親の剣に倒れる。
檻から出られないチロルの元に、母親の化身が力を入れてとアドバイス。檻が溶けてチロルは脱出。

重傷を負ったダイアを看病するクラブ。

きっと生まれ変わると言って息絶えるダイア。

クラブはダイアを抱いて崖から身を投げる。

それを見つけたユリシーズは二人を手厚く葬った。

 


<ローマ編>
トロヤ戦争が終わってから三百年後のローマ。
パン屋を営む若者。父親と妹。オキロ大帝と王子のネボケタスが妹に目をつけている。
森へ水汲みに行った妹。手負いのライオンに出くわすが、槍を抜いてやる。そこで王子に見つかり、城に連れて行かれそうになるが、ライオンのおかげで逃げる。帰ってから父親に、王子からローマ人ではないと言われたと告げる若者。
二人の秘密を話す父。五十年前、ギリシャを攻めた時、宝物の間に、生きている様にみずみずしい二人の男女が居た。

それをもらい受けて生き返らそうとしたがダメだった。

45年経って突然動きだしたのがお前たち二人。

 

王子の家来たちがダイアを連れに来る。反抗した父は殺され、二人は城に連れて行かれた。兄は奴隷、ダイアも歌で蛇たちを操ったため奴隷にされた。
老婆から聞いた火の鳥の話。生き血を飲んで兄と自分が死なないようになりたい。
女奴隷が猛獣との鬼ごっこをやらされた時、その相手が助けたライオンだった。

狂言で猛獣を倒した事になったダイアは1週間だけ外に出してくれるよう頼む。その間に火の鳥を探し出すつもり。

兄は人質とされ、帰らなければ殺される。

 

ライオン(レオ)の道案内で火の鳥を捜しに行くダイアは途中で例の三匹とチロルに遭遇する。チロルは覚えているが、ダイアに記憶はない。チロルに唄うよう言われ、ダイアが唄い出すと三匹も思い出した。
兄を助けて欲しいと頼むダイアに、人間に嫌気がさしたというチロルだが、結局協力する事に。ただし血を分けるのではなく王たちを改心させるという。

レオが皆を乗せて走る途中、王の手下に捕まり、穴に閉じ込められる。あと五日経ったら出してやる、と手下。このままでは、兄が処刑される。

チロルが、手下どもを騙して一日勘違いをさせ、穴から脱出。皆で城に向かう。
王はまた難題を出し、火の鳥を献上したら兄を助けると言った。
従うフリをする火の鳥に、学者が脳を幼稚にさせる薬を飲ませようとする。その薬に息を吐きかけて血の色にするチロル。
学者がそれを見て慌てて王のところへ持って行く。

火の鳥の血と勘違いした王がそれを飲み幼児化。

助けられた兄のクラブ。チロルは、悪い政治を倒すのは今、と言ったがクラブは、恨みは捨てて堂々と退かせようと言った。
去って行く火の鳥。