原状回復バスターズ活動日記 03(5962)7660  -2ページ目

原状回復バスターズ活動日記 03(5962)7660 

原状回復バスターズとは、事務所・店舗の原状回復問題の解決をサポートする「敷金診断士」「一級建築士」等で構成された専門家集団のこと。「オフィス原状回復ガイドライン」に従い、大手消費者金融会社・上場企業をはじめ様々な業種の原状回復問題を解決。

マンションの床耐荷重について教えて下さい


鉄筋コンクリート9階建て分譲マンションの、4階に居住しております。

熱帯魚飼育用に150×60×60センチ・メートル程度の大きさの水槽を設置しようと、

当マンションの「耐荷重」を調べたところ、180キロ・グラム/1平方メートルとのことです。

 ということは、体重90キロ・グラム以上の成人が2人並んで立ったら、

床が抜け落ちる可能性がある(!)ということなのでしょうか。

また、浴槽は長さ120センチ以上ありますが、お湯をいっぱい入れても大丈夫なのでしょうか?

 非常に不安なので、教えて下さい。



1平方メートルに体重90キロ・グラムの人が2人いると、

床が抜け落ちる?……計算ではそうなりますが、

建物は全体の強度でもっているので大丈夫です

 耐震強度偽装事件などもあり、余計に不安になるのかと思いますが、

まず「床の耐荷重が180キロ・グラム/1平方メートル」というのは、

建築基準法施行令第85条の、居室の床の「積載荷重」で定められた基準値です。

ですから、お住まいのマンションは、基準を満たした建物と言えます。


 マンションの床は通常、鉄筋とコンクリートからできています。

鉄筋は強度がある上、粘り強いという長所がありますが、空気に直接長い間触れていると、

錆びてしまうという弱点もあります。一方、コンクリートは床や壁を造るのに適していますが、

一定以上の力が加わると割れてしまうという、もろい性質もあります。

そこで、錆びやすい鉄筋をコンクリートで覆い、お互いに弱点をカバーし、

長所を生かし合っているわけです。


 安全を確保するため、床は建物の用途などによって、

構造計算により鉄筋の間隔やコンクリートの厚みが計算されています。

ちなみに、事務所ビルや店舗などは300キロ・グラム、

駐車場は550キロ・グラムに定められています(荷重値はいずれも1平方メートル当たり)。

実際には、アップライトピアノは200~270キロ・グラム、

グランドピアノは400キロ・グラム近くありますので、

荷重が分散されるように置き方に工夫されてはいかがでしょうか。


 質問者のご心配は、言われてみれば確かにその通りですが、

計算には余力もありますし、建物は全体の構造の強さでもっていますので、

90キロ・グラムの人が一平方メートルの中に2人いても、人は動いたりしますし、

満杯の浴槽でも水は排水もするので、心配は無いでしょう。


 しかし、一定の荷重が常にかかる水槽の場合は、この大きさですと、

ざっと計算しても水槽だけの重さで500キロ・グラム以上にはなるでしょう。

従って計算上は重さに耐えられないので、

置き方や補強などを検討されたほうがよいと思います。

マンション内に発生するムカデの処置と責任テーマ

マンション内にムカデが発生します。周辺の土地に雑草が生い茂っているのが原因ではないかと思い、

その土地所有者に草刈りするよう、市役所を通じて依頼したのですが、

草が刈られる様子は一向にありません。土地の所有者に対して、

別の手段をとることはできませんか? また大家さんに、いかなる請求ができるのでしょうか?



原因がどこにあるかによって、解決方法も異なります。

周辺の土地の雑草がムカデ発生の原因であり、

ムカデのためにマンションの居住に耐えられないほどなら、

土地所有者にも責任があります。また大家さんの責任によりムカデが発生し、

居住に耐えられないのなら、大家さんにムカデの駆除等を請求できます

ムカデ発生の原因がどこにあるか

その原因を明らかにすることが、まず第一に必要です。

ご質問の周辺の土地の雑草が、ムカデ発生の原因といえるかどうかが問題です。

因果関係があり、雑草が原因であることがはっきりするなら、

草を生い茂らせた土地所有者に責任があります。


次にムカデの発生によって、具体的にどのような損害が発生したのかを考えます。

ムカデがたまたま一匹だけ、マンションにいたというのか。


そうではなく、大量に発生して気持ちが悪くなるほどの状態だったのか。

さらにはムカデの種類によっては、人に害を与える場合もありますから、

刺されたりして人身被害があったのかを検討すべきです。


すなわち、損害といえるものがあれば、損害賠償請求ができます。

また、仮に大量のムカデの発生で居住者の気持を悪くしたのなら、

慰謝料が発生することもありえます。

さらに人身被害に至って診察を受けたなら、その治療費請求等も可能です。


つまり、土地所有者に責任があれば、ムカデを発生させる原因となった雑草の除去や、

ムカデ自体の駆除も請求できるでしょう。

ただし、ムカデが一匹だけの発生にとどまるなら損害は軽微であり、

駆除さえできれば解決といってもいいでしょう。

当然ながら、そもそも雑草の生い茂りがムカデの発生に関係なければ、

土地所有者へのこれらの請求は無理です。


マンションの大家さんには ムカデの発生の原因が、

土地所有者の雑草の生い茂りではなくて、

マンション自体に問題があってムカデが発生したらどうでしょうか。


大家さんにはマンションの賃貸借契約に基づく貸主の義務として、

居住者が本来の居住目的に従って快適にマンションを利用できるようにする

基本的な義務があります。


仮にマンションの台所の流し台の収納部分にムカデが住みついて、

大量発生したとすれば、大家さんに駆除の請求ができる理屈です。

その他損害が発生すれば、損害賠償請求ができることは、

土地所有者に責任があった場合の責任と同じです。

原状回復をしない場合の明渡完了の存否 (1)


賃貸借契約が終了して貸室の明渡しを受けることになりましたが、貸室の内部は、クロスには煙草の焼け焦げが残り、柱も一部破損したままです。当社としては元どおりにするまで明渡しとは認めず、引き続き賃料を支払わせたいのですが、それは可能でしょうか。
(月刊不動産 2005.8月号より)

1. 賃借人の善管注意義務違反

 建物賃貸借契約を締結した場合、賃借人は賃貸借の目的である貸室を善良なる管理者の注意(善管注意義務)をもって管理し、賃貸借終了の際には、貸室を原状に回復して明け渡す義務を負っています。

 本件では、賃借人はクロスには煙草の焼け焦げの跡を付けており、柱も一部損傷しているというのですから、善管注意義務に違反し、原状回復義務を履行していないことは確かです。
 したがって、貴社は、賃借人に対して、善管注意義務違反を理由に、損害賠償としてクロスの補修に要する費用や柱の修復に要する費用を請求することができます。
 しかし、借家人が本来なすべき原状回復義務を履行しないまま建物を明け渡そうとする場合は、明渡義務について、債務の本旨に従った履行をしているといえるか否かが問題となります。
 仮に、それが明渡義務の債務の本旨に従った履行ではないと判断されるならば、借家人が原状回復義務を完全に履行するまでの間は、いまだ借家人からの明渡義務の履行は完了していないことになり、貴社は借家人が原状回復義務を完全に履行するまで賃料を請求し続けることが可能になります。

2. 原状回復義務の履行と明渡義務の履行との関係

 問題は、借家人は、貸室を原状に回復して明け渡す義務を負っているわけですが、原状回復を履行しないままで建物を明け渡す行為も「明渡義務の履行」といえるかという点にあります。
 この点は誤解されている方も多いと思われますが、「明渡義務の履行」という観点からみるならば、借家人は、賃貸借の終了した時点の状態で貸室を賃貸人に引き渡せば「明渡義務の履行」自体は行われたと解することになるのです。

 本来やるべき原状回復も行わないままでの明渡しなど、「明渡し」の名に値しないとの考え方もあり得るとは思いますが、法的には、特定建物の明渡義務の履行とは、特定建物をあるがままの状態で明け渡すことをいいます。建物明渡という債務に関していえば、それで債務の本旨に従った履行がなされたことになるわけです。

 したがって、借家人が貸室を原状回復もしないままで明け渡すと言ってきた場合であっても、賃貸人は、借家人の原状回復が未了であることを理由としては、その受領を拒否することは法的にはできないことになります。明渡しが完了した以上は、賃料支払義務は発生しないことになりますので、賃貸人は、賃借人に対して、原状回復の履行が完了するまで賃料を支払えという請求はできないことになります。

3. 原状回復義務の不履行に対する措置

 明渡しが完了したとしても、原状回復が不履行のままでは、貸室をほかに賃貸することはできません。
 原状回復義務の履行と明渡義務の履行は別個の問題ですから、明渡義務の履行が完了したとしても、原状回復義務の履行を引き続き求めることは当然ながら可能です。借家人がこれに応じない場合には、借家人の善管注意義務違反、原状回復義務違反を理由に、借家人に対し、原状回復費用相当額として、クロスの補修費、柱の修復費用額を損害賠償として請求することができます。

 これらの補修工事を行うためには相当の期間を要することになりますが、これらの期間中は貸室をほかに賃貸することができません。これは旧借家人が原状回復工事を履行しなかったことによって発生する損害ですから、賃貸人は、未履行の原状回復工事を行うのに必要な期間、賃貸建物を第三者に賃貸できなかったことによる損害として、その期間の賃料相当額を旧借家人に請求することが可能です。この賃料相当額の損害額は、補修工事に取りかかるのが遅くなったり、工事に必要以上に時間を要した場合にすべて認められるというものではなく、社会通念上、一般的に補修に要する期間の範囲において認められるということになりますので、注意してください。

必要費、有益費の違いについて

小修繕の入居中のトラブル又必要費、有益費の違いについて

入居中のトラブル、小修繕の貸主修繕義務免除特約の有効性について、
また必要費、有益費の違いについて一度お読み下さい。

 


雪で借家のアンテナが折れてしまいました。修理代が約5万円もかかると言われましたが、

貸主に請求できますか?



貸主が設置していたアンテナならば、貸主の修繕義務 (注1)の対象となります。

賃貸マンションのベランダが壊れて危ないので、貸主に修理を頼んでいるのですが、

なかなか修理してくれません。自分で修理してその費用を貸主に請求できますか?



ベランダは建物の一部として貸主の修繕義務の対象で、また、修理費用は、

貸主にとって必要費 (注2)にあたり、貸主は直ちに補修しなければならない事柄です。

しかし、貸主が応じてくれない場合には、期限を切って請求し、それでも応じてくれない場合は、

「借主が修理を依頼する、その費用を請求する」旨を通知します。その上で、

自分で修理し払った費用を貸主に請求できます。それでも払ってくれなければ、

よく月分の家賃と相殺する事ができます。


賃貸マンションの2階の部屋から水漏れし、押入れの布団が水浸しになってしまいました。

損害賠償を誰に請求できますか?



漏水の原因は何ですか。給排水設備に不具合があったのか、2階の住人の不注意が

原因なのかで異なります。給排水設備が原因の場合は貸主に請求することになります。

2階の住人が洗濯機の水を止め忘れたなどで漏水した場合は、2階の住人の責任です。


前の住人がおいていったクーラーが入居直後に故障しました。

貸主に修理をお願いできますか?



契約書に付帯設備として明記されていない等の事情から、貸借物件の一部と

みることのできない場合は、貸主に修理責任はありません。

前住人の残留品にすぎない場合でも、契約時に付帯設備確認書などに明示してもらっておけば、

設備として家賃に反映されて貸主の修理義務の対象となります。


門の前の駐車スペースが砂利敷きで使いにくいので、貸主の了解を得てコンクリート敷きに

しました。費用を貸主に請求できますか。



建物の価値を増加させるための費用は有益費 (注3)となります。賃貸借終了時に費用の償還請求ができます。しかし、有益費用は借主の負担とする特約も有効で、特約があれば請求できません。

浴槽や洗面設備の修理費用は貸主に請求できますか。



浴槽や洗面設備の修理が必要となった原因が、借主の故意・過失による損傷ではなく、

経年変化による劣化であれば、本来は貸主が負担すべき必要費の範囲と考えられます。

貸主に修理を依頼したが対応してくれない場合は、修理業者の選定など貸主の了解をとった上で、とりあえず借主の費用で修理し、貸主に対して直ちに償還請求することができます。

しかし、借主が勝手に修理してしまった場合は、修理が本当に必要であったのかどうかも

分かりませんから、貸主が償還に応じてくれない恐れがありますから注意が必要です。

建物の修繕義務は、原則貸主が負います。


 

(注1) 貸主の修繕義務 (民法第606条)

①貸主は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います。
②貸主が賃貸物の保存に必要な行為(修理・修繕)をするときは、借主はこれを拒むことは

できません。

(注2) 必要費 (民法第608条第1項)

 貸主が負担すべきもので、目的物の使用収益に必要な費用です。例えば、貸主がなかなか

屋根の修理をしてくれないので、借主の費用で修繕したとき、立替払いした費用は直ちに

貸主に償還を請求できます。貸主が応じてくれないときは、必要費の限度で翌月の賃料と

相殺すると主張できます。

(注3) 有益費 (民法第608条第2項)

客観的に見て目的物の価値を増加させるための費用です。例えば、トイレを和式から洋式に

替えた場合や床板の張り替え費用等です。目的物の保存に必要な費用ではないので

貸主が負担すべきものとはいえず、有益費償還請求権を放棄する特約は有効とされています。
 借主が有益費を支出したときは、貸主は賃貸借終了時において、貸主の選択に従って、

借主の支出した費用あるいは賃貸借終了時に残存する価値のどちらかを弁償しなければ

なりません。ただし、貸主は有益費の償還につき、相当の期限の許可を裁判所に請求する事が

できます。しかし、古くなってしまって家全体の価値に影響がないときは、

弁償してもらうことはできません(民法第196条第2項)

有益費は建物から取り出すことができないものです。同じく借主が付加し建物の価値を

増加させるものに造作があります。造作は独立性があり借主の所有物です。

借主の負担とする特約で有効な修理の範囲

 費用が軽微な一定範囲の小修繕については、貸主の修繕義務を免除したにとどまり、

積極的に修繕義務を負わせる趣旨でないと解すべきです。特約の範囲の小修繕は、

借主が貸主の承諾を得ることなくでき、その場合は、貸主にその費用を請求できません。

有効な特約の例

畳の表替え・裏返し、障子・襖の張り替え、電球・蛍光灯の取換え、

ヒューズ・給排水栓の取換え、その他の軽微な修繕

無効な特約の例 貸主は一切の修理義務を免れる特約
借主が小規模な範囲を超えて修理義務を負う特約





入居中のトラブル、小修繕の貸主修繕義務免除特約の有効性について、
また必要費、有益費の違いについて一度お読み下さい。

 


雪で借家のアンテナが折れてしまいました。修理代が約5万円もかかると言われましたが、

貸主に請求できますか?



貸主が設置していたアンテナならば、貸主の修繕義務 (注1)の対象となります。

賃貸マンションのベランダが壊れて危ないので、貸主に修理を頼んでいるのですが、

なかなか修理してくれません。自分で修理してその費用を貸主に請求できますか?



ベランダは建物の一部として貸主の修繕義務の対象で、また、修理費用は、

貸主にとって必要費 (注2)にあたり、貸主は直ちに補修しなければならない事柄です。

しかし、貸主が応じてくれない場合には、期限を切って請求し、それでも応じてくれない場合は、

「借主が修理を依頼する、その費用を請求する」旨を通知します。その上で、

自分で修理し払った費用を貸主に請求できます。それでも払ってくれなければ、

よく月分の家賃と相殺する事ができます。


賃貸マンションの2階の部屋から水漏れし、押入れの布団が水浸しになってしまいました。

損害賠償を誰に請求できますか?



漏水の原因は何ですか。給排水設備に不具合があったのか、2階の住人の不注意が

原因なのかで異なります。給排水設備が原因の場合は貸主に請求することになります。

2階の住人が洗濯機の水を止め忘れたなどで漏水した場合は、2階の住人の責任です。


前の住人がおいていったクーラーが入居直後に故障しました。

貸主に修理をお願いできますか?



契約書に付帯設備として明記されていない等の事情から、貸借物件の一部と

みることのできない場合は、貸主に修理責任はありません。

前住人の残留品にすぎない場合でも、契約時に付帯設備確認書などに明示してもらっておけば、

設備として家賃に反映されて貸主の修理義務の対象となります。


門の前の駐車スペースが砂利敷きで使いにくいので、貸主の了解を得てコンクリート敷きに

しました。費用を貸主に請求できますか。



建物の価値を増加させるための費用は有益費 (注3)となります。賃貸借終了時に費用の償還請求ができます。しかし、有益費用は借主の負担とする特約も有効で、特約があれば請求できません。

浴槽や洗面設備の修理費用は貸主に請求できますか。



浴槽や洗面設備の修理が必要となった原因が、借主の故意・過失による損傷ではなく、

経年変化による劣化であれば、本来は貸主が負担すべき必要費の範囲と考えられます。

貸主に修理を依頼したが対応してくれない場合は、修理業者の選定など貸主の了解をとった上で、とりあえず借主の費用で修理し、貸主に対して直ちに償還請求することができます。

しかし、借主が勝手に修理してしまった場合は、修理が本当に必要であったのかどうかも

分かりませんから、貸主が償還に応じてくれない恐れがありますから注意が必要です。

建物の修繕義務は、原則貸主が負います。


 

(注1) 貸主の修繕義務 (民法第606条)

①貸主は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います。
②貸主が賃貸物の保存に必要な行為(修理・修繕)をするときは、借主はこれを拒むことは

できません。

(注2) 必要費 (民法第608条第1項)

 貸主が負担すべきもので、目的物の使用収益に必要な費用です。例えば、貸主がなかなか

屋根の修理をしてくれないので、借主の費用で修繕したとき、立替払いした費用は直ちに

貸主に償還を請求できます。貸主が応じてくれないときは、必要費の限度で翌月の賃料と

相殺すると主張できます。

(注3) 有益費 (民法第608条第2項)

客観的に見て目的物の価値を増加させるための費用です。例えば、トイレを和式から洋式に

替えた場合や床板の張り替え費用等です。目的物の保存に必要な費用ではないので

貸主が負担すべきものとはいえず、有益費償還請求権を放棄する特約は有効とされています。
 借主が有益費を支出したときは、貸主は賃貸借終了時において、貸主の選択に従って、

借主の支出した費用あるいは賃貸借終了時に残存する価値のどちらかを弁償しなければ

なりません。ただし、貸主は有益費の償還につき、相当の期限の許可を裁判所に請求する事が

できます。しかし、古くなってしまって家全体の価値に影響がないときは、

弁償してもらうことはできません(民法第196条第2項)

有益費は建物から取り出すことができないものです。同じく借主が付加し建物の価値を

増加させるものに造作があります。造作は独立性があり借主の所有物です。

借主の負担とする特約で有効な修理の範囲

 費用が軽微な一定範囲の小修繕については、貸主の修繕義務を免除したにとどまり、

積極的に修繕義務を負わせる趣旨でないと解すべきです。特約の範囲の小修繕は、

借主が貸主の承諾を得ることなくでき、その場合は、貸主にその費用を請求できません。

有効な特約の例

畳の表替え・裏返し、障子・襖の張り替え、電球・蛍光灯の取換え、

ヒューズ・給排水栓の取換え、その他の軽微な修繕

無効な特約の例 貸主は一切の修理義務を免れる特約
借主が小規模な範囲を超えて修理義務を負う特約





家賃の滞納と契約解除


 契約はどうなっていますか。

質問

 契約書には「家賃の支払いを1回でも遅延したら催告することなく契約を解除できる」という条項があります。大家さんはこれに基づいて契約解除するので家を明け渡して欲しいと迫ってきました。こういう条項があれば、ひと月の滞納でも契約違反となりますか。

答え

 借主の家賃支払い義務は賃貸借契約の最も重要な義務です。このため家賃の滞納はひと月でも義務違反になります。 しかし、この程度の義務違反だけでは契約解除の理由になりません。


 一般に、家を借りる目的はそこで生活するためであり、したがって契約期間も長期にわたります。 長期の間に、急病で入院したり、不意の支出があるなどで家賃の支払いが遅れる事情が起こり得ます。家賃の支払いがひと月遅れたというだけで契約が解除されて、借家から他に転居することは容易なことではありません。このため、ひと月の滞納イコール契約解除という単純な理由にはなりません。


 契約解除となるかどうかは、「一般社会常識から考えて大家さんと借り主の信頼関係が破壊されているかどうか」にかかっています。信頼関係が破壊されているかどうかは賃料不払・遅滞の状況とその事情に加え、大家さんと借り主の関係を総合的に判断して行われます。


 判例を見ると、連続11カ月間の家賃不払いのケースでも、大家さんと借り主の特別な事情などから信頼関係が破壊されていないと判断して契約の解除を認めなかった例もありますし、2カ月間の不払いについて、他の事情を考慮して大家さんと借り主の信頼関係がすでに破壊されていると判断して契約解除を認めた例もあります。後者の場合は、実際の不払いは2カ月だけですが、それまでにも賃料を滞納しがちでしたし、借り主が大家さんに嫌がらせをしていたりした事実が、信頼関係が破壊されているという判断の根拠になったようです。

質問

 信頼関係の破壊について基準がありますか。

答え

 明確な基準はありません。判例などを検討すると、原則として(1)最低3~4カ月あるいは4~5カ月の賃料不払いがある(2)大家さんが借り主に対して、いついつまでに賃料を支払えと請求している(3)借り主がその期間内に支払っていない、の要件が揃っていれば信頼関係が破壊されたと解していいでしょう。

 不払いの期間に3~5カ月の差があるのは、不払い以外の事情が考慮されるかどうかです。

 相談のケースは、単に支払いがひと月遅れたというケースです。契約条項があっても契約解除の理由にはならないので家を明け渡す必要はありません。

質問

 逆に、裁判で契約解除が認められる場合は、どんな判決が出るのですか。

答え

 不払いの家賃を支払って、物件を明け渡せという判決が出ます。

質問

 この判決どおりに、借り主に家賃を払ってもらい契約を解除して出ていってもらえるわけですね。

答え

 必ずしもそうはいきません。家賃を支払わなかったり、家を明け渡さなかったりする場合もあります。明け渡しの判決を得たからといって、大家さんが勝手に借り主の持ち物を部屋の外に持ち出したりしたら、逆に訴えられても仕方ありません。本当に明け渡して欲しい場合は、別途、強制執行の手続きを踏み、執行官に明け渡しの強制執行をしてもらう必要があります。

質問

 支払いが遅れる場合はどうしたらよいでしょうか。

答え

 支払いが遅れると思ったら、家主に遅れることと支払い予定日を知らせることです。できればその理由を併せて知らせるとなおよいでしょう。

 家主も借主もお互いが誠意をもって信頼関係を破壊しないようにしたいものです。

クロス壁採寸の方法


クロスの単位は平米なのですが、内装工事店が卸問屋に発注する場合、この単
位ではなく、メートルを使います。


クロス部材は普通幅92~94ミリのものが多く、ジョイント(つながる)部分を
目立たないようにするため、数ミリ重ねて貼ります。


そのため、内装工事業者の採寸方法は、90ミリ幅で何本必要かという方法がと
られることが多く、例えばマンションの6畳の和室の長い側の面の場合、天井
高が、2,400ミリで長さが3,500ミリとした場合、平米で計算すれば

2,400ミリ×3,500ミリ=8.4平米

となりますが、内装業者の採寸法を使うと、

2,450ミリ×4本=9.8メートル

となります。

高さが50ミリ多いのは、工事する場合、端がきちんと合うように、少し余分に
とっておく必要があるためで、長さの4本は、3,500mmを90mmで割ると3.88とな
りますが、小数点以下を切り上げにしているためです。

そしてこれに単純に(メートルであっても)平米単価をかけるので、

1,000円/平米として計算しても、1,400円の誤差が生じます。

和室の壁一面のみでこれだけ差が出ますから、もし部屋全体の負担となった場
合、その差は相当なものになるのです。

このようにされないためには、退去時立会いの際に負担部分の縦横をきちんと
計測して何平米かをはっきりさせておくと良いですね。

エアコントラブル


エアコンについては大きくふたつに分けられます。



「貸主が設置した場合」と「賃借人が設置した場合」です。

まず、「貸主が設置した場合」ですが、これもふたつに分けられます。

ひとつは、「付帯設備品」扱いになるもの。もうひとつは、「残置物」扱いに
なるものです。

これは契約時に契約書や重要事項説明書内に、あるいは別添書類として、「付
帯設備一覧」が用意されている場合がありますが、その中に「エアコン」が記
載してある場合は、概ね「付帯設備品」扱いになります。

この場合は、入居中に自然発生した(入居者に責任のない)不具合については、
貸主負担で修理・交換をしなければなりません。

したがって賃借人が費用負担をすることはありません。

しかし、故障を勝手に修理してその費用を貸主に請求しても認めてもらえない
ことが多いので、必ず先に貸主に連絡してください。


そして「残置物」扱いになっているもの。これは、前の入居者が残していった
ものや、貸主が使用可能なのでサービスとして設置しているものなどですが、
これらについては、「付帯設備一覧」等に記載しなかったり、あるいは記載し
ても但し書きがついていて、貸主の管理義務を放棄したものです。


多くの場合は、たとえば「自分のエアコンを使用したいのなら、処分しても構
いません」とか「入居中に故障した場合、修理・処分は自由ですが(貸主は)
一切関知しません」といった内容となるのですが、エアコンの場合、特に最近
はリサイクル法などのために、処分するのにもかなりの費用が発生しますので
、このような扱いにされている場合は、契約時に貸主に処分してもらうとか、
入居中に故障した場合の処分費用を負担してもらうようお願いするなど、はっ
きりさせておくことが必要です。


次に「賃借人が設置した場合」ですが、その前にこんなことがありましたので
、付け加えさせていただきます。


ある方がエアコンの必要の無い秋頃にあるマンションを借りて入居しました。

翌年の夏を迎えて、(「エアコン設置可」とされていたので)エアコンを設置
しようとしましたが、肝心のスリーブ(配管用の穴)が無いことに気づきまし
た。

そのマンションはかなり古い建物でエアコンの設置など考慮されずに建てられ
たもので、規約により、壁に穴を開けることも許されていません。

他の居住者の多くは、前回の全面改装の時に安価で一斉に窓を改良してエアコ
ンが使えるようになっていたのですが、その部屋は賃貸であったため、その際
に改良をしませんでした。

そこで貸主に窓の改良をお願いしましたが、承諾してもらえず、止む無く、自
分で費用を負担しようとしましたが、数十万円必要ということになり、結局、
退去を余儀なくされてしまいました。


と、こんなこともありますので、「エアコン設置可」となっていてもどこにど
んなエアコンがつけられるのかよく確認しておくことが大切です。


さて、それでは問題なく「賃借人が設置した場合」のトラブルですが、これは
基本的には設置が許可されている場合は、退去時の取り付け用のビス穴等につ
いての負担義務は発生しません。


といっても、よく引越し業者がラフに扱って、エアコン設置場所付近の壁紙を
破ってしまったり、柱等に傷をつけたりしてしまうことがありますが、この補
修費用は負担しなければなりません。


当然のことですが、入居中の故障や不具合等の修理費用は賃借人負担となりま
す。


また、よくあることですが、「貸主が設置した場合」と「賃借人が設置した場
合」とに関わらず、フローリングの部屋のエアコンの直下にラグやカーペット
を敷いていてエアコンの水漏れに気づかず退去時にフローリングが腐食してい
たり、ブヨブヨになっていたりすると、その補修費用も賃借人負担となります
のでご注意ください。

エアコンの水漏れ等に関連する「善管注意義務違反」については、

ガイドラインでも記載があいまい(「賃借人の負担になると考えられることが多い」など)で

個々の事情で変わってきますので、絶対負担しなければならないとは考えない方がいいと思い
ます。


無料相談 03(5847)8235

Q4 ブラインドは全て交換と言われました。羽根は折れていないし洗浄で充分だと思うのですが、交換の費用負担は義務なのでしょうか?

A 交換か洗浄かの判断は一概に言い切れません。汚れ状態やグレード等によっては交換の方が安価という事もあり得ます。毀損や破損が無い場合は、洗浄対応の主張をすることも可能と考えます。契約書の条項と現状の使用状況を確認の上で、家主側と調整をしてください。

Q5 2か月ほど前に交換した蛍光管も含めて全部交換と言っています。まだ使えるのにと思うのですが、交換義務はあるのでしょうか?

A 契約書の条項によって対応が違ってきます。「使用可能なものは交換しなくて良い」と言った事例もありますので、特約を含め契約条項を確認した上で、家主側に相談してみてください。

Q6 繁華街のテナントビルなのですが、工事に制限があるために割高になっていると見積業者から言われました。これはどういうことでしょうか?

A 現場や工事内容によっては、ビルの他のテナントさんの事も考えなければなりません。例えばビルの使用状況や道路状況、セキュリティー、空調、配電など集中化されている場合などは、作業時間、作業曜日などの指定される事があります。作業時の騒音にも規制がある事もあります。工事の制約事項は、確認するようにしてください。

事務所移転で困っていませんか?


原状回復バスターズが解決します。


<紛争予防ガイダンス> 「オフィス原状回復ガイドライン」に基づきご相談に乗ります。

Q1 賃借人(借りる側)に不利な特約について有効性に問題はないのですか。

A 賃借人(借りる側)に修理等の費用を負担させる特約は、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に記載されている以下の3つの条件を満たしていないと特約の有効性に問題があると考えられます。

(1) 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
(2) 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を負うことについて認識していること
(3) 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

以上の3つの条件をわかりやすく解釈してみます。

(1) 第三者からみてもぼったくりではないこと
(2) 借りる側が、明確な説明を受けてよく理解をしていると認められること
(3) 借りる側が、契約書・特約欄等にサインをしていること

この条件を満たしておくことが必要であると思われます。

Q2 契約書に「原状回復」という記述がありますが、どういうことをすれば良いのでしょうか。

A 賃借人の故意・過失による損耗・毀損を復旧すれば良いのです。

日本住宅性能検査協会が考える原状回復
目的物件から搬入物、設置物を収去し、目的物件からとりはずし、又は移動したものを元に戻し、通常の使用で発生する経年変化・通常損耗以外の賃借人の故意・過失に基づく原状回復義務の目的物件の汚損、破損箇所を賃借人が賃貸人と負担割合を定め、約定の方法・最小施工単位で約定の業者に依頼して修理工事を行うことです

Q3 賃借人の不注意でタイルカーペットを汚してしまいました。一部分の汚れなのですが全面貼替えの見積もりが来ています。拒否できないのでしょうか?

A 契約書の条項に「明確」な記載があれば、全面貼替えとなる場合があります。その条項の記載があっても使用状況等によっては、負担軽減や部分貼替となる場合もあります。まずは、契約内容の確認と使用状況の確認が必要となります。




■ビル賃貸契約に伴うトラブル■(4)



<ビル賃貸借に適用される法律は何か>



1借地借家法が適用されるケース



民法は契約について次のように考えている。


契約者が互いに合意することを契約と呼んでいる。


民法では、当事者同士の自由意志による取り決めを重視し、


契約者が納得して決めたことは原則としてすべて有効な契約として認めている。


これを「契約自由の原則」と言う。


つまり、当事者間で結んだ特約は原則としてすべて有効ということになる。



原則として、契約についての民法の条文よりも契約者同士の納得した上での合意を優先するのである。


そのため、公序良俗に反するような特別なことがない限り、契約者の自由意思が尊重される。


だからこそ、問題になりそうな点を特約で明確にしておけば、トラブルを予防することができる。



ところが、民法一般の原則に対して、特別法規である借地借家法は民法とは基本的スタンスが異なる。


極論すれば、借地借家法は弱者保護のための法律と言える。


すなわち、賃借人を保護するための法律なのだ。



特約を例に挙げると、借地借家法では「契約自由の原則」を有しない。


借りている側にとって有利な特約は認めるが、不利になるような特約を認めていないのである。


このように、借地借家法は当事者同士が納得して結んだ特約事項でも内容によって、


有効なものと無効なものがある。そのために実務が混乱する。



民法であれば、ほとんどのことは契約で明確にしておけば、そのとおりの効力を有する。


ところが、借地借家法が適用されると契約書に明記しておいても法的に無効なものが紛れ込んでいるため、


有効と無効の臨界点が曖昧になってしまうのである。


従って、契約書の解釈、その他をめぐってトラブルが発生してしまうのである。



一般常識として、貸したものは返してもらえる。これは当たり前のことである。


ところが、建物を2年間の約束で貸しても、2年が経過したから返してもらえるという論理は通らない。


借家権が発生する場合は、2年間の約束で貸しても、返してもらうためには、


貸主がどうしてもそれが必要だという正当な理由がないと返してもらえないのである。


これが一般の物の貸借と建物賃貸の違いである。



借家法は大正10年にできた。当時は建物賃貸借についても一般の貸し借りと同様の基本原則を適用していた。


ところが、昭和16年に借家法が改正され、貸し手に正当な理由がないかぎり


契約の更新を断ってはいけないということになった。



昭和16年は戦時中である。当時は、借家が一般庶民の家を確保する重要な手段であった。


出征している兵士の留守中に家族の住まいがなくなると困るので、このような保護が加えられたのである。


そのために、貸主に正当な理由がなければ、借主に続けて貸さなければならなくなった。


昭和16年に設けられたこの「正当事由」が現在に至っても尾を引いているのである。



平成4年に借地借家法という法律が施行されたが、正当事由という制度はそのまま存続することになった。


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