オフィス賃貸借契約トラブル(4) | 原状回復バスターズ活動日記 03(5962)7660 

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■ビル賃貸契約に伴うトラブル■(4)



<ビル賃貸借に適用される法律は何か>



1借地借家法が適用されるケース



民法は契約について次のように考えている。


契約者が互いに合意することを契約と呼んでいる。


民法では、当事者同士の自由意志による取り決めを重視し、


契約者が納得して決めたことは原則としてすべて有効な契約として認めている。


これを「契約自由の原則」と言う。


つまり、当事者間で結んだ特約は原則としてすべて有効ということになる。



原則として、契約についての民法の条文よりも契約者同士の納得した上での合意を優先するのである。


そのため、公序良俗に反するような特別なことがない限り、契約者の自由意思が尊重される。


だからこそ、問題になりそうな点を特約で明確にしておけば、トラブルを予防することができる。



ところが、民法一般の原則に対して、特別法規である借地借家法は民法とは基本的スタンスが異なる。


極論すれば、借地借家法は弱者保護のための法律と言える。


すなわち、賃借人を保護するための法律なのだ。



特約を例に挙げると、借地借家法では「契約自由の原則」を有しない。


借りている側にとって有利な特約は認めるが、不利になるような特約を認めていないのである。


このように、借地借家法は当事者同士が納得して結んだ特約事項でも内容によって、


有効なものと無効なものがある。そのために実務が混乱する。



民法であれば、ほとんどのことは契約で明確にしておけば、そのとおりの効力を有する。


ところが、借地借家法が適用されると契約書に明記しておいても法的に無効なものが紛れ込んでいるため、


有効と無効の臨界点が曖昧になってしまうのである。


従って、契約書の解釈、その他をめぐってトラブルが発生してしまうのである。



一般常識として、貸したものは返してもらえる。これは当たり前のことである。


ところが、建物を2年間の約束で貸しても、2年が経過したから返してもらえるという論理は通らない。


借家権が発生する場合は、2年間の約束で貸しても、返してもらうためには、


貸主がどうしてもそれが必要だという正当な理由がないと返してもらえないのである。


これが一般の物の貸借と建物賃貸の違いである。



借家法は大正10年にできた。当時は建物賃貸借についても一般の貸し借りと同様の基本原則を適用していた。


ところが、昭和16年に借家法が改正され、貸し手に正当な理由がないかぎり


契約の更新を断ってはいけないということになった。



昭和16年は戦時中である。当時は、借家が一般庶民の家を確保する重要な手段であった。


出征している兵士の留守中に家族の住まいがなくなると困るので、このような保護が加えられたのである。


そのために、貸主に正当な理由がなければ、借主に続けて貸さなければならなくなった。


昭和16年に設けられたこの「正当事由」が現在に至っても尾を引いているのである。



平成4年に借地借家法という法律が施行されたが、正当事由という制度はそのまま存続することになった。


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