釣り師風来坊のつれづれ日記 -5ページ目

さぁ翼よ、筑波山へ行こう! (最終回)

これまでのお話


ようやく上昇率が4m/秒程度まで落ちたので、慎重に雲の下から抜け出す

少しほっとしてさぁこれからどこへ行こうかな?


そうだ・・・グランドだ

それから私は、いつもエリアに来る時に使う真っ直ぐな農道を目指した

あれかな?

こんな日に限ってGPSを忘れていた

1900mあるし、行ってみるか・・・


グランドは、雲がなかったので、サーマルもないだろうと思っていたが、案の定なにもない

ただゆっくり沈むだけだ


私はフルアクセルで農道を目指す

思ったより遠い

高度は1200mまで下がった

戻れるか?

戻れるだろう


この頃には、いつもの私でのんびりしたものである

ちょっと遠出しすぎたかなぁ・・・・

それにしてもこれいつもの農道かな?

よく見ると全然みなれない池がある


なんかやばいかも・・・ (^^;;;

高度は800m


戻れないかも・・・ (^^;;;

フルアクセルで戻るが高度はどんどんおちて500mを切った


L.Dは遥かかなた


や、やっちまった (^^;;

あはははは

やっちまった


T.OディレクターをやってくれているOさんの顔が思い浮かぶ

絶対に怒られるよなぁ・・・

「風さん、中途半端に戻ってくるんならそのままなんで走らなかったの? 迎えに行くのはどっちも同じなんだから中途半端はだめだよ」

って

絶対に言われるなぁ・・・と思いながら

ランディングる場所を上空から物色する


民家多いなぁ・・・

田んぼはあっちか・・・

そうこうしていると弱いサーマルをひっかける

そこで100mくらいは上げなおしたが、所詮すずめの涙だ


なんとか遺跡公園のところまで戻ってきた

ここの近くなら目印も沢山あるし、直ぐに迎えも来てくれるだろうと

ランディング場所を探しているとまたサーマルを引っ掛けた

今度は結構しっかりしている

ラッキー

ここで回し始める

先ほどまでの過激なげんこつサーマルに比べれば、これはゆりかごみたいなもの

鼻歌交じりで回して800mまで上げなおした

これで、一安心

余裕をもってT.Oまで戻り、少しうろうろ遊ぶ

南側にサーマルは全然ない

やはり南は駄目だったな・・・ところで、N君とFさんはどうしたのか?

L.Dを見ると人がいる

あれ?

もう降りたのか?


私は、ゆっくり高度処理をしてソフトランディング

1時間30分

まさかこれほどのビッグフライトが出来るとは思わなかった

N君とFさんは、北を攻めきれずに、直ぐ降りてしまったそうだ

Oさんも2人にアドバイスはしたみたいだが、尾根ひとつ分北に行けなかったみたいだ

中々、常識を破るのは難しいのかもしてない

あと50m~100m北に行っていれば彼らの実力なら楽々と上げられたと思うだけにちょっと残念だった


さて、次はどんなフライトをしようかな

山の神、空の神に感謝して、今私は筆を置く事にしよう


(終わり)

さぁ翼よ、筑波山へ行こう! (その5)

これまでのお話



T.O上空へ達したとき、強烈な突き上げを食らった

バリオの音が異常な音になる

まるで目覚まし時計のベルの音のようだ

私は暴れるキャノピーを抑えて、一気に旋回に入った

中途半端な旋回だと弾かれた上にキャノピーを潰されそうになる

ピッチも大きく動く

ヤバイ

それでもバリオはけたたましくなる

チラっとバリオの数字を見たとき目を疑った

+7m/秒 !?

まじでヤバイ

バリオの音が弱まった瞬間一気にブレークを引き込んでキャノピーを落ち着かせる

そして、再び悪魔のスティクへと機体を傾けた


逃げたら返ってやばい

突っ込んで回すしかない

そう思ったから見えない悪魔のスティックへ突っ込んでいった



サーマルとは、簡単に言うと目に見えない竜巻のようなものだ

もちろん、本物の竜巻だと命が幾つあっても足りないが、サーマルの渦はずっと穏やかだ

しかし、時として暴力的なサーマルもある

この日のサーマルはそんなサーマルだった

頭上では雲が不気味に黒く生贄を飲み込もうとしているようだった


ハイバンクをかけてグライダーを回し始めたら、バリオが悲鳴を上げだした

強烈な上昇をしている中でバリオの数値は+7.7m/秒

最後まで回しきるしかない

しかし頭上の黒雲は直ぐそこまで来ている

あの中に入ったらもっとヤバイ

しかし、上昇が止まらん

1800mを再び越えて1900m(海抜1960m)まで達した


最終回へつづく

さぁ翼よ、筑波山へ行こう! (その4)

これまでのお話


筑波山が見えた

ここから筑波山までは約5km

楽勝だ


上空は少し北風が強かったけど、愛機のぺネは抜群

ハーフアクセルで筑波山に向かった





やはり北風が強く中々筑波山に着けない

それでも高度は1500m以上ある

筑波山の山頂よりも700m高いのだ


つつじヶ丘の駐車場上空に来たとき

再びサーマルをヒット


ちょっと上げとくか・・・

いつもなら筑波山上空のほうが荒いサーマルなのだが、今日は実に大人しい

+2~3m/秒でエスカレータのように上がっていく

再び1800mまで上がり筑波山山頂を目指す


何年ぶりだろう

風は針を刺すように痛かったが、心地よかった

もう俺は自由だ

やっと思う存分飛べるんだ

そう思った時

涙が出た

涙で筑波山山頂がかすんで見える


それも心地よかった

女体山山頂を越え

男体山山頂を越えて

とうとう筑波山に着いた



さてこれからどっちに向かおうか

クロカンで走っても良かったが、迎えに来てくれるOさん

セキをしていたな


今日は・・・

戻るか (笑)


高度は1800m以上あるし

グランドを真っ直ぐ突き進む


T.Oまで戻ってきたとき、N君とFさんがリフライトするとOさんから無線が入った

がんばれ!


今日の目標は全て達成していたから仲間のフライトのことを考える余裕も出ていた

そして高度は1400m位あった

T.Oの真上に来たとき、突然強烈な突き上げを食らった


その5へつづく

さぁ翼よ、筑波山へ行こう! (その3)

これまでのお話


私は、飛び出して迷わず北のポイントにつける

バリオが軽く鳴り出す

旋回に入るが半分回したところでバリオが鳴り止む


ん!?

もっと前?

少し前に出して探ると再びバリオが鳴り出す

+2m/秒

いける

直ぐに旋回に入る


一周回したところで、バリオの音が更にあがる

+3m/秒

掴んだ

サーマルのコアに入ったのだ


もう逃がさない

あっという間にトップアウトした

眼下にT.Oを見たとき思わず

「キタキタキタキタァ~ヤッタゼ!」と叫んだ

この時T.OにいたOさんは、私の雄たけびを聞いて笑っていたそうだ


冬のこの時期のサーマルは、7~800mまでは大人しいのだが、この日はまるで春のようなサーマルだった

+4~6m/秒で上がるが外せばキャノピーが叩かれる

前触れもなしに、-1m/秒から+4m/秒で突き上げられる


頭の中のスイッチは完全に切り替わっていた

荒れたコンディションでの恐怖感を克服するには、頭の中がモードになりブレークコードを操る手はキャノピーを一体にならなければならない

愛機はとても素直なハンドリングで、私の期待を裏切らない

こんな時こそ手足のように動いてくれる


高度は一気に1000mを超えた

雲底まではまだ1000mある

上げるだけ上げてやれ


バリオの音は激しい断続音に変わり悲鳴を上げだした

+5m/秒を超えた

どんどんあがる

対地高度1800mを越えたあたりからキャノピーが突然叩かれて半分潰れた

私は、前兆も掴んでいたので、潰れると同時にブレークを引き込んでいた

潰れきったところでブレークを戻す

キャノピーは何事もなかったように戻る

飛行姿勢は全く変わらない


頭の中は、次のアクションに切り替わっている

無意識にサーマルを探す

まだ上がるはず

突然+5m以上のサーマルに突き当たる

体は、考えるよりも先に反応して旋回に入る

一気に1980m(海抜2040m)まで上がった

雲の中に入りそうになったので、これ以上の上昇は諦めサーマルから抜ける

この時叩かれることがあるので、気を抜けない

キャノピーが暴れるのをなだめながらサーマルを抜けた


その4へつづく

さぁ翼よ、筑波山へ行こう! (その2)

エリアに着いてい見ると皆ぶっ飛んでいる

どうしたんだろう?

最近子育てもひと段落して、復活し毎週のように飛んでいるN君が降りてきた

「サーマルないの?」

「全然駄目です」

「これからなのにね 直ぐに上がるけど、一緒に上がる?」

「いや僕はもう良いです 下で見ていますよ」

勿体無いと思いながらも、チャンスタイムを逃したくなくて同じく降りてきたNさんと一緒にT.Oにあがる


T.Oにはいいブローが入っているけど、北絡みでちょっといつもと違う

上空には見事なシアーの雲がある

雲低は2000m位だ


Fさんが先に飛び出す

T.O前で高度は充分あって、そのまま南の尾根に向かった


私は、準備をしながらFさんの姿を探したが、わからなかった

グライダーを敷き終えて、セットアップが終わった頃

Fさんが無線で今降りたと言ってきた

なんと・・・

コンディションは悪くないし、Fさんの腕ならサーマルをヒットすれば確実に上げられる


風を見ていたT.OディレクターのOさんが、北が強いと呟いた

T.Oにはまっすぐ西の風が入るが、北からの回り込みがあった

私は、Oさんに

「北が強そうだから北を攻めるかもしれません」

といった

Oさんも頷く


私の気持ちは決まった

風の状況から南では上がらない

上がるなら北だ


北側に開けるL.Dを地主に返してから

クラブ員は北を攻めなくなった

攻めすぎて高度を失うと、休耕田か農道に下ろすしかないからだ

私は最悪そうかもしれないが、上がる方にかけようと思った


戻れなくなることを心配して中途半端な攻め方をすれば間違いなくぶっ飛ぶ

頭の中には、攻めるポイントはインプットしていた

他のクラブ員ならそこまでは行かない

しかし、田んぼか農道に下ろすと決めればなんのリスクもないポイントだ



私は、Aライザーを軽く引いた

さぁ、大空に向かって羽ばたけ!


その3へつづく