2011年に上梓された三浦しをん著「舟を編む」は、映画化やアニメ化、ドラマ化された人気の作品です。
舞台は、国語辞典の編集部で、作中で編さんされているのは、『広辞苑』のような辞典です。
国語辞典は、大まかに分けて3種類あります。
『日本国語大辞典』(全13巻)のように1冊では収まり切らないような大型辞典。50万語を擁しています。
価格は21万円です。
『広辞苑』『大辞林』のように、一般の家庭や事務所に置かれていて、約20万~25万語を収録している中型辞典。
およそ1万円前後のものです。
『三省堂国語辞典』『新潮現代国語辞典』のように、片手で持ち運びができ、読書や原稿執筆の際、何度も繰り返し引くのに向いている小型辞典があります。
こちらは、8万~10万語程度が入っていて、3000円から5000円ほどの価格です。
さて、皆さんはどんな辞書をお使いでしょうか。
年齢層が上の方は、高校生や大学生の時代、家には中型辞典を置いていて、学校には小型辞典を持ち歩いたのではないでしょうか。
現在は、電子辞書も普及していますし、『大辞林』などはネットで検索もできます。
若い世代は、「持つ」ことが減っているのはこちらでも述べたことがあります。
言葉の源として作成が続く辞典の寿命は、約10年といわれています。
『広辞苑』などの人気辞典は、ほぼ10年に1回改訂されます。
新しく辞書を改訂するにあたり、7回から8回の校正作業が必要といわれ、1回の校正作業に約1年かかるそうです。
改定の基本作業は、
・現在発売されている辞典に収録されている項目を分野ごとに抽出
・各分野において第一線で活躍している専門家が全面的に校閲
・旧版の不備を補いつつ、既存用語もより正確で簡潔な解説が必要かどうかを検討
その一方で、『広辞苑」第7版(2018年発行)の改訂時には、4000語を追加しています。
新しく使われるようになった言葉を拾い出します。
実際に検討した候補は約1万語あったそうです。
追加の基準は
「世の中に定着して、幅広い人が使っている」
「少なくとも10年は使われる可能性が高い」
という言葉です。
編集に関わる人々は、新しい言葉に敏感でなければなりません。
膨大な言葉を集めないと辞書は作れないので、新聞、雑誌、書籍、テレビ、インターネット、会話、街中の看板やポスターなど、生活の中で「おや?」と思った言葉があったら記録しているそうです。
言葉の意味の変化に伴った語釈の追加や変更があります。
「姑息」は本来「その場しのぎ」の意味ですが、「ずるい」の意味で多く使われるようになり、「卑怯なさま」の語釈が加えられています。
「いっしょう(一生)」も、「生まれてから死ぬまでの間。生涯」に加えて、「俗語」として、ずっと。「きょうは ねむくて―ねてた」〔2020年代に広まった用法〕などと説明が追加された辞典もあります。
小型辞典にも、面白い辞典があります、とくに『新明解国語辞典』では、
「どうぶつえん」【動物園】
生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設。
「れんあい」【恋愛】―する
特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持を持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態。「―結婚・―関係」
といった説明がなされています。
「親の顔が見たい」という言葉に対しての比較では、
①しつけやおこないの悪い(若い)者に対して言うことば
②よその子供の言動に驚き呆れたような場合にいうことば
③(主に若い人に対して)とんでもないことをした人を罵り、責めるために言う言葉(文字通りに本当に見たいわけではない)
と、辞典によっていろいろ特徴があります。
1冊を大事に使うのも大事ですが、性格や規模の違う辞典の比較も大事です。
知らない言葉を調べるとき、辞書が複数あれば単純に項目を見つけられる確率が高まります。
説明の仕方や重点が異なる辞書を読み比べることで、イメージのつきやすい説明や、文脈に沿った説明に出会うことができます。
最新の雑誌やネット記事などを読むならば、新語や新用法に強い辞書が役立ちます。
文章を書いたり、話したりする言葉を確かめるときには、誤用や書き分け、漢字表記に詳しい辞書が役立ちます。
新語や新用法が載っている辞書はもちろん、載っていない辞書も見比べることで、まだ一般的ではなさそうだから別の言葉に置き換えようか、補足して使おうか、といった判断の材料にもなります。
Webライティングで言葉や漢字選びを迷った時…紙の辞書で調べることは減りました。
ただし、ネットで調べるとしても、1つのサイト、辞書・辞典だけで確認をすることはやめています。比較検討をするのは知識が増えるのでおすすめです。
辞典の森を散歩してみるのはどうでしょうか。
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