配信元:産経新聞

2012/09/07 00:34更新

北極圏開発への参画を目指す中国が、アジアと欧州を最短距離で結ぶ商業航路として、北極点付近を通過する新ルートの実効性の調査を進めている。地球温暖化で北極海の氷が減少していることが背景にある。

 中国の大型砕氷船「雪竜」は8月中旬、北極海横断に成功しアイスランドの首都レイキャビクに寄港。同国の関係者によると、その後、20日に出港し中国への帰途に就いた。往路ではロシア沿岸の北極海を航行したが、氷の量が少なかったことから、復路では北極点付近の最短ルートに挑戦。海氷の状態や船の性能などの調査を行うという。

 石油や天然ガスのほか金、銀など北極圏の豊富な資源を狙う中国は、北極海沿岸8カ国でつくる「北極評議会」の正式オブザーバー入りを目指している。

 東アジアと欧州を結ぶ最短ルートとなる、北極点付近経由の北極海横断に、ロシアなど沿岸国以外で成功した例はない。

 公海上の北極点付近を通ると、北極海の大部分でロシアなど沿岸国の排他的経済水域(EEZ)に入らなくてすみ、通航料の出費などを抑えられる。今後、中国が最短ルートの航路開拓で実績を挙げれば、北極圏の諸問題で中国の発言力が強まるとみられる。

 中国は最新型砕氷船の建造も進めている。北極圏の権益をめぐる争奪戦で、無視できない存在になりつつある中国と、ロシアなどとの摩擦が激しくなることも予想される。(レイキャビク 内藤泰朗)