共同通信社  5月24日(金) 配信


 政府は24日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った再生医療を安全かつ迅速に利用するための制度を盛り込んだ、薬事法改正案と再生医療安全性確保法案を閣議決定した。今国会に提出する。

 安倍政権は再生医療を成長戦略の重要な要素に位置付けている。新しい医療技術に関する早期承認制度やリスクに応じた規制の仕組みなどを具体化することで、産業応用に向けた環境を整えるのが狙いだ。

 薬事法改正案では再生医療で移植する細胞などを「再生医療等製品」と定め、従来の医薬品や医療機器とは別の承認制度を導入する。新制度では症例数が少なくても安全性が確認できれば、使用できる医療機関を限定して最大7年の期限付きで早期に承認し、市販後に有効性を検証できるようにする。厚生労働省によると、承認までの期間が2、3年程度短縮されることが期待できる。

 一方、再生医療安全性確保法案では移植する細胞を種類や使用法による患者へのリスクで3分類。iPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)は最も慎重に取り扱う「第1種」に分類される見通しで、利用するには公的な第三者委員会の審査や厚労省の検討を経る必要がある。

 移植用の細胞の培養や加工には専用の設備や高度な技術が必要なことから、医療機関は国の許可を受けた企業に委託できるようにする。

 再生医療をめぐっては、普及を迅速に進める責務が国にあることを明記した「再生医療推進法」が4月に成立している。

 再生医療以外でも、薬事法改正案では、国の承認が不要で民間機関が認証する医療機器の対象を拡大。透析器や人工呼吸器などが含まれる、リスクの高い「高度管理医療機器」の一部にも適用し、実用化までの手続きを簡略にする。

 法律が医薬品にとどまらず医療機器にも関係することを明確にするため、薬事法の名称を「医薬品医療機器法」と施行時に改めることにした。

※再生医療

 培養・加工した細胞や組織を移植し、病気やけがで失った体の機能を修復する医療。筋肉や神経など限られた種類の細胞になる体性幹細胞のほか、ほとんどの細胞になる人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)を使った治療法の研究などが進んでいる。経済産業省の研究会は、2030年に再生医療の国内市場規模が1兆6千億円に達すると予測している。