大部屋俳優のヤスは、映画スターの銀ちゃんの付き人をして10年になるが、鳴かず飛ばずでその他大勢のわき役を脱出することができない。金はなく、汚いアパートの一人暮らし。気が優しいが、はっきりしなくて、見栄えも悪いので、全くモテない。
大学を卒業したのに、俳優の世界にあこがれ、劇団に入っていたが、ある時、銀ちゃんに巡り合う。その時、ヤスの心に火が付いた。このスターが大好きだ。心を奪われ、その時から銀ちゃんに自分の夢をすべて預けることになる。銀ちゃんを実現したい自分に重ねるのだ。自分ではなることができない輝けるスター。それが銀ちゃんだ。それは恋に似た感情である。
銀ちゃんは自分だ。輝けるスター傍にいられることがこの上ない幸せだ。彼の悲しみは自分の悲しみ。どうにかしてやりたいと切に思う。
しかし、銀ちゃんの彼に対する態度は理不尽、不機嫌な時に殴られ、嬉しくても突き飛ばされ、挙句の果ては妊娠してしまった愛人を押し付けられる。
それでも、ヤスは、受け入れる。スター銀ちゃんを輝やかせるために。それは自分が輝くことになるのだから。
倉丘銀四郎は、主演映画を何本も撮っているが、少し落ち目の自己愛ギラギラの映画スター。
常に真ん中でなくては気が済まず、常に人気や、作品の評価が気になって、不安にさいなまれているので、駄々をこねたり、居丈高にふるまったり、常に精神は不安定。なので、理解不能の暴力的言動に及ぶ。自分銀四郎は思う存分にヤスを手荒く扱う。ヤスは、それを驚くべきことに受け入れ、それどころか、嬉しくもあるのだ。
共依存の症状である。彼の理不尽はすべて、自分が受け入れる。自分が彼を輝かせるという役目を負っていると思い、銀四郎は自分が支えているという自負心がある。
銀四郎はヤスの思いを心の底で気づいているので気に食わないので、殴る。
DV関係にある夫婦のようだ。暴力を通して依存しあっている。
つかこうへいはこの銀四郎とヤスのねじくれた関係を映画の世界で表現した。それ、も、かなり暴力的に荒々しく。
そして、全編に流れているのは映画へのオマージュ。撮影所全体が映画への愛に満ちていることが舞台全体から伝わってくる。
残念なことに、銀四郎の愛人である小夏の扱いは、家父長制の枠を超えていない。忸怩たる思いがするのだが、つかこうへいは昭和の男で、女性を母性と家庭に閉じ込める。
落ち目のスターでも、俳優という表現者よりも、母親役割を選らばせて、平然としている。
花組のメンバーはこの作品を素晴らしく演じて、高い舞台成果を上げている。
何より、ねじれたキャラクターを解析し、理解し、完璧に舞台上に出現させている。いつもの作品とは全く違う速いテンポのセリフ回し、演じたことのない、見たこともない極端なキャラクター、見事に自分のものにしている。
スターの銀四郎を美水舞斗さんが軽やかに美しく演じ、うだつの上がらない、滑稽ながらもいい奴キャラを演じ切りった飛竜つかささん、小夏の星空美咲さんは、研3くらいかな、素晴らしい芝居を見せてくれました。
2021年のこの作品、かなりの生徒さん、退団しているのですね。時の流れは速い。