イギリス人の墓泥棒アーサー、彼は地面の下のお宝を探し当てる特殊能力がある。古代エトルリアの墓は今では土に埋もれて、墓がどこにあるかもわからない。それでも、全身の感覚を研ぎ澄ませ、時には例の水脈を当てる十字の棒切れを持って、ここだと思う地面を探る。
彼の特殊能力を当てにして、本物の墓泥棒たちが群がるが、アーサーは掘り当てた遺物にあまり興味を抱かない。
アーサーの特殊能力はどこから来るのか、ストイックな彼の行いの理由は何か。
最後にわかる。ネタバレだけれど、彼は物語のラスト、深い穴落ちてしまう。そこで上から垂れている赤い糸。それを引っ張ると、美しい若い女性。
ここでハハンと、謎が解ける。死んでしまった恋人、エウリュディケを探し求めるオルフェウスなのだと。彼は恋人に会いたくて墓を掘っていたのだった。
そこに至るまでのお話はひたすら墓荒らしの物語なのだけれど、時代物の館に住む老人や彼女に付き添うおかしなヘルパーさんとか、盗品買いをする女の医者とかが登場し、吟遊詩人風に墓泥棒たちが歌ったり、死者が現れたり、にぎやかに進行する。
しかし、重い味付けではなく、軽やかなので、あっさり、軽く楽しめる。それにしても、アーサー役のジョン オコーナーさんの細身のシルエットが美しいこと。でっぷり太った館の老人がイザベルロッセリーニだったとは、驚きでした。
監督のアリーチェ ロルヴァルゲルさんは、ヨーロッパ的な洒脱な知性を感じさせる監督さんであります。遊び心とロマン派風の映画つくりが魅力的。